DOCUMENT CHANGES
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)
初回取得時の資料です。過去版との比較ではありません。
← 解説記事に戻る障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(1ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 1ページ障害のある幼児と共に育つ
生活の理解と指導
令和5年3月
文部科学省
厚生労働省 内閣府
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(3ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 3ページま え が き
幼児教育において、障害のある幼児などへの指導に当たって
は、個々の幼児の障害の状態に応じた指導内容や指導方法の工
夫を組織的かつ計画的に行うことが大切です。そのためには、
幼稚園教諭、保育士、保育教諭等の教職員(以下、「先生」とい
う)が保護者、関係機関との連携を図り、長期的な視点で障害
のある幼児などへの教育的な支援を行うことが求められていま
す。本資料はその際の基本的な考え方や具体的な事例について
解説しています。
各園においては、本資料を手掛かりに日々の実践を工夫され、
障害のある幼児などへの指導力の向上や先生方の研修の充実等
に取り組まれることを期待しております。ぜひ、本資料を積極
的に活用していただき、指導内容・指導方法の一層の向上に役
立ててください。
むすびに、ご協力いただいた作成協力者の各位に、ここに深
く感謝の意を表する次第です。
令和5年3月
文部科学省初等中等教育局幼児教育課長
藤岡 謙一
厚生労働省子ども家庭局保育課長
本後 健
内閣府子ども・子育て本部参事官(認定こども園担当)
高木 秀人
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(4ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 4ページ⽬ 次
第1章 幼児教育の基本・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1.生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育・・・・・・・・・・・・・・・・1
(1) 育みたい資質・能力と「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」・・・・1
2.幼児期の特性と幼児教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
(1) 幼児期の特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(2) 幼児期の発達・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(3) 幼児教育の基本と重視する事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
第2章 園における障害のある幼児などへの指導・・・・・・・・・7
(1) 全ての幼児に生きる力の基礎を培う幼児教育・・・・・・・・・・・・・7
(2) 教育課程と一人一人の発達に応じた指導・・・・・・・・・・・・・・・8
(3) 幼児の障害の状態等に応じた必要な支援のためのアセスメントの重要性・9
(4) 園における個別の指導計画の考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・10
(5) 互いの専門性を発揮する専門機関との連携・・・・・・・・・・・・・・11
(6) 幼児教育の機能を十分に生かした障害のある幼児などへの指導・・・・・11
(7) 社会の入り口としての園・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
第3章 障害のある幼児などへの指導における基本的な考え方・14
1.障害のある幼児などの遊びや生活を支える合理的配慮・・・・・・・・・・・14
(1) 障害のある幼児などの実態に応じた合理的配慮・・・・・・・・・・・・14
(2) 合理的配慮の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
(3) 園における合理的配慮の提供・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
2.合理的配慮を含む必要な支援を考えるために必要なアセスメント・・・・・・ 19
(1) 障害のある幼児などの実態を把握するためのアセスメント・・・・・・ 19
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(5ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 5ページ(2) 幼児教育におけるアセスメントの意義・必要性・・・・・・・・・・・ 19
(3) 幼児教育におけるアセスメントの内容や方法・・・・・・・・・・・・ 21
(4) アセスメントを行うに当たっての配慮・・・・・・・・・・・・・・・ 22
3.先生の基本的な姿勢・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
(1) 先生だけではなく、障害のある幼児なども困っている・・・・・・・・・24
(2) 障害のある幼児などのよさや得意なこと、
好きなことを見つける・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
(3) 先生同士がつながり支え合う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
(4) 共生社会の担い手を育む・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
4.障害の有無にかかわらず一人一人のよさを生かすクラス経営・・・・・・・・ 27
(1) 多様な幼児が集団にいることの意味・・・・・・・・・・・・・・・・・27
(2) 他の幼児にも配慮した集団としての成長・・・・・・・・・・・・・・・・28
5.保護者との信頼関係を基盤とした子育ての支援・・・・・・・・・・・・・・ 31
(1) 幼児を中心に据えた保護者との連携・・・・・・・・・・・・・・・・・31
(2) 障害のある幼児などの保護者との連携・・・・・・・・・・・・・・・・・32
第4章 障害に関する基本的な理解と障害のある幼児などの
困難さに応じた支援の手立ての考え方・・・・・・・・・・ 35
1.障害のある幼児などの困難さに応じつつ全体的な発達を促す支援の在り方・・ 35
(1) 入園における配慮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
(2) 障害のある幼児などの困っている姿を捉える視点・・・・・・・・・・・ 36
(3) 幼児期からの早期支援の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
(4) 幼児期の発達の特性と障害のある幼児などが抱える困難さ・・・・・・・・40
(5) 障害のある幼児などが自身の特性への理解を深めながら
自尊感情を育むこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
2.視覚障害に関する基本的な理解と支援の手立て・・・・・・・・・・・・・・ 43
(1) 視覚障害の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43
(2) 視覚障害のある幼児などに見られる行動等の特徴・・・・・・・・・・・ 43
(3) 視覚障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て・・・・・ 44
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(6ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 6ページ(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する・・・・・・47
コラム すごろく遊びを通して(5歳児)
~見やすい教材の工夫や聴覚情報等を活用して遊びを楽しむ~・・・・48
3.聴覚障害に関する基本的な理解と支援の手立て・・・・・・・・・・・・・・51
(1) 聴覚障害の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
(2) 聴覚障害のある幼児などに見られる行動等の特徴・・・・・・・・・・・51
(3) 聴覚障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て・・・・・52
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する・・・・・・56
コラム ケーキ屋さんごっこを通して(4歳児)
~言葉に身振り手振りを交えて思いを伝え合う~・・・・・・・・・・56
4.知的障害に関する基本的な理解と支援の手立て・・・・・・・・・・・・・・59
(1) 知的障害の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59
(2) 知的障害のある幼児などに見られる行動等の特徴・・・・・・・・・・・59
(3) 知的障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て・・・・・60
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する・・・・・・64
コラム クマさん鬼ごっこを通して(4歳児)
~先生がルールを分かりやすく行動で示す~・・・・・・・・・・・・65
5.肢体不自由に関する基本的な理解と支援の手立て・・・・・・・・・・・・・68
(1) 肢体不自由の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68
(2) 肢体不自由のある幼児などに見られる行動等の特徴・・・・・・・・・・68
(3) 肢体不自由のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て・・・・69
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する・・・・・・72
コラム 的当て遊びを通して(4歳児)
~できることを生かして体を動かす遊びを他の幼児と楽しむ~・・・・73
6.病弱・身体虚弱に関する基本的な理解と支援の手立て・・・・・・・・・・・76
(1) 病弱・身体虚弱の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76
(2) 病弱・身体虚弱のある幼児などに見られる行動等の特徴・・・・・・・・76
(3) 病弱・身体虚弱のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て・・77
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する・・・・・・81
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(7ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 7ページコラム サッカー遊びを通して(5歳児)
~遊びの中に休息時間を取り入れる工夫をする~・・・・・・・・・・81
7.言語障害に関する基本的な理解と支援の手立て・・・・・・・・・・・・・・84
(1) 言語障害の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84
(2) 言語障害のある幼児などに見られる行動等の特徴・・・・・・・・・・・84
(3) 言語障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て・・・・・86
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する・・・・・・89
コラム クラス全体でしりとり遊びをする場面を通して(5歳児)
~楽しい雰囲気の中で幼児のペースで発話し、
思いを伝える喜びを味わう~・・・・・・・・・・・・・・・・・・90
8.情緒障害に関する基本的な理解と支援の手立て・・・・・・・・・・・・・・93
(1) 情緒障害の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93
(2) 情緒障害のある幼児などに見られる行動等の特徴・・・・・・・・・・・93
(3) 情緒障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て・・・・・94
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する・・・・・・96
コラム 未就園児の保育や入園後の保護者の付き添いを通して(4歳児)
~保護者から先生、そして他の幼児へ。
信頼する人を拠り所に自分の世界を広げていく~・・・・・・・・・96
9.自閉症などに関する基本的な理解と支援の手立て・・・・・・・・・・・・・99
(1) 自閉症などの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99
(2) 自閉症などのある幼児などに見られる行動等の特徴・・・・・・・・・・99
(3) 自閉症などのある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て・・・・102
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する・・・・・・107
コラム 紙芝居ごっこを通して(4歳児)
~当該幼児の得意なことを生かして他の幼児との遊びを展開する~・・107
10.学習障害に関する基本的な理解と支援の手立て・・・・・・・・・・・・・・110
(1) 学習障害の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・110
(2) 学習障害のある幼児などに見られる行動等の特徴・・・・・・・・・・・110
(3) 学習障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て・・・・・111
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する・・・・・・113
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(8ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 8ページコラム カルタ遊びを通して(5歳児)
~絵やリズムの活用により、楽しみながら言葉も理解しやすくなる~・113
11.注意欠陥多動性障害に関する基本的な理解と支援の手立て・・・・・・・・・116
(1) 注意欠陥多動性障害の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116
(2) 注意欠陥多動性障害のある幼児などに見られる行動等の特徴・・・・・・116
(3) 注意欠陥多動性障害のある幼児などの抱える困難さに応じた
支援の手立て・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・118
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する・・・・・・122
コラム 集合時や遊びの場面を通して(5歳児)
~当該幼児の思いの実現、きまりを守りやすい工夫など、
状況に応じた支援を行う~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・122
コラム 発達障害について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・126
第5章 教育支援の体制整備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 128
1.体制整備の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・128
(1) 園内委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129
(2) 関係者や関係機関、保護者との関係づくりをするコーディネーター・・・131
2.個別の教育支援計画と個別の指導計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・134
(1) 個別の教育支援計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・134
(2) 個別の指導計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・137
3.先生の理解推進と専門性の向上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・140
4.専門家を活用した園運営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・141
(1) 特別支援教育支援員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・141
(2) 巡回相談・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・143
5.専門機関との連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・144
(1) 専門機関との連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・144
(2) 地域の専門機関・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・145
6.保護者との連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・148
(1) 保護者の気持ちに寄り添う先生の姿勢・・・・・・・・・・・・・・・・148
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(9ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 9ページ(2) 保護者との連携における留意点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・152
7.小学校への円滑な接続・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・155
(1) 小学校との連携の強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・155
(2) 就学先決定等の仕組みに関する基本的な考え方・・・・・・・・・・・・155
(3) 小学校への引継ぎ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・156
第6章 園における障害のある幼児などの支援の実際
(実践事例)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・159
事例1 日々の先生同士の会話の中で障害のある幼児などが抱える
困難さに気付く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 161
事例2 日々の様子を共有していくことで障害のある幼児などの
実態把握につなげていく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 166
事例3 障害のある幼児などの困難さから支援を考えるために
園内委員会を活用する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 173
事例4 外部有識者の助言を生かして支援の手立てを考える・・・・・・・・ 181
事例5 個別の指導計画の作成を通して、障害のある幼児などの発達に
必要な体験を考える・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 191
事例6 障害のある幼児などの実態に応じた行事参加について考える・・・・ 198
事例7 多様な幼児が共に遊びや生活を楽しむことのできる関係をつくる・・・205
事例8 先生の実践経験を考慮し、活発な協議ができる
園内研修を考える・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 218
事例9 園が療育機関での助言を生かしながら障害のある幼児などの
育ちを考える・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 229
コラム 障害のある幼児などが通う療育センターへの訪問を通して
園の先生が感じたこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 236
事例 10 家庭、園、関係機関が連携して障害のある幼児などの支援を考える・ 239
事例 11 入園前の相談を活用して受入れ体制や支援を考える・・・・・・ 248
事例 12 園と小学校が連携して切れ目ない支援を考える・・・・・・・・・ 254
事例 13 保護者の気持ちに寄り添うことで先生と保護者の協働を深めていく・ 260
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(10ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 10ページ事例 14 障害のある幼児などの保護者が一人で抱え込んだり孤立したりしない
ような配慮について考える・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・267
参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 277
1 幼稚園教育要領・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 278
2 幼保連携型認定こども園教育・保育要領、保育所保育指針に関係する内容
(抜粋)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 295
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(11ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 11ページ本資料の活用にあたって
【本資料の主な対象者】
本資料は、個々の幼児の障害の状態に応じた指導内容や指導方法の工夫などについ
て解説したものです。
本資料は主に幼稚園の先生を対象としていますが、幼保連携型認定こども園の保育
教諭等においても、特に満3歳以上の障害のある園児などの教育及び保育を充実させ
ていく上で、ご参考にしていただけるものと考えています。また、保育所においても
本資料を適宜ご活用いただきたいと思います。
【本資料の構成】
第1章では、幼児教育の基本、第2章では、園における障害のある幼児などへの指
導、第3章では、障害のある幼児などへの指導における基本的な考え方について述べ
ています。
第4章では、障害に関する基本的な理解と障害のある幼児などの困難さに応じた支
援の手立ての考え方について述べています。具体的には、障害のある幼児などの困難
さに応じつつ全体的な発達を促す支援の在り方を述べた上で、障害種別に障害の概要
や行動等の特徴、支援の手立て、困難さに応じた支援を活用した園での遊びや生活の
展開について述べています。
第5章では、教育支援の体制整備について述べています。具体的には、体制整備の
必要性、個別の教育支援計画と個別の指導計画、専門機関や保護者との連携、小学校
への円滑な接続などについて述べています。
第6章では、障害のある幼児などへの指導の参考となるよう、具体的な事例を紹介
しています。なお、紹介している事例は、あくまでも一つの実践事例であることを考
慮の上、参考としていただきたいと思います。また、本資料に掲載している事例につ
いては、可能な限り原文を尊重して掲載していることから、国の法令等とは異なる表
記や統一が図られていない表記も含まれています。
各園等や先生、各自治体において、本資料が積極的に活用され、幼児期の教育の一
層の充実が図られるよう期待しています。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(12ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 12ページ第1章 幼児教育の基本
1.生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育
教育は、こどもの望ましい発達を期待し、こどものもつ様々な可能性に働き掛け、
その人格の形成を図る営みです。幼児一人一人のもつ様々な可能性は、日々の生活の
中で出会う環境によって開かれ、幼児一人一人が自らの興味や関心、能力に応じて環
境に関わり、それに応じて環境からの応答を受け取るといった相互作用を繰り返すこ
とで具現化されていきます。幼児は、環境と関わり、体験を深め、そのことが幼児の
心を揺り動かし、次の活動を引き起こしていくのです。そうした体験の重なりが幾筋
も生まれ、幼児の将来へとつながっていきます。
(1) 育みたい資質 ・ 能力と「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」
社会に出てからも学校等で学んだことを生かせるよう、幼稚園等から高等学校まで
を通して、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間
性等」をバランスよく育んでいきます。園においても、幼児期の発達の特性を踏ま
え、育みたい資質・能力である「知識及び技能の基礎」、「思考力、判断力、表現力
等の基礎」、「学びに向かう力、人間性等」を育んでいきます。
資質・能力が育まれている幼児の園修了時の具体的な姿が「幼児期の終わりまでに
育ってほしい姿」であり、これらの資質・能力は、幼稚園教育要領等の第2章に示す
ねらい及び内容に基づく活動全体を通して育まれていきます。「幼児期の終わりまで
に育ってほしい姿」は到達目標ではなく、幼児の自発的な活動としての遊びを通し
て、資質・能力が幼児一人一人の発達の特性に応じて育っていく中で、幼児の姿とし
て現れていくものであり、全ての幼児に同じように見られるものではありません。ま
た、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は、特に5歳児後半に見られるように
なる姿ですが、3歳児、4歳児の時期から、幼児が発達していく方向を意識して、そ
れぞれの時期にふさわしい指導を積み重ねていくことに留意した結果として見られる
姿です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(13ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 13ページ(参考) 育みたい資質・能力及び「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」
【育みたい資質・能力】
(1) 豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする「知識及
び技能の基礎」
(2) 気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現
したりする「思考力、判断力、表現力等の基礎」
(3) 心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性等」
【幼児期の終わりまでに育ってほしい姿】
(1) 健康な心と体
園生活の中で、充実感をもって自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせ、見通しをも
って行動し、自ら健康で安全な生活をつくり出すようになる。
(2) 自立心
身近な環境に主体的に関わり様々な活動を楽しむ中で、しなければならないことを自覚し、自分の
力で行うために考えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成感を味わい、自信を
もって行動するようになる。
(3) 協同性
友達と関わる中で、互いの思いや考えなどを共有し、共通の目的の実現に向けて、考えたり、工夫
したり、協力したりし、充実感をもってやり遂げるようになる。
(4) 道徳性・規範意識の芽生え
友達と様々な体験を重ねる中で、してよいことや悪いことが分かり、自分の行動を振り返ったり、
友達の気持ちに共感したりし、相手の立場に立って行動するようになる。また、きまりを守る必要性
が分かり、自分の気持ちを調整し、友達と折り合いを付けながら、きまりをつくったり、守ったりす
るようになる。
(5) 社会生活との関わり
家族を大切にしようとする気持ちをもつとともに、地域の身近な人と触れ合う中で、人との様々な
関わり方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親しみをもつ
ようになる。また、園内外の様々な環境に関わる中で、遊びや生活に必要な情報を取り入れ、情報に
基づき判断したり、情報を伝え合ったり、活用したりするなど、情報を役立てながら活動するように
なるとともに、公共の施設を大切に利用するなどして、社会とのつながりなどを意識するようにな
る。
(6) 思考力の芽生え
身近な事象に積極的に関わる中で、物の性質や仕組みなどを感じ取ったり、気付いたりし、考えた
り、予想したり、工夫したりするなど、多様な関わりを楽しむようになる。また、友達の様々な考え
に触れる中で、自分と異なる考えがあることに気付き、自ら判断したり、考え直したりするなど、新
しい考えを生み出す喜びを味わいながら、自分の考えをよりよいものにするようになる。
(7) 自然との関わり・生命尊重
自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、好奇心や探究心をもって考え言
葉などで表現しながら、身近な事象への関心が高まるとともに、自然への愛情や畏敬の念をもつよう
になる。また、身近な動植物に心を動かされる中で、生命の不思議さや尊さに気付き、身近な動植物
への接し方を考え、命あるものとしていたわり、大切にする気持ちをもって関わるようになる。
(8) 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気
付いたりし、自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚をもつようになる。
(9) 言葉による伝え合い
先生や友達と心を通わせる中で、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付け、
経験したことや考えたことなどを言葉で伝えたり、相手の話を注意して聞いたりし、言葉による伝え
合いを楽しむようになる。
(10) 豊かな感性と表現
心を動かす出来事などに触れ感性を働かせる中で、様々な素材の特徴や表現の仕方などに気付き、
感じたことや考えたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽しんだりし、表現する喜
びを味わい、意欲をもつようになる。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(14ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 14ページ2.幼児期の特性と幼児教育
(1) 幼児期の特性
幼児期には、幼児は家庭において親しい人間関係を軸にして営まれていた生活から
より広い世界に目を向け始め、生活の場、他者との関係、興味や関心などが急激に広
がり、依存から自立に向かいます。多くの幼児にとって園生活は、家庭から離れて同
年代の幼児と日々一緒に過ごす初めての集団生活です。家庭や地域での生活において
幼児が安心して依存できる保護者や身近な大人の存在が必要であるのと同様に、園生
活が幼児にとって安心して過ごすことができる生活の場となるためには、幼児の行動
を温かく見守り、必要な支援を行う先生の存在が不可欠です。
そして、幼児は、先生との信頼関係を基盤に、何人かの他の幼児と一緒に活動し、
生活がより豊かに楽しく展開できることを体験し、他の幼児が共にいることの楽しさ
と大切さに気付いていきます。それと同時に、自己主張のぶつかり合いなどによる怒
り、悲しさ、寂しさなどを味わう体験を積み重ねることによって、次第に、相手も自
分も互いに違う主張や感情をもった存在であることにも気付き、その相手も一緒に楽
しく遊んだり生活したりできるよう、自分の気持ちを調整していくようにもなりま
す。
さらに、生活の場の広がりや対人関係の広がりに伴って、幼児の興味や関心は生活
の中で様々な対象に向けられて広がっていきます。
(2) 幼児期の発達
人は生まれながらにして、自然に成長していく力と共に、周囲の環境に対して自分
から能動的に働き掛けようとする力をもっています。自然な心身の成長に伴い、人が
このように能動性を発揮して環境と関わり合う中で、生活に必要な能力や態度などを
獲得していく過程を発達と考えることができます。幼児期は、遊びを中心とした生活
の中で、幼児自身が自らの生活と関連付けながら、好奇心を抱くこと、あるいは必要
感をもつことが重要です。
幼児の心身の諸側面は、それぞれが独立して発達するものではなく、幼児が他の幼
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(15ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 15ページ児と体を動かして遊びを展開するなどの中で、それぞれの側面が相互に関連し合うこ
とにより、発達が成し遂げられていきます。また、幼児の発達は連続的ではあるもの
の常に滑らかに進行するものではなく、ときには、同じ状態が続いて停滞しているよ
うに見えたり、あるときには、飛躍的に進んだりすることも見られます。さらに、こ
のような発達の過程は、ある時期には身に付けやすいが、その時期を逃すと、身に付
けにくくなることもあります。したがって、どの時期に何をどのような方法で身に付
けていくかという適時性を考えることは、幼児の望ましい発達を促す上で大切です。
なお、ここでの適時性とは、長期的な見通しに立った緩やかなものを指しているので
あり、人間は生涯を通して発達し続ける存在であることから、その時期を過ぎたら、
発達の可能性がないというような狭い意味のものではありません。
(3) 幼児教育の基本と重視する事項
幼児教育は、環境を通して行う教育を基本とし、「幼児期にふさわしい生活の展開」、
「遊びを通しての総合的な指導」、「一人一人の発達の特性に応じた指導」に留意し、
幼児一人一人が発達に必要な体験を得られるようにしています。
①環境を通して行う教育
幼児期の教育においては、幼児が生活を通して身近なあらゆる環境からの刺激を受
け止め、自分から興味をもって環境に主体的に関わりながら、様々な活動を展開し、
充実感や満足感を味わうという体験を重ねていくことが重要です。そのためには、幼
児が安心して周囲の環境に関われるような雰囲気が大切です。その上で、幼児の中に
興味や関心がわいてきて、関わらずにはいられないように、そして、自ら次々と活動
を展開していくことができるように、配慮され、構成された環境が必要です。つま
り、幼児が環境に関わることにより、その発達に必要な経験をし、望ましい発達を実
現していくようになることが必要です。ただ単に幼児が好き勝手に遊んでいるだけで
は、必ずしも発達にとって重要な価値ある体験ができるとは限りません。先生は、一
人一人の幼児の中に今何を育みたいのか、一人一人の幼児がどのような体験を必要と
しているのかを明確にし、幼児がどのような活動の中でどのような体験をしているの
かを考慮しながら、先生としての願いを環境の中に盛り込んでいきます。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(16ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 16ページ環境を考えるに当たっては、遊具や用具、素材などの物的環境に加え、その場にい
る他の幼児や先生、そのときの自然事象や社会事象、空間的条件や時間的条件、さら
には、その場の雰囲気なども幼児の主体的活動や体験の質に影響を与えていることを
踏まえなくてはなりません。
②幼児期にふさわしい生活の展開
幼児は、先生との信頼関係の下、必要なときに先生から必要な支援を受けながら、
自分の力でいろいろな活動に取り組む体験を積み重ねていきます。幼児は、興味や関
心から発した直接的で具体的な体験を積み重ね、自分の生きる世界や環境について多
くのことを学び、様々な力を獲得していきます。また、幼児期は社会性が著しく発達
していく時期であり、他の幼児との関わりの中で、幼児は相互に刺激し合い、様々な
ものや事柄に対する興味や関心を深め、それらに関わる意欲を高めていきます。した
がって、園生活では、幼児が他の幼児と十分に関わって展開する生活も大切にするこ
とが重要です。
③遊びを通しての総合的な指導
幼児の遊びには幼児の成長や発達にとって重要な体験が多く含まれています。遊び
において、幼児が周囲の環境に思うがままに多様な仕方で関わるということは、幼児
が周囲の環境に様々な意味を発見し、様々な関わり方を発見するということです。遊
びを展開する過程においては、幼児は心身全体を働かせて活動するので、心身の様々
な側面の発達にとって必要な経験が相互に関連し合い積み重ねられていきます。一つ
の遊びを展開する中で、幼児たちはいろいろな経験をし、様々な能力や態度を身に付
けます。したがって、具体的な指導の場面では、遊びの中で幼児が発達していく姿を
様々な側面から総合的に捉え、発達にとって必要な経験が得られるような状況をつく
ることが大切です。
④一人一人の発達の特性に応じた指導
幼児の発達の姿は、大筋で見れば、どの幼児も共通した過程をたどると考えられま
す。しかし、それぞれ独自の存在としての幼児一人一人に目を向けると、その発達の
姿は必ずしも一様ではありません。幼児のしようとしている行動が、多くの幼児が示
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(17ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 17ページす発達の姿から見ると好ましくないと思えることもあります。しかし、その行動を通
して実現しようとしていることがその幼児の発達にとって重要である場合がしばしば
あります。先生は幼児一人一人の発達の特性と発達の課題を把握し、その幼児らしさ
を損なわないように指導することが大切です。
幼児は、自分の要求を満たしてくれる先生に親しみや自分に対する愛情を感じて信
頼を寄せます。しかし、幼児一人一人に応じるというとき、ただ単にそれぞれの要求
に応えればよいというわけではありません。先生の応答は、育みたい資質・能力を育
むために、幼児一人一人の何に応じればよいのか考えたものでなければなりません。
そのためには、先生が、幼児の具体的な要求や行動の背後に、意欲や意志の強さの程
度、心情の状態(明るい気分、不満に満ちた状態、気落ちした気分など)など幼児の
内面の動きを察知することが大切です。そして、その幼児がそれらの要求や行動を通
して本当に求めていることは何かを推し量り、その幼児の発達にとってどのような経
験が必要かをそれぞれの場面で可能な範囲で把握していることが大切です。このこと
は、幼児一人一人をかけがえのない存在として見て、それぞれ独自の生き方(行動の
仕方、表現の仕方など)をしていると考え、その独自性を大切にすることです。そし
て、集団の生活の中で、幼児たちが互いに影響し合うことを通して、一人一人の発達
が促されていきます。それゆえ、先生には、一人一人の発達の特性を生かした集団を
つくり出すことを常に考えることが望まれています。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(18ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 18ページ第2章 園における障害のある幼児などへの指導
「障害者の権利に関する条約」に掲げられている教育の理念の実現に向けて、各園
では、障害のある幼児のみならず、教育上特別な配慮を必要とする幼児が在籍してい
る可能性があることを前提に、全ての先生が特別支援教育1の目的や意義について十分
に理解して教育活動を行う必要があります。ここで重要なのは、前項で述べた幼児教
育をしっかりと行う中で、障害のある幼児などへの指導を行うということです。
特別支援教育の目的や意義への理解は広がりつつありますが、特別支援教育と幼児
教育は別のものとして捉え、園の中で障害のある幼児などだけを対象とした特別な指
導を行う必要があると思い込んでいないでしょうか。一方、幼児期は発達の個人差が
大きく、一人一人に応じて指導を行っていることから、障害のある幼児などに対して
特別なことをする必要はないと考えていないでしょうか。ここでは、改めて園におけ
る障害のある幼児などへの指導の在り方を考えていきます。
(1) 全ての幼児に生きる力の基礎を培う幼児教育
園は、適切な環境の下で幼児が先生や多くの他の幼児と集団で生活することを通し
て、幼児一人一人に応じた指導を行うことにより、生きる力の基礎を培う体験を積み
重ねていく場です。幼児教育は在園する全ての幼児を対象として、一人一人に応じた
指導を行うものであり、もとより障害の有無は関係ありません。各園の教育を考える
とき、障害のない幼児のみをイメージしていることはないでしょうか。園において障
害のある幼児などの指導を充実させていくためには、先生の無意識にもっている幼児
像を見直し、広げていく必要があります。
また、幼児教育は、幼児期の特性を生かし、環境を通して行う教育を基本としてい
ます。園生活の中で自発的・主体的に環境と関わりながら直接的・具体的な体験を通
して、育みたい資質・能力を育んでいきます。こうした幼児教育を進める体制を見て
1 特別支援教育とは、障害のある幼児・児童・生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援す
るという視点に立ち、幼児・児童・生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、そのもてる力を高め、生
活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うもの。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(19ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 19ページみましょう。園は、クラスを編成し、教育課程2に基づき、クラス担任が中心となって
指導を進めます。幼児の主体性を重視する幼児教育においては、幼児の行う活動は、
個人での活動、グループでの活動、クラス全体での活動など多様な形態で展開される
ことが必要です。そのため、クラスを基本としながらも、園長のリーダーシップの下、
園の先生全員による協力体制を高め、一人一人の幼児に応じたきめの細かい指導の工
夫を図る、チーム保育が行われています。
園において障害のある幼児などの指導に当たっては、チーム保育を核とし、家庭や
関係機関と連携した体制整備が重要です。園生活全体を通じて、幼児一人一人に応じ
た指導の中で、障害の状態や特性及び発達の程度等(以下、障害の状態等)に応じて、
発達を全体的に促し、生きる力の基礎を培っていきます。
(2) 教育課程と一人一人の発達に応じた指導
各園では教育目標の達成に向けて、育みたい資質・能力の育成や「幼児期の終わり
までに育ってほしい姿」を踏まえ、入園から修了までを見通した教育の道筋である教
育課程を編成します。さらに、教育課程に基づいて指導計画を作成します。障害の有
無にかかわらず全ての幼児に対して、共通の教育課程の下で、遊びを中心とした幼児
期にふさわしい生活を通して、一人一人の特性に応じた指導が行われます。
園においては、障害のある幼児などに対して特別の教育課程は編成しません。だか
らこそ、個別の指導計画が重要になります。障害のある幼児などは障害の状態等に細
やかに対応した個別の指導計画の下、その幼児の興味や関心を生かしながら遊びが充
実していくこと、その中で得意なことをさらに伸ばしたり、苦手なことに挑戦したり
する体験が積み重なっていくことが重要です。幼稚園教育要領解説には「その幼児な
りに」という表現が多く出てきます。「その幼児なりに」を、十分できなくてもその子
なりにやっているからよい、といった幼児の力をある意味低く見るような捉え方をし
ているのではありません。「その幼児なり」には、そのときにもっているその幼児の力
2 平成 29 年 3 月に告示された幼保連携型認定こども園教育・保育要領では、第 1 章の第 2 教育及び
保育の内容並びに子育ての支援等に関する全体的な計画等において、「教育及び保育の内容並びに子育
ての支援等に関する全体的な計画」を作成することとしている。平成 29 年 3 月に告示された保育所保
育指針では、第 1 章総則の3保育の計画及び評価において全体的な計画を作成することとなっている。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(20ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 20ページをいっぱいに使っている、という幼児の力への信頼であり、当然、障害の有無にかか
わるものではありません。障害のある幼児などの発達を、「幼児期の終わりまでに育っ
てほしい姿」を手掛かりにして捉える際にも、障害があるから難しいと考えたり、達
成の度合いを見たりするのではなく、その幼児がどのように育ちつつあるのかを捉え
ていくことが大切です。
(3) 幼児の障害の状態等に応じた必要な支援のためのアセスメントの
重要性
幼児は自ら発達していく力をもっていますが、その道筋は多様であり、一人一人違
います。
園生活の中で、幼児は自分を取り巻く環境に主体的に関わり、環境との相互作用を
通して、人と関わる力や思考力、感性や表現する力などを育み、人間として、社会と
関わる人として、生きていくための基礎を培います。障害のある幼児などは、その幼
児なりの取組だけに委ねた場合、発達に必要な体験を積み重ねにくいことがあります。
そのため、障害の状態等に即した細やかな配慮が必要です。
例えば、弱視のある幼児が塗り絵をするときには輪郭を太くするなどの工夫をした
り、難聴のある幼児に絵本を読むときには先生が近くに座るようにして、声がよく聞
こえるとともに口の動きがはっきりと見えるように工夫したりするなどのことが行わ
れています。また、一見相手の嫌がることばかりしているように見える幼児が、本当
は一緒に遊びたいと願っていることもあるでしょう。そうした幼児の願いを読み解き
ながら、障害の状態等を踏まえた必要な支援が求められます。
障害の状態等を踏まえた必要な支援を考えていくには、まず、実態を適切に捉える
ことが重要です。その際、障害に関する専門的な視点から、その幼児の得意なことや
苦手なこと、できることとできないこと、どのような状況で起こるのかなどを客観的
に捉えるアセスメントが有効です。こうしたアセスメントはそれ自体を目的とするこ
となく、必要な支援を検討し、個別の指導計画に反映させていくことが大切です。障
害のある幼児などの発達を捉える際に、日頃の幼児理解の視点に加えてアセスメント
を活用することは、さらに深く幼児理解を行うことと言えるでしょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(21ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 21ページ(4) 園における個別の指導計画の考え方
幼児教育において育みたい資質・能力を育んでいくこと、「幼児期の終わりまでに育
ってほしい姿」を踏まえ教育課程を編成することは、障害の有無にかかわらず同じで
す。指導計画の作成や保育の展開において、幼児一人一人の実態に応じることも同じ
です。この幼児の実態を捉える際には、「幼児の障害の状態等に応じた必要な支援のた
めのアセスメントの重要性」において述べたように、障害のある幼児などについては、
日頃の幼児理解の視点に加えてアセスメントを活用することが大切です。
幼児教育における環境とは、人やものだけではなく、時間や空間、その場の雰囲気
なども含まれており、そういった環境を通して幼児に成長してほしいと先生は願い、
環境を構成します。例えば、片付けの場面でもその環境の受け止めは、幼児によって
違います。片付けの必要性に幼児自らが気付いてほしいと願うとき、先生はあえて声
を掛けずに見守ります。これまでの経験から自主的に片付ける幼児や、その様子を見
て、遊んでいる途中でも片付け始める幼児もいることでしょう。しかし、障害のある
幼児などは、その特性から、見通しがもちにくかったり片付け方が分からなかったり、
一見無秩序に見えるような環境からストレスを感じたり不安を感じたりすることがあ
ります。環境の構成においても、アセスメントを活用して、その幼児がその環境をど
う捉える傾向にあるのかを予測することが大切です。先生の声掛けや周囲の幼児の片
付けにより遊びを終える方法もありますが、例えば、11 時まで遊んだら片付けること
を予め幼児に知らせておくことで、その幼児は見通しをもつことができて安心します。
また、片付ける場所を常に同じにしたり、片付けの手順を写真で示したりすることで、
安心して片付けに取り組むことができます。環境の構成や保育の展開に当たっては、
その幼児の障害の状態等を理解し、細やかに応じることが必要です。教育課程を踏ま
えた保育を展開するに当たって、その幼児に応じた環境の構成や配慮等を示したもの
が個別の指導計画と言えるでしょう。
このことは、幼児理解に基づいた評価にも当てはまります。「幼児期の終わりまでに
育ってほしい姿」を念頭に置いたり、幼稚園教育要領等の第2章の各領域のねらいを
視点にしたりして幼児の発達を捉えることは、障害の有無にかかわらず同じです。そ
もそも、幼児教育は到達目標ではなく、その幼児の成長しつつある姿を捉えることを
大切にしています。障害のある幼児などについても、その幼児なりの成長を細やかに
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(22ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 22ページ捉えるようにしましょう。そうして幼児の成長する姿を捉えてみると、発達に偏りが
見られるかもしれません。偏りは、幼児ができないことを示しているのではなく、幼
児が遊びや生活の中で困りやすいことを示しています。そうした発達の偏りの的確な
把握や、そのことに起因する困難さに応じた支援を考えるためには、専門家と連携し
たアセスメントの活用が大切です。
(5) 互いの専門性を発揮する専門機関との連携
障害のある幼児などの指導に当たっては、専門機関との連携は重要です。特別支援
学校や療育機関等の専門機関は、幼児の障害に関する知識や発達の状態等の医学や心
理学、教育学の側面からの把握、障害のある幼児などへの支援に関する専門性を有し
ています。一方、園の先生は、幼児期の発達の特性や集団生活を通した教育に関する
専門性を有しています。
例えば、障害のある幼児などの障害の状態等に応じた支援の内容は、専門機関から
の情報に基づき検討し、実際の指導では、他の幼児も共に楽しめるように支援の手立
てをアレンジすることも考えられます。その幼児の興味のある遊びを、あえてその幼
児から始めて他の幼児に広げていくことで、一緒に遊ぶ楽しさやその幼児のよさを受
け止め合えるようにすることなどは、園の先生の専門性を発揮した実践と言えるでし
ょう。
園と専門機関が、互いの専門性や得意分野を明確にし、発揮し合うことが重要です。
障害のある幼児などの様子を参観した際に、同じ状況でも捉え方や指導の方向性など
に食い違いが起きるのは、想定内のことと言えるでしょう。なぜそう考えるのかなど
を話し合い分かり合うことで、互いの専門性を生かした関係をつくることができます。
互いが専門性を発揮しながら、障害のある幼児などの必要な支援を一緒に考えていく
ことが大切です。
(6) 幼児教育の機能を十分に生かした障害のある幼児などへの指導
園において障害のある幼児などの指導を行う際には、園生活の場の特性と人間関係
を大切にし、その幼児の発達を全体的に促していくことが大切です。障害のある幼児
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(23ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 23ページなどのやってみたいことが実現できるような環境を構成することや、障害のある幼児
などと他の幼児が一緒に遊ぶときには、幼児同士が関わりながら、それぞれの幼児が
遊びを楽しめるように必要な支援をすることが必要です。そのためには、全ての先生
が障害に関する知識や障害の状態等に応じた必要な支援に関する理解を深めるととも
に、前述したチーム保育の考え方を核として、組織的に対応していくことが重要です。
また、家庭との連携を十分に図り、園における生活が家庭と連続性を保ちつつ展開
されるようにすることは、幼児教育の特質の一つです。障害のある幼児などの保護者
に対しては、その幼児の楽しんでいることや発達の様子、幼児自身の困っていること
や願い、園での支援などをより細やかに伝え、信頼関係を築くことが重要です。その
際、保護者はその幼児の一番の理解者であるという認識をもち、家庭の様子や支援の
内容を聞き、共に考えていく姿勢が求められます。さらに、保護者のいわゆる障害受
容を急がないことも大切です。例えば、小学校に入ってから専門機関に通うようにな
った児童の保護者から、「園のときに先生から聞いていたことはこのことだったのか
と、つながりました」と聞くことがあります。先生は、専門機関との連携を視野に入
れつつ長期的な視点をもちながら、保護者の気持ちや関わり方を支え、園が子育ての
パートナーになっていくことが大切です。
(7) 社会の入り口としての園
園は、他の幼児をはじめ様々な人々との出会いを通して、家庭では味わうことので
きない多様な経験をする場です。園生活を通して、幼児は社会と関わる人として育っ
ていきます。初めての集団生活は、いわば社会の入り口とも言えます。そこでどのよ
うな人とどのように出会い、関わり、共に生活するかは、幼児の将来に大きな影響を
与えます。
園において、幼児は先生との信頼関係を基盤に、様々な体験を通して、幼児が互い
のよさや特性を受け止め合って生活し、他者との関わり方を体得していきます。障害
のある幼児などは、自分を理解してくれる先生や他の幼児との生活の中で、他者への
信頼が育まれ、人と関わる楽しさを積み重ねていきます。
先生は、全ての幼児について、一人一人の思いを受け止めていることを幼児自身に
伝えたいと思っています。しかし、簡単にはいきません。そのことに正面から向き合
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(24ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 24ページい、心を尽くして取り組んでいく先生の姿を、幼児は見ています。そうした姿から、
クラスの一人一人がかけがえのない存在であることを幼児自身が感じ取り、幼児も心
を尽くして関わり合うようになっていきます。このことは、障害の有無にかかわらず、
幼児同士の関係についても言えます。試行錯誤の分だけ伝わり合う喜びや共感は大き
いものです。その過程での様々な体験が、園生活をより豊かなものにし、幼児一人一
人の原体験として大きな意味をもちます。こうした園生活は、自ずと共生社会の基盤
になっていくことでしょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(25ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 25ページ第3章 障害のある幼児などへの指導における
基本的な考え方
1.障害のある幼児などの遊びや生活を支える合理的配慮
障害の有無にかかわらず、幼稚園教育要領等の第2章に示すねらい及び内容に基づ
く活動全体を通して、育みたい資質・能力を育成していきます。こうした活動は、幼
児自身が、安心して取り組めることや十分に楽しめることが大切です。障害のある幼
児などは、障害の状態等に応じた配慮をすることで、その子なりのペースで資質・能
力が育まれていきます。合理的配慮とは、障害のある幼児などが他の幼児と共に学ぶ
ために安心して遊びや生活を送ることができるよう理にかなった変更や調整をするこ
とといえるでしょう。
(1) 障害のある幼児などの実態に応じた合理的配慮
「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育
の推進(報告)(平成 24 年 7 月 23 日中央教育審議会初等中等教育分科会)」の中で、
障害のあるこどもが十分に教育を受けられるための合理的配慮の提供と、その基礎と
なる環境整備の充実の重要性について提言されています。合理的配慮とは、障害のあ
るこどもが、他のこどもと平等に教育を受けられるように、園が必要かつ適当な変更・
調整を行うことであり、均衡を失した又は過度の負担は課さないものとされています。
また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)第7
条第2項において、「行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現
に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実
施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、
当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について
必要かつ合理的な配慮をしなければならない」とされています。
基礎的環境整備とは、合理的配慮の基礎となるものであって、障害のあるこどもに
対する支援を行う上での、環境の整備のことです。例えば、車椅子を利用するこども
について、基礎的環境整備として施設のバリアフリーが実現している施設であれば、
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(26ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 26ページこどもは一人で施設内を移動することが可能であり、トイレの援助などの必要な合理
的配慮を行います。一方、施設内に段差がある場合には、車椅子で段差を越えるため
の援助を行うなども合理的配慮として必要になります。基礎的環境整備の観点として、
ネットワークの形成・連続性のある多様な学びの場の活用、専門性のある指導体制の
確保(例:外部の専門家の活用)、個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成等によ
る指導、教材の確保(例:拡大絵本)、施設・設備の整備(例:バリアフリー化)、専
門性のある先生、支援員等の人的配置、交流及び共同学習の推進があります。障害の
ある幼児などの指導に当たっては、園における基礎的環境整備の状況に応じて、一人
一人の障害の状態等や教育的ニーズに応じて合理的配慮を行います。「合理的配慮」を
行う前提として、求められるものは以下のとおりです。
(ア)障害のある幼児などと障害のない幼児が共に学び育つ理念を共有する教育
(イ)一人一人の状態を把握し、一人一人の能力の最大限の伸長を図る教育
(ウ)健康状態の維持・改善を図り、生涯にわたる健康の基盤をつくる教育
(エ)コミュニケーション及び人との関わりを広げる教育
(オ)自己理解を深め自立し社会参加することを目指した教育
(カ)自己肯定感を高めていく教育
この合理的配慮について、保育において具体的にはどのように考えればよいのでし
ょうか。障害の有無にかかわらず、幼児は環境を通して学びます。ただし、障害のあ
る幼児などの場合、発達の状態や各々の障害特性の影響により、先生や園が整える環
境との間で学びにくさが起こることが、障害のない幼児より起こりやすくなります。
よって、障害のある幼児などが「活動で何をすればいいのかが分からない」、「やりた
くても物理的に入れなくて、皆と一緒に楽しめない」「そもそも興味や関心がわかない」
といったことが、様々な次元で起こりえます。園は、大人の関わり方や指導、既存の
保育環境・設備など、障害のある幼児などの周囲の様々な事項を変更・調整すること
が求められます。その内容が合理的配慮といえます。
(2) 合理的配慮の内容
各園が行う合理的配慮に関連した変更・調整の内容として、以下の 3 つの観点があ
ります。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(27ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 27ページ①個別の指導計画等の作成、遊具や用具等の教育内容・方法に関する配慮
例えば、声や音が聞こえにくいため、そのままでは絵本の読み聞かせ等を楽しめな
い幼児に対して、事前に絵本の内容を保護者に伝え家庭で読み聞かせをしてもらった
上で、読み聞かせのときには先生の声が聞こえやすい位置に座れるようにし、他の幼
児と楽しい時間を共有できるようにする。また、手にまひがあり細かな指の動きが難
しい幼児に対して、握るだけで切ることのできる特別なはさみを用意する。など
②先生、支援員等の確保による支援体制の整備
例えば、がやがやした環境が苦手なため、クラスの隅や外から集まりに参加するの
で精いっぱいな幼児に対して、それを個別に支援する先生等を園に配置し、必要な場
面で担任の説明を仲介したり、幼児の気持ちを代弁して他の幼児に伝えたりする。
など
③施設・設備の整備
例えば、日中、医療的なケア(導尿、痰
たん
の吸引、投薬、適宜の休憩など)が必要な
幼児について、それを実施できる空き教室や空きスペースを確保し、安心・安全な園
生活や安定したリズムで園生活を送ることを支える。また、車椅子を活用している幼
児について、段差のある箇所を確認・補修し、園内で自らの意思で移動、選択・決定
する機会を保障できるようにする。など
先生は、幼児の興味や関心を踏まえて、明日の保育を予想します。そうした予想の
中で必要な支援についても検討します。しかし、日々の保育は、幼児が周囲の人やも
のと関わる中で先生の予想を超えた展開もあります。幼児の「今日は、〇〇がした
い!」という思いに耳を傾けながら、共に環境をつくっていく幼児教育の特性上、週
案、日案等の検討段階、あるいは実際に日々幼児と関わりながら、幼児の思いや活動
に応じて支援の内容もきめ細やかに変えていく必要があります。
合理的配慮の決定方法・提供に当たっては、園全体と保護者、関係者間で、障害の
ある幼児などを含め、幼児は皆、有能な学び手であるという幼児を信頼する気持ちを
もち、幼児のやりたいこと、好きなことや長所などに目を向ける共通のまなざしをも
つことが必要です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(28ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 28ページ(3) 園における合理的配慮の提供
① 幼児の障害の状態等に応じた遊びや生活
合理的配慮は、一人一人の障害の状態等や教育的ニーズに応じて決定されるもので
あり、障害のある幼児などの興味や関心、遊びや生活の上での困難、健康状態等の実
態把握を丁寧に行い、個別に決定・提供することが求められます。この点で、〇〇障
害には〇〇がよいといった、一律の合理的配慮を安易に検討・提供することは避ける
べきです。しかし、障害特性に応じて抱えることが多いと考えられる遊びや生活の上
での困難さを知ることは、支援の内容を検討するときに参考となります。類似した困
難さに対しては、類似した支援の内容が有効な可能性があります。下記のような事態
を事前に想定しておきましょう(詳しくは、第4章 障害に関する基本的な理解と障
害のある幼児などの困難さに応じた支援の手立ての考え方 35 頁参照)。
視覚障害 :視力が低いだけでなく、視野や色覚等にも障害がある場合が多く、も
のの見え方には個人差があることから、視覚情報の不足に伴い、例え
ば、動作の模倣や事物の確認の困難さ等を感じることがある。また、
つまずきやすかったりよくぶつかったりするなど、特に慣れない場所
での移動の困難さ、相手の表情が分からないことからのコミュニケー
ションの困難さ等も感じることがある。
聴覚障害 :聞こえにくいため、他の幼児とのコミュニケーションが上手くとれな
かったり、先生の指示が分からなかったりする。また、難聴により聞
こえにくいと、言語を獲得しにくいといった課題もある。
知的障害 :他人との意思の交換、日常生活や社会生活、安全などについて、その
年齢段階に標準的に要求されるまでには至っていないため、発音が明
瞭でなかったり、言葉と言葉をつないで話すことが難しかったりする。
また、走り方がぎこちなく、安定した姿勢が維持できなかったり、衣
服のボタンかけやはさみなどの道具の使用が難しかったりする。
肢体不自由:身体にまひ等があるため、歩行等の運動、日常生活動作や生活習慣の
確立、絵をかくことや製作等の表現活動等が困難である。
病弱・身体虚弱:心身が病気のため弱っていたり、病気ではないが身体の不調が続いた
りする状態にある。そのため、運動機能としては走ったり飛んだりで
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(29ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 29ページきるのに、健康状態が悪くなりやすく、安全面や生活面への細かな配
慮が常時求められ、生活規制等の一定の制約を受けたり、治療等のた
めに食事が制限されていたりする。
発達障害 :興味や関心の幅が限定的だったり、感覚過敏やこだわり等があったり
するため、遊びや活動が広がりにくい。文字や数への興味や関心の低
さから言葉の獲得への影響が見られる。ものの見え方や聞こえ方の特
性等によりコミュニケーションや行動の遂行が困難になる。
② 園における合理的配慮の検討プロセス
合理的配慮の検討に当たっては、障害のある幼児などの入園、年度始め、長期の指
導計画の作成時、個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成時など、一定の時期に
検討を行います。その後、年間を通して教育活動を展開する中で、保護者と合意形成
をして決定した合理的配慮の有効性や意義、障害のある幼児などの成長に伴う内容の
変更なども必要になります。個別の教育支援計画や個別の指導計画の見直しと併せて
行うとよいでしょう。ただし、入園後に支援の必要性に気付く場合には、障害のある
幼児などの実態を把握し、合理的配慮を決定するための情報や経験が少ないため、検
討が難しいことがあります。園長のリーダーシップの下、担任や他の先生が連携協力
して、遊びや生活の様子の記録から障害のある幼児などの困難さを捉え、必要な支援
の内容について組織的・計画的に検討します。その際、過去に類似の困難さを抱えて
いる障害のある幼児などを受け入れたことがあれば、その経験や先進事例の取組など
を参考にすることも考えられます。
合理的配慮の決定に当たっては、保護者や専門機関との連携も重要です。特に、保
護者との連携に当たっては、保護者の思いに十分に配慮しながら、障害の有無に着目
するのではなく、まずは、その幼児のよさを伝えて保護者が子育ての喜びを感じられ
るようにするとともに、先生との信頼関係を築き、次第に、目の前で困っている障害
のある幼児などの困難さに応じた合理的配慮について共に考えることができる関係を
築きましょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(30ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 30ページ2.合理的配慮を含む必要な支援を考えるために必要な
アセスメント
障害のある幼児などの支援に当たっては、その幼児の実態を捉えることが大切です。
その幼児の実態とは、「第2章 園における障害のある幼児などへの指導」において述
べたとおり、まずは、幼児理解を基盤としつつ、障害に関する専門的な視点からの助
言を踏まえて、先生の無意識にもっている幼児像を見直し、広げていくことが大切で
す。その上で、アセスメントを活用してその幼児の実態を捉え、合理的配慮を含む必
要な支援の内容を検討し、組織的、計画的な支援を行います。
(1) 障害のある幼児などの実態を把握するためのアセスメント
幼児理解もここで言うアセスメントも、幼児の実態を捉えることに変わりはありま
せん。しかし、アセスメントでは、障害の状態等に応じた幼児の困難さや得意なこと
について、専門的な助言も受けながら、その幼児の実態を捉えていく必要があります。
アセスメントでは、意欲・態度、興味や関心に関わる情報に加え、医療や心理学等の
知見を活用して、より客観性が重視される形で、その幼児の実態に細かく迫ることを
求めます。アセスメントとは、障害のある幼児などを適切に理解し、個々のニーズに
応じた支援を行い、またそれに関わる園内外での意思決定を柔軟に行うために、その
幼児に関わる多様な情報を集めること、並びにそのプロセスであり、行動観察や聞き
取り、検査などを通して、先生、保護者、障害に関わる専門家など障害のある幼児な
どに関わる多くの者によって行われるといえるでしょう。
(2) 幼児教育におけるアセスメントの意義・必要性
障害のある幼児などの支援において、なぜアセスメントが必要なのでしょうか。こ
のことを考えるために、もしアセスメントがなかったらという状況を考えてみます。
以下、自閉スペクトラム症のあるA児の例です。
A児は年長に進級した男の子です。とても活発なのですが、発語がなく、自分
の要求を伝えるために、大声・奇声を出すことが年中の頃から続いていました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(31ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 31ページ担任は、「クラスの一体感」を重視しており、A児の行動の理由は特に意識せず、
「Aちゃん、今はみんなと一緒の時間だから、静かにしようね」と伝える日々が
続きます。しかし、夏休みを終えてもA児の様子は変わらず、「注意する→逃げ
る→怒る→あばれる」という悪循環に担任はいらだちを感じるようになり、いつ
しか「私の保育に合わない子」という認識になっていました。園長が、巡回相談
の機会を設けて専門家に保育の様子を見てもらいましたが、その日はA児の機
嫌がとてもよく、専門家から十分な助言を得ることができませんでした。担任の
対応に関して保護者も疑問を感じ、担任と保護者との関係もぎくしゃくするこ
とが多くなってきました。小学校への入学に当たって、園から小学校に心配なこ
とばかりが引き継がれ、「園での 2 年間の成果はなんだったのだろう」と悔いば
かりが残る結果となってしまいました。
この事例において、以下のようなアセスメントを適宜実施していれば、A児や保護
者の様子も違ったものになったかもしれません。
・A児の遊びや生活の姿から発達を捉え、A児にとっての適切な環境を考える(保
育を通してA児の環境との関わりを捉え、A児が環境に不安、ストレスなどを感
じていないか観察する)。
・A児が、遊びを楽しみ、他の幼児とも関われるように、A児の好きなこと、興味
や関心のあることを探る。
・気になる行動が生じる理由や背景を検討するために、気になる行動が起こった状
況を記録する。A児が落ち着いて行動できたときの先生の関わり方や周囲の環境
や状況、効果的な支援についても記録を取る。
・A児の実態に応じてスモールステップで考えていけるよう、A児本人が一番困っ
ていることや将来に向けて改善の必要性の高い課題など、優先順位を考えて整理
する。
・保護者と連携したA児への必要な支援の充実のため、A児の家庭での様子を聞く
(また園での様子も伝える)。
先生が、障害のある幼児などの気になる言動に戸惑い、必要な支援に悩んでいると
きは、障害のある幼児なども不安やストレスを感じて困っているのかもしれません。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(32ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 32ページアセスメントにより、障害のある幼児などを適切に理解し、個々のニーズに応じた必
要な支援を行うことにより、安心して園での生活を送れるようになっていきます。先
生も、見通しをもって障害のある幼児などの指導に当たることができます。
(3) 幼児教育におけるアセスメントの内容や方法
アセスメントは様々です。幼児は、家庭を含めた環境の影響を受けやすく、幼児自
身に関わるものから、周囲の環境に関わるものまで、多様な情報を集め、アセスメン
トを行う必要があります。以下では、その性質から、アセスメントを「フォーマル・
アセスメント」と「インフォーマル・アセスメント」という二つに分けて説明します。
【フォーマル・アセスメント】
フォーマル・アセスメントでは、障害のある幼児などの現在の知能や発達の状態、
あるいは細かい発達領域ごとの能力を、発達検査や知能検査などを通して明らかにし、
その幼児の実態に迫ります。定められた検査用具等を用いて、適用可能な年齢のこど
もを対象に、決まった手続きで測定・評価することで、客観的な評価を行います。そ
うすることで、生活の中でどのような支援がどの程度必要なのかの見当をつけたり、
個別の指導計画等で優先的に取り組むべき課題を設定したりする際にも役立てること
ができます。フォーマル・アセスメントは医療機関などの専門機関で行います。客観
的に知的能力や発達段階、あるいは個人内の得意―不得意を把握することができるた
め、保護者を介して、専門機関からの報告書を提出してもらえれば、園内での必要な
支援の方向性や内容の参考となります。
【インフォーマル・アセスメント】
インフォーマル・アセスメントでは、ある環境の中で、普段、障害のある幼児など
がどのように過ごしているのか、その全体像や背景を総合的に理解しようとする点に
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(33ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 33ページ特徴があります。今、私たちが関わろうとしているのは園で生活している障害のある
幼児などであり、その幼児は、嬉しい・楽しい・悲しい・困ったなど、多様な感情を
伴いながら、様々な体験をしています。園での教育において当たり前に向けてきたま
なざしと幼児の理解の仕方を、障害のある幼児などにも適用することは、支援の内容
と方向性を探っていくために欠かせません。
具体的には、日常生活の観察や聞き取りを行います。障害のある幼児などは、気に
なる行動を示すことも多く、そういった行動にばかりに注意を向けがちです。ただし、
障害のある幼児などを注意深く見ていると、気になる行動が常に現れているわけでは
なく、環境に馴染んで落ち着いている場面や遊びを楽しんでいる場面などもあります。
そうした場面を積極的に見つけて、楽しんでいること、興味や関心をもっていること
などを探り、生活環境をその子の興味や関心に合わせるきっかけを見つけることが重
要です。このためにも、園での障害のある幼児などの遊びや生活の様子を整理するこ
とが大切です。その際には、できるだけ細かな活動ごとに把握するとよいでしょう。
障害のある幼児などを多面的・多角的に捉えるため園内の先生同士で話し合うことも
必要です。また、保護者から家庭での様子を聞く機会をもつことも望まれます。家庭
で困っていること、家庭での工夫など、多様な情報を得るようにします。
また、障害のある幼児などの現在の興味や関心、言葉の理解・表現・手先の器用さ
などに対して、現在の環境があっているか、環境そのものをその子の視点で整理する
こともできます。これを環境調査といいます。
インフォーマル・アセスメントを活用して先生同士で障害のある幼児などの実態を
把握し、必要な支援のアイデアを具体的に考えていくことが望まれます。
(4) アセスメントを行うに当たっての配慮
園で実施が想定されるインフォーマル・アセスメントでの配慮としては以下が考え
られます。取組の実施に当たっては、園長のリーダーシップの下、チーム園という意
識をもって先生同士が連携協力することが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(34ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 34ページ① 環境が異なれば幼児の姿も異なること
障害のある幼児などは、園だけでなく、家庭、場合によっては療育機関や医療機関
などの関係機関などでも過ごしています。幼児は環境の影響を受けやすく、幼児が生
活する環境によって異なる姿を示すことも少なくありません。そのため、関係者の間
で障害のある幼児などの抱える困難さや必要な支援について、意見が異なることがあ
ります。
障害のある幼児などの支援策を考える上で、家庭や関係機関等から情報を集めるこ
とは大切です。家庭や関係機関等と園とでは、障害のある幼児などの生活する姿が異
なるにもかかわらず、家庭や関係機関と同じ支援策を取り入れることは必ずしも適切
とは言えません。家庭や療育機関等からの情報や助言を踏まえ、園での遊びや生活、
先生や他の幼児と関わる当該幼児の姿から、園としての支援を考えることが大切です。
幼稚園等の教育の専門家である先生が、障害のある幼児などの園での生活を考える上
で療育機関等からの助言を取り込む必要があります。
② アセスメントを日々の必要な支援や個別の指導計画などにつなげること
アセスメントは必要な支援につながってこそ意味をもちます。日々の保育や障害の
ある幼児などと他の幼児の関係の広がりや深まり、個別の指導計画でのねらいや実践
につなげる必要があります。そのためには、記録の仕方を工夫するとともに、保護者
や関係機関との連携が大切です。
③ 障害のある幼児などの実態に応じた見直し
障害のある幼児などの発達に応じて、遊びの内容、興味や関心は変わっていきます。
年度初めや終わり、学期、週などの区切りで、障害のある幼児などの姿を振り返り、
現在の支援を見直すことが大切です。障害のある幼児などの成長に応じた必要な支援
となるよう、当該幼児の姿を振り返る際には、保護者や関係機関の意見も聞くように
しましょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(35ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 35ページ3.先生の基本的な姿勢
幼児は、園で様々な人やもの、出来事と出会い、多様な体験をします。こうした体
験は幼児の主体的な活動を通して得られることは言うまでもありませんが、先生が、
幼児一人一人の行動の理解と予想に基づき、計画的に構成した環境が大切であること
も忘れてはなりません。ここでは、障害のある幼児などと関わり、その幼児が安心し
て遊びに没頭できる環境を考えていく上での先生の姿勢について述べます。
(1) 先生だけではなく、障害のある幼児なども困っている
コミュニケーションが難しくて、他の幼児とトラブルになってしまったり、行動の
切り替えが難しくて混乱してしまい、パニックになってしまったり、手指を巧みに使
うことができず絵画や製作、食事などに時間がかかってしまったりする幼児は、どの
クラスにもいることでしょう。こうした障害のある幼児などの存在によって、計画ど
おりに保育が進められなかったり、他の幼児や保護者への対応に時間がかかってしま
ったりすると、先生として困ったと感じる場面もあることでしょう。
このような困った場面で、先生は、障害のある幼児などとの関わりを考える際、困
った行動に注目し、それをどうやって軽減したり、改善したりするかということを中
心に考えてしまうことがあります。しかし、障害のある幼児などの立場に立って考え
ることが大切です。
例えば、先生がクラスの幼児たちに話をしているとき、保育室から出ていく幼児が
いたとします。先生にしてみれば、落ち着きのない子、話を聞かない子などと感じて
しまうかもしれません。しかし、その幼児にとっては、話の内容が分かりにくい、速
すぎて聞き取りにくい、話が長すぎるなど、先生の話す内容や話し方に課題があって、
話を聞くことができなかったのかもしれません。そのため、保育室にいることが辛い
状況だったのかもしれません。言い換えれば、その幼児は困っていたのかもしれませ
ん。
先生が困ったと感じたとき、障害のある幼児などはそれと同じかそれ以上に困って
いる可能性があります。その幼児に、困った行動を軽減したり、改善したりすること
を求めるのではなく、先生の保育や関わりを見直すことが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(36ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 36ページそのためには、困った行動そのものにのみ着目するのではなく、行動の背景やその
幼児の気持ちを想像することが大切です。障害のある幼児などにも、他の幼児と同じ
ように、よさや得意なこと、好きなことがあります。そして、それを、先生などの大
人に認めてほしいと願っています。ところが、困っていると感じている先生は、障害
のある幼児などの困った行動にばかり着目してしまいがちです。幼児は先生などの大
人のまなざしに敏感に反応します。先生のまなざしが、障害のある幼児などの困った
行動にばかり向けられているとき、その幼児は先生と安心して関係を築くことができ
ないでしょう。
(2) 障害のある幼児などのよさや得意なこと、好きなことを見つける
障害のある幼児などとの関わりに困難さを感じたとき、その幼児のよさや得意なこ
と、好きなことを見つけることが大切です。
例えば、コミュニケーションが難しいと言われる幼児が、集中力を発揮し精緻な絵
をかくことがあります。行動の切り替えが難しいと言われる幼児が、鉄道に関する知
識を他の誰よりももっていることがあります。いろいろなことに時間がかかってしま
う幼児は、粘り強さがあったり他の幼児に対する寛容さがあったりします。
こうしたことに着目することで、障害のある幼児などと楽しく関わるきっかけが見
つかったり、ほめる機会を増やしたりすることができるでしょう。幼児のよさや可能
性を認識することは、幼児教育において大切なことですが、このことは、障害のある
幼児などにおいても同じであることは言うまでもありません。
(3) 先生同士がつながり支え合う
障害のある幼児などのよさや得意なこと、好きなことを見つけるのは難しい場合も
あるかもしれません。担任だけで見つけようとするのではなく、先生同士で話し合う
ことで、多様な視点から、その幼児のよさや得意なこと、好きなことを探すことがで
きます。
園内で障害のある幼児などについて協議する際には、多様な視点での協議が必要で
す。担任が日頃感じているその幼児などの姿について、他の先生は、担任とは異なる
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(37ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 37ページ視点で捉えているかもしれません。そうして、先生同士が話し合いながらその幼児の
理解を深めていくために重要な視点の一つが、その幼児のよさや得意なこと、好きな
ことにあります。
さらに、障害のある幼児などへの支援は、担任だけで抱えるのではなく、園全体で
の組織的な対応が求められます。そのためには、障害のある幼児などを含め、全ての
幼児を全ての先生で保育するという姿勢が重要です。
(4) 共生社会の担い手を育む
障害のある幼児などの存在は、他の幼児にも影響があります。トラブルになった結
果、大切なものが壊れてしまったり、ときにはケガをしたりすることもあるかもしれ
ません。運動会などの行事でチームごとの競争やグループで製作をすることになった
とき、障害のある幼児などと他の幼児が、必ずしも一緒に楽しく活動できるとは限り
ません。そのような場合でも、幼児同士で考え、工夫し、解決していく経験は重要で
す。こうした経験が多く、豊かであるほど、幼児たちは、他者に対する寛容さと多様
性への理解力を身に付けることができるでしょう。
また、障害のある幼児などに対する先生の姿勢が、他の幼児に影響を与えることに
留意する必要があります。障害のある幼児などへの対応で、他の幼児や先生が困った
と感じる場面が生じるかもしれませんが、障害のある幼児などがクラスに存在するこ
とで、他の幼児は、多様性を実感し、他者を尊重する大切さを学んでいきます。この
ことは、障害のある幼児なども同様です。
幼児たちは、将来、社会を担う存在です。その社会は、多様性を理解し、あらゆる
他者を尊重し協働することが求められる共生社会です。園は幼児が初めて出会う集団
生活の場であり、社会の入口であるともいえるのです。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(38ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 38ページ4.障害の有無にかかわらず一人一人のよさを生かすクラス
経営
幼児教育では、幼児の発達は、心身の諸側面が相互に関連し合い、多様な経過をた
どって成し遂げられていくものであること、また、幼児の生活経験がそれぞれ異なる
ことなどを考慮して、幼児一人一人の特性に応じ、発達の課題に即した指導を行える
ようにすることを重視しています。
さらに、共生社会の形成に向けて、障害のある幼児などが地域社会の中で積極的に
活動し、その一員として豊かに生きることができるよう、地域の同世代の幼児や人々
との交流等を通して、地域での生活基盤を形成することが求められています。このた
め、可能な限り共に学ぶことができるよう配慮することが重要です。したがって、園
において、障害のある幼児などについて、その障害の状態等に応じた受け止めをしな
がら、園生活の場の特性と人間関係を大切にした、クラスづくりを行うことが大切で
す。
(1) 多様な幼児が集団にいることの意味
障害のある幼児などにとって障害のない幼児と一緒に生活することは、様々な刺激
を受けて興味や関心を広げ、やってみようとすることやできるようになることが増え、
みんなと一緒に過ごす楽しさや嬉しさを感じる機会となっています。そして、園に障
害のある幼児などが入園するということは、他の幼児にとっても意味があります。こ
こで、障害のある幼児などの活動の事例を紹介します。
自閉スペクトラム症の疑いのあるB児。他の幼児と同じ場にいることはできます
が、他の幼児と一緒に遊ぶ様子はあまり見られません。B児が集団の活動に参加し
ないこと、話さないことなどについて、周囲の幼児も不思議そうに見ています。先
生に「どうしてBちゃんは一人でいるの?」と問い掛け、一緒に遊びたそうにして
いる幼児もいます。先生は、B児の気持ちなどを丁寧に伝えますが、他の幼児はよ
く分からないようです。先生は、B児が他の幼児と関わるきっかけをつかみたいと
思いながら、日々保育に臨んでいます。
先生は、B児が最近は魚に興味や関心があり、魚図鑑を一人で見ていることが多
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(39ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 39ページいことに気が付きました。先生はB児と一緒に毎日餌やりをすることにしました。
しばらくして、餌やりに関心をもっているY児にも声を掛けました。すると、B児
とY児が一緒に魚の図鑑を見ている様子が見られるようになりました。Y児は、魚
の絵をかいたり、魚釣りや水族館ごっこなどをしたりして、次第に周囲の幼児にも
魚や金魚に関する関心が広がっていきます。遊ぶ中で、「Bちゃんはすごく魚に詳
しいよ」など、先生からだけではなくY児からもB児のよさが語られていくように
なりました。先生は、そうしたクラスの雰囲気を踏まえ、Y児の他、金魚をよく見
ている数名の幼児にも声を掛けて餌やりをすることにしました。先生が「お魚はき
れいな赤だね」というと、B児は、「金魚は、生まれてから 50 日くらいまでに色が
変化するんだ。頭から尾びれまで全身が真っ赤なのをしょうじょう、赤と白のまだ
ら模様をさらさというんだ。黒色、青色、茶色、黄色、白色の金魚もいるんだ」と
話し始めました。他の幼児は、「金魚をもっと見たい。どんな色があるの」と魚図鑑
を出してきます。B児が言った金魚の写真が図鑑に載っていないので、自分たちで
金魚をかいてB児と一緒に名前をつけることになりました。
B児の魚への興味や関心がきっかけとなり、他の幼児は金魚の色は多様であること、
配色の違いで呼び名が異なることを知り、わくわくしながら想像力を働かせて自分だ
けの金魚をかいて、B児から○○という金魚に近いといったコメントをもらって楽し
そうです。B児がいたからこそ他の幼児の興味や関心が広がったといえるでしょう。
先生が、障害のある幼児などへの特別な配慮を意識するあまりに特別扱いをしたり、
発想が先生の予想を超えているからといって障害のある幼児などの発言を否定したり
すれば、他の幼児も障害のある幼児などに対して心の距離を縮めていくことはできな
いでしょう。好きなことや得意なことは一人一人異なります。一人一人の幼児のよさ
を生かしながら幼児同士の関わりを生み出していくことは、障害の有無にかかわらず
同じです。
(2) 他の幼児にも配慮した集団としての成長
日々の園での生活の中では、「どうしてCちゃんは一緒に片付けをしないの。どうし
てずっと遊んでいてもいいの」、「先生はCちゃんとばかり一緒にいる」と先生に疑問
やちょっとした不満を投げ掛ける幼児もいることでしょう。このような言動は、C児
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(40ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 40ページに対する不満等ではなく、「もっと私の気持ちも聞いて。私と一緒に遊んで」といった
先生への思いであることもあります。先生は、幼児一人一人の思いを受け止めながら
保育を展開します。他の幼児にこういった言動が見られたときには、自分の思いを先
生が受け止めてくれているという安心感をもてているか、当該幼児が園での遊びや生
活を楽しみ充足感を感じているかといった視点から、幼児の園での生活の様子や先生
自身の当該幼児への関わりを振り返ってみましょう。表面に現れた言動の奥にある幼
児の思いを受け止め、先生が当該幼児と向き合う時間をつくったり、C児と先生の遊
びに当該幼児を加えて一緒に楽しんだりするなどしましょう。そうした活動の中で、
当該幼児自身が、先生にとっては自分もC児も大切であり、先生はそれぞれの幼児の
思いに応じた関わり方をしているといったことを感じられるようにすることが大切で
す。
また、他の幼児がC児について、「Cちゃんは○○ができない」と言ったりすること
はないでしょうか。他の幼児は、先生とCちゃんの関わりを見ています。先生がC児
に対して、「ダメ」「やめなさい」ばかりを伝えていると、他の幼児もC児はダメな子
と誤解してしまいます。先生がC児のよさを認め、C児の特性を踏まえた関わり方を
示すことで、他の幼児もC児をありのままに受け入れていくことができます。つまり、
幼児が、障害のある幼児などに対して、自分とも他の子とも違った子と捉えるのでは
なく、クラスにはのんびりしている子もいればかけっこが速い子もいる、そんな中で
C児は引っ込み思案だけど花に詳しい子といったように捉えられるようにすることが
大切です。障害のある幼児などは、特別な子ではなく、他の幼児と同じくクラスを構
成する一人の幼児です。一人一人の幼児が、先生との信頼関係を基盤に、幼児同士の
関わりを深めていくことにより、クラスの集団としての成長につながります。個とし
ての幼児が発達して次第に自分の周囲の環境や人と関わろうとする気持ちを大切にし
ながら、幼児が関わる集団規模を大きくしていきます。幼児同士が関わる中で、障害
の有無にかかわらず、いろいろな人がいることや相手の思いを知ろうとします。そし
て、その幼児なりにできたことを一緒に喜び合うかけがえのないクラスの一員として、
先生が受け止めることが大切です。障害の状態等に応じた個別の支援は、そういった
先生の姿勢の上に成り立つものです。障害のある幼児などは一方的に助けてもらう側
ではありません。障害の有無にかかわらず、誰でもいつでもSOSを出せること、助
けたり助けられたりすることの大切さについて、体験を通して実感できる集団づくり
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(41ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 41ページが大切です。そのためには、障害のある幼児などの思いや状況、伝わりにくいが頑張
っていることなどを先生が他の幼児に伝えることも大切です。先生は、クラスでの生
活が、互いにとって豊かな時間となるクラス経営について、クラスを構成している一
人一人の幼児の実態を踏まえて考えていきましょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(42ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 42ページ5.保護者との信頼関係を基盤とした子育ての支援
これまで、幼児一人一人に応じた幼児理解や指導は、障害の有無にかかわらず全て
の幼児にとって大切であることを述べてきました。一人一人に応じることは、保護者
についても言えます。しかし、障害のある幼児などの保護者は、他の幼児と比べて「こ
んなこともできない。自分の育て方が悪いのか」と考えてしまったり、「誰にも相談
できない」、「自分の気持ちは園の先生には分からない」と感じていたりなど、子育
てに関する不安を抱え込んでいることがあります。
幼児期は、信頼する大人、特に保護者の影響を強く受ける時期であり、保護者が安
定した気持ちで幼児を育てていくことはとても重要です。保護者の気持ちが安定して
いくためには、保護者と先生との信頼関係を構築し、子育ての喜びを共有できること
が大切です。そのためには、保護者の価値観を受け止め、保護者の気持ちに寄り添う
姿勢が大切です。ここでは、園における子育ての支援に関する基本的な考え方につい
て述べた後に、障害のある幼児などの保護者への支援や連携に関して述べます。
(1) 幼児を中心に据えた保護者との連携
幼児一人一人は、先生にとっても保護者にとってもかけがえのない愛しい存在です。
その大切な一人一人の幼児を中心に据えて、園と家庭が力を合わせ、幼児の生活を充
実したものにすることが大切です。
しかし、現実には、園から保護者への一方的な連絡になったり、表面的な出来栄え
にとらわれたりなど、幼児不在の連携となってしまうことがあります。先生は、幼児
の生活を充実させるために何が役立つか、幼児の発達にとってどうすることがよいか
といったことを念頭に置きながら、幼児の成長を共に喜び合える関係づくりをしまし
ょう。
その際、幼児にとっての家庭の役割を忘れないようにしましょう。幼児にとって、
家庭は、家族から十分な愛情や思いやりを受けて安心して過ごせる心の基地です。し
かし、家庭は様々な事情によりその機能が十分に発揮できないことがあります。先生
は、そのような家庭の事情を理解し、それに応じた家庭との連携の在り方を考えてい
く必要があります。特に、現代は価値観が多様化しており、一人親や祖父母と同居、
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(43ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 43ページ一人っ子やたくさんのきょうだいなど、家庭を取り巻く環境も多様であれば、教育観
や子育ての方針なども多様です。仮に、園の先生から見ると家庭において課題を抱え
ているように見えても、その家庭の課題を指摘するのではなく、家族の気持ちやなぜ
そうなったのかを理解することが大切です。保護者にどう受け止められるのかを考え、
相手の立場に立った連携が重要です。先生と保護者が互いの考えや思いを出し合うこ
とにより、相互理解を深め、信頼関係を構築することが必要です。そのためには、送
迎時間などのちょっとした時間などを有効に活用して保護者が気軽に相談できる雰囲
気を醸成し、次第に、保護者の話をじっくりと丁寧に聞き取っていくことが大切です。
ときには、保護者から不満や苦情が寄せられることもありますが、それは保護者なり
に家庭で相談したり、悩んだりしている結果と受け止め、その奥にある保護者の気持
ちを考えるようにします。そうして、保護者の子育てに対する不安や悩みに共感を示
したり、保護者が頑張っていることをねぎらったりするとともに、幼児のよさや成長
を伝え、保護者が子育てに対する喜びを感じられるようにしましょう。
(2) 障害のある幼児などの保護者との連携
障害のある幼児などの保護者は、子育てに関する不安を抱え込んでいることがあり
ます。特に、第一子の場合は、保護者も初めての経験が多く、期待と不安が入り混じ
っています。そうした中で、我が子に障害がある又は障害のある可能性は簡単に受け
止められるものではなく、気持ちが不安定になったり、我が子を肯定的に捉える気持
ちと悲観的に捉える気持ちが一進一退を繰り返したりします。先生は、こうした保護
者の気持ちの揺れに寄り添う必要があります(第5章6.保護者との連携 148 頁参
照)。そうしたことを前提に、以下のことなどに留意する必要があります。
①障害のある幼児などのよさや成長及び困難さを共有すること
保護者が幼児のよさや成長を感じられることはとても重要です。しかし、障害のあ
る幼児などの保護者は、我が子のよさに気付きにくかったり、成長を感じる心の余裕
がなくなったりしていることがあります。日々の園での当該幼児の活動の様子を通し
て、当該幼児のよさや成長を伝えます。そうして、保護者が先生に対して徐々に心を
開き、保護者と当該幼児のよさや成長を喜び合えるようになってきたら、当該幼児の
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(44ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 44ページ困難さにも目を向けます。このとき、当該幼児の困難さを幼児ができないこととして
伝えることは避けましょう。当該幼児自身が困っていること、先生や保護者のちょっ
とした工夫(イラストを使って説明する等)でその困難さは軽減されることなどを伝
えるようにします。そして、日頃から連絡ノートや登園・降園の機会等を利用し、園
や家庭における当該幼児の様子や行動の特徴のほか、得意なことや苦手なこと、楽し
んでいることや困っていること、他の幼児との関わり等について、伝え合うことによ
り、先生と保護者が共に幼児理解を深めていけるようにします。
②保護者の話に傾聴し、その言動から内面を理解すること
先生が保護者に障害のある幼児などの成長を伝えたとき、保護者は「嬉しい」と答
えるかもしれません。また、先生が保護者に、「家庭での様子はどうですか」と尋ねて
も、「普通に遊んでいます」と答えるかもしれません。保護者の言動だけを捉えてみれ
ば、保護者は子育てに不安を感じていないように見えます。しかし、その言動の奥で
は、「先生が我が子の成長を教えてくれているのだから喜ばなければ」、「家庭での困り
ごとや子育ての不安を先生に話しても仕方がない」、「話せば自分の育児を非難される
かもしれない」、「この漠然とした不安を言葉にはできない」などと思っているかもし
れません。もしかすると、周囲から、保護者の子育てに関して否定的な意見を言われ
た経験があるのかもしれません。あるいは、子育てに関して日常的に話せる人が周囲
にいないのかもしれません。
保護者自身が、「この人になら話しても大丈夫」と思えることが大切です。保護者の
言動からその内面を推し量り、徐々に信頼関係を構築していきましょう。幼児の困難
さや必要な支援を早く相談したい、共有したいと思うあまり、結果として保護者の気
持ちを軽視することになってはいけません。
そして、保護者が子育てに関する不安や悩みを話し始めたら、真摯に耳を傾け、保
護者の労をねぎらい、共感的理解を示すことが重要です。保護者にとって子育ての不
安や悩みを理解してもらえることは、園への信頼感情だけでなく、保護者の心の安定
や当該幼児への自己肯定感の向上につながります。そして、このことが保護者自身の、
より主体的で肯定的な当該幼児との関わりにつながり、子育ての喜びを感じたり、幼
児の小さな成長に気付いたりできるようになっていきます。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(45ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 45ページ③保護者の気持ちに配慮した関係機関との連携
障害のある幼児などの中には、入園前から療育施設などに通っていることがありま
す。しかし、そのことを園や周囲にあまり話したがらない保護者もいます。当該幼児
の発達の状況に不安を感じつつも、療育などの機関を利用することに不安や抵抗感を
示す保護者がいることもあります。一方で、園での幼児の生活の様子を見た保護者が、
ことばの教室などに通わせたいと園に相談にくるケースもあります。保護者の気持ち
を推測しながら、保護者の気持ちに寄り添って、関係機関との連携を進めましょう。
障害のある幼児などが、早期から関係機関の支援を受けることは、幼児の困難さに応
じた支援や幼児の発達の上でとても重要な意味があります。しかし、だからといって、
一方的に関係機関を紹介したり、医療機関等の受診を勧めたりすることは、保護者が
園に対して心を閉ざしてしまうことにつながりかねません。結果として、保護者が関
係機関と連携する時期が遅くなってしまうかもしれません。
園では、障害に関する関係機関の助言等を活用しながら、障害のある幼児などの困
難さに応じた支援を検討しているかもしれません。園で行っている必要な支援につい
て保護者と共有することは大切です。しかし、あくまでも保護者の気持ちに寄り添い、
そのときの保護者が受け止められる情報提供の程度、保護者と関係機関との連携の在
り方を検討することが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(46ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 46ページ第4章 障害に関する基本的な理解と障害のある
幼児などの困難さに応じた支援の手立て
の考え方
1.障害のある幼児などの困難さに応じつつ全体的な発達を
促す支援の在り方
これまで、園では「気になる幼児」という表現で、例えば「落ち着いて話が聞きに
くい」、「待つことが難しい」、「じっと座っていることが難しい」、「言葉でのやり取り
に課題がある」、「行動が遅れがち」、「他の幼児に関心をもちにくい」、「集団参加が難
しい」等の姿に注目してきました。気になる姿が、何かしらの障害によるものなのか、
発達途上の様子なのか、はたまた環境が影響しているのか、幼児の発達を考える上で
先生は悩むこともあるでしょう。
この章においては、「生きづらさ」を感じ「困っている」幼児の状況を丁寧に見つめ
把握するための視点を提供し、日々の保育において必要な支援を行うヒントが得られ
ることを目指します。日々の保育の中で、幼児の姿から「もしかすると、何らかの障
害が関係しているかもしれない」と感じることがあるかもしれません。このとき、障
害の有無を判断することは大切ではありません。しかし、障害に起因してどのような
困難さが生じるのかを知っておくことは、当該幼児の困難さを捉え、支援策を検討し
ていく上で有効です。また、早期に障害が発見され必要な支援が開始されることは、
当該幼児の健やかな成長などにつながります。関係機関と情報を共有し連携を深めて
いくためにも基本的な障害の理解は有益であると考えられます。
(1) 入園における配慮
障害の診断を受けている幼児の入園に当たって大切なことは、情報収集と関係機関
や保護者との連携です。診断を受けている場合は、既に関係機関を利用していること
があります。関係機関としては、児童発達支援センターなどのいわゆる療育機関や特
別支援学校などが考えられます。視覚障害や聴覚障害などの感覚系の障害、肢体不自
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(47ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 47ページ由、病弱等については、医療とのつながりが深いと考えられます。これらの機関では
既に、個別の支援計画が作成されている場合が多く、保護者の承諾の下、生育歴、受
診歴、療育の利用状況、願い、実態、それに基づく目標などの情報を得るとともに、
保護者の聞き取り、関係機関との引き継ぎを行うことが求められます。障害のある幼
児などに配慮した環境の工夫など、できる限り入園前に準備しておく必要があります。
幼児が障害の診断を受けていないが、入園前の面談で保護者から悩みが語られたり、
行動観察において気になる様子が見られたりする場合もあります。保護者が我が子の
育ちに何らかの不安を抱えていることを受け止め、寄り添っていくことが求められま
す。
(2) 障害のある幼児などの困っている姿を捉える視点
障害のある幼児などの抱える様々な困難さに気付き、必要な支援につなげるために
は、日々の保育の中での気付きが重要です。しかし、当該幼児に現れた一つの姿を何
かの障害に結び付けることには慎重でなければなりません。その姿は一過性のもので
あるか、何かをきっかけに見られるものであるか、物的・人的環境によって異なるの
か、背景や環境要因も併せて検討することが大切です。
ここでは、障害のある幼児などの困っている姿から、当該幼児の抱える困難さの原
因としてどのようなことが考えられるのかについて述べます。ここで大切なことは、
幼児の障害の可能性について検討したり、表層的な困難さにばかり目を向けたりしな
いことです。当該幼児の「見えにくい」、「聞こえにくい」といった表層に現れている
困難さではなく、一歩踏み込んで具体的に困難さを捉えることにより有効な支援を考
えることができます。障害の状態等により感じやすい困難さを知ることは、当該幼児
の困難さを推測し、具体的に捉えていく際のヒントとなります。障害のある幼児など
の困難さに決まった形はないことに十分に注意し、これから述べる困難さや具体的な
支援を参考に、目の前の幼児の姿に沿って園内で検討しましょう。
■困っている姿を捉えるときの留意点
〇困難な場面は頻繁に見られるか
〇「個性」「個人差」の範囲内であるか
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(48ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 48ページ〇発達途上の姿と捉えられるか
〇生理的、心理的状況と関連しているか
〇どのような場面で見られ、どのような場面で見られないか
〇どのような関わりによって、困難さが軽減されるか
〇どのような環境を構成することで、困難さが軽減されるか
いずれの場合も、先生同士で情報共有し、意見交換をしながら、客観性をもって当
該幼児の姿を捉えていくことが求められます。
■見ることに困難さが生じている姿から考えられること
次のような姿が見られた場合、どのような障害を考えたらよいでしょう。
・光をまぶしがる
・見ようとする物と視線が合わない
・人と視線が合いにくい
・注目することが難しい
・人や物とぶつかる
・探し物が苦手
まず、視覚障害が考えられることでしょう。しかし、対人関係に難しさのある自閉
症なども、視線が合わない、合いにくいといった姿が見られます。また、注目するこ
とが難しいことについても、同様に、自閉症などや注意の持続に困難さのある注意欠
陥多動性障害も考えられます。また、自閉症などには、感覚的な過敏性があり視覚刺
激に困難さを感じる場合もよく見られます。
■聞くことに困難さが生じている姿から考えられること
・呼び掛けても振り向かない
・いつもきょろきょろしている
・説明を聞いて行動することが難しい
・音に対する反応が他の幼児と異なる
このような姿が見られるときはどうでしょう。呼び掛けても振り向かない姿からは、
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(49ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 49ページまず聴覚障害を考えることと思います。しかし、人からの働き掛けに関心をもたない
自閉症などの場合も同様の様子が見られます。一方、「いつもきょろきょろしている」
姿から注意の集中が難しい注意欠陥多動性障害の可能性も考えられますが、聴覚障害
があり、常に周囲を見回して視覚からの情報を収集している場合もあります。説明を
聞いて行動するのが難しい場合には、言葉の理解に困難さがある知的障害や自閉症な
どが想定されますが、もしかすると視覚や聴覚に障害があり、説明された場面がよく
見えていない、説明がはっきり聞こえていないのかもしれません。なお、特定の音に
過敏に反応する場合には、自閉症などが考えられます。
■動くことに困難さが生じている姿から考えられること
・手先を使った細かな作業が苦手
・階段の上り下りが苦手
・動きがぎこちない
・よく転ぶ
・まっすぐ立てない
粗大運動や微細運動、模倣など、身体の動きについては、その姿が何に関連して生
じているかを丁寧に観察する必要があります。例えば、手先を使った細かな作業が苦
手な場合は、よく見えていないからなのか、仕組みが分からないからなのか、指先が
うまく動かないからなのか、見極めなければなりません。見る力が関係しているよう
であれば視覚障害、手順や仕組みの理解に困難さがあれば知的障害、身体の動きに関
係しているのであれば肢体不自由が考えられます。動きのぎこちなさについては、肢
体不自由のみならず知的障害が関連している場合が多くあります。よく転ぶ姿から肢
体不自由や病弱が発見された例もあります。注意欠陥多動性障害の場合も、不注意や
多動からよく転ぶことがあります。
■話すことに困難さが生じている姿から考えられること
・発語が見られない
・発語が不明瞭
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(50ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 50ページ・会話が成り立たない
・聞こえたまま同じ言葉を繰り返して応える
発語の有無は発達の遅れを捉える手掛かりともなります。入園時に発語が見られな
い場合には、すでに健診を経て必要な支援が開始されている場合があります。発語の
代わりにどのような方法でコミュニケーションを取ろうとしているかが、具体的な困
難さを捉えるヒントになります。伝えたいという意欲が育っていない場合や人への意
識が未熟な場合には知的障害や自閉症などが関係しているでしょう。発語が不明瞭な
場合には、聴覚障害、知的障害、言語障害が考えられます。会話が成り立たない場合
には、聴覚障害、知的障害、自閉症などが考えられます。また、伝えたいという意欲
が育っていない場合や人への意識が関係する場合には、知的障害、自閉症などが関連
することが考えられます。
■人やものへの関わりに困難さが生じている姿から考えられること
・遊びに広がりが見られない
・友達との関わりが見られない
・初めてのもの、ことに抵抗がある
・特定のもの、ことへのこだわりが強い
・人見知りが激しい
上記のような遊びの様子は、どの障害種にも関係することであり、見え方、聞こえ
方に困難さはないか、身体の動きの発達状況も含め、多面的に捉えていくことが大切
です。また、生育環境や生育歴と関連して、単に経験不足から生じている姿かもしれ
ません。環境の構成や働き掛けによって変化があるかどうかも見ていきましょう。周
囲の環境把握が十分でなく、遊びに広がりが見られない場合には、その原因が見え方
にあるのか、理解の状況によるのか、関わりの中で探っていく必要があります。特定
のものにこだわり、没頭して遊ぶ姿は幼児期にはよく見られることです。他の幼児や
先生からの働き掛けに対し、どのような反応が見られるか、切り替えの様子やその頻
度などが当該幼児の困難さを具体的に考える契機になるでしょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(51ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 51ページ(3) 幼児期からの早期支援の意義
幼児期はこれから発達していく時期であり、発達の遅れなのか障害に起因するのか
判断し難いことが多くあります。しかし、幼児に障害があるか否かは重要ではありま
せん。今、当該幼児が困難さを感じているということが重要です。例えば、幼児期で
は、発話しようとする内容を幼児自らが考え、それを文にし、構音器官を使って発話
するという一連の作業が複雑になることから一時的に発話が非流暢(吃
きつ
音)になるこ
ともあります。このような場合には、治療や支援なしに非流暢な発話が消失(自然治
癒)することがあります。幼児の発音が吃
きつ
音のような状態になったときには、それが
障害によるものか否か、将来にわたって継続するのか否かを判断することは困難です。
だからこそ、吃
きつ
音が生じた幼児に対する配慮が大切です。幼児が安心して自分のペー
スで話せるように配慮し、恥ずかしがったり他の幼児にからかわれるから話したくな
いという気持ちをもったりすることのないよう、先生は、幼児自身だけでなく、他の
幼児にも適切に働き掛けていく必要があります。目の前の幼児の困難さに応じた早期
からの支援を行うことにより、幼児は安心して園での生活を送ることができます。
(4) 幼児期の発達の特性と障害のある幼児などが抱える困難さ
幼児の心身の諸側面は相互に関連し合うことにより、発達が成し遂げられていきま
す。したがって、例えば、肢体不自由の幼児は体を動かすことだけに配慮すればよい
のではありません。遊びに消極的になり主体的に活動しようとする気持ちが育たなか
ったり、他の幼児と関わる体験が不足したりするかもしれません。また、聴覚に障害
のある幼児は、聞こえにくいことで、言語を獲得しにくかったり、他の幼児と伝え合
う体験が不足したり、他の幼児の発言に刺激を受けたり共感したりする体験が不足し
たりするかもしれません。先生は、当該幼児が発達に必要な体験をすることができる
ように、障害のある幼児などに声を掛けたり、障害のある幼児なども取り入れやすい
遊びや生活の工夫をしたり、他の幼児に対して障害のある幼児などとの関わり方のモ
デルとなったりすることが大切です。
さらに、園では集団を通した教育を行っており、他の幼児等との関わりの中で、幼
児は様々なことを学びます。しかし、障害のある幼児などは、コミュニケーションが
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(52ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 52ページとりにくかったり、人と関わる体験が不足していたりして、他の幼児と関わることに
消極的になることもあります。障害のある幼児などが自然に遊びに入っていけるよう
に、その幼児の興味や関心のある動植物や物をきっかけに活動が展開するような工夫
をしたり、その幼児が得意なことを取り上げたりすることが考えられます。
このように、先生の必要な支援の下で、障害のある幼児などが園での遊びや生活を
楽しみ、他の幼児との関わりを広げていけるようにすることが大切です。他の幼児と
の関わりを深め、遊びを展開していく際に大切なことがあります。それは、障害のあ
る幼児などの困難さに応じた支援を、他の幼児との関わりや集団の生活の中で自然に
取り入れていくことです。しかし、その支援によって、他の幼児が遊びを楽しめなく
なることは避ける必要があります。年齢が高くなるにつれて、ちょっと難しく感じる
ことへチャレンジしたり、少し複雑なルールの遊びを楽しんだりしたい幼児もいるこ
とでしょう。そうした幼児の思いも受け止めながら、障害のある幼児なども他の幼児
も楽しめるような遊びの工夫が大切です。
これから、障害種別に、障害のある幼児などが抱えると考えられる困難さとそれに
応じた支援について述べます。これは、先生が、障害のある幼児などを支援する際の
配慮の視点にとどまらず、障害のある幼児などを含め、幼児同士の遊びを充実してい
く際の配慮の視点でもあります。クラスの一員として他の幼児と共に、遊びや生活を
楽しめるようにすることが大切です。各障害種の最後にコラムを設けています。集団
での生活を営む園における配慮の事例を掲載しています。障害のある幼児などの実態
は多様であることや、実際には重複障害のある幼児などもいることなどを踏まえ、日々
の保育の参考としてください。
なお、幼児は成長していくと先生や他の幼児に迷惑をかけたくないと思うことがあ
ります。しかし、障害のある幼児などと他の幼児が遊びを共に楽しみ、一緒に生活を
していくためには、障害のある幼児などが、集団の中で必要な支援をどのように求め
ればよいか、その方法を知ることも大切です。言葉で伝える方法の他、障害のある幼
児などの実態によっては、援助を求めるカードや合図等を使って伝える方法もありま
す。自分の意思を適切に伝えられることは、障害のある幼児などが集団の中で過ごし
ていくために大切なことであり、先生が意識しながら指導していく必要があります。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(53ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 53ページ(5) 障害のある幼児などが自身の特性への理解を深めながら自尊
感情を育むこと
人は、成長とともに自らの特性を理解し、園や学校、社会で生活しやすくなる環境
の工夫、周囲の理解、自己の気持ちのコントロールの仕方などを学んでいく必要があ
ります。幼児は、経験が乏しいことから、自分ができることとできないこと、環境や
人との関わり方を工夫すればできるようになることが理解できていないことが考えら
れます。肢体不自由のある幼児が、他の幼児と同じように平均台で遊ぶことは危険を
伴うかもしれません。病弱・身体虚弱のある幼児などが他の幼児と同じように鬼ごっ
こをして遊ぶことは翌日の体調不良につながるかもしれません。安全に園で過ごし、
遊びや生活を通して発達に必要な体験を得ていくためには、障害のある幼児など自身
が自らの特性を理解していくことも必要です。ただし、自己を理解する過程において、
自尊感情、自己肯定感、自己有用感等が低下することがあってはなりません。
自尊感情の低下などの二次障害は、障害に起因した失敗経験や、自分の力でやり遂
げることができないと感じる体験を積み重ねることで生じます。障害のある幼児など
の努力の過程や頑張っているところ、できたことを適切にほめ、認めることで自尊感
情を高め、積極性や頑張る力を引き出すようにしましょう。また、集団の中で、でき
る役割や係を担当させるなど、集団活動の中での成功経験を積み上げ、自信へつなげ
る工夫も大切です。本人のわがままや家庭のしつけの問題にせず、十分な教育的配慮
を早期にスタートし、先生や他の幼児から認められる経験を積み重ねて、二次障害を
防ぐことは、障害のある幼児などの健やかな成長にとってとても重要です。そのため
にも、障害のある幼児などの困難さを丁寧に読み取り、障害の有無の確定にはこだわ
らず、必要に応じて、専門機関と連携して障害のある幼児などの実態に応じた支援を
考えましょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(54ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 54ページ2.視覚障害に関する基本的な理解と支援の手立て
(1) 視覚障害の概要
視覚障害のある幼児は、視力の低下、全体的に見える範囲が狭い、部分的に見えな
い、特定の色の識別ができない、明るい(又は暗い)所で見えにくいといったことの
いずれか又は複数の困難さを抱えています。視覚情報の不足に伴い、例えば、絵をか
くことや製作等における手先の不器用さ、動作の模倣や事物の確認の困難さ等を感じ
ることがあります。また、つまずきやすかったりよくぶつかったりするなど、特に慣
れない場所での移動の困難さ、相手の表情が分からないことからのコミュニケーショ
ンの困難さ等も感じることがあります。
(2) 視覚障害のある幼児などに見られる行動等の特徴
視覚に障害があっても普通に動いたり、おしゃべりしたりできる幼児も多いため、
視覚障害があることを忘れてしまうことが、ときとしてあります。本人も、自分の見
え方について周りと比較できず、見えにくいとは知らないため、自分から見えにくさ
を訴えることはほとんどありません。
以下は、視覚障害児や未診断であるが実は見えにくさを抱えている幼児によく見ら
れる行動的特徴です。見えにくさの原因や状態によって行動的特徴は異なりますが、
共通していることは、見えないことや見えにくいことが、情報として入らない障害や
入りにくい障害となって行動に現れることです。
【視覚障害の原因・状態】
・視力が低いことによる見えにくさ(眼振、斜視、遠視・近視等の屈折異常等)
・視野が狭い、視野が部分的に欠けていて見えにくい箇所がある(同名半盲や緑内
障等による視野異常、視野狭窄
さく
、視野欠損等)
・特定の色の識別ができない(色覚異常等)
・明るさ、暗さによって見え方に影響がある(無虹彩、緑内障、白内障等による 羞
しゅう
明、明順応障害・暗順応障害等)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(55ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 55ページ・両方の目を同じように使っていない(斜視等による片眼視等)
【行動的特徴】
・離れた所を見るとき、目を細めたり、顔を傾けたりする(低視力・斜視・視野異
常)
・テレビや本に顔を近づけて見ることが多い(低視力)
・注意して見ようとするとき、眼球が揺れているように感じる(眼振)
・見ようとする物に、視線が合わない、または合いにくい(斜視・眼振)
・光が当たるととてもまぶしがる( 羞
しゅう
明、明順応障害)
・折り紙の角同士を合わせる、小さな積み木を積む、塗り絵を線からはみ出さず塗
る等の細かな作業が苦手ですぐに疲れてしまう(低視力)
・ダンスがなかなか覚えられないなど、運動はどちらかというと苦手である。特に
ボール遊び等ではボールの動きについていけない様子が見られたり、長縄の動
きに合わせて入っていけなかったりする(片眼視、眼球運動困難)
・階段の下りが苦手(片眼視)
・足元の色が変化する所、又は物の影が映っている所で立ち止まることがある(片
眼視)
・人や物とよくぶつかる(片眼視・視野欠損・眼球運動困難)
・人混みが苦手(片眼視・視野欠損・眼球運動困難)
・探し物や片付けが苦手(低視力・片眼視・視野欠損・眼球運動困難・色覚異常)
・テレビを見たり本を読んだりするとき、顔を傾けたり横目で見たりする(斜視)
・目が内側や外側に寄り両目が同じ方向を見ていないように感じる(斜視)
・見るより、聞く方が得意そうである(視覚障害全般)
・色をよく間違えることがある(色覚異常)
(3) 視覚障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て
幼児は、保護者や先生の行動を模倣してままごと遊びに取り入れたり、他の幼児な
どの様子を見て模倣してはさみの使い方を学んだり、年上の幼児が遊ぶ様子を見て自
分の遊びも工夫したりします。また、ジャングルジムを秘密基地に見立てて、「上の部
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(56ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 56ページ屋、下の部屋」などとイメージをもって使うのも、ジャングルジムの大きさや形全体
が見えているからです。滑り台で着地できるのも、周囲の風景が見え、着地地点との
距離感がつかめているからです。
しかし、視覚障害のある幼児などは、視覚情報が入りにくいため、興味や関心が広
がりにくかったり、物の使い方やチョウチョの飛ぶ様子やタンポポの花や葉の形など
の自然の美しさや仕組みに気付きにくかったりします。全盲ではなく見えるからとい
っても、弱視であれば自分から離れている保護者や先生の動きはよく見えないかもし
れませんし、小さな動植物の細部まではよく見えないかもしれません。視野欠損であ
れば、大きな遊具全体を見ることは難しいかもしれませんし、片眼視であれば距離感
がつかみにくいかもしれません。
障害のある幼児などが、遊びや生活の中でどのような困難さを感じ、そういった困
難さに応じてどのような支援の手立てがあるのかを考え、当該幼児の実態に応じた支
援をしていくことが大切です。視覚障害のある幼児などの困難さや困難さに応じた支
援の手立てとして以下が考えられます。
①視覚障害のある幼児などの抱える困難さ
・障害のある幼児などの周囲の状況を認識する上で触覚や聴覚よりも有効な視覚に障
害があるため、周囲の状況を知ることが困難である。そのために、活動が活発に行
えず、動作が緩慢になる
・特に歩行などの行動に制約が生じる
・新しい場面や新しい活動等への適応が遅く、行動を起こすことに恐れや不安が伴う
ため、用心深く、消極的になりがちである
・言葉を聞いても、その言葉が表している実際の事柄や物の様子を知ることが困難で
あり、知識が偏ることがある
・目で見て模倣することが難しいので、新しい行動様式を身に付けることが困難であ
る。また、例えば、着替えを介助してもらったり、絵をかいていても途中で帰る時
間になったりするなど、初めから終わりまで全体を通して体験できず、結果、経験
不足になることもある
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(57ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 57ページ②困難さに応じた支援の手立て
・全体像をイメージできるように配慮する
言葉での説明は幼児には伝わりにくいことから、具体的な体験を通して幼児自身
が理解できるようにすることが大切です。最初は、動作や活動に時間がかかります
が、ここで時間をかけて自分なりにやってみることで、当該幼児はイメージがもて
るようになります。イメージがもてれば、動作や活動の時間は短くなっていきます。
・見やすい環境を工夫し、当該幼児が有する視機能を活用させる
近くで見せる、見せたい物と背景のコントラスト(材質のコントラスト含む)を
考えた提示、対象物の大きさや色の濃さ、太さ等への配慮等、当該幼児の見えにく
さの原因を踏まえた配慮が大切です。例えば、イラストや文字は単純に大きくかけ
ばよいのではありません。視野の狭い幼児にとっては、大きく描かれたイラストは
逆に全体像が把握しにくい場合もあります。また、イラストの大きさは同じでも、
描いている線が太ければ認識できる場合もあります。
・環境の変化に対する不安をやわらげる
視覚に障害のある幼児などは、環境を認知するのに、視覚とともに聴覚を多く用
います。環境の全体が把握できないと、自分の置かれている立場が分からず、情緒
が不安定になってきます。また、大きな音、急激に起こってくるざわめき、騒音な
どがあると、環境の認知に混乱が生じてきて不安定になる場合もあります。しかし、
環境の変化を阻止することはできません。そこで、変化の状況や行事の流れなどを
説明して、環境への適応を助けることが大切です。
また、例えば、視野が狭い幼児は、自分と同じ大きさのクマのぬいぐるみ全体を
見ることはできず、クマの腹部、手、顔などの各部分を見て、見た物を頭の中で統
合してクマのぬいぐるみの全体像を捉えます。このような部分情報からの入力のみ
で全体像を構成していく情報処理過程では、当該幼児の思考を妨げるような余計な
声掛けや介助は避ける必要があります。
・音等の活用を工夫する
聴覚や触覚の情報を活用することで、視覚情報の不足を補うことも考えられます。
例えば、ボール遊びのボールに鈴を入れて、ボールの所在を分かりやすくしたり、
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(58ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 58ページ造形物のように触って確かめられる物については、ざらざらした箇所と滑らかな箇
所に分けたりなどの工夫が考えられます。
・目と手の活用を促す
視覚を活用できる幼児に対しては、保有する視覚を活用して物を見る楽しさを味
わい、積極的に見ようとする態度を育てます。また、生活の中で、手先の操作を伴
う遊具や用具の使用などを通して目と手の協応動作を高めるとともに、豊かな視覚
的経験を積むようにします。
・体全体を使って遊ぶ
行動全体が消極的になり、体全体を使った遊びをすることも少なく、体の使い方
にも慣れていない傾向があります。少しずつ、体全体を使っての遊びや運動に積極
的に参加させ、経験を積み上げるようにしていくことが大切です。
その際、不安や恐怖感を軽減するため、環境がどうなっているか、遊びの方法、
遊具の使い方、相手の人などについて、必要に応じて予めよく知らせておきます。
また、激しい運動の場合は、衝突などの防止に万全を期し、他の幼児にも、視覚に
障害のある幼児などの活動に十分配慮するよう注意を促します。
・遊具や道具の扱いに慣れるようにする
いろいろな遊びの中で多様な遊具を使うことに慣れていない場合が多いので、無
理のない範囲で経験を積み重ねて、徐々に各種の遊具や道具を使えるようにします。
また、自分で片付ける作業を通して、物の置き場所の位置の認知や、物の種類の数
量の感覚なども身に付けられるようにします。
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する
先生の必要な支援の下で、視覚障害のある幼児などが園での遊びや生活を楽しみ、
他の幼児との関わりを広げていけるようにすることが大切です。他の幼児との関わり
を深め、遊びを展開していく際に大切なことがあります。それは、視覚障害のある幼
児などの困難さに応じた支援を、他の幼児との関わりや集団の生活の中で自然に取り
入れていくことです。しかし、その支援によって、他の幼児が遊びを楽しめなくなる
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(59ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 59ページことは避ける必要があります。視覚障害のある幼児などが、クラスの一員として他の
幼児と共に遊びや生活を楽しめるようにすることが大切です。
コラム すごろく遊びを通して(5歳児)
~見やすい教材の工夫や聴覚情報等を活用して遊びを楽しむ~
支援のポイント
視覚情報が得にくい幼児が他の幼児と情報を共有し遊びを楽しむためには、聴覚
や触覚情報を上手く活用し、物の名前を伝えるときにはその物を触ったり特徴を言
葉で伝えるなどしてイメージをもちやすくしたりする必要があります。
他の幼児との関わりにおける先生の思い
他の幼児と視覚情報を共有することが困難なため、遊びの中に聴覚情報等を取り
入れ、幼児同士が主体的に遊んでほしい。これまでに、先生がA児に関わる様子を
見たり、先生が仲立ちをして聴覚情報等を取り入れて遊んできた経験を生かして、
幼児同士で解決できるように、見守ったり助言をしたりしていこう。
すごろく遊びの様子
A児には弱視があります。先生は、クラスの幼児たちがすごろく遊びを楽しんで
ほしいと思い、いろいろな種類のすごろくを用意しました。しかし、A児には、既
製のすごろくは絵や文字が小さく、またカラフルなこともあり、はっきりと絵や文
字が見えません。そこで、A児も一緒に楽しめるように、手作りのすごろくを幼児
たちと一緒に考えて作ることにしました。
テーブルを囲んでA児と他の幼児が座りました。先生は少し厚めの画用紙と極太
のマーカーペンを用意し、「先生が、線を書くね」と進むマスの線をマーカーで書
き始めました。幼児たちは、「わぁ、ふと~い!」「このペン、太すぎる」と、興味
津々にペン先をじっと見つめながら、先生が書く様子を見ていました。何マスか書
くと、「ねぇ、ここに止まったら、三つ進めることにしようよ」と幼児が言い始めま
した。「いいね、ここは四つとかにしようよ」、「でもさ、進んでばかりじゃ、つまん
ないよ。ねこの鳴きまねをする、ニャーニャーって」、「え、それは簡単すぎるよ」
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(60ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 60ページなど、幼児同士が次から次へとマスに書くことを考え始めました。先生は線を書き
ながら、「簡単なのも少し難しいのも、いろいろあると面白そうだよね」とつぶや
くと、A児が「じゃあさ…」と近くに置いてあったフラフープを見て、「フラフープ
を回すのはどう?」と言いました。「あ、いいね!」「できる! できる!」「ねぇ、
ボールを 10 回キャッチする!」「そんなの簡単!」など、他の幼児と共にアイデア
を出し合っています。
先生は、A児がよく見えるように、マスの中に、簡単なねこの絵をかいたり、「3
つ すすむ」と太い文字で書いたり、フラフープ回しやボールキャッチでは、その
遊具の絵をかいたりして、そのマスに止まったら何をしたらよいのかが見て分かる
ようにしました。
また、サイコロも、手作りにして、出た目が分かるように太く大きくかきました。
その後、すごろくができあがると、早速、A児は友達と一緒になって遊び始めま
した。A児がサイコロを振ると、自分が考えた「フラフープを回す」のマスに止ま
りました。A児は、フラフープの絵を見て「あ、ここ、僕が考えた所だ」と嬉しそ
うにして、フラフープを手に取り、「もう、やっていい? いくよ」と声を掛けまし
た。周りの幼児は「ここだとぶつかりそうだから、もう少し、そっちに行った方が
いいよ」と手を取る姿も見られました。
他の幼児は、園でA児と遊びや生活を共にするうちに、A児には目で見ることが
難しいので、言葉掛けをするとよいことを理解しています。先生は、幼児同士で進
めている様子を見守ることにしました。
他の幼児と共に遊びや生活を楽しむことができるような支援を考える
視覚障害のある幼児などへは、聴覚、触覚、臭覚等の視覚以外の感覚を活用し、
保有している視覚を十分に活用できるようにする支援を考えていきます。
A児のように弱視の場合は、保有している視覚を活用できるように、線を太くし
たり、伝えたい情報をシンプルで分かりやすい絵や文字にしたりするなど、見やす
くなるように工夫することが大切です。
言葉による援助として、視覚に障害のある幼児などに分かりやすい言葉、イメー
ジが伝わるような言葉を使ったり、声の調子や話す速さなども工夫したりして、明
るい、暗い、楽しい、怖いなどのその場の状況や雰囲気を感じとることができるよ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(61ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 61ページうな言葉遣いなども日頃から意識することが大切です。単に「見えないのだから説
明してあげてね」では、言葉によるやり取りが未熟な幼児にとっては伝わりにくい
ものです。
言葉と併せて、聴覚を活用するため、空間や場所が分かるように集まる場所に音
が出る物を用意したり、触覚を活用するため、触れると心地よい物にたくさん触れ
たりするなど、その幼児なりに実感を伴って言葉と結び付けて理解できるような援
助により、継続的に楽しめるようにすることが考えられます。
視覚障害のある幼児などが「遊びたい」「やりたい」といった気持ちがもてるよ
うな体験を積み重ねることが重要です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(62ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 62ページ3.聴覚障害に関する基本的な理解と支援の手立て
(1) 聴覚障害の概要
聴覚障害のある幼児などは、音や声が聞こえない、あるいは聞こえにくいという困
難さを抱えています。聞くことが難しいという意味で、難聴ともいいます。聞こえに
くいため、他の幼児とのコミュニケーションが上手くとれなかったり、先生の指示が
分からなかったりします。また、幼児は、保護者や先生、他の幼児とのやり取りなど
を通じて言語を獲得していきますが、難聴により聞こえにくいと、言語が獲得しにく
いといった課題もあります。
(2) 聴覚障害のある幼児などに見られる行動等の特徴
障害の状況により、補聴器で音を大きくすることで聞こえやすくなる場合と、音が
ゆがんで聞こえるためにそれが何の音なのかをはっきりと聞き分けることが難しい場
合があります。
また、両方の耳に難聴がある場合と、片方が正常で片方の耳に難聴がある場合があ
ります。片方の耳のみ難聴がある場合、正常な耳から聞こえる音を頼りに生活してい
ます。しかし、幼児期は、聞こえる方の耳を使えるような工夫(話し手に聞こえる方
の耳を向ける等)にまだ慣れていないので、聞こえたり聞こえなかったりします。な
お、片耳が正常であることから、発音はおおむね自然でも、聞こえてきた音の方向性
が分からないなど、聞こえ方には不自由さがあります。
具体的には、難聴の程度によって次のような特徴が見られます。なお、幼児期は、
言語を使った表現は未熟であったり、夢中になると周囲の音や声に関心を示さなくな
ったりする時期であることに十分に留意する必要があります。
軽度難聴 ・一対一の会話は支障がない
・集団の中では、周囲の騒音に妨害されて聞き取れないことがあり、
聞き返しが多くなる
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(63ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 63ページ・言語の力が伸びにくかったり、先生の指示が聞こえなかったり、他
の幼児といざこざが生じる場合がある
中等度難聴 ・静かな環境であれば、通常の話し声を聞き取ることができるので、
家庭内での生活上の支障は見逃されやすい
・言語の発達の遅れや、「らくだ」が「らくら」になるなど、発音の
未熟さやひずみなどが見られる
・コミュニケーションへの影響が大きくなり、他の幼児との関わりに
支障が生じる場合がある
高度難聴 ・適切な調整を行った補聴器を装用すれば、音声(話し言葉)で、会
話を聞き取ることができる場合もある
・言語の発達の遅れ、発音の不明瞭さなどが見られる
・周囲から疎外感を感じたり、自尊心が傷ついたりする場面が出てく
る
重度難聴 ・適切な調整を行った補聴器を使用すれば、言葉のアクセント、抑揚、
リズム等や母音は聞き取ることができる場合もある
・コミュニケーションを行うための重要な手段として、写真や絵カー
ドの提示、ジェスチャー、簡単な手話などの、視覚的な情報の活用
が有効となる
・自然に言語は育たないため、早期からの支援が必須である
片側だけの
難聴
(一側性難
聴)
・小声や離れたところの会話を聞くことが難しい
・通常の音や声の方向性を判断することが難しい
・周囲が騒がしかったり反響したりすると、会話を理解することが一
層困難となることもある
(3) 聴覚障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て
幼児が話を聞くときは、始めは静かに聞いたり、話の内容の全てに注意を向けて聞
いたりしているとは限りません。他の幼児の話を聞かないでいざこざが生じることも
あります。しかし、話を聞くことに関わる様々な体験を積み重ねる中で、親しみを感
じている先生や他の幼児の話に興味や関心をもち、自分から聞くようになり、安心し
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(64ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 64ページて自分の思いや意思を積極的に言語などで表現しようとします。
しかし、聴覚に障害のある幼児などは前述のような経験が不足したり、他の幼児と
のコミュニケーションが上手くとれなかったり、情報(音声言語)が入りにくいため
に他の幼児と感動や達成感を共有しにくかったり、自らの興味や関心、感動を思わず
言語で表現することができなかったりすることがあります。
聴覚障害のある幼児などが、遊びや生活の中でどのような困難さを感じ、そういっ
た困難さに応じてどのような支援の手立てがあるのかを考え、当該幼児の実態に応じ
た支援をしていくことが大切です。聴覚障害のある幼児などの困難さや困難さに応じ
た支援の手立てとして以下が考えられます。
①聴覚障害のある幼児などの抱える困難さ
困難さ 行動等の特徴
聞こえにくい ◯日常の場面で、苦手なこと
・後ろや横から話しかけられること
・よく似た言葉を聞き分けること
・二人以上の声を聞き分けること
・何かをしながら、同時に聞くこと
・子音(特に「さしすせそ」)を、聞くこと、話すこと
・合唱や合奏をすること
◯大事なことを聞きもらしたり、聞き間違えたりすることが多い
・園生活での身の回りの始末等の習慣を身に付け、行動できている
ことを、「聞こえているようだ」「やり取りはできている」と判
断されてしまう
・目から情報を得ようとする様子が、落ち着きがない、集中力に欠
ける行動ととられ、別の障害と間違われることもある
◯危険に気付きにくい
・園外保育時や登降園時に車のクラクションや自転車のベルなども
よく聞こえない
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(65ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 65ページ分かりにくい ・会話を理解するために一生懸命聞き取ろうとするが、十分聞き取
ることは難しい
・聞き取ることができなかったところを、推察する作業を行ってい
る
・早口や複数の人との会話、話題が予想できない場面などでは、理
解が難しくなったり、あきらめたりすることもある
つながりにく
い
・情報の不足から、周囲の状況を把握しにくかったり、相手の話が
分からずに誤解したりすることも多い
・対人関係を築く経験の不足もあり、結果として社会性が育ちにく
い傾向が見られる
・極端に指示待ちだったり、逆に、自己中心的な行動を取る子と思
われたりする傾向が見られる
・友達の会話に入りにくい、分からないことを尋ねにくい、集団の
中で取り残されると感じる場面がある
②困難さに応じた支援の手立て
支援内容 支援の手立てと留意事項
○聞こえにくさを補う
○音声(話し言葉)による情報が
受け取りにくいことを理解し、
場面に応じて、取り組む内容を
変更したり、調整したりする
○聞こえにくさを補うための、視
覚的な情報の提供
○聞きにくさを改善するための、
聴覚的な情報・環境の提供
○言語経験が少ないことによる、
体験と言葉の結びつきの弱さ
を補うための指導
・補聴器等の活用(関係機関と連携し、先生が
補聴器や人工内耳への理解を深めるととも
に、他の幼児へ「大切なもの」であることの説
明)
・視覚的な情報(目で見て分かるもの)で提示
・身振り等の使用
*絵カードや写真カードを作成するなどし
て、園と家庭とが、身に付けさせたい言語
について共通理解を図る
*他の園児も身振り等でコミュニケーション
を図ることができるよう、自然に働き掛け
る
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(66ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 66ページ○情報が入らないことによる孤
立感を感じさせないようなク
ラスの雰囲気づくり
*補聴器等の使用において、日頃の観察が重
要。不快感や故障などを当該幼児が説明す
ることが難しいこともあるため、変化が見
られたときは保護者へ報告する
・座席の位置、話者の音量調整
*目線は当該幼児と同じ高さが望ましい
*周りの音になるべく邪魔されず、聞きやす
くするため、当該幼児と向き合って話す
(後ろから話し掛ける、後ろ向きで話すこ
とは避ける)
*話者は、話者の口や表情等が見えやすいよ
うに逆光でない位置になるようにする
*話はできるだけ分かりやすく、複雑になら
ないようにする。正面から、口を大きめに
開けて、ゆっくり話す。伝わったかどうか
を確認することも大切。ただし、分かっ
た? と尋ねると分かったと答える傾向
があるので、何が分かったかの質問を工夫
することが望ましい
*話し手に注目し続けることは、非常に疲れ
ることや、注目したとしても全ての情報を
正しく得ることは難しいことを理解して支
援に当たる
・机、椅子の脚のノイズ軽減対策(椅子の脚の
先端にテニスボールを付けて、表面のフワフ
ワした繊維で床との摩擦を減らす等)
・必要に応じて、ワイヤレス補聴システム等の
使用
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(67ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 67ページ*言葉で説明されても分からないことも、一
緒に遊びながら目で見て覚えることができ
る
*自分で経験したことを思い浮かべながら、
相手に分かるように、言葉で説明する、質
問されたことに答えるなどのやり取りを積
み重ねる
*日常生活の中で行う、「かむ・飲み込む・な
める・吸う・吹く」などが、発音に必要な機
能の向上に役立つことを理解し、できる範
囲で働き掛ける
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する
先生の必要な支援の下で、聴覚障害のある幼児などが園での遊びや生活を楽しみ、
他の幼児との関わりを広げていけるようにすることが大切です。他の幼児との関わり
を深め、遊びを展開していく際に大切なことがあります。それは、聴覚障害のある幼
児などの困難さに応じた支援を、他の幼児との関わりや集団の生活の中で自然に取り
入れていくことです。しかし、その支援によって、他の幼児が遊びを楽しめなくなる
ことは避ける必要があります。聴覚障害のある幼児などが、クラスの一員として他の
幼児と共に遊びや生活を楽しめるようにすることが大切です。
コラム ケーキ屋さんごっこを通して(4歳児)
~言葉に身振り手振りを交えて思いを伝え合う~
支援のポイント
音声情報が得にくい幼児が他の幼児と情報を共有し遊びを楽しむためには、視覚
情報を上手く活用したり、ゆっくり大きな声で話したりする必要があります。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(68ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 68ページ他の幼児との関わりにおける先生の思い
幼児は、ごっこ遊びなどでは言葉でやり取りしています。難聴で他の幼児の言葉
が分からないと、遊びを楽しむことができません。他の幼児も遊びに夢中になって
いるときに、難聴の幼児に分かるように話すことを何度も意識させるあまり、遊び
が中断し楽しくなくなることは避けたいです。そこで、視覚情報を取り入れて、お
店屋さんごっこをしている幼児皆が遊びを楽しむことができるようにしていきた
いです。
ケーキ屋さんごっこの様子
B児は難聴で、他の幼児の声を聞き取ることが難しい幼児です。周囲が騒がしい
とその傾向がより強くなります。最近、B児は、お母さんと一緒に商店街に買い物
に行って、興味をもったようで、園でも買い物ごっこをしています。他の幼児も一
緒に加わって遊んでいましたが、B児が他の幼児の発言を聞き取りにくそうにして
いて、遊びを楽しむことができていないようです。すぐ近くで電車ごっこをしてい
る幼児たちがいて、B児にとっては少しうるさいのかもしれません。また、他の幼
児が、早口だったり、言葉だけで伝えたりしているので、B児には分かりにくいの
かもしれません。
翌日、昨日の続きで買い物ごっこをやろうと言っているB児と他の幼児たち。買
い物ごっこに使う用具を出し始めたので、先生は、近くで他の幼児が大声で遊んで
いない広い場所の方がよいと考え、その場所を指差して、「あっちが広くていいん
じゃない」と声を掛けました。そして、先生も幼児たちと一緒に移動しました。B
児はケーキ屋さんの店員です。お店の棚に見立てた机には、イチゴのケーキ、チョ
コのケーキ、プリンケーキと、いろいろなケーキの絵が並んでいます。他の幼児が、
「イチゴのをください」と言っていますが、B児は分かりません。先生が、他の幼
児に、「ほしいものを手に取って大きな声でBちゃんに渡したらいいんじゃない」
と声を掛けました。他の幼児がそのとおりにしたところ、B児は、「〇○円です」と
言いました。他の幼児も次々に欲しいケーキを言いました。次々と言われてもB児
には聞き取れません。ある幼児が、「並んで順番に言うんだよ」と言うと、B児もた
くさんのケーキが売れて楽しそうです。楽しい雰囲気に後押しされて、普段は積極
的に会話に参加しないB児も、「いらっしゃい」「ありがとう」「チョコがおすすめ」
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(69ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 69ページなどと言って楽しんでいました。
他の幼児と共に遊びや生活を楽しむことができるような支援を考える
聴覚障害のある幼児などへは、音声が聞こえやすいことと視覚情報の活用が大切
です。そのため、周囲が静かであること、ゆっくりと大きな声で話すこと、身振り
手振りやイラストの活用などを心掛けます。そうした配慮が遊びの中で他の幼児に
取り入れられるように、先生はモデルとなったり、互いの思いをつなぐために声を
掛けたりします。
B児のように、難聴の幼児は、音声をはっきりと聞き取ることができません。人
口内耳を装着していても、私たちと同じように聞こえるとは限りません。そのため、
発話も苦手な場合があります。そうしたことから、相手との意思伝達が難しく、引
っ込み思案になる傾向があります。先生は、遊びを楽しみ、自ら他の幼児と関わっ
てほしいと思い、幼児同士の思いをつないでいきます。そして、B児も他の幼児も、
遊びの楽しさ、満足感や充足感を共有できるようにします。その際、「聞こえにく
いってどんなことか」、「頑張っても同じようにはできないこともある」ことにつ
いて、さりげなく理解を促すようにしていくとよいでしょう。また、身振り手振り
やイラストなどの視覚情報のみでの意思伝達ではなく、言葉でのやり取りも組み合
わせるようにしましょう。そうして、言葉を聞いたり話したりする機会を確保する
ことで、難聴児は言語を獲得し、普段の生活でも発話するようになっていきます。
困難さに応じた支援の下、そのときの難聴児のできる範囲で、難聴児の思いに寄り
添いながら積み重ねていくことが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(70ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 70ページ4.知的障害に関する基本的な理解と支援の手立て
(1) 知的障害の概要
知的障害とは、知的機能の発達に明らかな遅れと、適応行動の困難性を伴う状態
が、発達期に起こるものをいいます。ここで示されている適応行動の困難性とは、他
人との意思の交換、日常生活や社会生活、安全などについて、その年齢段階に標準的
に要求されるまでには至っていないことを表しています。例えば、言語面では、発音
が明瞭でなかったり、言葉と言葉をつないで話すことが難しかったりすること、運動
動作面では、走り方がぎこちなく、安定した姿勢が維持できないことや衣服のボタン
かけやはさみなどの道具の使用が難しいこと、情緒面では、失敗経験が積み重なり、
自信がもてず絶えず不安が多いことなどです。
(2) 知的障害のある幼児などに見られる行動等の特徴
障害の状況により、遊びや生活の中で以下のような姿が見受けられます。
・先生や他の幼児をまねたり、遊びの中での学びが他の遊びに生かされたりしにくい
(例えば、遊びの中で歩幅で長さを測る体験があっても、長さを測る別の場面で
歩幅を使おうとは思わない)
・登園時の身支度などの日々のルーティンであっても、比較的時間がかかることが多
い
・絵本などの読み聞かせでは、物語の内容が具体的にイメージできない、物語の予想
がたてられないなどにより、十分に楽しむことができない
・他の幼児が嫌がることを注意しても繰り返してしまう傾向がある(例えば、砂場で
泥水を他の幼児にかけることを注意しても、繰り返してしまう)
こうした姿は遊びや生活の場面の随所で見受けられます。知的障害のある幼児など
の実態を把握するためには、どのような場面でどのような当該幼児の姿に注意すれば
よいのかについて知っておくことも大切です。以下に、いくつかの例を示します。な
お、幼児期はこれから、言語を獲得したり、生活習慣を身に付けたり、他者と関わっ
たりしていくようになる時期であることに十分に留意する必要があります。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(71ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 71ページ・意思の交換や言語の活用の場面では、簡単な言葉の指示が分かるか、名前を呼ばれ
て振り向くか、「ねこ」「靴」「ボール」などを聞いてその絵や写真を指差すか、「ち
ょうだい」「やって」などの簡単な要求を言葉で表すか、「こんにちは」「さようなら」
など簡単な挨拶に応えられるか、日常会話や簡単な指示を理解しているか、文字や
数への興味や関心があるかなど
・身辺処理等を行う場面では、食事の可否、衣服の着脱の可否、排泄
せつ
の可否、簡単な
片付けの可否など
・先生や他の幼児等と関わる場面では、視線を合わせられるか、好む活動を選んだり
物を示したりすることができるか、自分から他人に働き掛けるか、簡単なきまりが
理解できるか、身近な危険の察知や回避ができるか、興味や関心が移りやすいか、
多動性があるか、固執性(こだわり)があるかなど
(3) 知的障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て
幼児は、生活の中で自分の興味や欲求に基づいた直接的・具体的な体験を通して、
物の性質や仕組み、自然の仕組み、人との関わり方などを学んでいきますが、興味や
関心、学びの内容や速度は個々の幼児によって異なります。
知的障害のある幼児などは、興味や関心が広がりにくかったり、同じことを何度も
繰り返しても身に付けにくかったり、体験から得たことが別の場面で活用されにくか
ったりすることがあります。
知的障害のある幼児などが、遊びや生活の中でどのような困難さを感じ、そういっ
た困難さに応じてどのような支援の手立てがあるのかを考え、当該幼児の実態に応じ
た支援をしていくことが大切です。知的障害のある幼児などの困難さや困難さに応じ
た支援の手立てとして以下が考えられます。
①知的障害のある幼児などの抱える困難さ
・コミュニケーションの基礎的能力が育まれにくい
音声言語の理解や表出に困難をもっていることも多く、相手の言葉やその意図が
理解できなかったりすることがあります。例えば、先生の指示が理解できず、集団
行動についていけず遅れてしまったり、さらには、十分に指示等を理解していなく
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(72ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 72ページても、「はい」、「分かった」という返事をしてしまったりすることがあります。分
からないことや嫌なこと、不安に思っていることがあっても、上手く意思表示でき
ないこともあります。
・抽象的な話や場の状況、集団のルールを理解することが難しい
物事を一般化して抽象的なことに置き換えることが難しい場合があります。例え
ば、リンゴとブドウは形も大きさも色も固さも異なり、それらを果物と呼ぶために
はその違いを捨て、共通の性質を取り出して一般化しますが、 こうしたことが分か
りにくいため、他の幼児と果物屋さんごっこをするときに、どれが果物なのか、商
品をイメージできなかったりします。さらに、遊びなどのルールが分からず、他の
幼児が遊んでいても仲間に入れなかったりすることがあります。
・見通しをもつことが難しい
時間の概念の理解が不十分であることが多く、次の予定を具体的に捉えたり、先
のことを予測したりして行動することが難しいことがあります。例えば、健康診断
や発表会などの行事があり、朝から並ぶ、集合する、場所を移動するなど、毎日の
登園時の活動とは異なる活動を行ったり、天候が急変して降園時のお迎えの場所を
変更したりして、いつもとは違うことを求められたりするなど、状況が少し異なる
と、どのように行動してよいのか分からずパニックになることがあります。
・集中して持続的に行うことが難しい
活動に集中して取り組む持続性が育まれにくく、興味のあることは集中して取り
組みますが、興味がもてなかったり長時間にわたる活動では、他の幼児と一緒に活
動することが難しく、「疲れた」「もう終わり」などと言い、その場を離れようとす
ることがあります。
・手先を使った細かい作業をすることや、感覚を総合的に活用して周囲の状況を把握
し状況に応じて行動することが難しい
手先や手指を上手に使う力が育まれにくかったり、身体の別々の動きを一つの動
きとしてまとめることが難しかったり、日常の生活場面等における経験不足などか
ら、例えば、着替えにおけるボタンの着脱やシール貼りなどの細かい活動、はさみ
などの道具の操作が難しいことがあります。紙をはさみで切る際には、一方の手で
紙を動かしながらもう一方の手ではさみを開閉しますが、両手を調和させて動かす
ことが上手くできず、切り口が曲がったりギザギザになったりします。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(73ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 73ページまた、自分の身体に対する意識や概念が十分に育っていなかったり、位置や方向、
遠近について状況が把握できなかったりするため、人や物にぶつかったり、簡単な
動作をまねすることが難しいことがあります。運動機能の獲得に時間がかかる傾向
があるため、一つの準備や動作に時間がかかります。例えば、衣服の着脱では、脱
衣のときに、手で上衣を持ち上げながら両手を万歳にしたまま上手く脱げなかった
り、着衣のときは、衣服の前後を確認して衣服を置き、頭や腕をどの口に通すのか
分かりにくかったりして、最初からやり直すことも少なくありません。体を動かす
ダンスや体操などでは、先生の動きを見てまねたり、リズムに合わせて踊ったりす
ることは難しく、大きい動きになったり、リズムよく止まれなかったりするため、
近くにいる幼児とぶつかってしまうことがあります。
②困難さに応じた支援の手立て
幼児の知的障害の状況や生活経験等を踏まえて、できたところを認めたり、ほめた
りすることで、当該幼児が主体的に意欲をもって活動に取り組む力を育むことが大切
です。例えば、次のような支援が考えられます。
・抽象的なことの理解が困難であることに留意し、できるだけ具体的な指示で指導す
ることが望まれます。例えば、手を洗うことを指導する場合、言葉だけで教えるよ
りも、先生が一緒に手を重ねて洗ったり、実際に手を洗って見せたりすることが必
要です。また、危険な場所や、してはいけないことを教える場合にも、何回も実際
の場所に連れて行き、根気よく、優しく、 はっきり話して伝えることを繰り返しま
す。
・興味や関心のあることや生活上の場面を取り上げ、実物や写真を使ってみたり読ん
だりして、理解できるようにすることが考えられます、例えば、言語の理解を促す
ために絵カードなどの視覚的な情報を補足するなどの工夫をすることも考えられ
ます。こうした対応により、理解できる語彙を増やし、相手の話を聞き取ろうとい
う姿勢が育ったり、自ら話しかけようとする意欲の向上につながったりすることも
多くあります。視覚的に情報を把握することが苦手な場合には、分かりやすい言葉
を使ったり身体的な援助を行い、実際に体験することで学べるようにしたりするこ
とが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(74ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 74ページ・自分の考えや要求を表現し、相手に伝わったり、相手の意図を受け止めたりする双
方向のコミュニケーションが成立する成功体験を積み重ねることが大切です。例え
ば、身近な「名前」を共有することから始めるなど、当該幼児ができることからや
ってみることが大切です。また、自分の気持ちを表した絵カードを使ったり、簡単
なジェスチャーを交えるなど、要求を伝える手段を広げたり、人とのやり取りや人
と協力して遂行するゲームをするなど、コミュニケーションの基礎的な能力の活用
を促すことも考えられます。
・活動に当たって、当該幼児が興味や関心をもち、いろいろな遊具や用具、素材を遊
びに取り入れ、目的に合わせて手指を効果的に使えるようにする工夫があります。
例えば、手遊びやビーズなどを仕分ける活動、ひもにビーズを通す活動など、目と
手とを調和させて動かすなどができるような活動が考えられます。その際、単に訓
練的な活動とならないよう、先生は、当該幼児が興味や関心をもてる活動になるよ
う工夫し、楽しんで取り組めるようにしたり、ものづくりを通して達成感が得られ
るようにしたりするなど、意欲的に取り組めるようにしましょう。また、円滑な活
動を促すために、衣服に工夫を加えて当該幼児が着脱しやすいようにしたり、道具
の収納方法や物の位置、当該幼児が座る場所などにも配慮したりして、遊びに集中
できるようにします。
・先生は、当該幼児と一緒に活動することによって、当該幼児の活動への参加を促し、
当該幼児自らが達成感や充実感を味わいながら意欲を高めていくことができるよ
うにする必要があります。また、言語発達の遅れが顕著な場合には、例えば、リズ
ムのある掛け声や同じフレーズが繰り返し出てくる絵本や紙芝居などに親しめる
ようにすることが考えられます。そして、それらの体験を生かして、劇遊びなどに
して、先生がいろいろな役になってモデルを示したり、日常のままごと遊びの中に
も取り入れたりして、やり取りを楽しめるようにするなど、当該幼児が有している
言語を最大限に生かすことができるようにするなどの言語環境を整えることも大
切です。皆と一緒に活動する中で、当該幼児ができることで参加をしたり、できる
役割をもたせたりして満足感が得られるようにします。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(75ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 75ページ・全身を使って大きく動く粗大運動や、手や指を使った細かく精密な動作を必要とす
る微細運動を通して、全身及び身体の各部位を意識して動かしたり、名称やその位
置などを言葉で理解したりすることができるよう、工夫が必要です。例えば、体の
各部位を使った手遊びや歌などを取り入れ、先生がやっていることをまねながら、
自分で触れて各部位に意識がもてるようにするとよいでしょう。また、先生と一緒
に走るなど体を思いきり動かして遊ぶことができるような鬼ごっこを楽しんだり、
さらには、「ある部位に触れていたら鬼に捕まらない」など、よりゲーム性のある要
素を取り入れたりすることなども考えられます。製作活動では、体の部位を意識し
て取り組めるように予め画用紙で体のパーツを切って用意しておき、「走っている
自分」「泳いでいる自分」「遊んでいる自分」など、頭、体、足、手などのパーツを
選び、組み合わせて「自分」を作ることなども考えられます。
・分かりやすい日課を設定し、生活のリズムが身に付けられるようにします。例えば、
繰り返しできる活動をしたり、活動の手順を少なくしたり、活動の手順について言
葉による指示だけでなく、写真や絵カードなどの視覚情報で示すなどすると、見通
しをもちやすくなります。また、全体への指示だけでは伝わりにくいので、今する
ことを個別にかつ簡潔に伝えたり、次にすることを知らせたりするなどの工夫が考
えられます。
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する
先生の必要な支援の下で、知的障害のある幼児などが園での遊びや生活を楽しみ、
他の幼児との関わりを広げていけるようにすることが大切です。他の幼児との関わり
を深め、遊びを展開していく際に大切なことがあります。それは、知的障害のある幼
児などの困難さに応じた支援を、他の幼児との関わりや集団の生活の中で自然に取り
入れていくことです。しかし、その支援によって、他の幼児が遊びを楽しめなくなる
ことは避ける必要があります。知的障害のある幼児などが、クラスの一員として他の
幼児と共に遊びや生活を楽しめるようにすることが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(76ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 76ページコラム クマさん鬼ごっこを通して(4歳児)
~先生がルールを分かりやすく行動で示す~
支援のポイント
知的障害のある幼児などが、他の幼児と共に遊びを楽しむためには、先生は、言
葉による指示だけでなく、絵や写真等を用いたり、モデルを示したりすることによ
って、当該幼児が活動の内容や遊びのルールを理解しやすくする必要があります。
他の幼児との関わりにおける先生の思い
C児は、発語はあり、簡単な会話は成立しているが、ルールのある遊びになると、
皆と一緒に遊ぶことは難しそうだ。鬼ごっこでは、C児も一緒に参加できるように、
まずは、先生と一緒に遊ぶ中で「逃げる楽しさ」「追い掛けられるスリル感」などの
遊びそのものの楽しさを味わい、視覚情報も活用しながら、少しずつ他の幼児と一
緒に楽しめるようにしていこう。
クマさん鬼ごっこの様子
C児は、軽度の知的障害のある幼児です。先生は、C児を誘い、園庭に出て追い
かけっこの遊びを始めました。最初は、「『ようい、どん!』で走るよ」「先生がクマ
さんだよ。クマさんに捕まえられないように逃げてね」と言ってお面を着け、C児
の走る速さに合わせて追いかけました。そして、C児を捕まえたときには「捕まえ
た」とぎゅっと抱きしめて食べる振りをするなど、言葉や行動で「逃げる」「捕ま
る」などが分かるようにしました。
C児は、先生に追い掛けられることが嬉しく、走り回っています。ときどき、先
生は「クマさん、少し疲れちゃった」「Cちゃん、逃げるのが上手だね」「なかなか
捕まえられないよ」と言って、スピードを落として立ち止まると、C児も立ち止ま
って様子を見て、「こっち」と先生を誘う姿も見られます。C児は、先生と一緒に走
り回ることは楽しいようで、少しずつ顔を上げて走ることができるようになってき
ました。
すると、C児と先生が楽しそうに走り回っている様子を見て他の幼児も興味を示
し、「Cちゃん、入れて」と数人の幼児が仲間に加わりました。先生は、遊びの人数
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(77ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 77ページが増えてきたので、園庭のカエデの木の周りの地面に白線をかいて「ここはクマさ
んのお家ね」「クマさんがお昼寝しているときは、捕まえられないから大丈夫。で
もお腹がすいてぺこぺこになると…」とお腹をすかせたしぐさを見せると、他の幼
児は慌てて逃げようとしています。先生がさりげなくクマのお面を着けてクマに変
身してC児に向かって「おいしそうだな、いい匂いがするなぁ」とクマになりきっ
て言うと、C児は、慌てていましたが、他の幼児が「Cちゃん、こっち」と手を取
り、嬉しそうに逃げていきました。
先生が「皆、逃げ足が速くて、誰も捕まえられなかった、残念」と言うと、幼児
たちは「もっとやりたい」と言いました。繰り返し遊んでいると、その後、周りの
幼児から「今度は、クマさん(役を)やりたい」という幼児が出てきたので、先生
は、C児と一緒に逃げることを楽しんだり、さらには、C児がクマ役になって他の
幼児を追い掛けたりするなど、どちらの役も楽しめるようになっていきました。
他の幼児と共に遊びや生活を楽しむことができるような支援を考える
幼児がルールのある遊びを楽しむためには、最初は簡単な分かりやすいルールか
ら始めることが大切です。そして、ルールを伝える際には、幼児が理解しやすいも
のとなるように工夫する必要があります。鬼遊びであれば、イメージできるように
イラストを活用したり、先生が行動やしぐさで見せたりするなどです。これは、障
害の有無にかかわらず大切なことです。
特に、知的障害のある幼児などにとっては、ルールの理解は言葉のみの説明では
難しいため、イラストなどを活用したり、実際に先生が言葉を添えながら一緒に活
動したりすることによって、遊び方やその遊びの面白さ、楽しさを実感できるよう
にすることが重要です。
そして、遊びの中では、具体的に「逃げるのが、上手だね」「楽しいね」など言葉
を掛けていき、逃げることの楽しさやスリル感、捕まえられても安心などの感情が
「また、遊びたい」という意欲へとつながるようにしていきます。
知的障害の困難さは、知的な遅れにより、生活の様々な場面に現れます。新しい
遊びや事柄に対して不安を示したり、参加できなかったりすることがないように、
当該幼児が「できること」「分かること」は何かを把握して始めるようにしましょ
う。そして、「できない」ことが「やりたくない」こととならないように、当該幼児
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(78ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 78ページの「できること」に目を向け、クラスの幼児同士の相互作用の中で「できた」「また
やりたい」につなげていくことが大切です。
皆と一緒に遊ぶことを積み重ねていくことで、「友達と一緒に遊びたい」という
気持ちを育てていきます。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(79ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 79ページ5.肢体不自由に関する基本的な理解と支援の手立て
(1) 肢体不自由の概要
身体の動きに関する器官が、病気やけがで損なわれ、歩行等の運動、生活習慣の確
立、絵をかくことや製作等の表現活動等の日常動作が困難な状態となります。
(2) 肢体不自由のある幼児などに見られる行動等の特徴
障害の状況により、遊びや生活の中で以下のような姿が見受けられます。
・走ったり歩いたりなどの大きな運動、つまむ、ねじるなどの手指の動きや眼球の動
き、表情などの細かな運動に遅れが見られる。その他、手足や胴体の動きのバラン
スがとれずにぎくしゃくした動きになったり、つっぱったりすることなどもある。
また、座った状態を維持するなどの姿勢保持ができないこともある。
・脳性まひの主な症状では、筋緊張の異常や意思とは無関係な身体の運動が様々に見
られる。さらに、知的障害、言語障害、病弱、てんかん、視覚障害、聴覚障害等の
一つまたは複数の障害を併せ有する重複障害が見られることがある。
・脳性まひを含めて中枢神経に障害がある幼児は、転導性や、多動性、統合困難、固
執性などが見られることがある。転導性とは、注意が特定の対象に集中できず、周
囲の刺激に無選択的に反応してしまう傾向のことを言う。多動性とは、運動・動作
を抑制することが困難な傾向のことを言う。統合困難とは、話したいことの順序を
頭の中で整理したり、伝えたいことに応じて情報を取捨選択したりなど、部分を全
体的なまとまりに構成したり、関係付けたりすることが困難な傾向のことを言う。
固執性とは、一つの物事にこだわったり、気持ちを切り替えたりすることが難しい
傾向のことを言う。ただし、これらは全ての脳性まひを含めて中枢神経に障害があ
る幼児に見られるものではなく、個人差もある。
こうした姿は遊びや生活の場面の随所で見受けられます。肢体不自由のある幼児な
どの実態を把握するためには、どのような場面でどのような姿に注意すればよいのか
について知っておくことも大切です。以下に、いくつかの例を示します。
・体幹、上肢、下肢の状態(移動や動作を助ける車椅子や座位の保持を助ける椅子な
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(80ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 80ページどの要否、絵等をかくことの可否、歩行の可否)
・日常生活動作(食事の可否及び姿勢、衣服の着脱の可否、排泄
せつ
の可否、自力歩行の
可否、車椅子・杖・歩行器等での移動の可否と使用する用具、自力での車椅子の乗
り降りの可否)
・感覚の活用(視覚、聴覚、触覚等の活用度と問題の有無。例: 目と手の協応動作(目
から取り入れた情報に対する手を使った適切な処理)、図と地の弁別(物体とその
背景の区別)、空間関係等)
・作業能力(手指の巧緻性、両手の協応動作、書写能力、自助具・補助具(情報機器
等を含む)の必要性の有無)
(3) 肢体不自由のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立
て
幼児期は、身体が著しく発育するとともに、運動機能が急速に発達する時期です。
そのため、自分の力で取り組めることが多くなり、幼児の活動性は著しく高まりま
す。運動機能の発達により、細かな作業や力が必要な作業も可能となり、使える用具
や素材も増え、用具に応じた使い方や素材の特質を知っていきます。また、他の幼児
と一緒に体を動かす楽しさを共有したり、より細かな運動を取り入れた複雑な遊びも
できたりするようになっていきます。
しかし、肢体不自由のある幼児などはこのような体験が不足したり、このような活
動の中で達成感や充実感を味わうことができなかったりすることがあります。また、
運動等で使う機能は発達しますが、使わない組織は退化してしまいます。そのため、
体を動かすことが限定されている幼児であっても、自由に遊べる環境は大切です。
肢体不自由のある幼児などが、遊びや生活の中でどのような困難さを感じ、そうい
った困難さに応じてどのような支援の手立てがあるのかを考え、当該幼児の実態に応
じた支援をしていくことが大切です。肢体不自由のある幼児などの困難さや困難さに
応じた支援の手立てとして以下が考えられます。
①肢体不自由のある幼児などの抱える困難さ
・身体の動きに困難があり、定型的な運動発達をしている場合より活動に時間を要す
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(81ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 81ページる場面が多い。また、様々な活動を行う際、姿勢保持や変換等で周囲の大人の支援
を必要とすることが多いため、主体的に活動しようとする気持ちが十分育たなかっ
たり、幼児同士での関わりが不足しがちで対人関係の力が十分に育たなかったりす
る場合がある。
・健康の状態により活動を制限されることがあり、年齢相応の幼児の発達に必要な体
験が不足している場合が少なくない。
・脳性疾患等のある幼児は、その認知特性により、視覚的な情報の処理を苦手とする
ため、他の感覚と複合的な物事の理解や言語、数量など基礎的な概念の形成に影響
を及ぼす場合がある。
・運動発達の遅れの経過には、それが次第に改善するもの、いつまでも持続するも
の、遅れの程度の重くなるもの、の三つの場合がある。
②困難さに応じた支援の手立て
・肢体不自由のある幼児などが自ら周囲と関わり、主体的な活動が展開できるように
するために、環境や他の幼児との関わり方を工夫すること。その際、当該幼児が活
動しやすいように姿勢を変えたり、上肢、下肢の動きに配慮して援助はするが、先
生等が関わりを控え、幼児同士が直接関わり合う機会を設けたりするなど、指導方
法を工夫する必要がある。
・肢体不自由のある幼児などが興味や関心をもって周囲に関わり、成長や発達に必要
な体験が得られるような活動を、当該幼児の身体の動きや健康の状態に応じて計画
的に設定する必要がある。特に、幼児期は、手で持つ・指でつまむといった行動を
先生や他の幼児が言葉で伝えたり、場所の広さを走り回ることで感じたりするなど、
体験を通して学んでいくが、肢体不自由で身体の動きに困難があり、これらのこと
を自分の身体で体験することが難しい場合がある。そうした場合には、物を持つこ
とや広い場所を歩くことなどを先生が援助し、当該幼児が自らの体験を通して実感
をもって理解できるよう配慮するなど、言語や概念形成、数量、空間認知などの基
礎的な概念が育つ内容を意図的に取り扱うことが求められる。
・様々な遊びに安心して取り組むことができるよう、当該幼児が容易に取り組める遊
具を活用した遊びで、基本的な動きから複雑な動きを体験できるよう活動内容を用
意し、徐々に成功体験が積み重ねられるようにするなどの配慮をする。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(82ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 82ページ【具体的な場面における例】
具体的な場面 支援の手立て
◆園での活動全体を通して
・姿勢保持や歩行が不安定なた
め、他の幼児の不意な動きへ
の対応が困難な場合がある
・体の動きが困難なため、活動
に時間を要する
・段差などで転倒しやすい
・移動に関すること
・姿勢に関すること
・上肢を使う活動について
・健康に関すること
体調を崩すと、重症化しや
すい。また、快復に時間を
要する場合が多い
体温調節が困難な場合が多
い
・集団の中では、本児をすぐに保護することがで
きる範囲内に先生の位置を確保する
・本人の活動のペースを尊重し、「(自主的、自
発的な活動を期待して)待つ」姿勢を基本とす
る。機能に関する面で支援が必要な場合、本児
の機能的な面での実態を把握した上で、本児に
「どこまで自分でできるのか」、「どのような
支援をすればできるのか」等、相談や提案をし
ながら教育的な配慮を行った上で、適切な指導
及び必要な支援を行う
・スモールステップで、課題を設定し、「ここま
では、先生がするね。ここからは、〇〇ちゃん
がしてみようか」等
・段差のある場所を先生が把握し、当該幼児に注
意喚起する
・保護帽を着用する。その際は、当該幼児だけで
なく他の幼児にも、保護帽が必要な理由を分か
りやすく説明する
・移動方法について把握する。(介助されての車
椅子、自力での車椅子、電動車椅子の可能性、
歩行器の使用、ロフストランド杖の使用など。
場合によっては、移動の目的やその日の体調に
よって、移動方法の複数を組み合わせる場合も
ある)
・車椅子や座位保持装置の活用方法について、保
護者や専門家(理学療法士:PT、作業療法
士:OT等)から説明を受けて把握する
・自助具(身の回りの動作がより便利に、より容
易に自分で行えるよう工夫された道具⇒はさ
み、箸、スプーンなど)の利用なども考える
・登園時の体温測定を行い、健康観察を入念に行
う
・衣服等で調節しやすい服装を保護者にお願いす
る。気候や活動内容、本人の状態等を把握し
て、状況により服装の調整を行う
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(83ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 83ページ◆園で想定される場面において
・自由に遊ぶ
・一斉活動
・集会
・行事
・排泄
せつ
・衣服の着脱・食事につ
いて
・そばにいる先生は、できる限り幼児同士のやり
取りを尊重しつつ、安全確保に重点を置いた支
援を行う
・歩行が不安定な幼児の場合、移動を伴う活動
は、その活動のめあてを明確にし、歩行・車椅
子等の移動方法を選択する
・長時間の姿勢保持は、体力的に難しい場合が多
い。休憩できるスペースへ移動できるよう、当
該幼児の実態を考慮し並び方に配慮する
・遠足や園外への活動の場合、家庭の状況にも十
分に配慮しつつ、当該幼児の実態に応じて付き
添いについて保護者と相談する
・介助を必要とすることが多いが、自力でできる
可能性の検討も必要である。また、自身の障害
について理解し、自己管理できることも重要
である
・衣服の着脱時は、姿勢保持が困難な場合がある
ので、本人が安定した姿勢(椅子に座る、床に
座る等)で着替えができるようスペースを確保
する
・口腔内に過敏があることが多く、偏食の傾向に
ある。本人と相談しながら、食べる量を調整し
徐々に食べられる量や品目を増やせるようにす
る
・スプーンやフォーク、箸等、本人の機能に応じ
た食具があれば持参してもらい、使用する。そ
の際、使用の仕方を保護者や専門家に確認し、
発達に即した対応を検討する
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する
先生の必要な支援の下で、肢体不自由のある幼児などが園での遊びや生活を楽しみ、
他の幼児との関わりを広げていけるようにすることが大切です。他の幼児との関わり
を深め、遊びを展開していく際に大切なことがあります。それは、肢体不自由のある
幼児などの困難さに応じた支援を、他の幼児との関わりや集団の生活の中で自然に取
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(84ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 84ページり入れていくことです。しかし、その支援によって、他の幼児が遊びを楽しめなくな
ることは避ける必要があります。肢体不自由のある幼児などが、クラスの一員として
他の幼児と共に遊びや生活を楽しめるようにすることが大切です。
コラム 的当て遊びを通して(4歳児)
~できることを生かして体を動かす遊びを他の幼児と楽しむ~
支援のポイント
体を思いどおりに動かすことが困難な幼児が他の幼児と一緒に遊ぶためには、当
該幼児ができることを活用し、遊び方の選択肢を増やしていく必要があります。
他の幼児との関わりにおける先生の思い
D児は、脳性まひがあり、思いどおりに体を動かすことが難しい。機能的に体
を動かすことが難しいからといって他の幼児と一緒に遊べないという状況になる
ことは避けたい。D児が、今、できることは何かを考え、できることを活用して
多様な手段を考えたり、取り組める用具や材料を用意したり、遊び方を工夫した
りして一緒に楽しめるようにしていきたい。
的当て遊びの様子
幼児たちが、鬼の絵が貼ってあるペットボトルに向かってボールを投げ、鬼を倒
す遊びを始めました。D児は、何とか鬼を退治したいとボールを投げますが、ボー
ルが届かずなかなか当たりません。
すると、Y児が「そうだ。転がして倒すことにしようよ」と提案しました。Y児
は、以前、ボウリング遊びをしたときに、ボールを転がして遊んだことを思い出し
たようです。先生が、「そうだね、転がしても面白そうだね」と言うと、Y児は早
速、ボールを転がしましたが、1本のペットボトルでは当たらなかったので、「そ
うだ、ペットボトルをたくさん持ってこよう」と製作コーナーにある材料置き場か
ら、ペットボトルを持ってきました。数多く並んだペットボトルを見たD児は、や
りたそうに見ていました。先生は、「Yちゃん、何かいいことを考えたんだね」と言
うと、Y児は「こうやって…」とボールを転がして見せました。今度は、ペットボ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(85ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 85ページトルが数本倒れ、「やったー!」とY児が喜んでいます。先生は「Yちゃん、すごい
ね、そのやり方、いいね」と言うと、D児も「やってみたいな」と言っています。
先生は、D児も一緒に楽しめるようにできないかと考え、ボールがうまく転がる
ように踏切台を用意しました。そして、ボールがあちらこちらに転がっていかない
ように、「ボールがあっちこっち行って、取りに行かないといけないなぁ。何かよ
い方法はないかな…」と言って、積み木を持ってきて置いてみました。すると、Y
児が「分かった、周りに置くってことでしょう、いいねぇ、そうしよう」と、早速、
他の幼児も加わり、先生と一緒に積み木を運び始めました。先生はD児に「鬼当て、
楽しみになってきたね」と声を掛けました。
囲いができあがると、D児は踏切台の前から、ボールを転がしてみせました。す
ると、ボールが斜めに転がりながらも積み木の壁にあたり、ペットボトルがいくつ
も倒れ、D児は、嬉しそうな表情を見せました。
そして、周りにいた幼児も次々と自分のやり方で転がすコースを予想しながら楽
しんでいました。
遊んでいくうちに、転がったボールを拾いにいく幼児や、倒れたペットボトルを
起こす幼児など、自然と役割を意識した動きも出てきました。
他の幼児と共に遊びや生活を楽しむことができるような支援を考える
脳性まひのある幼児は、体を思いどおりに動かすことが難しく、日常動作は、時
間をかけて行います。先生は、保護者や関係者(主治医、理学療法士等)から配慮
事項を聞き取った上で、園での遊びや生活でどのような支援ができるかを保護者と
共通理解する必要があります。そして、先生が、当該幼児がどの程度のことならで
きるのか的確な実態把握を行った上で、当該幼児の「できること」から遊びの工夫
や発想をします。最初は簡単な動き、無理なくできる動きを取り入れ「できた」と
いう満足感や小さな成功体験を積み重ねていき、自信がもてるようにしていくこと
が大切です。
また、先生がD児のできることを考えて遊具や用具を準備しておくことが必要で
すが、先生が遊び方や方向性を決めてしまうのではなく、幼児同士が考えて自分た
ちで工夫する過程も大切にしていきます。「できること」を生かして、遊具や用具
をどのように準備したらよいか、物や場所などを工夫します。D児のようにボール
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(86ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 86ページを使った遊びでは、ボールがもつ特性を理解しておくことも必要です。ボールを転
がすといっても、転がしたボールは自分で取りに行かなければなりませんし、それ
が何回も続けば身体的な負担も感じてしまうかもしれません。繰り返し遊びを楽し
めるようにするためには、過度な負担がかからないように、ボールを転がしやすい
坂、ボールが遠くへいかないようにするための囲いなど、当該幼児の実情に応じて
物を用意することが大切です。
また、遊びの中で役割を分担することも考えられます。遊びの中で自分の役割が
あると、一緒に遊んでいるという意識にもつながります。試したり工夫したりする
関わりの中で、喜びを共有したり互いを認め合ったりするなどを積み重ねていくこ
とが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(87ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 87ページ6.病弱・身体虚弱に関する基本的な理解と支援の手立て
(1) 病弱・身体虚弱の概要
病弱とは、心身の病気のために継続的又は繰り返し、医療又は生活規制※が必要な
状態です。身体虚弱とは、病気ではないが心身の不調が続き、病気にかかりやすいな
ど、継続して生活規制が必要な状態です。なお、原因は、はっきりしないが、病気に
かかりやすい幼児、頭痛や腹痛などいろいろな不定の症状を訴える幼児、医師から生
活規制が継続して必要と診断された幼児、短期間で退院したが原因不明の不調状態が
続いたり、体力的に通常の時間帯での園活動に参加したりすることが困難な幼児など
も含まれます。ただし、極めて短い期間だけ医療等が必要となる程度の風邪のような
一過性のものは該当しません。
※「生活規制」とは、園生活上又は日常生活上で留意すべきことなどです。例えば、
健康の維持や回復・改善のために必要な服薬や園生活上での安静、食事、運動等に
関して留意しなければならない点などがあることを指します。
(2) 病弱・身体虚弱のある幼児などに見られる行動等の特徴
対象となる病気の種類が多く、病気の状態や背景なども多様ですが、比較的多く見
られる疾患は、気管支喘息、腎臓病、筋ジストロフィー、悪性新生物、心臓病、糖尿
病、血友病、整形外科的疾患、てんかん、重症心身障害、アレルギー疾患、肥満など
です。病弱・身体虚弱のある幼児などは、以下のような行動的、心理的特徴が現れる
ことがあります。
・医師や看護師、心理の専門家等による治療だけでなく、日常生活への不安、病気や
治療への不安、生活規制等によるストレスなどを病弱・身体虚弱のある幼児など
なりに感じている。
・入院時に家族や友達と離れた孤独感などから、心理的に不安定な状態に陥りやす
く、健康回復への意欲を減退させている場合が多い。
・家族や先生など自分に関わってくれる人に対して、心配をかけることは悪いことだ
と思ったり、病気の回復が思わしくなかったりすることで自己不全感をもちやす
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(88ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 88ページい。
・長期にわたる療養経験から、積極性、自主性、社会性が乏しくなりやすい等の傾向
が見られる。
・乳幼児期に手術等を受けている場合には、その治療過程で運動や日常生活上での
様々な制限を受けていることが多いため、発達に必要な体験が不足することがあ
る。
・病気によっては、病院へ入院し、退院後も引き続き通院や感染症予防等が必要なこ
とがあるため、退院後すぐに入院前にいた園等に通園することが難しい場合があ
る。
・食物アレルギーのある幼児の中には、食べてはいけない食物を、保護者や担任等が
知らないうちに食べたり触れたりして、その結果、アレルギー症状が出てしま
い、身体を搔
か
きむしったり、泣き出したりすることがある。
・病弱・身体虚弱のある幼児などの年齢等によっては、自分の状況が理解できず、あ
るいは遊びに夢中になるあまり、生活規制等を守らずに行動したりすることがあ
る。
(3) 病弱・身体虚弱のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の
手立て
遊びの本質は、人が周囲の事物や他の人たちと思うがままに多様な仕方で応答し合
うことに夢中になり、時が経つのも忘れ、その関わり合いそのものを楽しむことにあ
ります。また、幼児は自己を十分に発揮して遊びや生活を楽しむ中で、体を動かす気
持ちよさを感じたり、生活に必要な習慣や態度を身に付けたりしていきます。
しかし、病弱・身体虚弱のある幼児などは、運動機能としては走ったり跳んだりで
きるのに、生活規制等から一定の制約を受けたり、疲れやすいために長時間遊びに夢
中になることを大人に止められたり、治療等のために食事が制限されていたりしま
す。また、生活規制等により体験そのものが不足していることがあります。
病弱・身体虚弱のある幼児などが、遊びや生活の中でどのような困難さを感じ、そ
ういった困難さに応じてどのような支援の手立てがあるのかを考え、当該幼児の実態
に応じた支援をしていくことが大切です。病弱・身体虚弱のある幼児などの困難さや
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(89ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 89ページ困難さに応じた支援の手立てとして以下が考えられます。
①病弱・身体虚弱のある幼児などの抱える困難さ
・継続的な生活規制等により日常生活での体験を通して学ぶ事項について未経験であ
ることによりできないことが多く見られる。また、経験の不足により活動等に対し
消極的であったり、自尊感情が低くなりやすかったりする。
・就学前の発達段階において、周りの幼児たちが活動している中で、同じように活動
できないことを理解し自己統制することが難しい。
・病状等によっては、在園途中で長期入院になり、計画どおりの支援が進められない
場合がある。
②困難さに応じた支援の手立て
支援の手立てを考えるに当たっては、以下について予め把握するようにします。
・園での生活や活動において、どのような活動や行動をさせてはいけないのか。ま
た、どの程度までの活動なら許容されるのか。
・自分の病気について、どの程度理解しているか。(病気の理解、自己理解)
・自分でコントロールしなければならないことについて理解しているか。(例えば、服
薬が必要なことを理解している、活動中に休憩することを理解している、つらいと
きには自分から先生に伝えるなど)
・自分の病気に対してどのような不安があるか。健康回復しようとする意欲があるか。
・これまでの生活規制などによる不満やストレスはないか。
そして、困難さに応じた支援の手立てとしては以下が考えられます。
・病気の特性や状態、体力等を十分に考慮しながら様々な活動が展開できるように工
夫する必要がある。特に、活動が過重負担となり、そのために病気の状態や健康状
態を悪化させるということがないようにする必要がある。当該幼児が、園生活を継
続して楽しむためには、心身が健康であることが重要であり、そのためには、必要
な服薬を守る、無理せず心身の状態に応じて活動に参加できるかできないかを判断
する、必要なときに必要な支援を求める、食物アレルギーのある幼児が食物制限を
守って食事をするといったことなどの必要性について、園での生活等を通して幼児
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(90ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 90ページなりに理解できるように配慮することが大切である。
・病弱・身体虚弱のある幼児などが、自分の病気を正しく理解し、自己コントロール
を図りながら、適切に活動に参加したり、薬を服薬したりすることは難しい。特に、
薬の管理は園が適切に行い、必要に応じて服薬をさせることが求められる。しかし、
継続的に服薬が必要な幼児にとっては、適切な時間に適切な量を服薬する意識を高
める必要がある。就学後、また将来を見通して、服薬が必要な際には、適切な時間
や量について、少しずつ意識できるように、先生が声掛け等をすることが大切であ
る。なお、医療機関等からの指示に基づいた薬の管理や服薬に十分留意する必要が
ある。
・心臓疾患や手術後の幼児については、運動の規制がある場合が多い。周りの幼児が
体を思い切り動かし活動していれば、自分も同じように参加し、活動したいと思う。
そのような当該幼児の気持ちを理解するとともに、適宜、当該幼児に現在の体の状
況を伝え、自分の病気や体調管理について自覚を促す支援が大切である。一方で、
運動の規制があっても、医療機関等との話合いで、できる活動や程度を確認し、必
要以上に制限をすることなく、その年齢、その学年にふさわしい様々な活動や学び
が展開できるようにすることも必要である。
・食物アレルギーのある幼児の中には、食べてはいけない食物を先生などに分からな
いようにして食べたり触れたりして、その結果、アレルギー症状が出てしまい、呼
吸困難になったり、身体を搔
か
きむしったり、泣き出したりする場合がある。食物ア
レルギーについては、誰が何を食べてはいけないのかを園内で共通理解を図り、緊
急時の対応としてのエピペンの取扱いなどについても研修を受けることが考えられ
る。
・先生は、対象の幼児の病気について、正しい知識を得るとともに、当該幼児の気持
ち(治療への不安や園生活への不安など)を理解した上で指導に当たることが大切
である。さらに保護者の同意が得られれば、必要に応じて周りの幼児へも病気のこ
とや関わり方について伝え、幼児同士の適切な関わり合いができるようにする。
・病状等によっては、集中的な治療が必要なため在園途中に長期入院になり、計画ど
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(91ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 91ページおりの支援が進められない場合がある。また、病院を退院して登園できるようにな
ったとしても、寛解(病気を抑えることができている状態)であり、その後、何年
も通院・服薬を続けて完治を目指す場合がある。その際には、通院や体調不良、服
薬による不調等で欠席することがあるため、家庭や医療機関、療育機関等との連携
を図り、登園できるときは、円滑に園生活ができるようにすることが重要である。
また、他の幼児にも理解を促し、幼児同士の適切な関わりができるようにすること
も大切である。
【喘息やてんかんの例】
・喘息やてんかんのある幼児で発作を起こしていないときなど、普段は健康な幼児と
同じ身体活動が可能な場合には、過度にならない範囲で、身体活動を積極的に行え
るようにする。その際、自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせ、見
通しをもって行動し、自ら安全な生活をつくり出せるように配慮することが大切で
ある。ただし、園生活において、発作を誘発するような要因については、配慮する
必要がある。本人が発作を誘発する要因になるのではないかと心配される活動等を
強く希望する場合は、保護者に相談し対応するようにする。
【腎臓疾患や心臓疾患の例】
・腎臓疾患や心臓疾患のある幼児など、病気の状態に応じて身体活動に何らかの制限
がある場合には、活動の内容と程度、指導方法、休憩のとり方などを適切に定め、
無理のない範囲で活動できるよう工夫する。その際、自ら活動する中で、自己の存
在感や充実感を味わえるようにすることが大切である。
【二分脊椎や脳性まひの例】
・二分脊椎や脳性まひのある幼児など、四肢・体幹に運動・動作の障害がある場合、
可能な限り自発的な活動ができるようにするとともに、必要に応じて動作を補助し
たり、装具や自助具などを活用したりする。その際、周囲の人に主体的に関わる、
活動を楽しむ、自ら考え行動する、諦めずにやり遂げる、自信をもって行動すると
いったことができるようにすることが大切である。目に見えて理解しやすい障害で
あるため、発達段階によっては、周りの幼児が積極的に支援をしようとする場合が
ある。互いの理解を促し、適切な関係を築くためにはとても大切な関わりである。
周りの幼児の支援する気持ちを大切にしながらも、障害のある幼児などが、けがや
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(92ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 92ページ事故のないよう、先生から、他の幼児にできる支援について伝えるとともに、障害
のある幼児などが自分で頑張ろうとしていることを見守ることも大切な支援であ
ることを伝えるようにする。
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する
先生の必要な支援の下で、病弱・身体虚弱のある幼児などが園での遊びや生活を楽
しみ、他の幼児との関わりを広げていけるようにすることが大切です。他の幼児との
関わりを深め、遊びを展開していく際に大切なことがあります。それは、病弱・身体
虚弱のある幼児などの困難さに応じた支援を、他の幼児との関わりや集団の生活の中
で自然に取り入れていくことです。しかし、その支援によって、他の幼児が遊びを楽
しめなくなることは避ける必要があります。病弱・身体虚弱のある幼児などが、クラ
スの一員として他の幼児と共に遊びや生活を楽しめるようにすることが大切です。
コラム サッカー遊びを通して(5歳児)
~遊びの中に休息時間を取り入れる工夫をする~
支援のポイント
激しい運動や活動時間の制限があることから、体を動かす遊びの中で、うまく体
を休める時間をつくる必要があります。
他の幼児との関わりにおける先生の思い
E児は他の幼児と一緒に活動がしたい気持ちはあるが、これまでの保護者や先生
からの管理等により激しい運動や活動時間に制限があることは理解しつつありま
す。しかし、一緒に活動したい気持ちが強く、遊びや活動に夢中になり、制限を忘
れて活動してしまう場面が見られます。幼児皆が自然に休息時間を設けるような設
定を取り入れることで、E児だけが、不自然な形で遊びを中断することは避けたい。
サッカー遊びの様子
E児は心臓疾患があり、激しい運動や活動時間に制限があります。しかし、E児
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(93ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 93ページは体を動かすことが好きで、他の幼児と一緒に遊んでいると没頭してしまい、体を
休めることを忘れてしまうことがあります。
数人の幼児がサッカーを始めようと園庭に集まってきました。E児も仲間に入り
ました。先生は、E児の保護者と確認した運動制限の時間を気にしながら、E児の
様子を見守ることにしました。
5歳児クラスになり、E児と一緒に過ごしてきた周りの幼児は、E児の運動制限
について理解できるようになってきていました。そのため、X児が「Eちゃんは、
あまり動くと体によくないから、ゴール前の所を守って、ボールが来たら蹴るよう
にしてもらおう」とE児の動きがあまり激しくならないような提案をしました。そ
して、側にいたY児が、E児に「どう?」と意思を確認すると、E児は「いいよ」
と返事をしました。他の幼児から「ゴールの前にEちゃんがいたら、しっかり守れ
るね」「Eちゃん、よろしく!」と言われて、E児は一緒に活動できることが嬉しい
様子でした。
また、Z児は「長い時間、動くのもいけないから、先生にタイマーを借りて、3
分経ったら、皆で休憩するようにしよう」とE児に合わせたルールを提案しました。
他の幼児も「先生のタイマーか! いいね」、「タイマーやる!」など、新たなルー
ルに期待をもち始めました。先生が「タイマーなら、Eちゃんも分かるし、皆も休
憩の合図が分かるね」と言うと、他の幼児たちもすぐに納得し、「タイマー、誰がす
る?」、「タイマーやりたい人!」と、すぐに新しいルールを取り入れてサッカーを
始めました。
他の幼児と共に遊びや生活を楽しむことができるような支援を考える
運動等に制限がある幼児については、主治医や保護者からの配慮事項をしっかり
と確認した上で、当該幼児が自分の病気について理解し、適切に休息をとるなど少
しずつ自分でコントロールできるようにすることが大切です。しかし、幼児は遊び
に夢中になると、時が経つのも忘れて遊びます。そのため、本人が「このぐらいの
時間なら大丈夫」、「この遊びなら大丈夫」と理解はしていても、遊びに夢中になっ
ていると自分でコントロールできないことも生じてきます。
そこで、最初は、先生が自然な流れの中で必要な運動の制限の言葉を掛けていき
ます。その際、遊びを楽しんでいることを中断する、当該幼児だけ参加できないと
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(94ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 94ページいったことができるだけないような遊び方の工夫が必要です。保育室には、予め自
分から休息がとれるようなこぢんまりとしたコーナーを用意しておき、いつでも休
むことができるようにしたり、ごっこ遊びなどを楽しんでいるときに、「夜になっ
たから寝よう(休む)」、「車に乗ろう(座る)」、「開(閉)店は〇時です」などの言
葉を掛けたりして、遊びの延長上のイメージをもって、体を休めることを意識でき
るような働き掛けをすることも考えられます。
常に、当該幼児の状況を把握し、先生の関わりがモデルとなって必要に応じてど
のように関わるとよいのかを周りの幼児にも伝え、周りの幼児が理解できるように
しながら、幼児同士の互いの理解につなげていくことが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(95ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 95ページ7.言語障害に関する基本的な理解と支援の手立て
(1) 言語障害の概要
発音が不明瞭であったり、 話し言葉のリズムがスムーズでなかったり、言葉を話
す・聞いて理解する等の言語機能の発達に遅れがあったりするため、 話し言葉による
コミュニケーションが円滑に進まない状況となります。
(2) 言語障害のある幼児などに見られる行動等の特徴
次のような特徴があげられます。
〇正しい発音の困難や発話の不明瞭さ(構音障害)
ア 置換
ある子音が別の子音に置き換わっている状態。例えば、「さかな」の/s/の部分が
/t/に置き換わって「たかな」となっている。
イ 省略
ある音の子音部が脱落している状態。例では、「はなび」の/h/の部分が脱落し、
「あなび」と母音部のみが残っている状態となっている。
ウ 歪み
ある音が日本語にはない独特の音に変化している状態。例:「た」を発音しようと
したときに、/t a/ と /k a/ の中間の音になる、「す」を発音しようとしたときに、
英語の/th u/のような発音になるなど。
〇流暢に話すことの困難(吃
きつ
音)
話そうとするときに、同じ音や語の一部の繰り返し(連発)や引き伸ばし(伸発)、
声を出そうとしても呼気がつっかえて声が出ない(難発・ブロック)など、流暢では
ない話し方をします。吃
きつ
音には、原因が明確ではなく、2~5歳頃に発症する発達性
吃
きつ
音と、脳出血など原因が明確で、主に言語発達期以降に起こる獲得性吃
きつ
音に区分さ
れますが、ここでは幼児期によく見られる発達性吃
きつ
音の主な発話症状について述べま
す。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(96ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 96ページア 繰り返し(連発)
「あ、あ、あ、あのね」や「あの、あの、あの、あのね」のように同じ音や語の
一部を繰り返す症状。吃
きつ
音が発症した初期の段階では、中核症状としてこの繰り返
しのみが現れることが多い。
イ 引き伸ばし(伸発)
「あーーーーのね」のように最初の音を伸ばす症状。繰り返しと同時、または、
やや遅れて発症することが多い。
ウ ブロック(難発)
「・・・・・・・・あのね」のように、最初の音を言おうとしてもつっかえてし
まい、なかなか声が出てこない状況。全く無音のこともあれば、「うっ・・・」など
と苦しそうな声が聞こえることもある。このタイプの吃
きつ
音は、連発や伸発よりも遅
れて発症することが多い。
その他、吃
きつ
音の主な特徴は次のとおりです。
・吃
きつ
音の状態には、症状が重くなったり軽くなったりなどの変動(波)が見られる。
・人や場面に対する恐怖や回避を生じさせやすい。
・吃
きつ
音が重症化(進展)すると、中核症状が出現する際に、首を振る、瞬きをする、
足踏みをする、体を揺らすなどの随伴症状が見られる。
・社会性の発達や自己肯定感に対する悪影響(社交不安や自己肯定感の低下)がみら
れる。
〇話す・聞く等、言語機能の基礎的事項の発達の遅れや偏り(言語発達の遅れ)
ア 語彙や文の構成などに課題がある場合
人との関わりには課題はみられないが、語彙や構文力が未熟で、的確に言葉にで
きない、答えられないなど、言葉の表出や理解に課題がみられる。
イ 認知発達の偏りなどの課題がある場合
アにみられる課題のほか、人との関わりには課題はみられないものの、特に簡単
なひらがなや数字を読むことや書くことなどの認知に課題がみられる。
ウ 対人関係や文間関係、文脈の把握に課題がある場合
自分の話し方や相手の話の聞き方などの会話のルール、場面に即した言葉の使用、
気持ちを表す言葉の使用など、関係性の理解に課題がみられる。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(97ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 97ページ(3) 言語障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て
幼児の発話は、不明瞭なことや、思いや考えに言葉が追いつかず情報が断片的にな
ること、単語を並べるのみで順序性や論理性が不十分なこと、独特の表現のため相手
に通じにくいことなどがあります。しかし、信頼する先生や他の幼児との関わりの中
で、共感したい、伝えたいという思いをもち、伝え合う楽しさを経験することで、何
度も発話するようになります。こうした試行錯誤を重ねることで、幼児の言語はさら
に発達し、場面や状況に合った言葉を使うことができるようになっていきます。
しかし、言語障害のある幼児などは、伝えたいという思いはあっても、上手く話す
ことができないために、言葉でやり取りする楽しさを味わうことができず、次第に、
話す意欲が低下してしまうことがあります。
先生は、言語障害のある幼児などが遊びや生活の中でどのような困難さを感じてい
るかを見定め、そういった困難さに応じてどのような支援の手立てがあるのかを考
え、当該幼児の実態に応じた支援をすることが大切です。言語障害のある幼児などの
困難さや困難さに応じた支援の手立てとして以下が考えられます。
①言語障害のある幼児などの抱える困難さ
〇正しい発音の困難や発話の不明瞭さ(構音障害)
口唇、舌、歯等の構音器官の構造や機能の異常による場合、ひずみ音が多く、正し
い発音ができないことにイライラしたり、恥ずかしさを感じていたりする言語障害の
ある幼児などがいます。なお、このような幼児の中には、音の違いを聞き取ることに
困難がある者、音の違いの聞き取りには問題ないが発音が誤っている者、これらの双
方がある者がいます。
〇流暢に話すことの困難(吃
きつ
音)
吃
きつ
音の場合、2~5歳の間(特に3歳前後)に症状が出始めることが多いです。こ
の時期は、発話しようとする内容を幼児自らが考え、それを文にし、構音器官を使っ
て発話するという一連の作業が複雑になる時期であることから、一時的に発話が非流
暢になる幼児も多く、治療や支援なしに非流暢な発話が消失(自然治癒)する場合が
あります。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(98ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 98ページ吃
きつ
音の中核症状は、多くは、初めは繰り返しの症状から始まり、その後、引き伸ば
し、さらにブロックへと進展していきます。特に、言葉が上手く出ない症状が多く見
られる言語障害のある幼児などについては、吃
きつ
音の症状自体を否定的に捉えている可
能性があります。言葉が上手く出ない症状が多く出始めると、言葉を出そうとして唇
に力を入れたり、瞬きしたり、手足を動かしたりするといった随伴症状や「えーっと」
「あのー」などを頻繁に挿入して吃
きつ
音を避けるなどの行動を示す場合があります。
〇話す・聞くなど、言語機能の基礎的事項の発達の遅れや偏り
言語発達の遅れの場合、言語理解の困難さと言語表出の困難さの二つに大別されま
す。前者の場合、先生や周囲の幼児が話している内容を理解していないことから、指
示に従えない、他の幼児よりも一歩遅れて行動を開始する、周囲を見回しながら自分
がやるべきことを把握する、などの行動が認められます。後者の場合、発話が全般的
に他の幼児よりも短い、少ない、または不完全なことがあり、特に感情的になると、
言葉ではなく行動で自分の思いを表現する(他の幼児とトラブルになると手が出る)、
などの行動が見られることがあります。
②困難さに応じた支援の手立て
〇正しい発音の困難や発話の不明瞭さ(構音障害)
幼児が正しい発音ができるようになるのは4~5歳頃と言われています。3~4歳
児であっても、発音の誤りが多く、特に歪みが目立って発話の内容が聞き取りづらい
場合や、一定期間経過しても発音の誤りがあまり減らない場合は、保護者の気持ちに
も配慮しつつ専門家等への相談を勧めることも考えられます。
支援の手立ては次のとおりです。日々の園生活の中で、他の幼児も交えながら楽し
んで取り組み、発音の修正よりも、発話によるコミュニケーションへの意欲を高める
よう工夫が必要です。なお、周囲から発音の誤りを指摘されたり、まねされたり、か
らかわれたりといったことがあった場合には、他の幼児に理解を求める必要がありま
す。
ア 構音器官の運動機能の向上
舌先や唇の動きを円滑にする活動、息の長さや強さを調整する力を育む活動などに
ついてです。例えば、シャボン玉遊びやせっけん遊びなどで、ストローをくわえて口
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(99ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 99ページをすぼませ、息を吐く、顔じゃんけんやにらめっこの遊びなどをすることによって、
口や舌先を様々に動かすことが考えられます。
イ 音の聴覚的な認知力の向上
音と音とを比較する力を育む活動、音を記憶し、それを発音する力を育む活動など
についてです。例えば、「あ」の付く言葉を集めるといった遊びや、「かめ」「さめ」と
いった1字の子音の置換でその意味が異なる言葉の遊びなどを取り入れ、自然な会話
の中で理解できるようにしたり、皆で言葉を集めたりして遊ぶことが考えられます。
ウ 構音の指導
発音できる音や動作から誘導する方法(例:「が」の/ɡ/を出すために、うがいをす
る)や構音の仕方を教えて習得させる方法(例:「ぱ」の/p/を出すために、両唇に力
を入れてしっかりと閉じて、その後息を吐きながらぱっと唇を離すよう誘導する)な
どについてです。例えば、生活の中では、ガラガラうがいをする際に、「が」と意識し
て声を出すことによって発音を促すことが考えられます。また、いろいろな手遊びや
リズム遊びなどを行う中で手拍子や手振りに合わせて「パンパンパン」「ポンポン」と
声に出したり、カスタネットなどの楽器遊びの際に、拍子に合わせて「パンパン」な
ど、声に出したりして遊ぶことが考えられます。
〇流暢に話すことの困難(吃
きつ
音)
気軽に話せるように自由な雰囲気を心掛けます。例えば、遊び始めのときには、無
理に話をさせることは避け、他の幼児と一緒に遊んだり、手をつないで追いかけっこ
をしたりするなど、肌の触れ合いや、体を十分に動かす機会を多くすることが考えら
れます。次第に、先生との親しみが増し、話をしなくてもよい雰囲気を感じ取ると、
思わず、「やったー」などの声を出せるようになったりします。このように、緊張感か
ら解放されることで、言語障害のある幼児などは自然な発声や発話が促されていきま
す。
また、話を丁寧に聞く姿勢も大切です。急いで話したり、言い直しを求めたり、話
の途中で口を差しはさんだりしないようにします。そうして、言語障害のある幼児な
どが話をする楽しさを味わえるようにします。また、流暢に話せたときはほめたりし
て、言語障害のある幼児などが自信をもてるようにしましょう。吃
きつ
音の瞬間では、言
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(100ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 100ページいにくいときもあるが流暢に話せるときもあるといった程度のことであり、気にする
必要はないことを幼児に伝えます。
先生自身が吃
きつ
音に対して否定的には捉えていないことが、言語障害のある幼児など
自身に伝わるのはもちろんのこと、他の幼児にも伝わることが大切です。先生が、当
該幼児の話を丁寧に聞き取り、楽しく応答していれば、他の幼児も言語障害のある幼
児などの話し方にこだわったり、からかったりすることもないかもしれません。
また、言語障害のある幼児などの得意な遊びなどでは、積極的に当該幼児のよさを
認め、他の幼児にも伝えていくことが考えられます。そうすることで、当該幼児は自
信をもてるようになったり、他の幼児との交流も増えて言葉を使う場面も増えたりす
るかもしれません。
言葉の矯正ばかりに目を向けるのではなく、当該幼児が楽しい園生活を送れるよう
に配慮し、ありのままの当該幼児の姿が認められるクラスの雰囲気をつくることが大
切です。
〇話す・聞く等、言語機能の基礎的事項の発達の遅れや偏り(言語発達の遅れ)
言語障害のある幼児などが、コミュニケーションへの意欲をもてるようにすること
が大切です。その際、言葉だけでなく、表情やジェスチャーなどの非言語コミュニケ
ーションも大切にしながら、通じ合うことの喜びが感じられるようにします。言語障
害のある幼児などが話したくなることが大切です。先生は、当該幼児の話を楽しんで
聞いていることを、声掛け、態度、表情などで伝えるようにします。当該幼児の話の
リズムに合わせながら言葉のキャッチボールを行います。
また、先生が言語障害のある幼児などの言葉をそのまままねる、行動や気持ちを代
弁することで、言語障害のある幼児などは様々な言葉に触れることができます。
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する
先生の必要な支援の下で、言語障害のある幼児などが園での遊びや生活を楽しみ、
他の幼児との関わりを広げていけるようにすることが大切です。他の幼児との関わり
を深め、遊びを展開していく際に大切なことがあります。それは、言語障害のある幼
児などの困難さに応じた支援を、他の幼児との関わりや集団の生活の中で自然に取り
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(101ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 101ページ入れていくことです。しかし、その支援によって、他の幼児が遊びを楽しめなくなる
ことは避ける必要があります。言語障害のある幼児などが、クラスの一員として他の
幼児と共に遊びや生活を楽しめるようにすることが大切です。
コラム クラス全体でしりとり遊びをする場面を通して(5歳児)
~楽しい雰囲気の中で幼児のペースで発話し、思いを伝える喜びを味わう~
支援のポイント
自分の思いをうまく言葉にできない幼児が他の幼児と関わって遊ぶ楽しさを感
じるためには、言葉にできないもどかしさを理解して受け止め、その幼児の代弁者
となったり視覚情報を活用したりして、その幼児と他の幼児との間をつなぐ必要が
あります。
他の幼児との関わりにおける先生の思い
F児は、先生や保護者などの大人と関わる際は、安心して言葉を発しようとして
います。しかし、クラスの他の幼児とは関わりたい気持ちはあっても、遊びの場面
になると、自分から他の幼児を誘って遊ぶ姿はあまり見られず、声を掛けられるこ
とを待っています。自分から他の幼児を遊びに誘うような働き掛けでは、F児はま
すます緊張してしまいます。そこで、先生が、他の幼児と関わり、言葉を発する機
会を意図的につくり、F児が他の幼児と一緒に遊んで楽しかったという満足感を得
ながら、自信につなげられるようにしていきたいと考えています。
しりとり遊びの様子
F児は、言葉の発達が緩やかで、思ったことを年齢相応の言葉で表現することに
難しさがあり、話す語彙の種類の少なさや、発話の短さ、そして発音の不明瞭さが
あります。
先生は、F児が自分から言葉を発することができるように、クラス全体でしりと
り遊びを楽しむ時間を設けました。数日間、継続して行う中で、どの幼児もグルー
プ対抗のしりとりのやり方が分かってきており、F児も、自分のグループの幼児を
応援していました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(102ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 102ページ先生は、F児が皆の前に出ても自然に言葉を発せられるように、F児が興味をも
っている青虫の話題から始めました。「今日、Fちゃんが、園でいいものを見付け
たんだよね。Fちゃん、何か教えて」と尋ねると、F児は、「あ、お、む、し」と応
え、「そう『あおむし』ね。Fちゃん、青虫を見付けるの、上手だよね。今日は『あ
おむし』から始めよう」と言い、先生はホワイトボードに青虫の絵をかきました。
次の番のX児が「し? ん…シマウマ」と答えると、先生は「シマウマね…シマ
ウマ、ちょっと難しいな、こうかな」と言いながら絵をかき始めると、他の幼児も
楽しそうに見ています。先生が絵をかいている間は、次の幼児の考える時間となっ
ていて、皆はホワイトボードを見ています。X児「次はYちゃんだよ」、Y児「マス
ク!」、先生が「いいね」と言うと、幼児たちは喜んでいます。F児の番になり、先
生が「Fちゃん、決まったら皆に教えてね、皆は、よく聞いていてね」と言い、皆
でF児の考えを待ちました。すると、F児は先生の手を触り、「く、る、ま」と言い
ました。先生は「いいね、Fちゃん」と言い、F児のグループの幼児も「いいね」
と温かい言葉を掛けました。その後、F児は、他の幼児が発する言葉を繰り返し、
ホワイトボードにかかれる絵を楽しそうに見ていました。
他の幼児と共に遊びや生活を楽しむことができる支援策の検討
言葉の発達の緩やかさや発話の不明瞭さに対しては、普段から安心して自分の思
いを出せるような雰囲気づくりを心掛けます。そして、当該幼児が何か話そうとし
ている姿や、明確な言葉になっていなくとも発話している姿を見せたときに、温か
く「なあに」と聞こうとする姿勢で、「そうだね」「うんうん」とうなずきながら聞
いたり、言葉にしたことを「○○ね」と繰り返したり、思わず言葉を出したときに
は「そうだね」と共感したりする言葉を掛け、気持ちが通う心地よさや人と関わる
ことの楽しさを得られる体験を重ねることが大切です。
そのためには、普段の遊びの中で、言葉を介さなくとも、当該幼児と触れ合った
り思い切り体を動かして遊んだりして一緒に遊ぶことの楽しさを実感し、先生に対
して親しみや信頼感がもてるようにします。
そのような経験を重ねていく中で、当該幼児が話すリズムや言い回しなどを大切
にしながら、「話したい」「伝えたい」気持ちを受け止め、言葉による関わりだけで
はなく、表情やジェスチャーなどの視覚情報を用いて、互いに気持ちを通わせるこ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(103ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 103ページとの心地よさが感じられるようにしていきます。
クラス全体での活動で遊びを展開する際は、当該幼児の話していることが聞き取
れずに、先生が何度も聞き返してしまったり、言い直させたり、話すことを待つが
ゆえに、かえって緊張感をつくり話したい意欲を低下させてしまったりしないよう
な配慮が必要です。当該幼児の好きなことや得意なこと、興味のあることなどを話
題にして、「話したい」「伝えたい」という気持ちを引き出したり、タイミングやリ
ズムに合わせたり、考える時間をとったり、発した言葉が分かるように先生が簡単
なイラストや実物などの視覚情報を用いて補ったりするなどの援助をしていきま
す。
こうしてクラスの中で、他の幼児とのやり取りを楽しむ機会を多くつくり、幼児
自身が人と通じ合えた喜びを感じ、自信につながるようにしていきます。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(104ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 104ページ8.情緒障害に関する基本的な理解と支援の手立て
(1) 情緒障害の概要
心理面で感情や気分の変化は、一般に誰にも起きますが、多くは一過性であり、す
ぐに消滅します。しかし、それが何度も繰り返されたり、激しく現れたりするなどし
て、社会的な不適応状態をきたす場合があります。
情緒障害の現れ方としては、幼児の場合、選択性かん黙※のように、特定の場面や状
況で話すことができなくなることや、多動、常同行動、チック、母子分離の困難など
として現れることがあります。学齢期以降は、何が原因か、何にこだわっているのか
にも気付かず、外出しない状態が長期化することで、家に閉じこもる傾向が強くなっ
たり、適切な対人関係が形成できなかったりする一方で、他人を攻撃したり、破壊的
であったりするような行動も見られることがあります。
※選択性かん黙…一般に、発声器官等に明らかな器質的・機能的な障害はないが、
心理的な要因により、 特定の状況(例えば、家族や慣れた人以外の人に対して、
あるいは家庭の外等)で音声や言葉を出せず、生活に支障がある状態である。
(2) 情緒障害のある幼児などに見られる行動等の特徴
行動等の特徴は、内向性と外向性に分けられます。内向性の場合、話さない(かん
黙)、集団行動をしない、ひきこもりなどの状態で現れます。指しゃぶりや爪かみ、身
体を前後に揺らし続けるなどのような同じパターンの行動の反復、自分の髪の毛を抜
くなどは、その多くは癖と考えられますが、長期にわたって高い頻度で続き、園での
生活に支障を生じるほどの場合には、情緒障害として捉えられます。
一方、外向性の場合、離席、保育室からの抜けだし、反抗、暴言、暴力などの状態
で現れ、攻撃性を示すことが多くあります。
なお、情緒障害のある幼児などに見られる行動は、幼児一般に見られます。もとよ
り、障害のある幼児などの困難さに応じた支援は、幼児に障害があるから行うのでは
ありません。また、園において障害の有無を判断することは大切ではありません。し
かし、対象の幼児の困難さを捉える上では、幼児一般に見られるのかどうかを念頭に、
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(105ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 105ページ当該幼児の行動を見ることも大切です。その際には、当該幼児が独自にもっている生
活の背景や生育の過程、当該幼児自身のニーズなどを関連づけながら、総合的に捉え
る必要があります。
特に、情緒障害の場合、心理学的な観点からの把握が重要となるため、公認心理師
等の心理職との連携が欠かせません。心理職との連携により、以下の実態について把
握することが考えられます。
・情緒の状態(選択性かん黙の有無、チックの有無、母子分離不全の有無、ひきこも
りの有無、登園を嫌がる傾向の有無、不安傾向の有無、心理的な過敏性の有無、情
緒の発達の程度など)
・行動特徴(注意集中が困難、興味や関心が移りやすい、多動性の有無と程度、固執
性(こだわり)の有無、常同行動の有無、身近な危険の察知や回避の可否、衝動的
な行動の有無、粗暴な行為の有無など)
・対人関係(視線が合うか、名前を呼ばれて振り向くか、他人への働き掛けがあるか、
他人からの働き掛けへの反応、他人の立場や心情の理解、遊びの際の他者との関わ
り、集団活動への参加状況など)
・意思の交換・言語(日常の会話の問題の有無)
・身辺処理等の状態(食事・着脱・排泄
せつ
の状態など)
(3) 情緒障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て
悲しさ、不安、怒り、喜びなどの情緒の現れはどの幼児にもあり、ときには引っ込
み思案になったり、ふさぎ込んだり、乱暴な行動を起こすこともありますが、多くの
場合、そうした行動は一過性であったり、常識的な周囲の条件によって引き起こされ
たりすることが把握できます。
しかし、情緒障害のある幼児などは、こうした情緒的不安定の極端なものや、その
幼児の成育の過程において起こった心理的なもつれや軋轢
あつれき
によって引き起こされた
著しい症状を示します。
情緒障害のある幼児などが、遊びや生活の中でどのような困難さを感じ、そういっ
た困難さに応じてどのような支援の手立てがあるのかを考え、その幼児の実態に応じ
た支援をしていくことが大切です。情緒障害のある幼児などの困難さや困難さに応じ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(106ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 106ページた支援の手立てとして以下が考えられます。
①情緒障害のある幼児などの抱える困難さ
主として心理的な要因による情緒障害のある幼児などの場合、具体的には以下のよ
うな状態が生じることが多くあります。
・食事の問題(拒食、過食、異食など)
・睡眠の問題(不眠、不規則な睡眠習慣など)
・排泄
せつ
の問題(夜尿、失禁など)
・神経性習癖(チック、髪いじり、爪かみなど)
・対人関係の問題(引っ込み思案、孤立、不人気、いじめなど)
・情緒不安定(多動、興奮傾向、かんしゃく癖など)
・選択性かん黙、無気力などの状態
②困難さに応じた支援の手立て
入園当初は、どの幼児も園の生活になじめず不安定になり、不適応行動を起こすこ
とが多く見られます。情緒障害のある幼児などの場合には、特に強い行動特徴が現れ
ることがあります。先生は、すぐに皆を一緒にさせようとか、行動をおさめようなど
と焦らずに、時間をかけてゆっくりと見守っていくことが大切です。例えば、母親か
ら離れると不安に襲われる幼児については、母親から無理に引き離すことなく、慣れ
て安定するまで母親の付き添いを求める、ときには保育時間を短くする、個別に関わ
る時間を設けるなど、柔軟な対応が求められます。なお、情緒障害のある幼児などは、
一般に、親の不安や感情に敏感に反応するという特徴があります。親の不安を取り除
くための適切な対応が必要です。
先生は、どのような不適応状態を示す幼児にも、欲求がありながらもそれを満た
すことができないでいる状況にあることなど、そうした症状や行動を示さざるを得
ない状況や背景があることを理解する必要があります。例えば、内向的な幼児を見
ると、何とかして話をさせようとして何度も質問したり、口を開かせるような場面
を強引につくろうとする、孤立している幼児がいると他の幼児との遊びに強く誘っ
たり性急に他の幼児の中に入れようとする、乱暴さや攻撃性が強く、他の幼児と衝
突する行動の多い幼児に対しては禁止や制限のみで対処しようとするなど、先生の
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(107ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 107ページ一方的な促しや直接的な働き掛けのみでは症状や行動が改善されることはあまりあ
りません。まずは幼児と先生間の信頼関係を成立させることが大切です。
人との関わりの中に存在するルールや社会性を身に付けていくことは大切です。幼
児と先生との信頼関係を基盤に、他の幼児との関係に広げていくようにするとよいで
しょう。また、安定した環境の中で、他の幼児や先生と一緒に活動する喜びや楽しさ
を味わい、集団の雰囲気に慣れていくことも重要です。例えば、動作の模倣、遊び、
劇、係活動などの活動を通じて、集団での役割を理解し、相手の立場が理解できるよ
うにすることが考えられます。その際には、他者との触れ合いを深め、円滑に集団参
加ができるようきめ細かな配慮を行うことが求められます。
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する
先生の必要な支援の下で、情緒障害のある幼児などが園での遊びや生活を楽しみ、
他の幼児との関わりを広げていけるようにすることが大切です。しかし、焦ってはい
けません。情緒障害のある幼児などの周囲の人、物、雰囲気の全てがいきなり変わっ
てしまっては、精神的に不安定になる恐れがあります。当該幼児が安心して園で過ご
せるように、当該幼児のペースで、保護者から担任へ、そして他の先生や他の幼児へ
と関わりを広げていくようにします。情緒障害のある幼児などが、クラスの一員とし
て他の幼児と共に遊びや生活を楽しめるようにすることが大切です。
コラム 未就園児の保育や入園後の保護者付き添いを通して(4歳児)
~保護者から先生、そして他の幼児へ。信頼する人を拠り所に自分の世界
を広げていく~
支援のポイント
入園当初は、どの幼児も初めて出会う場や人に対して不安を抱いたり、不適応行
動を起こしたりします。情緒障害のある幼児などの場合、特に強い行動特徴が現れ
ることがあります。無理に皆と一緒に行動させようなどとせず、時間をかけてゆっ
くりと見守りながら、先生との信頼関係を築いていくことが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(108ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 108ページ他者との関わりにおける先生の思い
G児は、入園前の遊び場開放では、母親といつも一緒で、母親がその場所から少
し離れようとするだけでも不安そうな表情を見せていました。そこで、入園前に、
G児と保護者が一緒に登園し、先生を交えた3人で遊ぶ機会をつくり、G児が保護
者を拠り所にしながら、少しずつ先生との間の信頼関係を築き、先生と一緒にいる
と安心して心を開くことができるようにしていきたいと考えています。
遊びや生活の様子
【入園前の遊び場開放】
園では、毎週水曜日、未就園児の遊び場開放をしています。G児には、安心して
遊べるように、保護者に親子で遊びに来てもらうように働き掛けました。
G児は家では電車で遊ぶことが好きだと聞いていたので、ある日、保育室にレー
ルを組み立てて電車を置き、すぐに遊び出せるようにしておきました。
母親が、「Gちゃん、お家と同じのがあるよ」とG児を誘うと、G児は「あ、はや
ぶさ」と興味をもちました。先生が「Gちゃんちにもあるの?」「これ、何ていう新
幹線?」と話し掛けますが、G児は黙ったままです。母親が「Gちゃん、これ、よ
く知っているよね」と声を掛けました。先生が「へぇ、すごい。ママも知っている
のね」と笑顔で返しました。母親が何か言い掛けようとすると、G児は「これ、は
やぶさ」と手に取り、先生に見せに来ました。先生が「はやぶさって言うんだ。よ
く知っているね。はやぶさに乗って、どこに行こうかな。動物園? 温泉? Gち
ゃん、どこに行きたい?」と尋ねると、G児はしばらく考えて「温泉!」と答え、
やり取りをしているうちにG児の緊張がほぐれてきて、3人で電車ごっこを楽しみ
ました。先生は、「一緒に遊んで楽しかった。また遊ぼうね、待っているね」と繰り
返し伝え、園で遊ぶことが楽しいと思えるようにしました。このように保護者や先
生と遊ぶ中で、G児は少しずつ、自分の思いを出せるようになっていきました。
【入園当初】
入園当初は、G児が安心して遊ぶことができるように、慣れて安定するまでは保
護者も一緒に保育室に入ってもらい、一緒にいてもらうようにしました。そして、
G児が好きで、家庭でもよく遊んでいる電車とレールの遊具を用意しておきまし
た。トイレや園庭など、保育室から移動する際には、個別に「トイレ行きの電車が、
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(109ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 109ページ出発します」、「終点です、園庭に着きました」など、G児に分かりやすく伝わるよ
うに言葉を掛けて、一緒に付き添うようにしました。
次第に、保護者が少し離れた所から見ているだけでも安心して遊び、先生にして
ほしいことややってほしいことなどを話すようになっていきました。
他者との遊びや生活を楽しむことができる支援策の検討
情緒障害のある幼児などに対しては、まず大人への信頼感がもてるような支援を
心掛けます。園であれば、信頼できる対象が、保護者を中心にしながら先生へと移
行していくようにします。そして、信頼の対象が重なりをもちながらスライドさせ
ていくようなイメージで、保護者から担任へ、そして他の先生や他の幼児へと広が
っていくことが大切です。
そこで、まず園に慣れて安定して過ごせるようにするために、当該幼児と当該幼
児の拠り所となる大人(保護者)が園で安心して楽しく過ごせるような時間や場を
用意し、丁寧に関わるようにします。特別に当該幼児とその保護者のみを園に呼ぶ
方法もあれば、地域の未就園児が遊ぶ遊び場開放や親子登園の日などを活用するこ
とも考えられます。事前に当該幼児の好きな遊びや興味をもっていることなどを聞
き取り、準備しておくと、関わりのきっかけや遊びのきっかけになるかもしれませ
ん。保護者に、家庭でよく使っている遊具や用具を園に持ってきてもらうと、当該
幼児が慣れ親しんだ遊具や用具により、一層安心するかもしれません。
入園前に園に来てもらった際には、先生も一緒に仲間に加わり、当該幼児に、保
護者と先生が楽しく遊んでいる様子や雰囲気が伝わるように遊び、当該幼児が先生
にも信頼感をもてるようにしていきます。園に来てもらう回数や時間など、状況に
応じて工夫しましょう。そして、当該幼児が園に慣れてきたと思っても、無理に母
親から引き離すことはせず、園に慣れて安定するまで保育時間を短くしたり、個別
に関わる時間を設けて柔軟に対応したりすることが大切です。
そして、先生と一緒に過ごせるようになってきたら、先生がその拠り所となり、
先生と一緒に過ごす他の幼児との関わりを考えていくようにします。保護者から先
生へ、先生から他の幼児へと関わりを広げていけるようにします。その際には、焦
らず、当該幼児の気持ちの安定の状況を見極めるとともに、当該幼児が親しみを感
じている先生等が寄り添うことが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(110ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 110ページ9.自閉症などに関する基本的な理解と支援の手立て
(1) 自閉症などの概要
自閉症は、他者との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が
狭く特定の物にこだわることを特徴とする発達の障害です。その特徴は3歳くらいま
でに現れることが多いが、成人期に症状が顕在化することもあります。
また、これまで自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などのいろいろな名
称で呼ばれていましたが、近年では自閉スペクトラム症と表現することも増えていま
す。スペクトラムとは連続していることを意味し、自閉スペクトラム症が主に社会性
やコミュニケーションの質的な不具合により生じる障害であり、同じ自閉スペクトラ
ム症でも周囲の理解や対応によって一人一人の困難の状況が変わってきます。
(2) 自閉症などのある幼児などに見られる行動等の特徴
同じ特性でも現れ方は一人一人異なり、当てはまることも人それぞれですが、次の
ような行動等の特徴が見られることが多いとされています。
〇人との関わりに関すること
・呼びかけても返事をしない
・視線が合わない
・他の幼児に興味を示さない
・表情を見て相手の気持ちを理解することが難しい
・相手の気持ちや状況を考えず、関わり方が一方的になってしまう
・悪気はなく相手を傷つけたり、その場にそぐわない言動をしたりしてしまう
・集団で活動することが苦手
〇コミュニケーションに関すること
・話し言葉が出ない(気持ちや言いたいことを上手く言えない)
・「これ」「それ」「あれ」などの指示語では伝わらないことがある
・質問に質問と同じ言葉を繰り返して答えたり、独り言が多かったりする
・話すスピードや抑揚が平坦など、特異な使用が見られる
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(111ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 111ページ・普通の言葉遣いではない独特の言い方や自分の好きなことだけを一方的に質問し
続けたりすることもある
〇興味や関心やこだわりに関すること
・興味や関心の幅が狭い、または偏りがある
・同じこと、同じ物へのこだわりがある
・パターン的な行動として同じことを繰り返す
・一度気になったことがあると、そのことにとらわれてしまい、他のことができな
いことがある
・自分で決めた順番ややり方にこだわる(その順番ややり方は効率的でないことが
多い)
・急な予定の変更や初めての場面が苦手である
・特定の事物に興味や関心が集中することがある。例えば、動物や植物、カレンダ
ーや乗り物など。それに関する多量の知識を驚くほど身に付ける場合がある
〇感覚に関すること
・感覚に過敏や鈍さがある
《視覚》視覚の過敏性の例:些細な光をまぶしがる
《聴覚》聴覚の過敏性の例:特定の音(大きな音や高い音、泣き声など)に耳を
ふさいで嫌がる
《触覚》触覚の過敏性の例:手に物が付く、顔に水がかかる、帽子をかぶる、靴
下をはく、抱っこされるなどを嫌がる
《痛覚》痛覚の過敏性の例:少し触れただけでも強く叩かれたように感じてしま
う
痛覚の鈍さの例:けがをしていても痛がる様子がない。血が出ているこ
とに気が付かない、気が付いていても平気である
《嗅覚》嗅覚の過敏性の例:好きなにおいと嫌いなにおいがはっきりしている。
特定のにおいを嫌がる
《味覚》味覚の過敏性の例:一定の味のものを嫌がる。極端な偏食がある
〇注意・集中に関すること
・集中することが難しい
・何か見えたり聞こえたりすると、そちらに注意がいってしまう
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(112ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 112ページ・集中し続けてしまう。促しても別な方向に注意を向けることが難しい
〇運動・動作に関すること
・手指機能に不器用さがある
・身体の使い方にぎこちなさが見られる。協調運動(キャッチボールや縄跳びのよ
うに手と手、目と手、足と手などの個別の動きを一緒に行う運動)が不得意
・姿勢の維持が難しい
〇模倣に関すること
・先生や他の幼児を見て自分からまねして行動しようとしない
・他の幼児の活動に注目したり、模倣したり、同じ活動を並んでしたりすることが
苦手
こうした姿は遊びや生活の場面の随所で見受けられます。自閉症などのある幼児な
どの実態を把握するためには、どのような場面でどのような姿に注意すればよいのか
について知っておくことも大切です。以下に、いくつかの例を示します。なお、幼児
期は、これから、興味や関心が広がったり、言語を獲得したり、他者と関わったりし
ていくようになる時期であることに十分に留意する必要があります。
・情緒の状態(不安傾向の有無、心理的な過敏性の有無など)
・行動特徴(注意集中が困難、興味や関心が移りやすい、多動性の有無と程度、固執
性・こだわりの有無、常同行動の有無、身近な危険の察知や回避の可否、衝動的
な行動の有無、粗暴な行為の有無など)
・対人関係(視線が合うか、名前を呼ばれて振り向くか、他者への働き掛けがあるか、
他者からの働き掛けへの反応、他者の立場や心情の理解、遊びの際の他者との関
わり、集団活動への参加状況など)
・意思の交換や言語(簡単な言葉の指示が分かるか、文字や数字の理解があるか、ど
のようなコミュニケーション手段をもっているかなど)
・身辺処理等の状態(食事の可否、衣服の着脱の可否、排泄
せつ
の可否、簡単な片付けや
手伝いの可否など)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(113ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 113ページ(3)自閉症などのある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て
幼児期には、幼児は家庭において親しい人間関係を軸にして営まれていた生活から
より広い世界に目を向け始め、生活の場、他者との関係、興味や関心などが急激に広
がっていきます。
自閉症などのある幼児などは、その特性から「自閉症などのある幼児などに見られ
る行動等の特徴」で示した行動等が結果として現れているなど、特性による生きづら
さを抱えています。
自閉症などのある幼児などが、遊びや生活の中でどのような困難さを感じ、そうい
った困難さに応じてどのような支援の手立てがあるのかを考え、当該幼児の実態に応
じた支援をしていくことが大切です。自閉症などのある幼児などの困難さや困難さに
応じた支援の手立てとして以下が考えられます。
①自閉症などのある幼児などの抱える困難さと困難さに応じた支援の手立て
自閉症などのある幼児などへの支援に当たっては、「安心していられること」「分か
りやすいこと」「頑張れること」が重要です。この3つの視点をもちながら、「時間」
「場所」「活動」などを目で見て分かるようにすること、当該幼児が自ら理解して行
動できるよう環境を整えることが大切です。そうすることで、当該幼児が自発的に行
動することや自分でできる喜びを味わう機会も増え、自信につながります。
◯支度の場面
登降園時に、なかなか支度に取りかかれなかったり、支度や着替えが一人でできな
かったりする場合、活動の見通しがもてなかったり、気が散ってしまったりすること
が原因として考えられます。帽子やカバンなど、「何を」「どこに」が当該幼児に分か
るように絵や写真で目印を示したり、支度や着替えの手順表など活動の手順を視覚的
に示したりして、目印や手順表を見ながら自分でできるようにしていくことが考えら
れます。写真や絵、ひらがな文字など、その子に合った方法で目印や手順表を作るこ
とが大切です。
また、「いつから」「いつまで」が分かるように時計やタイマーなどを活用すること
も有効です。時計の絵や写真に印をつけて示すなど、時計と見比べる習慣を身に付け、
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(114ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 114ページ将来的に時計の理解につながることを見据えて支援します。
支度や着替えが終わった後、本人にとって嬉しいことや好きなことがあるという見
通しがもてると、意欲的に取りかかることができるため、支度や着替えが終わった後
に何があるのかを本人と話し合って決めておくことも大切です。
◯朝の会の場面
想像力のつまずきにより、先を見通せない不安や急な予定の変更への不安が生じる
ことがあります。障害特性として「同じ」にこだわるのも、このことが原因の一つと
考えられます。本人が納得して活動の場へ移動したり、活動に取り組んだりすること
ができるようになるため、「いつ」「どこで」「何をする」「次は何をする」についてそ
の子が理解できる方法で、目に見えない時間を視覚的にスケジュールにして示すこと
が大切です。
朝の会で使用しているクラス全体の予定表では、どこを見てよいのか分からなかっ
たり、絵や写真が活動とつながらなかったりして見通しをもてていない場合は、個別
に本人用のスケジュールを用意し、終わったら外していく方法や外さずに今の活動に
印を付けていく方法など、当該幼児の反応を見ながら、その子に合った支援をします。
毎日の積み重ねを通して園での生活に見通しをもてるようにスケジュールの理解を教
えていくことはとても大切です。また、スケジュールに変更があるときには、不安に
よる混乱を軽減するため、事前に伝えて本人の納得感を得ることが重要です。
先生が話をしているときに頻繁に発言してしまう場合には、朝の会の中で質問でき
る時間を設け、話を聞く場面と発言してよい場面のメリハリをつけるようにします。
クラス全体の「約束」として、先生の話を聞くことや質問は後ですることなどを徹底
することが大切です。集団で活動するために必要なルールを伝える際には、より伝わ
りやすくするため、イラストなどで「静かにします」と示すことも有効です。
また、視覚的、聴覚的な情報であふれている環境では、気が散ってしまい、注目す
べきものに集中することができなくなるため、できるかぎり指示や提示の仕方を整理
して当該幼児が集中しやすい環境づくりをすることが大切です。例えば、絵本の読み
聞かせなど、注目してほしい場面では、読み手の背景に掲示物や展示物などがあれば
外したり、カーテンなどで覆ったりするなど、より注目しやすくなるようにします。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(115ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 115ページ◯製作活動の場面
手先が不器用だったり、やり方が分からなかったりして、製作活動に参加できず、
離席が目立つ場合には、先生が手伝ったり、注目しやすい工程表を用意して一つずつ
「何を」「どうする」を視覚的に示したりします。その際、個別に支援が必要な幼児に
対しては、先生が援助しやすい席に座らせて、「手伝って」カードや個人用の工程表を
用意して援助します。
また、感覚の過敏さが原因となり製作活動を楽しめない場合は、苦手な刺激を把握
しておき、事前になるべく避けられるよう準備します。苦手なこと(視覚、聴覚、触
覚、嗅覚、味覚等)を我慢させるというよりも、その苦手な刺激にさらされず、安心
して過ごせるようにすることが大切です。例えば、工作で手にのりが付くことを嫌が
るのが分かっているのであれば、スティックのりを準備しておく、すぐに手が拭ける
ように手拭きを準備しておくなど、苦手な音があれば、音源から一番離れた位置にす
る、または、イヤーマフ(耳栓)を使用するなど、できるだけ事前に予測し準備する
ことが必要です。
◯給食の場面
偏食(激しい好き嫌い)がある場合、味覚や嗅覚の過敏さや色や形態、素材へのこ
だわりが原因となっていることが考えられます。無理強いすることはせず、苦手な食
べ物の量をかなり減らして配膳し、おいしく楽しい雰囲気の中で、先生とのやり取り
を通して苦手な食べ物に少しでも挑戦できるよう、焦らず長期的な視野をもって取り
組むことが大切です。
また、一人でできることが広がるよう、給食の準備や手洗い、うがい、歯磨きなど
も、手順表を用意します。その際、指示は一度に一つから始め、伝わって指示どおり
できることが定着したら、一度に提示する指示の量を増やしていくようにします。
◯遊びの場面
遊びを切り上げられない場合には、遊びの終了の合図の前に個別に終了の予告をし
て一緒に片付けを始めたり、次に何をするのか、次いつ遊べるのかなど、スケジュー
ルを確認したりして、本人が納得して切り上げる準備が整ってから全体に向けて終了
の合図を出すようにします。遊びで作った物や遊んだ物などを置く場所を決めて、そ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(116ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 116ページこへ置くことで遊びを切り上げられるようにすることも有効です。
また、遊んだ遊具や絵本などを片付ける場所に絵や写真で目印を付けて視覚的に分
かりやすくして、自ら片付けに取り組めるようにします。自分で片付けることは、活
動の終わりを意味し、活動の切り替えの理解につながります。
遊具を使う順番やおもちゃの貸し借りなどで他の幼児といざこざが生じてしまう場
合、クラス全体に対して順番や貸し借りのきまりを周知しておきます。その際、幼児
期は、幼児同士のいざこざを通して折り合いを付ける体験をし、きまりの必要性に気
付いていく時期であることへの配慮も必要です。幼児同士できまりを考えるなど、先
生の一方的な指導にならないように配慮したり、遊具の取り合いでいざこざが生じた
ときに先生が別の遊びに誘ったりするなどの工夫もあります。さらに、遊具を複数準
備するなどのいざこざを未然に防ぐために環境を整えたり、当該幼児に伝わるように
絵カードで示したりすることも大切です。また、怒りが抑えられないことが課題とな
っている場合、怒りが抑えられないときの対応を事前に本人と先生で話し合い、視覚
的に怒りのレベルとレベルごとに何をすれば落ち着けるのかを決め、その活動ができ
るように準備しておくなど、気持ちのコントロールへの支援が重要です。
◯行事の場面
行事が近くなるとその準備でいつもと異なることが多くなり、見通しがもてずに不
安になる場合があります。この場合、月の予定や週の予定、一日の予定や一時間の予
定など、スケジュールとして様々な示し方がありますが、行事などの特別な日課があ
るときには長期的な見通しを示すカレンダーや手作りの日めくりなどを示して事前に
予告しておくとよいでしょう。長期的な見通しをもつことは難しいことですが、今年
は難しくても来年はできるようになるかもしれない、という気持ちをもって取り組む
ことが大切です。
行事当日には、行事内容を視覚的なスケジュールで示し、その子の出番がいつなの
か、何をするのかを示します。手作り絵本やめくり式の絵カード、プリントなど当該
幼児の実態に応じたスケジュールを作り、行事の進行とともに当該幼児と一緒に確認
します。出番ではない待ち時間には、当該幼児がしてよい活動(お気に入りのグッズ
や本など)を用意してスケジュールに示し、落ち着いて過ごせるようにします。
また、プールなど当日にならないと分からない予定は登園時、玄関にプールの可否
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(117ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 117ページを示したり、先生と一緒に確認する時間を設けたりします。どのような確認方法とす
るのかを決めて定着させ、見通しがもてるようにします。
◯その他、全般を通して
話し言葉は消えてしまいますが、絵カードや文字で示す視覚情報は、消えることな
くいつでも何度でも確認することができるため、コミュニケーションにおける視覚支
援は、障害の有無にかかわらず多くの幼児にとって有効な支援の一つです。見ること
などは能動的な活動であるため、情報が入りやすく理解につながりやすくなります。
言葉の発達の遅れや偏りが見られる幼児や、まだ話し言葉がない幼児の場合には、
コミュニケーションの支援方法として絵カードを使用することが有効です。当該幼児
の好きなものや好きな活動を絵カードにして、絵カードを先生に手渡す場面を設定し、
カードを手渡されたらすぐにその要求に応えることで、カードを渡すと相手に自分の
要求が伝わることを身に付けられるようにします。伝えたいことを伝えられるように、
段階的に相手や場所、絵カードの内容などを広げていくようにすることが大切です。
絵カードと言葉が一致し、徐々に絵カードがなくても言葉で理解できるようにするた
め、絵カードを使うときには言葉を添えるようにしましょう。また、文字がまだ読め
ない幼児の場合でも、絵カードにひらがな文字を添えることで、絵カードを使う先生
の言葉が統一され、当該幼児の言葉の理解につながりやすくなります。絵カードの大
きさや素材などにきまりはないので、使いやすく、当該幼児に合ったもので作ります。
当該幼児には禁止を伝えるよりも、どうするとよいのかを伝えるようにします。し
てはいけないことを「○○しちゃだめ」と言われても、当該幼児が何をしたらよいの
かは伝わらないため、何をしてほしいのか、「○○します」というように、当該幼児に
伝わる方法で伝えるように心掛けることが大切です。
集団の中に速やかに入ることが難しかったり、集団の中に居続けることが難しかっ
たりする場合には、無理やり集団に入れようとはせず、頑張り過ぎて疲れてしまった
ときや、イライラやモヤモヤするときに一度気持ちを落ち着かせることができる環境
(場所やルール)を用意します。その場所には落ち着くことができるように、当該幼
児の好きな「もの」「こと」を用意しておき、気持ちを整え、立て直すことができたら、
また集団に戻り、活動に参加できるようにします。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(118ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 118ページ(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する
先生の必要な支援の下で、自閉症などのある幼児などが園での遊びや生活を楽しみ、
他の幼児との関わりを広げていけるようにすることが大切です。他の幼児との関わり
を深め、遊びを展開していく際に大切なことがあります。それは、自閉症などのある
幼児などの困難さに応じた支援を、他の幼児との関わりや集団の生活の中で自然に取
り入れていくことです。しかし、その支援によって、他の幼児が遊びを楽しめなくな
ることは避ける必要があります。自閉症などのある幼児などが、クラスの一員として
他の幼児と共に遊びや生活を楽しめるようにすることが大切です。
コラム 紙芝居ごっこを通して(4歳児)
~当該幼児の得意なことを生かして他の幼児との遊びを展開する~
支援のポイント
好きなことや得意なことには、一人で集中して取り組む一方で、皆と一緒に行動
するのは苦手なので、自閉症などのある幼児などが好きなものや得意なことを生か
していくことが必要です。
他の幼児との関わりにおける先生の思い
皆と一緒に行動させよう、他の幼児と関わりをもたせようとすると、かえって落
ち着かずに不安になってしまうため、じっくりと安心して自分の好きな遊びややり
たい遊びを楽しむ経験を重ねながら、他の幼児との関わりをもてるようにしていき
たい。
紙芝居ごっこの様子
H児は絵をかくことが好きで、遊びの時間にはいつも一人で世界中の国旗をかい
ています。先生はH児がかいたたくさんの絵を紙芝居のようにしてクラスの皆に紹
介したら、他の幼児が関心をもって見るのではないかと思い、他の幼児と関わるタ
イミングを見計らっていました。
先生は、H児に「Hちゃんて、こんなにたくさんの国、知っているのね。これ、
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(119ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 119ページ先生に貸してほしいんだけど、いい?」と尋ねると、H児は「うん」とうなずきま
した。先生は、H児の隣に座り、借りた数枚の国旗の絵を使い、オリジナルの紙芝
居にして創作の話を始めました。「ここは何という国ですか?」とH児に問い掛け
るように話すと、H児は「チェコだよ」と言いました。先生はその言葉に合わせて
「チェコに着きました。チェコでたくさん遊ぶことにしました…」と続きの話を始
めると、周りにいた幼児が興味をもって集まってきて、先生の問い掛けにH児が応
えながら進めるという紙芝居に、自然と聞き入っていました。先生が紙芝居を終え
ると自然と拍手が起きました。先生は「Hちゃんのかいた紙芝居、面白かった。後
で皆に紹介したいから、ここを片付けようね」と促しました。すると、H児は、自
分からクレヨンやかいた紙を自分のロッカーに片付け始めました。
降園時、先生がクラスの皆の前で見せると、「Hちゃんの絵だ」「Hちゃん、すご
い」という声が上がりました。クラスの皆は自分の知っていることを話したり、友
達の話を聞いたりするなど、国旗の話題から様々に興味が広がっていきました。H
児も自分がかいた絵がたくさん出てきて「僕の絵だ」と、とても誇らしげで嬉しそ
うにしていました。
その後、しばらく自分で絵をかいてお話をつくる創作紙芝居ごっこは続き、国旗
をかいているH児の周りで一緒に絵をかく幼児たちの姿が見られるようになりま
した。
他の幼児と共に遊びや生活を楽しむことができるような支援を考える
クラスでは皆で一緒に過ごす時間も楽しいものだと感じられるように、集合時に
は、必ず楽しいことがあると思えるように絵本や紙芝居、手遊び、歌などを取り入
れて、そこにいることが楽しくなるような雰囲気づくりをしていくことは、どの幼
児にも大切なことです。そのような時間を過ごす中で、園の生活のリズムに慣れて
安心して過ごせるようになっていくことが重要です。
その上で、H児のように一つのことに集中し、他の幼児との関わりがもちにくい
幼児には、あえて他の幼児と一緒に遊ぶように無理に誘うことはせず、まずはその
幼児のやりたいことができるように十分に時間をとったり、遊具や用具を準備した
りします。
クラスの中で当該幼児が一日の過ごし方が分かり、安心して過ごせるようになっ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(120ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 120ページてきたら、他の幼児と関わるきっかけとして、好きな遊びや得意なことが、他の幼
児にも伝わるような働き掛けをしていきます。本人が好きな遊び、本人が始めた遊
び、本人が考えた遊びをうまく取り上げて、先生がきっかけをつくり、好きなこと
や得意なことが他の幼児から認められる喜びを感じたり、クラスの一員としてのつ
ながりを感じたりできるようにしていきます。
一方で、片付けの時間になっても、いつまでも遊んでいるという場面も生じてき
ます。そのようなときには、無理に遊びを切り上げることはせず、遊びの延長上で
当該幼児が納得して遊びを切り上げられるように、遊びや生活の流れを考えて、「か
き終わったらおしまい」「最後の一枚ね」「片付けが終わったら、紙芝居が始まるよ」
など、事前に言葉を掛けて次の見通しがもてるようにしていきます。
一日の流れが分かるように掲示したり、身支度や手洗いなどの手順を示したりし
て、視覚情報で、次に何をするのか見通しがもてるような工夫も大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(121ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 121ページ10.学習障害に関する基本的な理解と支援の手立て
(1) 学習障害の概要
基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算す
る又は推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難さを示す様々な状
態を指します。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの要因による機能
不全があると推定されますが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害
や、環境的な要因が直接的な原因となるものではありません。
なお、学習障害は、教育分野と医学分野でその定義が異なっていることや、限局性
学習症と言われることもあることに留意が必要です。
(2) 学習障害のある幼児などに見られる行動等の特徴
学習障害により困難さを示す領域は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推
論する」であり、このうちの一つ又は複数について著しい困難さを示す状態をいいま
す。つまり、様々な状態を表す包括的な用語であり、学習障害にはいろいろなタイプ
があります。なお、全般的な知的発達に遅れはありません。
園においては、例えば、パズルや積み木で遊ぶことなどは得意であるが、豊かに対
話したり、生活経験を言語で表現したり、質問に対して言語で的確に答えたりするこ
とが難しい幼児、言葉での会話はとても滑らかに行いますが、絵をかくことにおいて
は少し苦手に思ったり、遊びの様子を見ていると四角形と名称は言えても模写ができ
ない幼児などです。あるいは、自分の下駄箱やロッカーの位置を覚えにくく、物と物
をどのような位置に置いたらよいのか理解しにくく、道具の操作などが極端に不器用
だったりする幼児もいます。しっかりしているのに、特定な活動場面で、できなかっ
たり苦手なことがあったりするため、「こんなことがなぜできないのか」と周囲に理解
されず、その原因を親のしつけの問題とされたり、本人がわざとしないなどと問題視
されたりすることもあります。本人のアンバランスな状態を正しく理解することが重
要です。具体的には次のような特徴が見られます。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(122ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 122ページ〇 基礎的な能力に著しいアンバランスさがあること
全体的な遅れではなく、ある一部分でつまずいている状態を示します。例えば、身
体をよく動かし元気に遊び回り、先生の指示も理解し、やり取りも不自由なくでき、
園生活で大きな課題はないと思われている幼児が、「あ」の付く言葉集めやしりとりが
できない、というような状態です。このようなアンバランスさが極端な場合、就学後
に学習上の困難さを示す可能性が高くなります。
言葉の言い間違えや聞き間違え、話し言葉の遅れ、しりとりができない、はさみが
うまく使えない、靴の左右を間違える、2語文程度の言いまねができない、お手本を
見て四角がかけない、ものを等分に分けられないなどのいずれかの様子が顕著に見ら
れたら、保護者の気持ちにも配慮しつつ専門家等への相談を勧めることも考えられま
す。専門家に相談することで、アンバランスの有無やその特徴を把握することができ
ます。
(3) 学習障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支援の手立て
幼児は聞く、話すといった活動を通して音声言語を獲得していきます。そして、小
学校入学以降はこのような音声言語の発達を前提として、読む、書くという文字言語
を獲得していきます。学習障害のある幼児などは、小学校に入学してから学習上の困
難が顕在化しますが、園のときから、その兆しは見られます。知的障害のある幼児な
どは同年齢の幼児と比べて全体的に発達が遅れているが、学習障害のある幼児などは、
全体的な遅れではなく、ある部分に限って困難さを示します。
学習障害のある幼児などが、遊びや生活の中でどのような困難さを感じ、そういっ
た困難さに応じてどのような支援の手立てがあるのかを考え、当該幼児の実態に応じ
た支援をしていくことが大切です。学習障害のある幼児などの困難さや困難さに応じ
た支援の手立てとして以下が考えられます。
①学習障害のある幼児などの抱える困難さ
幼児期における学習障害による困難さは、以下のものの一つ又は複数です。
○ 話を正しく聞き取って、 理解することが難しい。例えば、集団場面でその内容が
聞き取れないことがある。聞き漏らしや聞き間違いがあったり、指示の理解が難し
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(123ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 123ページかったりもする。
○ 伝えたいことを相手に伝わるように的確に話すことが難しい。単語を羅列したり、
年齢に比べて内容的に乏しい話をしたりする。適切な速さで話すことが難しく、た
どたどしかったり、言葉に詰まったり、早口だったりする。
○ 数の概念を理解することが難しい。年齢相応の数の操作(例えば、数を数えるこ
と、多少の判断、等分配分など)についての理解が難しかったりする。
上記以外にも、絵や図形をかく際に、年齢不相応のバランスの悪さや形が整わない
などの様子が見られます。
②困難さに応じた支援の手立て
部分的に苦手なところがあり、その苦手な部分は、他の幼児と同じようなやり方で
教えられてもできない場合があるので、当該幼児の認知特性を踏まえた対応が重要で
す。
◯話を聞く場面
これから始める活動について、分かりやすいキーワードを盛り込んだり、活動内容
を分かりやすく絵、写真で示したりします。場合によっては、先生が実演して見せる
ことも有効です。集団全体に向けて話す前に、個別に話しておくことで、学習障害の
ある幼児などが理解しやすくなることもあります。
◯話をする場面
当該幼児が視線や身振りで伝えようとしている内容を受け止めて、「~なんだね」と
言葉で返します。学習障害のある幼児などが話し始めた事柄については、「誰と行った
の?」「それで、どうなったの?」などと話す内容を深め、話を発展させるようにしま
す。
◯数を操作する場面
当番活動で具体物(例えば画用紙)を配る場面では、他の幼児と二人で分担して(一
人は画用紙を持ち、他の一人が1枚ずつ配るなど)行うようにします。すごろく遊び
などの数を扱う遊びでは、先生が一緒に数を数えて、コマを進めるようにします。
学習障害に起因する困難は、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(124ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 124ページという場面にとどまらず、場合によっては、それらが複合化されて他の様々な困難に
結び付くことがあります。例えば、位置や形を捉えることの困難により表情の変化が
読み取れなかったり、話すことや聞くことのつまずきによって、ソーシャルスキルの
未習得や対人関係の形成等における困難となって現れたりすることもあります。
年長になると、自分がイメージしたように絵がかけなかったり、製作ができなかっ
たりすることにより、苦手意識が芽生え、苦手なことを避けようとする様子が見られ
たり、自分の行為に自信がもてなくなったりすることもあります。能力にアンバラン
スがあることは、できないのではなく、学び方が他の幼児と異なることや、やり方を
変えれば、できることがあることを先生が理解して自己肯定感や有能感を育てるよう
心掛けることが重要です。
(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する
先生の必要な支援の下で、学習障害のある幼児などが園での遊びや生活を楽しみ、
他の幼児との関わりの中で多様な体験ができるようにすることが大切です。先生の励
ましや手助け、他の幼児との楽しい雰囲気の共有によって、苦手なことにも取り組む
ことができることでしょう。そして、先生や他の幼児と達成感や充実感を共有するこ
とにより、次の機会にも挑戦してみようという意欲もわいてきます。他の幼児と言葉
を使った遊びや数遊びなどを通して、学習障害のある幼児などが言葉や数字などの苦
手なことに楽しみながら親しんでいけるようにすることが大切です。
コラム カルタ遊びを通して(5歳児)
~絵やリズムの活用により、楽しみながら言葉も理解しやすくなる~
支援のポイント
全体的な遅れではなく「読む、書く」ことが苦手かもしれない幼児への支援とし
て、当該幼児のアンバランスな状態を正しく理解して、アンバランスの有無や特徴
を把握し、遊びの中で経験できるような機会をつくることが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(125ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 125ページ遊びを通した体験における先生の思い
遊びを通して、「読む、書く」をI児なりに経験し、小さな成功体験を積み重ねな
がら自信がもてるようにしていきたい。
カルタ遊びの様子
I児は、友達と駆け回って遊び、よくしゃべり、明るくて、いつも遊びの中心に
いますが、言葉遊びには参加しようとしません。先生はそのようなI児の様子に少
し違和感がありました。
お正月遊びの時期になり、クラス全体でカルタ遊びを行うことにしました。クラ
ス全体をいくつかのグループに分け、読み手は先生がして、グループごとにカルタ
遊びをすることにしました。
先生は、I児のグループは、あえて行動が少しゆっくりな幼児でグループを構成
しました。グループごとに座ったところで、先生はカルタのルールの説明を始めま
した。先生が読み札を読んでいるときは静かに集中して聞くこと、読み札と対にな
る絵札を見つけたら「はい」と声を出して絵札を取ること、同時に取ったときはじ
ゃんけんで決めるなどのルールを決めました。I児は、先生の話を聞いて、ルール
を理解した様子でした。
先生は、I児のいるグループの近くで読み札を読みました。「犬も歩けば…」と
読み、皆に分かるように「『いぬ』の『い』が書かれているカードを探そうね」とか
「犬の絵が描かれているカードだよ」と言って、文字だけではなく、絵でもカード
を探せるように働き掛けました。「あった!」とあちこちのグループから声が上が
り、I児は犬の絵を探して、カードを取ることができました。
先生は、全てのグループが「い」の絵札を取れたことを確認した後、絵札に書か
れている「い」を指し、「これが『いぬ』の『い』だね」と文字を確認しました。I
児は、「い」の絵札を手にして、先生に「取れた」と言って、笑顔になりました。
遊びや生活を楽しみながら体験を積み重ねることができる支援策の検討
「聞く、話す」ことが中心の園生活は、I児にとって何の不自由もありません。
5歳児になると、文字が読めるようになる幼児もいます。先生は、I児も、文字を
読めるだろうと思っていましたが、そうではありませんでした。「読む、書く」こと
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(126ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 126ページが苦手かもしれない幼児にとって、遊びながら苦にならない程度に言葉遊びで遊ぶ
中で、「自分はできた」という成功体験を積み重ねていくことが大切です。
カルタ遊びは、文字が読めない幼児には、絵を頼りに絵札を取って遊ぶことがで
き、文字を意識するきっかけになります。文字を理解するためには、音を正しく聞
き取り、それをひらがなに置き換える力が必要です。この力を育むために、言葉遊
びを取り入れることも一つの方法です。「言葉手拍子」(「りんご」と言いながら音
に合わせて手を3回叩く)、「抜き言葉」(「くるま」の「る」を取ったら何?)、「替
え言葉」(「むかし」の「む」を「お」に替えたら何?)などの言葉に親しむ時間を
意図的に取り入れていきましょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(127ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 127ページ11.注意欠陥多動性障害に関する基本的な理解と支援の
手立て
(1) 注意欠陥多動性障害の概要
ある程度の不注意、衝動性、多動性は、発達の途上においては、どの幼児にも見ら
れます。しかし、注意欠陥多動性障害は、不注意、又は衝動性、多動性を示す状態が
継続し、かつそれらが園生活を営む上で著しい困難を示す程度の状態を指します。
これらの様子は、幼児の成長や環境との相互作用の中で変化するともいわれていま
す。年少のときには動き回っていた幼児が、年長になると座っているが常に身体のど
こかを動かしているというように、幼児の成長に伴って動きが小さくなることがあり
ます。また、入園当初は目立たなかった幼児が年長になり担任や教室が変わって落ち
着かなくなったというように環境の変化で幼児の行動が変わることもあります。した
がって、周囲の環境や刺激の調整は、注意欠陥多動性障害のある幼児などにとって重
要なことです。なお、注意欠如・多動症といわれることもあります。
(2) 注意欠陥多動性障害のある幼児などに見られる行動等の特徴
注意欠陥多動性障害とは、典型的には、年齢あるいは発達に不釣合いな程度におい
て、以下のような不注意、又は衝動性・多動性の状態を継続して示し、それらが園生
活を営む上で著しい困難を示す状態を指します。
ア 不注意
気が散りやすく、注意を集中させ続けることが困難であったり、必要な事柄を忘れ
やすかったりする。
イ 衝動性
話を最後まで聞いて答えることや順番を守ったりすることが困難であったり、思い
つくままに行動して他者の行動を妨げてしまったりする。
ウ 多動性
じっとしていることが苦手で、過度に手足を動かしたり、話したりすることから、
落ち着いて活動や課題に取り組むことが困難である。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(128ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 128ページこの三つの特徴のうち、幼児の場合は、「衝動性」が顕著に見られます。いきなり保
護者の手を振り払って駆け出す、遊具やゲームの順番を待てない、他の幼児の所有物
をいきなり取り上げる、遊具や他の幼児の所有物に向かって行く際にじゃまな他の幼
児を突き飛ばしたり叩いたりする、といった行動をとることが多いため、「乱暴な幼児」
や「指示が通らない幼児」と捉えられることが多くあります。
「年齢あるいは発達に不釣合いな程度」と示したように、そもそも幼児は、じっと
していることが苦手で、「多動性」については、周囲の幼児も活動性が高く、それほど
注目されることはありません。「不注意」も注目されることはあまりなく、活発に動く、
好奇心の旺盛な幼児というように捉えられているかもしれません。
また、幼児期の注意欠陥多動性障害のある幼児などは人懐こさが目立つことが多く、
大人からかわいがられる可能性が高い一方で、衝動性の高さや多動による対応の困難
さにより、保護者の虐待的対応を誘発する可能性もあります。具体的には、次のよう
な特徴があります。
a 「不注意」「衝動性」「多動性」に関する以下の設問に該当する項目が多く、 その
状態が少なくとも6か月以上続いていること
○不注意であること
・細かいところまで注意を払わなかったり、不注意な間違いをしたりする
・遊んでいるときに注意を集中し続けることが難しい
・面と向かって話しかけられているのに、聞いていないように見える
・指示に従えず、また今やっていること(課題)を最後までやり遂げられない
・活動を順序立てて行うことが難しい
・気持ちを集中して努力し続けなければならない遊びを避ける
・活動に必要な物をなくしてしまう
・棚の中に片付けると(見えなくなると)見つけられない。予想して探すことがで
きない
・気が散りやすい(音や何かの刺激ですぐにそちらに気が向いてしまう)
・日々の活動で忘れっぽい
○衝動性があること
・質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう
・順番を待つのが難しい
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(129ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 129ページ・他の人がしていることをさえぎったり、じゃましたりする
○多動性があること
・手足をそわそわ動かしたり、着席していてももじもじしたりする
・座っているべきときに席を離れてしまう
・自由な行動が許されていないときに、過度に走り回ったり、保育室から飛び出し
たり、棚や机の上によじ登ったりする
・じっとしていない。又は何かに駆り立てられるように活動する
・過度にしゃべる
b 「不注意」「衝動性」「多動性」のうちの一つ又は複数が7歳以前に現れ、 社会生
活や園生活を営む上で支障があること
c 著しい不適応が園や家庭などの複数の場面で認められること
d 知的障害(軽度を除く)や自閉症等が認められないこと
(3) 注意欠陥多動性障害のある幼児などの抱える困難さに応じた支
援の手立て
ある程度の不注意、衝動性、多動性は、どの幼児にも見られます。幼児は、園での
遊びや生活を通して、例えば、水着などの忘れ物をすると他の幼児と一緒に楽しく遊
べなかったり、衝動的な行動により他の幼児とのいざこざが生じて遊びが中断してし
まったりする体験を通して、次第に注意力を養い自己抑制ができるようになっていき
ます。
しかし、注意欠陥多動性障害は、不注意、又は衝動性、多動性を示す状態が継続し、
かつそれらが園生活を営む上で著しい困難を示します。他の幼児と一緒に遊んでいて
も順番が守れなかったり、他の幼児の話を聞かずに自分の話ばかりしたがったりなど、
他の幼児と一緒に遊ぶ、他の幼児と協力して運動会・発表会等をするなどの集団生活
を営む上で困難さを感じることがあります。
注意欠陥多動性障害のある幼児などが、遊びや生活の中でどのような困難さを感
じ、そういった困難さに応じてどのような支援の手立てがあるのかを考え、当該幼児
の実態に応じた支援をしていくことが大切です。注意欠陥多動性障害のある幼児など
の困難さや困難さに応じた支援の手立てとして以下が考えられます。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(130ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 130ページ①注意欠陥多動性障害のある幼児などの抱える困難さ
ア 不注意
気が散りやすく、注意を集中させ続けることが困難であったり、必要な事柄を忘れ
やすかったりする。うっかりミスが多く、言われたことを何度も同じように失敗して
しまうことがあったり、物をなくしたり、忘れたり、いつもぼうっとしていて人の話
を聞いていない様子が見られたりするため、周囲からは、まじめでないとか、わざと
やっていると思われてしまう。
イ 衝動性
話を最後まで聞いて答えることや順番を守ったりすることが困難であったり、思い
つくままに行動して他者の行動を妨げてしまったりする。せっかちで、相手が嫌だと
分かっていても自分の感情が抑えられずに行動してしまうため、乱暴、自分勝手やわ
がままと見られてしまう。
ウ 多動性
じっとしていることが苦手で、過度に手足を動かしたり、話したりすることから、
落ち着いて活動に取り組むことが困難である。次々と新しいことを始めたり、しゃべ
り出したら止まらなかったりするため、落ち着きがない、やる気がないと思われてし
まう。
②困難さに応じた支援の手立て
ア 集中できるようにするための手立て(気が散りやすいことを防ぐための手立て)
・遊具の棚にカーテンを付けて見えなくしたり、パーティションなどを使って外部
刺激の少ない空間をつくったりして、遊ぶ際に刺激の少ない環境づくりを心掛ける
・目的以外の行動を起こす前に、声を掛ける。例えば、登園して朝の支度をせずに、
カバン等を置いたまま、友達の様子に見入ったり、遊びに参加したりしてしまう幼
児に対して、遊びに参加する前に、「朝の支度、しようね」と声を掛ける
・作業の手順を図示して、見通しがもてるようにする。例えば、朝の支度の手順を注
意欠陥多動性障害のある幼児などの見やすいところに掲示しておき、当該幼児の気
が散りそうになったら「ここまで、できたから、次は、これをするんだね」などと、
声を掛ける
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(131ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 131ページ・気が散りやすい幼児の席は、窓側を避け、先生に近い席に座らせるなどの集中しや
すい環境を整えるようにする
イ 順番を待ったり、最後まで話を聞いたりするための手立て
・並ぶ場所が分かるように待つ場所を作る。次の順番の人は目印のぬいぐるみを持
つなどして目で見て分かる工夫をする
・先生は、短い文で説明し、絵や写真を見せながら話すようにする
・何かやりたいときに手を挙げるルールや、カードを指差すというような約束をす
る
・聞こえの悪さがないかを確認する
ウ 落ち着いて行動するための手立て(思いつくままの行動や乱暴を防ぐ手立て)
・友達を蹴ったり、叩いたりしているときには、その場から離して、本人が落ち着け
る場所に連れて行き、興奮を鎮める
・感情のコントロールをする方法を一緒に考える。例えば、「10、数えようね」「深呼
吸してみよう」などと言って、一緒に行い、本人が落ち着ける方法を探る
・人を叩いたり、走り回ったりしてしまう背景を先生が推測し、意思表示の方法、例
えば「『やめて』『○○しないで』と言えばいいんだよ」と当該幼児に気持ちの伝え
方を教える
・トラブルの状況の記録を取っておき、トラブルが起きやすい状況を把握する
エ 活動をやり遂げるための手立て
・一つの活動の時間を短くするなどする
・一つの活動が終わったらほめ、活動が継続できるようにする
・活動の最中には「今は、○○をするよ」と声を掛ける
・活動量を調整するとともに、手順を絵カードなどで示し、視覚的に見通しが確認
できるようにする
オ 動き回ってしまうことを防ぐ手立て
・じっとして遊ぶような活動のときには、頃合いを見計らって、例えば物を運ぶなど
の手伝いを頼み、動ける時間をつくる
・注意欠陥多動性障害のある幼児などが動き始めそうなときに、当該幼児の肩に手
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(132ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 132ページを置き、すぐに「やりたい」気持ちを先生が理解していることを伝え、「いつでき
るか」を具体的に伝えたり、一緒に並んで待ったりする。待つ間も、飽きさせな
いような工夫をする
・どのような活動で集中するのか、どのような声掛けをすると落ち着くのかを記録
しておく
・保育室のざわざわした雰囲気や音、幼児同士のいざこざのような激しい口調の声
などが苦手な幼児は、保育室から急に出ていくことがある。「何か気になることが
あったの?」「何か嫌なことがあったかな?」など、動き出した理由を本人に尋ね、
原因を取り除く工夫をする
・保育室の一角にその子が落ち着ける場所をつくっておく
注意欠陥多動性障害のある幼児などは、幼少期より気が散りやすく、じっとしてい
ることができない傾向があり乱暴だったり、忘れ物や紛失物が多かったりします。そ
のため、周囲の大人から行動を強く規制されたり、叱責を受けたりする場面が多いと
考えられます。もちろん危険な行為は制止する必要がありますが、このような繰り返
しにより、自己肯定感が低下し、「自分は、何をやっても叱られる」、「大人に止められ
てばかりだ」といった無力感に陥ってしまう危険性があります。また、先生の当該幼
児への対応を周囲の幼児が見ていて、他の幼児からもその行動について強く言われた
り、他の幼児との遊びに参加しにくいような雰囲気にされたりすることもあります。
注意欠陥多動性障害のある幼児などの気になる行動は、この障害の特性によるもの
だということにできるだけ早く気付き、本人の自己肯定感が低下することのないよう、
障害の有無にかかわらず、幼児が互いのよさを認め合う関係をつくっていくように支
援することが重要です。行動のよい面を積極的に探してほめたり、叱責するよりも望
ましい行動を具体的に示したりすることが大切です。
注意欠陥多動性障害には、その症状を抑える薬があります。薬を服用する場合には、
主治医が家庭や園での様子を把握して、薬の量を調整していくことになるので、薬の
効用を正しく理解し、家庭や主治医との連携が不可欠です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(133ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 133ページ(4) 困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する
先生の必要な支援の下で、注意欠陥多動性障害のある幼児などが園での遊びや生活
を楽しみ、他の幼児との関わりを広げていけるようにすることが大切です。他の幼児
との関わりを深め、遊びを展開していく際に大切なことがあります。それは、注意欠
陥多動性障害のある幼児などの困難さに応じた支援を、他の幼児との関わりや集団の
生活の中で自然に取り入れていくことです。しかし、その支援によって、他の幼児が
遊びを楽しめなくなることは避ける必要があります。注意欠陥多動性障害のある幼児
などが、クラスの一員として他の幼児と共に遊びや生活を楽しめるようにすることが
大切です。
コラム 集合時や遊びの場面を通して(5歳児)
~当該幼児の思いの実現、きまりを守りやすい工夫など、状況に応じた支
援を行う~
支援のポイント
話を最後まで聞いて答えることや順番を守ったりすることが困難であったり、思
いつくままに行動してしまう幼児に対しては、先生は短い文で話したり、話をする
ときのルールを決めたり、見通しがもてるような支援を考えていくことが大切で
す。
他の幼児との関わりにおける先生の思い
思いつくままに行動してしまうこともあるけれど、その思いつきを生かし、他の
幼児も巻き込んで遊びを発展させることで、J児も他の幼児も遊びを楽しんでほし
い。一方、落ち着いて話を聞くことができないと、先生の注意を聞き逃して危険な
場合もあるので、短い言葉で簡潔に、絵や動画を使って分かりやすく伝えるなどの
工夫をしよう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(134ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 134ページ遊びや生活の様子
【皆が集合する場面】
先生が運動会で行うリレーについて説明を始めました。するとすぐに、J児が「知
ってる、それはさぁ…」と口をはさみました。J児は、いろいろなことをよく知っ
ていて、質問が終わらないうちに答えを言ったり、話の途中で割り込んできたりす
ることがよくあります。
このクラスでは、「話を聞くとき」「話すとき」のルールをつくっています。先生
は「先生が話をするので聞いてね」といつも決まったフレーズを言ってから話し始
めています。
先生は、J児が話し始めたので「今は先生が話すときね」と声掛けをして、J児
を含めクラス全体に「今は聞く時間である」ことを意識できるようにしました。そ
して、J児には、「時計の長い針が5になるまで話を聞いてね」と伝え、J児が見通
しをもてるようにしました。
時計の長い針が5を指し、先生の話が一区切りついたところで、「皆、最後まで
お話が聞けましたね。Jちゃんも、お話が聞けてえらかったね。Jちゃんのお話は
なぁに?」と尋ねました。J児が話した後、「皆の中でお話ししたいことがある人
はいますか?」とクラスの幼児たちにも発言の機会を設けました。
このように、クラス内でルールを決めておくと、おしゃべりの伝播が抑えられま
す。そうは言っても、先生が長く説明をしていたら、幼児たちが集中して聞いて理
解するとは限りません。短い言葉で簡潔に、絵や動画を使って分かりやすく伝える
ことが大切です。「人がお話ししているときに、しゃべっちゃだめよ!」と叱るの
ではなく、「待っててね」、「後でちゃんと聞きますね」という態度をとることが大
切です。
1日の計画を立てるとき、「この活動のときはこういうことが起こりそうだ」と
予測し、準備しておくことも大切です。クラスの活動をメインに据えながら、予想
されるJ児の行動への対応をどうするかなどをイメージしておくと慌てずに対応
できます。
J児の座る位置や先生が話す位置にも気を付けます。先生から離れていると集中
が途切れやすくなります。また、先生の後ろに装飾があったり、園庭が見えたりす
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(135ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 135ページると先生以外のことが気になることもありますので、環境にも気を配りましょう。
【忍者リレーごっこの場面】
幼児たちは、障害物を用いたリレーを「忍者リレーごっこ」と称して遊んでいま
す。忍者の修行になりそうな障害物を何人かで作り、先生と一緒にコースに配置し
ます。リレーごっこといってもまだ勝負をするというのではなく、一人一人がコー
スを走ることを楽しんでいました。
J児は走るのが得意なので、すぐに走りたそうにしていましたが、このときは、
自分の順番を待って、走り出しました。しかし、自分が走り終えて元の位置に戻っ
てくるとき、障害物を別の場所に移動させてしまいました。先生は、「あれ? 新
しいコースができたね。面白そう。先生に試させて」とJ児が置き換えてしまった
コースを走りました。すると、「面白そう。僕もやらせて」「私も走ってみたい」と
他の幼児も新しいコースを楽しみ始めました。「Jちゃんのコース、楽しいね」と
新しいコースを皆で楽しみ、その後もJ児は障害物を置くことが楽しくなり、次の
日も先生や他の幼児と一緒にリレーの準備を始めるようになりました。
このように、幼児の興味や関心に応じて、遊びのルールだけではなく、遊びその
ものも変化していきます。例えば、障害物を別のところに移動してしまったという
困った出来事も「やめてね」とか「戻そうね」など行動を抑制したり否定したりす
る言葉掛けではなく、担任がJ児の気持ちを理解し、面白さを共有し、楽しそうな
雰囲気をつくることで、それは困った場面ではなく、J児が活躍する場面になるこ
ともあります。このような働き掛けは、注意されることの多いJ児にとっては、自
分の行動が、先生をはじめ皆に認められた経験となり、満足のいく活動になったと
考えられます。
他の幼児と共に遊びや生活を楽しむことができる支援策の検討
注意欠陥多動性障害のある幼児などの興味や関心から発した活動を十分に行う
ことは、当該幼児に充実感や満足感を与えます。当該幼児が充実感や満足感を得
られるような活動の過程にこそ、発達にとって必要な体験があるといえます。当
該幼児の行動を抑制したり否定したりするような言葉掛けばかりでは、満足感も
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(136ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 136ページ達成感も得ることができません。
同時に、園は社会への入口でもあります。集団での生活を営む上でのきまりの
必要性について、園での遊びや生活を通して学んでいきます。J児も、他の幼児
と共に先生の話を聞くことの大切さは理解していても、障害の特性から自分の行
動を抑えることが容易ではないかもしれません。J児の特性を踏まえた支援を受
けながら、他の幼児と共に先生の話を聞くといった体験を繰り返すことにより、
次第に、最後まで話を聞くことができるようになっていきます。
紹介した二つの場面は、異なる視点からJ児への支援を行っているようにも見え
ます。しかし、そうではありません。今、当該幼児が体験していることは、当該幼
児のどのような発達を促すのかを考え、そのことに寄与する支援をすることが大切
です。障害の特性を含めて、当該幼児を理解し、発達に必要な体験ができるように
することが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(137ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 137ページコラム 発達障害について
発達障害者支援法において、「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の
広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害で
あってその症状が通常低年齢において発現するもの」(発達障害者支援法 第二条よ
り)と定義されています。下図のように発達障害を大きく3つのタイプに分けて整理
していますが、これらのタイプの特徴がそれぞれ少しずつ重なり合っている場合も多
く、障害の種類を明確に分けて診断することは難しいとされています。また、年齢や
環境により目立つ状態が異なってくることもあり、診断された時期によって診断名が
異なることもあります。
図 発達障害者支援法における発達障害
出典:国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センタ
ーホームページ
発達障害は、生まれつき脳の一部の機能に障害があること、そしてその症状が通常
低年齢に発現するという点が共通しています。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(138ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 138ページしかし、前述したように、一人に、いくつかのタイプの発達障害があることも珍し
くなく、そのため、同じ障害がある人でも全く似ていない状態像であり、個人差はと
ても大きくなっています。また、発達障害の認知や行動特性は、典型的で強く現れる
人から弱い人まで連続体(スペクトラム)をなしていると考えられており、発達障害
のある人とない人とを明確に区分することは難しいとされています。さらに、年齢が
進むにつれて、あるいは、周囲の環境によっても、状態像が著しく変化することもあ
ります。例えば、担任が変わったり、保育室環境が変わったりして、問題が表面化し
たり、おさまったりするようなことがあります。このような様々な状況から、診断の
重複や診断名が変わることもあります。
また、発達障害のある幼児などは、その特性について周囲に正しく理解されず、不
適切な対応を受けていることがあります。「できるのに、やらない」などの否定的な評
価や叱責を受け続け、自己肯定感が低下したり否定的な自己イメージをもったりする
ことがあります。その結果、発達障害の症状ではない問題行動がエスカレートしたり、
不登校や非行に走ったりして、二次障害と呼ばれる状態を呈することがあります。二
次障害を防ぐためには、発達障害について周囲が正しく理解し、それぞれに合った環
境を整え、適切な対応をしていくことが重要です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(139ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 139ページ第5章 教育支援の体制整備
1.体制整備の必要性
園生活において、一人一人の幼児が発達に必要な体験を得られることが大切です。
そのためには、幼児の発達の実情や生活の流れなどに即して、先生が幼児の活動にと
って適切な環境を構成し、幼児同士のコミュニケーションを図るなど、必要な支援を
していくことが大切です。このことは、障害の有無にかかわらないこと、障害のある
幼児などの発達の実情や生活の流れに即した支援を行うためには、関係機関との連携
やアセスメントなども重要であることなどについて、「第2章 園における障害のあ
る幼児などへの指導」(7頁参照)などで述べてきました。
ここでは、障害のある幼児などの指導を支える体制整備について述べます。体制整
備に当たっては、個々の先生が個別に教育活動に取り組むのではなく、園長のリーダ
ーシップの下、園のマネジメントを強化し、組織として取り組む体制をつくることが
重要です。その際に、園や先生が、心理や福祉等の専門家や専門機関と連携・分担す
る体制を整備することが求められます。
具体的には、障害の種類や程度を的確に把握した上で、障害のある幼児などの困難
さに対する指導上の工夫の意図を理解し、個に応じた様々な手立てを検討し、組織的
かつ計画的に指導に当たっていく必要があります。そのためには、園内に委員会を設
置して、園長が特別支援教育コーディネーター(131頁参照)を指名して園内の体制
を整備し、関係機関と連携した個別の教育支援計画、教育課程を踏まえた個別の指導
計画を作成することなどが求められます。
幼児教育の機能を十分に生かして、幼児の障害の状態等に応じた指導ができるよ
う、園の教育支援体制を整備することが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(140ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 140ページ(1) 園内委員会
園長のリーダーシップの下、園全体での教育支援体制を確立し、障害のある幼児な
どの障害の状態等の把握や支援内容の検討を行うため、園内に委員会(以下、「園内
委員会」という)を設置します。
① 園内委員会の役割
園長は、障害のある幼児などの指導に当たって、園内委員会を設置します。園内
委員会の設置に当たっては、新規に設置したり、主任会などの既存の園内の組織に園
内委員会の機能をもたせたりするなどの方法があります。また、構成員としては、管
理職、特別支援教育コーディネーター、学年主任、担任、支援員等が考えられます。
園内委員会では、障害のある幼児などの指導内容や指導方法について振り返りな
がら、その後の教育の方向性について検討します。具体的には、次のような役割が期
待されます。
・幼児の障害などによる遊びや生活の場面においての困難さの把握
・障害のある幼児などの理解と発達の課題の確認
・障害のある幼児などに対する指導内容や指導方法の検討
・障害のある幼児などの幼児理解に基づいた評価
・個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成や活用
・障害のある幼児などの指導等に関する園内研修の企画・立案
特に、障害のある幼児などを担任した先生は、当該幼児の行動が理解できずに戸
惑ったり、クラス経営に悩んだりすることがあります。そのようなときには、幼児の
障害の状態等について理解を深め、当該幼児の育ちの見通しをもてるようになること
が大切です。そのためには、先生が無意識にもっている幼児像を見直し、広げてい
き、障害の状態等に応じた支援を考えていく必要があります(第2章(3) 幼児の
障害の状態等に応じた必要な支援のためのアセスメントの重要性 9頁参照)。その
際、関係機関からの障害のある幼児などの困難さや困難さに応じた支援に関する助言
等を活用することが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(141ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 141ページもちろん、障害種別ごとに応じて決まった支援があるわけではありません。記録
等を活用して、園での当該幼児の具体的な姿について先生同士で話し合うことが大切
です。当該幼児の困難さはどのような場面や状況で生じているのか、どのような環境
の構成や先生の関わりをしたときに困難さが軽減したのかといったことなどについて
記録を基に話し合いましょう。そして、当該幼児の成長に応じて困難さを捉え直し、
実態に応じた支援となるようにしましょう。
②園内委員会の実施方法
園内委員会の実施に当たっては、定期的な開催、園長や特別支援教育コーディネ
ーターが必要と判断した場合に開催など、様々な方法があります。例えば、年間計画
等に位置付け、定期的に開催すれば、一人一人の障害のある幼児などへの理解や指導
は継続的に見直され、当該幼児の発達に応じた適切な指導を行うことができます。ま
た、園長や特別支援教育コーディネーターが、担任から当該幼児の指導について相談
を受け、複数の先生で当該幼児の姿を共有し、指導内容や指導方法のアイデアを出し
合った方がよいと判断した場合などに開催するようなことも考えられます。
園内委員会の中で支援等について検討することに加え、日々の保育を振り返りな
がら、先生同士で情報交換や相談をすることも大切です。例えば、他の先生と共に障
害のある幼児などの遊びの様子を振り返って、当該幼児の思いを推測したり、明日の
準備をしながら当該幼児の動きを予想したりすることで、当該幼児が楽しんでいる遊
びや困難さに関する理解が深まるかもしれません。また、障害のある幼児などについ
ては、できないことに目がいきがちですが、複数の先生で話し合うことで、当該幼児
の抱えている困難さだけではなく、好きなことや頑張っていること、今日の保育でう
まくいったことなどについて、一人では見えなかった幼児の姿が見えてくるかもしれ
ません。
園内委員会に決まった形があるわけではありません。各園の実情に応じて、園内
委員会が効果的に機能するような工夫が必要です。そして、全ての先生が、障害のあ
る幼児などの困難さに応じた配慮等について共通理解するとともに、先生同士、更に
は関係機関と連携し、指導内容や指導方法を充実させることが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(142ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 142ページ(2) 関係者や関係機関、保護者との関係づくりをするコーディネーター
園内の関係者や教育、医療、保健、福祉、労働等の関係機関との連絡調整、保護者
との関係づくりを推進するため、園内でコーディネーターの役割を担う者が必要です
(以下、「特別支援教育コーディネーター」という)。
①特別支援教育コーディネーターの指名と園務分掌への位置付け
個々の幼児の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的
に行うためには、園内の先生同士の連携はもちろんのこと、家庭、地域及び医療や福
祉、保健等の業務を行う関係機関と連携を図ることが求められます。また、就学の際
に、障害のある幼児などの学びや育ちをつなぐために小学校や特別支援学校との連携
も必要です。このように多機関にわたる複雑な連携を、効果的かつ円滑に進めるため
に、園長は、特別支援教育コーディネーターの役割を担う者を指名し、園務分掌へ位
置付けます。
特別支援教育コーディネーターには、幼児教育の基本を十分に理解しながら、特別
支援教育について学ぶ意欲や様々な人と関わる力、園内の先生同士や関係機関などを
つないでいくコーディネート力などが求められます。
②特別支援教育コーディネーターの役割
特別支援教育コーディネーターは、主に園内委員会の企画運営、関係機関・小学校
との連絡調整、保護者の相談窓口等の役割を担います。具体的には、次のような役割
が期待されます。
・園内委員会の企画運営
特別支援教育コーディネーターは、園内委員会の企画運営を担います。例えば、園
長と相談しながら、年度初めに園内委員会の計画を立て、年間行事予定に組み込みま
す。園の実情に応じて、個別の指導計画の検討や評価、事例検討、外部講師を招いて
の研修会等を企画し、運営していくことが考えられます。対象となる幼児を取り巻く
環境、専門家、先生同士の関係等、日頃から様々な情報を収集し、園の課題を念頭に
おいて、園内委員会の内容や方法を工夫していくことが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(143ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 143ページ・障害のある幼児などを担任する先生への支援と先生間の連携
担任が障害のある幼児などの指導に悩んでいたり、なかなか指導の効果が現れなか
ったりする場合、特別支援教育コーディネーターは、丁寧に担任の話を聞き、同時に
当該幼児の実態把握に努めながら、担任と共に当該幼児を取り巻く状況の整理を行
い、指導の方向性を見出していくよう努めます。
例えば、保育室を飛び出すA児について担任から相談を受けた場合、まずは、担任
に、これまでどのような思いでどのように指導してきたかなどを中心に話を聞き、同
時に、日頃のA児の様子を観察し、実態把握に努めます。その際、複数の先生からA
児の情報を得ることは、様々な場面でA児を多面的に理解することにつながります。
また、保護者や関係機関からの情報があれば、それも含めて、情報を整理していきま
す。集めた情報を手掛かりに、なぜ保育室を飛び出すのか、どのようなときに戻って
くるのかなど、担任と共に、A児の思いを探り、発達の課題を見出し、指導の内容や
方法を考えていきます。その際、必要に応じて園内委員会を開き、A児の情報を集約
したり、指導内容や方法を皆で出し合ったりすることも考えられます。複数の先生で
共有することによって、A児の理解も深まり、指導の方法も多様になります。実際の
保育においても、ねらいや目的が共有され、先生一人一人の役割が明確になり、指導
が充実していきます。
特別支援教育コーディネーターは、障害のある幼児などの指導内容や指導方法が充
実するよう担任を支えるとともに、それぞれの立場を理解し、先生同士が協働しなが
ら指導を行えるような関係性を構築していくことが求められます。
・関係機関との連絡調整
障害のある幼児などの行動の意味を理解したり、当該幼児のよさや可能性を把握し
たりするために、幼児の障害の状態等について、専門的な見地からの助言又は援助を
生かすとよいでしょう。幼児教育の基本を踏まえつつ、専門家からの助言又は援助を
生かして、教育の方向性を定めていくことで、当該幼児の発達に応じたきめ細やかな
指導を行うことが可能となります。
特別支援教育コーディネーターは、必要に応じて、特別支援学校、その他の教育、
医療、保健、福祉等の関係機関との連絡調整を行います。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(144ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 144ページ例えば、特別支援学校の教員とは、障害のある幼児などの発達の見通しや就学先に
ついて相談したり、園内研修の講師として招いたりすることが考えられます。医療機
関との連携では病院への同行支援や医師との情報交換など、児童発達支援など福祉施
設との連携では指導計画の相互共有や相互訪問などが考えられます。また、障害のあ
る幼児などが就学する際、小学校や特別支援学校へ、当該幼児の学びや育ち、指導の
過程を引き継ぐ必要があります。
必要に応じて適切な機関と連携できるように、日頃から地域の教育、医療、福祉機
関やそれらが提供している支援内容について情報を収集したり、関係性を築いたりし
ておくことが重要です。
・保護者に対する相談窓口
一般的に保護者との連絡は担任が行いますが、場合によっては、特別支援教育コー
ディネーターが相談の窓口になったり、担任と保護者間の調整をしたりすることがあ
ります。特に、障害のある幼児などは、環境によって状態が異なることが多く、園と
家庭では様子が違っていたり、担任と保護者では教育に対する考え方が異なることが
あったりします。そのような場合、特別支援教育コーディネーターは、保護者の要望
等を真摯に受け止め、寄り添いながら、担任と十分に連携を図りつつ対応することが
求められます。特別支援教育コーディネーターは、保護者の思いに寄り添いつつ、担
任の意思や立場を尊重して保護者に説明するなど、両者の思いを調整します。障害の
ある幼児などにとって最善の保育環境を整えることが目的であることを忘れず、冷静
に大局的な視点から考えて状況を整理し、対応していくことが大切です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(145ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 145ページ2.個別の教育支援計画と個別の指導計画
個別の教育支援計画及び個別の指導計画は、幼児教育の機能を生かして、障害のあ
る幼児など一人一人に対する適切な指導や必要な支援を組織的・継続的かつ計画的に
行うために重要です。様式や作成手順については、自治体や園によって様々ですが、
各園では、それぞれの計画の意義や役割を理解しながら、作成や活用をすることが大
切です。
教育、医療、保健福祉、労働等の関係機関が連携・協力を図り、障害のある幼児な
どの生涯にわたる継続的な支援体制を整え、それぞれの年代におけるこどもの望まし
い成長を促すため、個別の支援計画を作成することが大切です。この個別の支援計画
は、療育施設などの福祉機関でも作成されていますが、教育機関が中心となって作成
するものを個別の教育支援計画といいます。
一方、個別の指導計画とは、個々の障害のある幼児などの実態に応じて適切な指導
を行うために園で作成するものです。教育課程を具体化し、障害のある幼児など一人
一人のねらい、指導内容及び指導方法を明確にして、きめ細やかに指導するために作
成するものです。
各園においては、このような違いがあることに留意し、二つの計画の位置付けや役
割、作成の方法や記述内容などについて、園全体で共通理解を図っていくことが必要
です。
(1) 個別の教育支援計画
①個別の教育支援計画の意義と役割
障害のある幼児などの支援については、園生活だけでなく、家庭生活や地域での生
活を含め、当該幼児が関わる各関係機関の様々な取組や、そこでの幼児の状態等につ
いて共有し、その情報を基に、それぞれの関係機関でどのような支援をすることが望
ましいのか、その内容を整理したり、検討したりすることが必要です。
また、長期的な視点で幼児期から学校卒業後までの一貫した支援を行うために、生
育歴、相談歴を含んだ障害のある幼児などの育ちや指導の過程を念頭に置いて、当該
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(146ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 146ページ幼児に対する支援の目標を長期的な視点から設定し、見通しをもちながら支援内容や
方法を考えることが大切です。
例えば、A児の個別の教育支援計画を作成する場合、現在の園でのA児の様子は観
察することができますが、園以外で、A児がどのような教育や支援を受けているの
か、どのような姿を見せているのかなどは分かりません。A児は家に帰れば家族と過
ごし、その他にも医療や福祉サービス、相談機関を利用していれば、園や家庭以外で
も多くの人や関係機関と関わっています。A児が関わっている関係機関と情報交換す
ることで、園では見られないA児の姿が見られたり、新たな支援の方法が見つかった
りするかもしれません。様々な関係機関からの情報を生かし、園の取組と関連付けて
A児への支援を考えることで、A児にとってよりふさわしい支援が見つかることでし
ょう。そして、A児の生活に関係する人や関係機関の連携により、支援方針が共有で
きます。
また、生まれてからこれまで、A児は様々な関係機関と関わって成長し、さらに、
就学をしてからも、各々の時期にふさわしい人や関係機関と関わりながら生活してい
きます。A児への支援が継続的で各時期に適切なものになるために、今、A児がどの
ような成長の過程にあるのか、これまでのA児の育ちを踏まえ、また、今後の見通し
をもって支援していく必要があります。
このように、個別の教育支援計画には、障害のある幼児などが、必要な支援を切れ
目なく受けることを可能にする役割があります。
②個別の教育支援計画の作成
個別の教育支援計画は、願い、障害による困難な状況、支援の内容、生育歴、相談
歴など、障害のある幼児などに関する事項について、本人及び保護者も含めた関係者
で情報共有するためのツールです。障害のある幼児などが切れ目なく充実した支援を
受けられるように、次のような内容が記載されることが考えられます。
・診断名、療育手帳や身体障害者手帳等の有無、乳幼児健診等の記録
・家庭の状況
・当該幼児の育ちとこれまでの指導・支援内容
・当該幼児の興味や関心があるもの、好きなこと、嫌いなこと、得意なこと、
苦手なこと
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(147ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 147ページ・各関係機関での支援の目標と具体的な指導・支援内容
・本人や保護者の願い(将来の希望を含む)
・合理的配慮の提供の状況
障害のある幼児などを担任する先生は、園長の指示の下、特別支援教育コーディネ
ーターと連携し、支援の目標を立て、支援の内容を具体的に記述していきます。当該
幼児に対する支援の目標を長期的な視点から設定することは、全ての先生が共通理解
をすべき大切な情報となります。一人で抱えずに、特別支援教育コーディネーター等
と相談しながら組織的に進めていくことが重要です。
特別支援教育コーディネーターは、担任からの相談の他、保護者や関係機関と連携
します。保護者や関係機関から、当該幼児の様子や取組の状況等の情報を得ること
は、園での支援を考える手掛かりとなります。そして、継続的に保護者や関係機関と
連携を図りながら、園内委員会等を利用して、支援の目標は達成されているのか、支
援の内容は適切なのか、当該幼児の状態等に応じて、適宜見直しを図ることが大切で
す。
③個別の教育支援計画の活用
個別の教育支援計画は、作成すること自体が目的ではありません。障害のある幼児
などにとって、必要な支援の目的や内容、方法を導き出したり、就学先である小学校
に在園中の情報を伝えたりするなど、活用していくことが大切です。
個別の教育支援計画を活用して、保護者や関係機関と当該幼児についての情報を共
有すると、幼児理解が深まったり、指導の手立てが増えたりして、園の教育活動が充
実します。特に、当該幼児の指導内容や指導方法の工夫を検討する際の情報として、
個別の指導計画に生かしていくことが重要です。
また、就学に際して、個別の教育支援計画を確実に引き継ぐことで、長期的な視点
に立った一貫した支援が保障されます。環境の変化は、障害のある幼児などにとって
大きな不安を伴います。当該幼児が、新しい環境の中で安心して自分の力を発揮でき
るよう、これまでの支援内容や方法を丁寧に引き継いでいくことが重要です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(148ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 148ページ(2) 個別の指導計画
①個別の指導計画の意義と役割
幼児は、自ら意欲をもって環境と関わり、自発的な活動としての遊びを通して発達
していきます。各園では、このことを踏まえ、幼児期にふさわしい生活が展開され、
適切な指導が行われるよう、教育課程に基づき、調和のとれた組織的、発展的な指導
計画を作成し、幼児の活動に沿った柔軟な指導を行います。そのために先生は、幼児
の発達に必要な体験を見通し、各時期の発達の特性を踏まえつつ、教育課程に沿った
指導計画を立てて継続的な指導が行うことが大切です。
これは、障害のある幼児などへの指導においても同じです。ただし、障害のある幼
児などへの指導は、一人一人の障害の状態等により、生活上などの困難が異なること
に十分留意し、個々の幼児の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法を工夫しま
す。障害のある幼児などが、安心し、ゆとりをもって周囲の環境と十分に関わり、発
達していくことができるよう、よりきめ細やかな指導や特別な配慮が必要になりま
す。つまり、教育課程は他の幼児と同じですが、障害のある幼児などの指導に当たっ
ては、教育課程を具体化した、一人一人のねらい、指導内容及び指導方法を明確にし
た個別の指導計画を作成することが大切です。
障害のある幼児などの担任は、個別の指導計画により、指導の見通しが立ち、自信
をもって当該幼児に関わることができます。また、先生同士の共有により連携が円滑
になったり、新たな指導内容や指導方法が見つかったりすることもあります。当該幼
児への計画的で発展的な指導が保障され、また、園全体で共有することで、組織的か
つ継続的に指導が行われることになります。
②個別の指導計画の作成
障害の診断の有無にかかわらず、園での遊びや生活において困難さを抱えていると
考えられる場合には、積極的に個別の指導計画を作成することが望まれます。作成に
当たっては、一人一人の障害のある幼児などの育ち、クラス経営、保護者からの要
望、関係機関からの情報等、様々な側面から、見通しをもって指導を考えることが大
切です。具体的には、次のような手順で整理しながら作成していくとよいでしょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(149ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 149ページア 障害のある幼児などの姿から実態を把握する
障害特性などだけで幼児を捉えようとすると、対象とする幼児の一面しか見えてき
ません。保育室で一斉的な活動をするとき、園庭で自由に遊んでいるとき、ホールで
集会があるときなど、園生活の中での多様な場面で当該幼児の姿を観察します。ま
た、その姿について、「どうしてこうするのだろう?」と問い直し、その姿を生み出
す当該幼児の思いについて推し量ります。そうして、当該幼児の現状、よさ、願い等
について把握し、先生同士の話し合いを通して多面的・多角的な視点で検討を行いま
す。その際には、関係機関からの助言も活用し、客観的に当該幼児を捉える視点も大
切にします(第3章2.合理的配慮を含む必要な支援を考えるために必要なアセスメ
ント 19 頁参照)。
イ ねらいを考える
当該幼児の姿から実態を把握し、困難さの原因について考えます。障害のある幼児
などの状態が同じように見えても、困難さの原因によって、ねらい、指導内容及び指
導方法は異なります(第4章1.(2)障害のある幼児などの困っている姿を捉える
視点 36 頁参照)。そして、当該幼児の具体的な姿をイメージして、ねらいを設定
します。例えば、当該学年の教育課程のねらいが、「友達と関わり合いながら自分の
思いや考えを出して遊ぶ」であり、当該幼児は、他の幼児に興味を示さない、気持ち
や言いたいことを上手く言えないと仮定します。個別の指導計画におけるねらいで
は、歌を歌ったり絵本を読み聞かせたりするときに他の幼児と空間を共有する、自分
の気持ちに合った絵カードを選ぶとするなど、ねらいの方向に向かう指導でありつつ
も当該幼児の障害の状態等に応じたものとします。そして、スモールステップで、当
該幼児の意欲や自信につながるようにするとともに、PDCAサイクルにより、当該
幼児の育ちに応じた見直しをすることが大切です。その際、幼児理解に基づいた評価
とアセスメントとは同じではないことを踏まえ、当該幼児の障害の状態等に応じ、個
別の指導計画を見直すことが大切です(第2章(4)園における個別の指導計画の考
え方 10 頁参照)。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(150ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 150ページウ 具体的な指導内容や指導方法を考える
当該幼児の実態に応じた指導目標を踏まえ、指導内容や指導方法を考えます。当該
幼児なりに、つまり、当該幼児が今もてる力いっぱいで他の幼児を含めた周囲の環境
と関わることができるように、当該幼児の困難さに応じた支援を行うことが大切で
す。この力いっぱいとは、当該幼児の過重負担となることなく、遊びに没頭し、充実
感や達成感を味わえるようなものである必要があります。そして、当該幼児の発達に
応じて、当該幼児だけの興味や関心を捉えるのではなく、他の幼児の興味や関心、遊
びの様子などと関連付けながら、指導方法を考えていくことが大切です。(第4章各
項目の(4)困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開する、における
コラム参照)
② 個別の指導計画の活用
個別の指導計画を作成しても、実際に指導をしてみると、当該幼児の姿にそぐわな
かったということがあります。大切なことは、無理やり計画どおりに進めるのではな
く、そのズレを分析し、計画を見直しながら指導の方針を改めて決めていくことで
す。積極的に見直しを図ることは、当該幼児の発達に応じた適切な指導につながりま
す。その際、個別の指導計画を修正していきます。修正した個別の指導計画の蓄積
は、当該幼児の成長の過程や指導の積み重ねの記録となります。また、関係機関や保
護者等に当該幼児の様子や園での取組について説明する際にも役立ちます。
個別の指導計画は、作成すること自体が目的ではありません。作成する過程におい
て、他の先生と話し合いながら、当該幼児を深く理解したり、適切な指導内容や指導
方法を考えたりして、当該幼児にとって最適な保育環境を整えていくことが大切で
す。様式や書き方などにこだわりすぎず、指導内容や指導方法を整理したり、他の先
生と当該幼児の育ちを共有したりするために、個別の指導計画を活用してください。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(151ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 151ページ3.先生の理解推進と専門性の向上
先生は、その職責を遂行するために、絶えず自己研鑽
さん
に努める必要があります。
園を取り巻く状況は時代とともに変化します。また、先生としての経験年数を積み重
ねていき、園内で期待される役割も変わっていきます。時代の変化に対応し、園内で
求められる知識や技能を獲得していくことが大切です。そして、最も大切なことは、
学び続けることにより、高い専門性を有する指導力のある先生であり続けることで
す。
このことは、障害のある幼児などへの指導についても言えます。クラスには、障
害のある幼児など、多様な教育的ニーズのある幼児がいます。そのため、先生は、障
害を含む多様な教育的ニーズのある幼児を理解し、保育環境を整備し、クラスづく
り、保育の展開などに取り組む必要があります。そのために必要な知識及び技能を学
び、保育に生かしていく力をつけていく必要があります。
こうしたことから、園内研修の推進と先生の役割に応じた園外での研修の参加推進
が求められます。園長は、特別支援教育コーディネーターを中心として園内研修を組
織的に計画し、先生の障害への理解をはじめとする意識改革や、障害のある幼児など
が在籍するクラス集団への指導に当たっての専門性を高めていくことが求められま
す。なお、園内の研修会の内容によっては、先生以外の専門スタッフや保護者等にも
参画を促し、より広く理解の推進を図る機会とすることもできます。
また、園長は、障害の理解を深めるための研修や具体的に支援を行う能力の向上を
図るための研修に、先生を積極的に参加させることが大切です。参加に当たっては、
クラスの担任等に対する基本的な研修、特別支援教育コーディネーター等に対する専
門的な研修等、園内の教育支援体制における各先生の役割に応じて、必要な研修を受
講できるようにすることが重要です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(152ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 152ページ4.専門家を活用した園運営
障害のある幼児などが園で過ごすに当たって、先生以外の専門家が関わることがあ
ります。そのため、専門家の方が活動しやすい環境整備を心掛け、園の活動への理解
と協力を促すことが大切です。特に、障害のある幼児などへの支援の方針を共有し、
一貫性のあるものとする必要があります。その一方で、園は多様な幼児が集団生活を
行う場でもあります。他の幼児との関わりや園での生活を通して、当該幼児が自らの
特性を知り、その特性に応じた人や周囲の環境との関わり方をその幼児なりのペー
ス、方法で学んでいけるようにすることが大切です。
園での障害のある幼児などの活動を支える専門家の例を以下に述べます。当該幼児
の困難さなどに応じて専門家の知見を活用し、当該幼児が園で安心して楽しく過ごせ
るようにします。なお、外部の専門家に幼児の個人情報を提供する場合には保護者の
承諾が必要になるとともに、園の先生も含めて、業務を離れた後も知り得た個人情報
は守秘義務があることを関係者間で再確認しておく必要があります。
(1) 特別支援教育支援員
食事、排泄
せつ
、保育室の移動補助等の園における日常生活動作の介助を行ったりする
ことで、幼児は安心して園で生活することができます。近年、特別支援教育支援員を
配置する園もあります。特別支援教育支援員は、資格は有していませんが、適切な対
応ができるようにするために研修を実施している自治体もあります。
障害のある幼児などへの指導について責任を負っているのは、担任をはじめとした
園の先生です。特別支援教育支援員の役割を踏まえ、園内の体制整備が大切です。
①特別支援教育支援員の役割
特別支援教育支援員の役割の例として、以下が挙げられます。
〇基本的生活習慣確立のための日常生活の支援
・衣服の着脱を支援する。一人でできる部分は見守り、できないところは支援しな
がら励まし、自分でやろうとする気持ちを育てる
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(153ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 153ページ・食事を支援する。食べることや食具の使い方を支援し、必要に応じて準備や片付
けを一緒に行う
・排泄
せつ
を支援する。決まった時間にトイレに行くことを促したり付き添ったりし
て、トイレで排泄
せつ
する習慣を付けていく。失敗した場合には、着替えをさせる
〇遊びや活動への支援
・保育室を出てしまう障害のある幼児などには付き添い、安全を確保する
・クラスでの活動では、具体的にやるべきことを知らせたり、できる部分で参加す
るように調整する
②特別支援教育支援員を活用した園内体制の整備
園内委員会等において、担任や特別支援教育コーディネーター等と特別支援教育
支援員の連携協力の内容を事前に決めておくことが必要です。次に、支援の対象と
なる幼児が困っていることやその原因、長期的な目標や短期的な目標、指導内容と
支援の進め方などについて十分理解してもらうことが重要です。特別支援教育支援
員との人間的な触れ合いを支えに園生活における問題を克服した事例が報告されて
いますが、そういった事例はこうした理解によるところが大きいと言えます。ま
た、先生にとって常識的なことであっても、特別支援教育支援員にはよく分からな
いこともあります。先生から声を掛け、コミュニケーションを積極的に図ります。
③先生との連携
先生等と特別支援教育支援員が支援方針を共通理解するために事前の打ち合わせを
行います。通常、支援の内容や対象となる幼児の特性などについて、個別の指導計画
を用いて特別支援教育支援員に説明します。その際、当該幼児だけでなく、クラスの
他の幼児への対応上の配慮点などについて共通理解を図ります。支援が始まってから
は、機会を捉えて、打ち合わせや情報交換を行います。なお、特別支援教育支援員は
先生とは異なった立場で当該幼児に関わります。その立場からの気付きや発見が、大
切な支援情報になる場合もあります。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(154ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 154ページ(2) 巡回相談
巡回相談担当者は、園等を定期的に巡回訪問することによって、施設に対する支援
やその施設で障害のある幼児などへの支援に携わる支援者のサポートを行います。巡
回相談担当者から、保育室など、障害のある幼児などが過ごす空間について、当該幼
児が理解しやすく混乱を招きにくい空間への助言を得ることができます。また、発達
障害のある幼児などに関しては、掲示物、スケジュールの視覚化などの工夫について
助言を得ることができます。さらに、巡回相談担当者がその場で当該幼児に関わった
り、先生の普段の関わり方を見て助言したりすることなどもできます。また、当該幼
児の示す反応や行動の背景にある発達特性や心理状態、不適切な環境など、これまで
気付かなかったことを発見する機会ともなります。当該幼児の日常の行動と特徴を把
握し、有効な関わり方や環境の在り方を知ることができます。
なお、園での活動を支援する者として、巡回相談や特別支援教育相談に加え、介助
員やボランティアの方々なども考えられます。専門的な支援では、看護師、理学療法
士、作業療法士、言語聴覚士なども考えられます。さらに、保育所等訪問支援事業も
あります。これは、園に通う障害のある幼児などが、園における集団生活の適応のた
めの専門的な支援を必要とする場合に、例えば児童発達支援センターが行っている保
育所等訪問支援事業の職員等が園を訪問支援することにより、園の安定した利用を促
進するものです。
いずれにしても、障害のある幼児などの安全面、心理面に十分に配慮し、保護者に
も安心・安全への理解が得られるよう、園長の管理下において、担任、特別支援教育
コーディネーター、専門家などの関係者が連携し、支援体制を構築していくことが重
要です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(155ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 155ページ5.専門機関との連携
障害のある幼児などの場合、早期に障害に気付き、特性を理解して適切な対応をし
ていくことが園生活やその後の学校生活をしていく上で大切です。保護者が、発達の
遅れを感じていたり行動面での育てにくさを感じていたりはしていても、幼児期だか
らこんなものと考え、支援の必要性を感じていないこともあります。障害の診断が確
定したから支援が必要なのではなく、障害の有無にかかわらず生活の中で幼児が困難
さを感じているのであれば、その困難さに応じた配慮が必要です。専門機関とつなが
るということは、困難さに応じた必要な支援を考え、成長をともに喜ぶ仲間が増える
ということです。そして、その仲間が加わることで、保護者とも園の先生とも異なる
視点が加わり、多角的・多面的に支援をしていくことが可能となります。
(1) 専門機関との連携
専門機関に相談し、つながるには保護者が専門機関とつながるケースと、園等を通
じて専門機関とつながるケースが考えられます。
①保護者が専門機関とつながる
例えば、肢体不自由のある幼児などのように誕生とほぼ同時に障害が分かっている
場合などは、早期から専門機関とつながっていることが考えられます。当該幼児が成
長するにともなって、兄姉の発達の様子を思い出したり、周囲の他の幼児の様子を見
たりして、保護者自身が不安を感じて相談することもあります。3歳児健診、園の先
生からの園での当該幼児の様子の説明など、他者の発言をきっかけに相談に行くこと
もあるでしょう。
②園等を通じて専門機関とつながる
保護者が専門機関に相談する必要性を感じていなくても、当該幼児の発達の道筋や
当該幼児の言動に関して多くの知識や経験を有する先生からすると気になる場面があ
るかもしれません。もちろん、保護者の了解なく、当該幼児に関して専門機関に相談
することはできません。しかし、障害の疑いのある幼児の保護者との関わりにおいて
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(156ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 156ページ配慮すること、障害のある幼児などの行動特性と支援策、園内での体制整備など、一
般的な内容などに関して専門機関の知見を活用することが考えられます。そうした知
見を活用して、先生から、当該幼児の成長の様子や園での生活で当該幼児が困ってい
ることを伝え続けることで、保護者も我が子の成長のために専門機関に相談したいと
いう気持ちをもつようになるかもしれません。ここで大切なことは、保護者と専門機
関をつなげたいと焦って、保護者に強要したり当該幼児の困難さばかりを伝えたりす
るのではなく、保護者が子育ての喜びを感じることができるように保護者の気持ちに
寄り添うことです。そして、保護者と先生の信頼関係を基盤に、専門機関とつながる
ことにより、子育ての仲間が増えて心強いという気持ちを保護者がもてるようになる
ことが大切です。
家庭・園・専門機関が連携する中で、園が、専門家や専門機関との連携を推進して
いくことは、次のようなよさや役割があります。
・障害のある幼児などの理解につながる
・障害のある幼児などの指導や支援の方法や対応の仕方を学べる
・障害のある幼児などとクラスの他の幼児との関わりの手立てを学べる
・専門家としての見解が、保護者に現状を伝える際の根拠となる
なお、必要な状況で速やかに連携をとるためには、日頃からの情報収集及び関係機
関との情報共有や顔の見える関係づくりをしておくことが大切です。
(2) 地域の専門機関
地域にある専門機関の例を紹介します。各機関の取組内容は地域により異なること
があります。また、ここでの紹介例以外でも、各地域が実態に応じて取り組んだり、
民間等において取り組んだりしていることもあります。地域の資源を活用し、家庭・
園・福祉や医療が連携し、障害のある幼児などの育ちを支えていくことが大切です。
①保健・医療分野
〇市町村保健センター
住民に対し、健康相談、保健指導及び健康診査その他地域保健に関し必要な事業を
行うことを目的としています。保健センターの保健師は、保護者からの子育てや発達
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(157ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 157ページに関する相談に対応しています。子育ての支援の一環として、乳幼児健診後に要経過
観察の親子を対象に、その子の発達特性や段階に合った関わり方を学べる教室の開催
や、個別の発達相談等を設けている自治体もあります。
〇医療機関
発達障害の診断は、専門の医師が行います。受診することになった場合、保護者の
同意の下、園での障害のある幼児などの様子等を医療機関と情報共有することが考え
られます。
②福祉分野
〇発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害への支援を総合的に行う拠点です。都道府
県・指定都市又は都道府県知事等が指定した社会福祉法人等が運営しています。主な
事業内容は、①発達障害の早期発見、早期の発達支援等に資するよう、発達障害者及
び家族に対し、専門的にその相談に応じ、または助言を行うこと、②発達障害者に対
し、専門的な発達支援及び就労の支援を行うこと、③医療、保健、福祉、教育等に関
する業務を行う関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対し発達障害につい
ての情報提供及び研修を行うこと、④発達障害に関して、医療等の業務を行う関係機
関及び民間団体との連絡調整を行うこと等です。
〇児童発達支援センター
心身に障害のある幼児や発達に心配がある(集団活動に参加するのが苦手、環境変
化への適応が苦手、気持ちの切り替えが難しい等)幼児は、児童発達支援センターに
通所して支援サービスを受けることがあります。児童発達支援センターには、福祉型
児童発達支援センター(主に知的障害や発達障害等のあるこどもを対象)と、医療型
児童発達支援センター(主に肢体不自由や重症心身障害等のあるこどもを対象)があ
ります1。児童発達支援センターの小集団のプログラムでは、こどもの好きなことや
得意なことを伸ばしながら、生活の基本的動作を学んだり、知識技術を身に付けた
り、集団生活への準備や集団生活を少しずつ経験したりすることを支援しています。
また、保護者の懇談会や学習会を行い、障害のある幼児などの保護者に寄り添う支援
1 児童発達支援センターは令和6年4月に福祉型、医療型を一元化
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(158ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 158ページを行っています。さらに、障害のある幼児などの状態によっては、臨床心理士、言語
聴覚士(ST)、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)等、専門スタッフの支援
サービスを受けている場合もあります。
園に在籍しながら、児童発達支援センターにおいて定期的に支援サービスを受けて
いる(併行通園している)幼児に対する指導や支援に当たっては、指導計画・支援内
容等の相互共有や相互訪問などを通じて連携を図ることが考えられます。
○児童相談所
各都道府県、指定都市に設置が義務付けられており、また政令で個別に定める市に
おいても児童相談所が設置できます。相談所の構成員は、ソーシャルワーカー(児童
福祉司・相談員)、児童心理司、医師(精神科医、小児科医)、その他専門職員がお
り、様々な相談に応じ、専門的な角度から調査、診断、判定を行い、それに基づいて
こどもや保護者に対して、必要な指導や児童福祉施設入所等の措置を行います。
③教育分野
〇特別支援学校
特別支援学校は地域における特別支援教育のセンターとして、教育相談などの様々
な支援を行っています。この地域支援は、園等や障害のある幼児などのニーズによっ
ては、特別支援学校に関わる臨床心理士、理学療法士(PT)等の専門家が連携して
行う場合もあります。特別支援学校のセンター的機能の具体例としては、園等の先生
への必要な助言又は援助、特別支援教育等に関する相談・情報提供、障害のある幼児
などへの指導・支援、福祉・医療・労働等の関係機関との連絡・調整、園等の先生に
対する研修協力、障害のある幼児などへの施設設備等の提供等があります。
〇幼児ことばの教室等
自治体によっては単独事業として、小学校の通級指導教室等に幼児部門(幼児こと
ばの教室等)を設置している場合があります。ここでは、個別または小集団で、言語
面や行動面に困難さがある幼児がコミュニケーションの手段や方法を獲得して人と関
わる楽しさを知り、その子らしさを発揮しながら日常生活を送れるように支援するな
どしています。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(159ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 159ページ6.保護者との連携
こどもは信頼する大人の影響を受ける存在であり、幼児期には、特に保護者の影響
を強く受けます。したがって、保護者が安定した気持ちで幼児を育てていくことは、
幼児の健やかな成長にとってとても重要です。そのため、先生は、保護者の子育てに
対する不安やストレスを解消し、その喜びや生きがいを取り戻して、幼児のよりよい
育ちにつながるよう子育ての支援を行うことが大切です。このことは、幼児の障害の
有無によって変わるものではありません。しかし、我が子に障害の可能性を感じてい
る保護者は、子育てに対する不安を強く感じたり、誰に相談したらよいか分からず孤
独感を感じたりすることがあります。保護者を取り巻く家庭環境なども踏まえなが
ら、保護者の気持ちに寄り添い、保護者との信頼関係を構築し、保護者が園は子育て
の仲間という意識がもてるようにすることが大切です。
(1) 保護者の気持ちに寄り添う先生の姿勢
保護者との連携では信頼関係が大切です。そのためには、我が子に障害のあること
を知った保護者の心の揺れ動きや家庭環境などを含めた保護者の状況を理解すること
が大切です。そして、保護者との信頼関係を基盤に、保護者の障害受容の状況やその
時々の気持ちに応じて、当該幼児のよさや課題などを相互に伝え合い、当該幼児の実
態について共通理解していく必要があります。
①保護者との信頼関係の構築
障害のある幼児などの言動について、担任と保護者との認識が同じとは限りませ
ん。例えば、家庭では問題なく過ごしている障害のある幼児などでも、園ではその言
動が気になることがあります。家庭とは異なり、園は広い保育室や園庭を有し、同世
代の集団の中で幼児同士のいざこざなどの様々な出来事が起こります。園と家庭との
環境の違いにより、当該幼児の言動の違いが生じます。例えば、園で他の幼児といざ
こざを起こすことが多いからといって、「ご家庭でも大変でしょう?」と保護者に問
い掛けても、保護者が家庭生活で困っていなければ「家では特に問題ありません」と
の回答になります。むしろ、家では特に問題がないのに園で当該幼児が問題を起こす
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(160ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 160ページのは、園の対応が悪いからだと保護者は感じるかもしれません。また、保護者が、
「家では特に問題がない」と言ったのは、家庭でも当該幼児の対応に苦慮している
が、親として我が子の実態に楽観的でありたいという気持ちからということもあるか
もしれません。
我が子には特に支援の必要はないと言っている保護者と信頼関係を築くために
は、まずは、当該幼児の家庭での様子を尋ね、その話しぶりや表情から保護者の当該
幼児の受け止めや思いを推察し、その思いを受け止め、当該幼児の姿に関する様々な
話ができる関係を築くことが大切です。
保護者が家庭での当該幼児の言動に問題を感じていなくとも、我が子との関わり方
に不安を感じたり、子育てが上手くいかないと焦燥感を感じたりしている可能性があ
ります。また、周囲から、当該幼児の言動や保護者の子育てについてネガティブな意
見を言われている可能性があります。例えば、当該幼児の乱暴な言動等により、周囲
の保護者から冷たい目で見られたり、祖父母等から子育てについてきつく言われた
り、乳幼児健診の際に医師等から指導があったりしたかもしれません。このような状
況下の保護者に対しては、当該幼児の当面の課題を一方的に指摘するのではなく、保
護者の心情を共感的に聞き、受け止めることが大切です。保護者は、他者から取り越
し苦労とも言えるような些細なことを話すかもしれません。しかし、保護者にとって
は大きな心配事であったと受け止め、保護者の心の揺れや気持ちに寄り添うことが大
切です。そうした先生の受容的な態度が、保護者との信頼関係を築く第一歩です。
②幼児の特性や障害の受容に関する保護者の心の揺れ動き
保護者の気持ちに寄り添うことが大切ですが、保護者の気持ちとはどのようなもの
でしょうか。そもそも、我が子に発達の遅れや偏りがあることを認めることは、保護
者にとってとてもつらく、簡単に「そうですね」とは言えません。日々の我が子の様
子から何らかの課題を感じて不安になっている保護者は、同時にそれを打ち消したい
という気持ちも強くあり、心情的に大きく揺れ動いています。
ここでは、先天性障害のあるこどもの保護者に面接調査したドローターら(1975)
が示した、我が子の障害を受容し、適応していく経過のモデルを紹介します。このモ
デルは、「Ⅰ.ショック」「Ⅱ、否認」「Ⅲ.悲しみ・怒り・不安」「Ⅳ.適応」
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(161ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 161ページ「Ⅴ.再起(適応・再体制化)」(図参照)の段階を経るとしています。具体的には
次のとおりです。
保護者は、我が子に障害
があることを知らされると
耐え難いショックを経験
し、絶望感に囚われ、理性
的な行動が取れなくなりま
す。ショックから抜け出し
て次に抱く気持ちが障害を
認めたくないという思いで
す。例えば、「これは夢
だ」、「これは事実ではな
い」と思う状況です。あるいは、「障害が治る」と言ってくれる機関を探し回ったり
する時期でもあります。そして、いくら「否認」をしていても、障害がある、障害が
治らないという現実を認識し始めると、悲しみや怒りがこみ上げてきます。「なぜ、
私の子が…」、「よりによって私の子に…」という思いであったり、誰彼構わず当た
り散らしたりするような感情的に混乱した苦しい状況に陥ります。これらを経て、現
状に慣れ、我が子の養育に自信をもちはじめ、事実を受け入れるようになります。そ
して、障害のある我が子と共に生活していこうという「再起(適応・再体制化)」の
状態になります。感情反応の強さは、こどもの年齢、障害の種類・程度、保護者の性
格、家族関係などによって異なり、時間経過による感情の変化は人によっても様々で
す。
先生方は、このモデルを参考として、保護者の状態像の変化に見通しをもつことが
できます。例えば、保護者との関係はできていると思っていたのに、保護者が攻撃的
な言葉を向けてきた場合、「今は『悲しみ・怒り』の受容過程にいるのだな」、「周
囲に不満や怒りを言わないとやっていけない気持ちなのだな…」と理解して、攻撃的
な言葉を受け流すこともできます。
このモデルでは、最終的に、我が子の障害を受容することになっていますが、実際
には一度我が子の障害を受容しても、その状態が恒久的に続くものではありません。
我が子の成長の節々では、現実を目の当たりにし、感情が揺れ動くことは多くありま
図 障害受容の過程(ドローターら:1975)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(162ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 162ページす。また、障害のある幼児などを養育する保護者全てが、モデルどおりの経緯をたど
るとも限りません。保護者の心情の変化を先生が肌で敏感に感じ取り、保護者の心理
的な支援をしていくことが重要です。
③ 保護者自身の状況の理解
保護者の気持ちに寄り添い、障害受容の状況に応じて幼児の実態を共有していくた
めには、保護者自身の状況を理解することが大切です。障害のある幼児などを育てる
ことで生じる様々な心理的ストレス(例えば、母親の社会的活動の制限等)は、幼児の
障害の程度やその特徴、家族環境やソーシャルサポートなどの社会資源の活用状況に
よっても違いがあると考えられています。例えば、配偶者や祖父母に子育ての協力が
得られやすいのか、兄弟姉妹は健康なのか、生活に経済的ゆとりがあるかなどです。
先生は、家族への直接的な介入や支援は行いませんが、家族や保護者の状況を知るこ
とで障害のある幼児などの置かれている状況や保護者の発言の背景などを推測するこ
とができます。地域の福祉機関等と連携して家族への支援を考えていくことが必要に
なる場合もあるかもしれません。保護者自身に医療的な対応が必要になる場合もある
かもしれません。保護者への対応では、先生が一人で抱え込むのではなく、園全体で
対応し、必要に応じて外部の専門機関に相談しましょう。
④ 障害のある幼児などの実態を保護者と共有
保護者の状況を理解し信頼関係を築きつつ先生が行うことは、障害のある幼児など
の実態を保護者と共に理解していこうとすることです。保護者は家庭での状況や過去
の情報などを園に伝え、先生は園での当該幼児の様子などを伝え、相互の見方を学び
合い、園と保護者が当該幼児の実態について共通理解をしていくことが重要です。当
該幼児の課題だけではなく、得意なこと、好きなこと、よさなどを確認しながら、当
該幼児との関わり方を具体的に話し合うことが大切です。当該幼児の小さな変化であ
っても保護者にとっては子育ての喜びにつながることを踏まえ、送迎時の会話、お便
り、保育参観等の様々な機会を活用して保護者に伝えるようにしましょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(163ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 163ページ(2) 保護者との連携における留意点
先生は、保護者の状況を理解し、保護者の気持ちに寄り添う姿勢が大切です。園で
は、先生全員がこの姿勢を大切にした上で、保護者が相談しやすい雰囲気をつくり、
保護者と連携していく必要があります。体制づくりに当たっては、保護者自身が安心
し活躍できる場や機会の提供などにも配慮するとよいでしょう。
①保護者との連携の体制
○ 保護者が相談しやすい雰囲気づくり
保護者が先生に気軽に相談しやすい雰囲気をつくっていくためには、保護者との
信頼関係が大切です。日頃から、保護者に声を掛け、園での当該幼児の様子を話した
り、世間話をしたりして先生に親しみがもてるようにしましょう。障害のある幼児な
どをもつ保護者は、園に対して構えていることが多く、なかなか自分から先生に話し
掛けることができないものです。送迎時間などに積極的に声を掛けるとよいでしょ
う。担任ばかりではなく、園長や主任がこの役割を担うことも考えられます。保護者
にとって、心の拠り所となるような人材が必要です。
また、相談できる場所があることも大切です。相談内容によっては、感情的にな
り、保護者が取り乱してしまうこともあるかもしれません。保護者が安心して、ゆっ
くりと本音を語れるようなスペースを確保することは、保護者の心の安定につなが
り、ゆったりとした気分で我が子と関わるために、とても重要なことです。
園からの依頼や要望、相談等も、心から信頼できる人が、温かい雰囲気の中で伝
えるからこそ、保護者は受容できるのかもしれません。園が保護者にとって身近な存
在になるよう、日頃から園の雰囲気づくりを心掛ける必要があります。
○ 園内の体制整備
保護者との連携は担任だけで行うものではありません。特別支援教育コーディネ
ーターは、保護者との相談の窓口になったり、担任と保護者で意見が異なる場合には
調整を行ったりすることがあります。保護者の状況や心情についても、先生同士で多
面的・多角的に話し合うことにより、担任の先生だけでは気付かなかったことに気付
くかもしれません。園では、担任と共に組織的、継続的に保護者を支援していく体制
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(164ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 164ページづくりが重要であり、園だけでは保護者への対応が困難な場合には、外部の専門相談
機関を保護者に紹介することも考えられます。
②保護者が安心し活躍できる場や機会の提供
園は、子育てに関する相談に応じることに加え、保護者が園の活動に参加し、先生
の当該幼児への関わり方を見たり先生から説明を受けたりすることで、我が子との関
わり方を学ぶことができるようにすることも大切です。保護者にとって、園の活動へ
の参加の意義はそれだけではないでしょう。保護者は、子育ての中で自分自身の時間
がなかったり、子育てに対する不安から自己肯定感が低下したりしているかもしれま
せん。保護者自身の好きなことや得意なことを生かして園での活動に参加してもらう
ことにより、○○ちゃんの親というだけではなく、自分自身が誰かの役に立つ喜びを
感じ、満足感を得ることができるかもしれません。例えば、保護者が、絵本の読み聞
かせが得意であれば保育の支援ボランティアに参加してもらったり、植物に関する知
識が豊富であれば園の環境整備に協力してもらったりすることが考えられます。障害
のある幼児などの保護者は我が子のことで頭がいっぱいになるかもしれませんが、当
該幼児の健やかな成長にとって、保護者自身が自己を認め、自分自身の生活を楽しん
でいることは大切なことなのです。
また、園は保護者同士の交流の場でもあります。しかし、障害のある幼児などの保
護者は、「自分の子が他の子に迷惑をかけているのではないか」「うちの子だけどう
してできないのか」などの悩みをもち、なかなか自分から保護者の輪の中に入ってい
けず、孤独を感じていることがあります。そのため、園では、保護者の状況等を理解
しながら、保護者同士の関係性が構築できるよう積極的に働き掛ける必要がありま
す。保護者同士の関係が深まる中で、障害のある幼児などの保護者の要望に応じて、
当該幼児に関して他の保護者に情報提供を行い、理解を求めることが考えられます。
そうした中で、保護者が、我が子も自分も受け入れられていると実感できることが、
保護者の安心感につながります。
これらの保護者への支援や連携は、園全体の協力体制の下、先生同士が互いに連携
しながら行わなければなりません。また、保護者の我が子の障害に関する理解や園へ
の要望等は、先生同士で共有しておく必要があります。保護者によって、どのような
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(165ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 165ページ支援が必要なのか、どのように信頼関係を築いたらよいのか等のプロセスは異なりま
すので、十分に考慮した上で、保護者への支援や保護者との連携に取り組んでいく必
要があります。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(166ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 166ページ7.小学校への円滑な接続
小学校等への就学は、全ての幼児と保護者にとって期待と不安の入り混じる出来事
です。特に障害のある幼児などとその保護者にとってはなおさらで、環境の変化を前
に大きな心配や不安を抱えている場合が多くあります。そのため、障害のある幼児な
どや保護者の不安な気持ちに寄り添ったきめ細かな対応や支援が望まれます。
障害のある幼児などの就学先の決定は、保護者の要望等を踏まえながら教育委員会
が行います。だからと言って、園が何もしなくてよいわけではありません。障害のあ
る幼児などや保護者の思いを受け止めながら、就学に向けた準備に関する助言を行っ
たり、保護者の承諾を得た上で、就学先や教育委員会からの問い合わせや相談に応じ
たりします。
また、就学先の決定や卒園がゴールではないことを念頭に、障害のある幼児など
が、その後の生活の変化に対応し、自己を発揮しながら安心して就学先での学校生活
を送ることができるよう、支援の過程を丁寧に引き継ぐことが必要です。
(1) 小学校との連携の強化
障害の有無にかかわらず、小学校教育への円滑な接続は重要です。日頃から、小
学校と連携し、気軽に相談し合える関係をつくりましょう。また、園と小学校の教育
の一貫性や、教育内容や教育方法の理解を相互に深め、園では小学校での学習や生活
を見通した上で教育を行い、小学校ではスタートカリキュラムの充実を図ります。
全てのこどもに対して、幼児教育と小学校教育との円滑な接続の基盤が整ってい
ることは、障害のある幼児などにとっても重要です。例えば、スタートカリキュラム
として、時間割が柔軟であったり、遊びを取り入れた活動が展開されたり、教室の掲
示方法が園と同じだったりすれば、障害のある幼児などにとって園との環境の変化が
小さく、安心して小学校に通うことができるでしょう。
(2) 就学先決定等の仕組みに関する基本的な考え方
就学先となる学校や学びの場の判断・決定に当たっては、幼児の障害の状態のみに
着目して画一的に検討を行うのではなく、一人一人の教育的ニーズ、学校や地域の状
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(167ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 167ページ況、保護者や専門家の意見等を総合的に勘案して、個別に判断・決定する仕組みとな
っています。特に、その際、一人一人の障害の状態等を把握して教育的ニーズを明確
にし、具体的にどのような支援の内容が必要とされるかということを整理することが
まずは重要です。そして、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供で
きる就学先となる学校や学びの場について、教育支援委員会等において検討を行うと
ともに、市区町村教育委員会が総合的な判断を行い、本人及び保護者、教育委員会及
び学校との合意形成を進めた上で、最終的には市区町村教育委員会が決定します。こ
うした一連のプロセスとそれを構成する一つ一つの取組の趣旨を、就学に関わる者全
員が十分に理解することが重要です。
こうした就学決定等の仕組みに関して理解をした上で、小学校への引継ぎを行うこ
とが大切です。
(3) 小学校への引継ぎ
園での障害のある幼児などの実態や支援内容等を小学校に引き継ぐことにより、当
該幼児が一貫した支援を受けられることが大切です。そのためには、園の先生は、小
学校等でどのような教育が行われているのかを知り、小学校等での生活や学習も想像
して、小学校に伝える情報を考えるようにしましょう。
小学校等では、児童の状態や教育的ニーズに応じ、児童の可能性を最大限に伸ばす
場所で学ぶことができるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級があり、
さらには特別支援学校もあります。このように、連続性のある「多様な学びの場」の
整備が行われています。
小学校では、通常の学級においても、特別支援教育の視点を生かした授業を創意工
夫することで、全員が「分かる」「できる」授業づくりに取り組んでいます。また、
小学校の通常の学級に在籍していても、必要に応じて個別の支援(特別支援教育支援
員の配置や通級による指導など)を受けることができます。なお、個別の支援につい
ては、学校ごとに状況が異なるため、就学予定の小学校ではどのような支援を受けら
れるのか、確認をしておくとよいでしょう。
また、就学時に、小学校6年間の学びの場が全て決まってしまうのではなく、こど
も一人一人の発達の程度、適応の状況、学校の環境等を踏まえて、柔軟に学びの場の
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(168ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 168ページ見直しができることを、関係者は共通理解することが重要です。就学相談の初期の段
階で、就学先決定までの手続きの流れや就学先決定後も柔軟な学びの場の見直しがで
きることなどを、保護者に予め説明しておくことは、障害の状態等の変化へ十分な対
応ができないことによってこどもが学校で困ることのないようにする観点からも重要
です。
小学校で障害のある幼児などが活用できる制度等も念頭に、一貫した支援が可能と
なるように引継ぎを行うことが大切です。引継ぎに当たっては、園の基礎的環境整備
と合理的配慮(15 頁参照)の両方について、障害のある幼児などへの支援として伝
えるようにしましょう。例えば、車椅子を使用している幼児は、バリアフリー化され
ているかといった基礎的環境整備の状況によって、園等で行う個別の支援は異なって
きます。園がどのような施設設備を有し、障害のある幼児などにとってどのような配
慮を行っていたのかを伝えましょう。
障害のある幼児などの実態や保護者の要望、園で現にある施設設備や先生の体制な
どを踏まえた園の支援方針や支援内容について、当該幼児の実態とともに伝えましょ
う。要録や園で作成している個別の教育支援計画、個別の指導計画等が役に立ちま
す。要録や計画は、園での様子を伝えるためだけに使用するのではなく、その計画の
下、園では当該幼児にどのように関わり、ねらいがどこまで達成できたのかを伝え、
今後の課題は何であり、どのような支援が必要かを、就学先の先生と一緒に考えるた
めの材料としましょう。また、得意なことや苦手なこと、園での 1 日の流れに沿って
どのような支援をしているのか、どのようなときに不安を感じたり落ち着きをなくし
たりパニックになったりするのか、そのようなときに園ではどのような支援をしてい
たのかなど、なるべく具体的に伝えるようにもしましょう。さらに、障害のある幼児
などはスモールステップでねらいなどを作成することを踏まえ、当該幼児の発達にあ
わせてどのようにスモールステップを設定し、個別の指導計画の見直しを行ってきた
のかも説明しましょう。その延長線上に、小学校での生活があります。小学校の先生
が、障害のある幼児などの小学校での生活がイメージしやすいように、説明を工夫す
ることが大切です。そのためには、園での障害のある幼児などの遊びや生活の様子を
実際に観察し、園の先生が解説することが望ましいでしょう。そして、小学校から、
校長や小学校1年生担任だけでなく、養護教諭や小学校の特別支援教育コーディネー
ターなども参加することで、障害のある幼児などを多角的・多面的に支援することが
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(169ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 169ページできます。
一貫した支援を実現していくためには、障害のある幼児などやその保護者との関
係はもちろん、園と就学先の学校との関係、園と専門機関や教育委員会との関係や体
制など、様々なつながりを丁寧に築いたり、体制を見直したりしていくことが大切で
す。
就学先の決定にのみ焦点を当てるのではなく、早期からの支援による計画的・継
続的な教育支援へ、そして、家庭や地域、専門機関や教育委員会といった関係機関と
連携した組織的な取組へとつなげていきます。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(170ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 170ページ第6章 園における障害のある幼児などの支援の
実際(実践事例)
第1章から第3章では、園において、障害のある幼児などを受け入れるに当たって
の基本的な考え方や配慮について述べました。第4章では、障害種別に基本的な理解
や日々の保育における障害のある幼児などの困難さに応じた支援について述べまし
た。第5章では、障害のある幼児などの指導や支援を行うための体制整備について述
べました。第1章から第5章までで共通して述べているのは、障害があるからできな
い、この障害種にはこの支援といったように決め付けたりせずに、目の前の障害のあ
る幼児などを肯定的に受け止め、その子のよさや好きなことを生かしながら、その子
の困難さに応じた支援を行うことの重要性です。そして、障害の有無にかかわらず、
幼児同士が育ち合える関係づくりや、障害のある幼児などの保護者の気持ちに寄り添
った支援の大切さです。さらには、こういった取組を支える先生の姿勢や体制整備な
どの必要性です。
園における活動では、これらは切り離して考えることはできません。第6章では、
第1章から第5章までで述べた考え方を踏まえて、各園が実践を進めるための手掛か
りとなるように、いくつかの具体的な事例を紹介していきます。
そもそも、先生は、保育を進める上では、一人一人の幼児をよく見て、その幼児に
とって発達に必要な体験が得られるように指導を考えます。そのとき、どのような指
導をすればよいか、幼児の姿から自分の指導を振り返り、日々、幼児理解に努めなが
ら「次はこうしてみよう」と指導の改善につなげています。障害のある幼児などにつ
いてもこのことは同じです。先生は、障害のある幼児などの存在の有無にかかわら
ず、どの幼児も楽しく充実した園生活を送ることができるように、一人一人に応じた
指導を考える必要があります。
しかし、実際には、障害のある幼児などを受け入れる場合、障害のある幼児などに
目が向けられ、その幼児を特別な存在として捉えたり、障害の診断がなくとも、「気
になる」幼児がいると、その幼児との関わりにおいて「困ること」が出てきたりしま
す。どのように対応したらよいのか、具体的な支援の方法や方向性が見出せないまま
に、その日その日の支援に留まってしまうこともあるかもしれません。また、「気に
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(171ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 171ページなる」ことは、先生がどのような視点で当該幼児を捉えているかによって異なるた
め、同じ幼児を見ていても先生によって「気になる」と感じる点が異なる場合もあり
ます。このようなズレは、当該幼児が見せる特定の面だけを捉えているために生じて
いる可能性があります。当該幼児の実態を捉え、当該幼児のよさや抱える困難さを捉
えるためには、先生同士が話し合い、今必要な支援だけではなく、長期的な視点をも
って計画的に支援を考えていくことが大切です。そのためには、障害の基本的な理解
と当該幼児の背景を理解しながら、担任が一人で抱え込まず、園全体の協力体制の
下、園として組織的に取り組むことが重要です。
障害のある幼児などの指導は一様ではありません。当該幼児の実態、保護者の気持
ちや家庭の状況、園の体制や関係機関との連携状況などに応じた支援を考える必要が
あります。本章で取り上げる事例は、あくまでも一つの実践事例であることを考慮し
て各園の実情に即して活用してください。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(172ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 172ページ事例1 日々の先生同士の会話の中で障害のある幼児などが抱える困難さに気付く
園に入園後、何となく指示が伝わりにくい、周りの状況が分かっていないのでは
ないかなど、気になることが見えてくる幼児がいます。しかし、先生によっては、
そのような場面にさえ、気が付かないことも多くあります。様々な先生が関わる
ことで、幼児一人一人の実態を把握し、障害のある幼児などの困難さに応じた必
要な支援を行っていくことができます。日々の先生同士のコミュニケーションを
気付きや早期支援につなげていくことが大切です。
【ポイント】
●何気ないことを伝え合える先生間の関係性をつくりましょう。
●日々の些細な出来事を記録しておきましょう。
●気になる出来事を身近な先生に相談しましょう。
●他の先生や園長などから様々な意見をもらい、園全体で関わることで、障害の
ある幼児などの困難さに応じた早期支援につなげましょう。
●保護者の思いを受け止め、一緒に障害のある幼児などの姿を捉えましょう。
園内の他の先生と幼児の普段の姿を語り合うことは非常に重要です。普段の雑談の
中で新たな発見があることもあります。自分の一方的な捉え方ではなく、他の先生の
様々な意見を聞いてみることは、幼児の多角的・多面的な理解につながります。ここ
では、そのことで、障害のある幼児などの抱える困難さに気付き、支援に関して検討
を始めた事例を紹介します。
○おとなしくて手がかからない子だと捉えて―隣のクラスの先生との会話から―
A児は一人っ子で、両親に大切に育てられている様子。園に来ると、大好きな積み
木を始める。積むことそのものを楽しんでいるようなこともあれば、何かを作って
いるようなこともあるが、黙々と一人で遊んでいることが多い。担任は手のかから
ないおとなしい子と捉えた。保育時間が長くなってきたある日、「お外に行くからト
イレに行って、片付けをしてね」と担任がクラス全体に声掛けをし、多くの幼児が
外に行く支度をしていた。Aちゃんにも「トイレに行ってね」と声を掛け、外に
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(173ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 173ページ出た。しばらくして室内を見に行くと、Aちゃんが泣いていた。見るとお漏らしを
してしまっていた。
別の日、砂場で遊んでいて、「そろそろお弁当の時間だよ」と保育室に入る準備を
したが、Aちゃんはいつまでも砂場で遊んでいる。「Aちゃん、お弁当だよ」と顔を
見て話すとにっこりして一緒に室内に入ってきた。
担任は、A児は、一つのことに没頭すると夢中になってしまうのだろうと捉えてい
ました。一人遊びを好み、おとなしくて手がかからない子だということを隣のクラス
のB先生に伝えました。B先生は、A児は没頭して遊ぶタイプの子なのだろうけれど、
お漏らしをするまで、周りの様子に気付かないことが気に掛かりました。B先生は、
A児は周りの様子に気付きにくいとともに、自分から困ったことを伝えることも苦手
なのではないかと担任に伝えました。
○不安感が強い子だと捉えて―学年の先生との会話から―
保育室のテラスの部分に巧技台で一本橋など渡って歩けるコースを作った。多く
の幼児が繰り返し楽しんでいたが、A児はいつもの積み木の場所で遊んでいる。担
任は室内では積み木、屋外では砂場の2か所でのみ遊んでいることに気付く。
担任は、大人に大切に育てられてきたから、初めての場所では不安感が強いのだろ
うと捉えていました。そのことを学年会の際に話題にすると、確かにA児はいつも決
まった場所で遊んでいることが多いということが話題になりました。初めての場所や
遊具に関わるときには、担任がそばにいることで安心できるのではないかということ
を担任に伝えました。
そこで、担任がA児の近くで遊び、一緒に手をつないで移動すると、少し安心した
のか、一本橋の近くで友達の様子をじっと見ていました。しばらく見ていると、手を
つないだまま、友達のまねをして渡ろうとしました。うまくいかず落ちてしまうと、
再び友達のしていることを見ていました。
不安な場合には手をつないでいると安心すること、初めてのことはじっと見ている
ことが多いことなど、新たなA児の理解につながりました。初めての遊具に関わる際
には、担任と一緒に友達の様子を見ていることで安心できるように担任がそばにいる
ことにしました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(174ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 174ページ○聞いてないことが多いと感じて―主任のアドバイスから―
また別の日、外に出るときに水筒を持ってくるようにクラス全体の幼児に伝えた
が、A児は周りをきょろきょろ見ながらぼうっと立っていた。もう一度「水筒を持
ってくるよ。」と実物を見せ指示をすると、はっと気付いて、水筒を持ってきた。
母の日の似顔絵をかくときにも、クレヨンを持ってくるように伝えたものの、A
児は画用紙を見てにこにこしているだけ。個別に「クレヨンだよ」と実物を見せ、
顔を見て伝えると、分かったようであった。
担任は全体の指示は聞き取りにくいのか、ぼうっとしていることが多く、一度きり
の指示では伝わらないようなので、次回からは個別に声掛けをするようにしました。
学年で話題にしていると、主任の先生に、一度で聞き取れないようだけれど、具体物
を示すと理解できるようだ、個別でも具体物がないと理解できないときもあるのかど
うか、確かめた方がよさそうだと言われたので、留意して関わるようにしました。
○どのように伝えると伝わるのか―主任の関わりから園長とも共有して―
次の日、主任はA児が積み木で遊んでいるところに行って後ろ側から「Aちゃん、
何してるの?」と話し掛けてみたが、反応がない。右側から「Aちゃん」と言って
も遊び続けている。左側から「Aちゃん」と言うとやっと顔を上げる。正面からの
「何を作っているの?」の問い掛けにはにこにこ応じているが、積み木を指差して
いる。「おうちかな?」と言うと嬉しそうにうなずく。しばらくして、担任が「片付
けだよ」と言う。Aちゃんは周りの友達が片付け始めた様子を見て、積み木を片付
け始めた。
主任は、A児は聞こえに問題があるのではないかと捉えたので、背後から声を掛け
てみたのでした。左側からこちらの言っていることが伝わるようでしたので、主任は
右側の聞こえが悪いのではないかと考えました。また、先生が話していることの理解
はしており、質問の答えに対する反応はあるため、家庭では気付きにくいのではない
かと思いました。そのことを園長と担任に伝えました。園でA児が言葉を発する機会
があまりないため、一対一での関わりがどの程度できるか確認することや家庭ではど
のような様子なのか、保護者の話も聞いてみることにしました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(175ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 175ページ○保護者から幼児の家庭での様子を聞いて―保護者との情報の共有―
家庭では何でものんびりな性格だと捉えているようだ。発語も遅めだったよう
で、ゆっくり話してあげると理解できるので、家庭内で困ることはないようだ。園
での出来事を伝えたところ、家庭でも遠くからの呼び掛けには気付かないことがあ
るということが話題になった。
園でA児が積み木や砂場など好きな遊びにじっくり取り組み楽しんでいる様子を伝
えるとともに、全体的な指示があるときには個別に分かるように具体的な指示をして
いること、初めての遊具や場所の移動の際には、担任が手をつないでいれば安心でき
ることなどを伝え、園でも更に丁寧に関わり、集団の生活の中でどのような困難さが
あるかを引き続き観察し、保護者と共有することにしました。
保護者は家庭でももう少し様子をみて、病院を受診してみることも考えたいという
ことになりました。
事例から読み取れること
〇何気ないことを伝え合える先生間の関係性をつくっておくことが大切です。
自分にとっては気になる出来事ではなくても、他の誰かに話すことでその重要性に
気付くこともあります。特に、他の幼児との関わりで迷惑をかけないようなおとなし
い子と捉えてしまい、本人の困難さに気付きにくいことは数多くあります。園全体で
一人一人の幼児の理解を深めていくことは、障害のある幼児などの抱える困難さへの
早期の気付きや支援につながります。
〇些細な出来事を記録しておくことが大切です。
日々の幼児の遊びや生活の様子を記録しておくようにしましょう。その日の特定の
活動だけでは気にならない幼児の様子も、数日間の記録を通して分かることもありま
す。また、先生同士で話し合う際の根拠ともなります。
他の先生から気になる視点に関する助言をもらった場合には、その視点から障害の
ある幼児などの遊びや生活の様子を記録するだけではなく、当該幼児の思いを推測し
たり、先生の関わりやそれに対する当該幼児の反応も記録したりするようにしましょ
う。障害のある幼児などの抱える困難さや支援について考えるヒントとなります。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(176ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 176ページ〇気になる出来事を身近な先生に相談しましょう。
ちょっと気になる出来事があったときには、園内の身近な先生に相談しましょう。
自分にとっては初めてのことでも同じような経験をしたことがある先生もいます。
様々な意見を聞くことで多様な見方や解釈ができるようになります。障害のある幼児
などとの関わり方の新たな視点が見つかることも多いでしょう。
〇他の先生や園長などから様々な意見をもらい、園全体で関わることで、障害のある
幼児などの困難さに応じた早期支援につながります。
園全体で一人一人の幼児の理解に努めていくことが重要です。担任が問題意識をも
っていない際にも、経験豊富な主任等が関わることで、障害のある幼児などがどのよ
うなことに困難さを抱えているのか、どのような支援を必要としているのか、実態把
握に必要な情報を整理することができます。障害への気付きや必要な支援、保護者と
の共通理解につなげていくことができるのです。
〇保護者の思いを受け止め、一緒に障害のある幼児などの姿を捉えていきましょう。
家庭での一対一での生活と園のような集団生活の場での生活とでは障害のある幼児
などの実態は変わってきます。保護者は、集団の中での当該幼児の様子等については
理解しにくいかもしれません。その際には、園でどのような支援をしているか、どの
ように支援することで困難さを克服することができているかなど具体的な場面を挙げ
て丁寧に伝えることが必要です。また、保護者の思いや日常している関わり方などを
よく聞き、園でも取り入れていけそうなことなどを話し合い、当該幼児のためにでき
る支援を一緒に考えていくことも必要です。保護者との信頼関係を築き、一緒に当該
幼児の特性の理解に努め、更に今後の支援の方向性を共に考えていくことにつなげて
いきましょう。
(第2章(3)幼児の障害の状態等に応じた必要な支援のためのアセスメントの重要
性 9頁参照、第3章2.合理的配慮を含む必要な支援を考えるために必要なアセス
メント 19 頁参照、第3章3.先生の基本的な姿勢 24 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(177ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 177ページ事例2 日々の様子を共有していくことで障害のある幼児などの実態把握につなげ
ていく
入園後、園生活の中でうまくいかない場面が多いことがあります。先生が困って
いるということは、障害のある幼児なども困っている可能性があることを踏まえ、
園全体で当該幼児の特性、好きなことや得意なこと、苦手なことなど、当該幼児の
実態を把握し、必要な支援につなげていくことが大切です。
【ポイント】
●日々の出来事から行動の特性を把握していくことが大切です。
●その時々で考えられる支援を試していくことで実態把握を更に深めます。
●実態把握で気付いた当該幼児の特性に応じた指導や対応の仕方を共有します。
●実態把握の積み重ねで見えてきた好きなことや得意なことを中心に、他の幼児へ
の理解を促す場面を見付けていきます。
●家庭と情報共有し、入園前のこと、園外での様子を把握し、当該幼児の理解を深
めます。
幼児の障害の有無にかかわらず、幼児理解を深めていくことは基本です。しかし、
様々な幼児と関わる担任にとっては、困った場面ばかり目についてしまい、どうした
らよいか分からず、幼児の全体像は見えにくくなっていることがあります。日頃から
先生同士のコミュニケーションをとり、相談しやすい雰囲気をつくっていくことも重
要です。また、家庭での様子やこれまでの育ち、園以外の場での様子など、保護者か
らの情報も実態把握には必要となります。担任やその他の情報を基に、様々な角度か
ら障害のある幼児などの実態を把握していくことが大切です。
ここでは、入園当初は、B児は、目が離せず、困った行動が多いと捉えていた担任
が、様々な場面を通してB児を把握していくことで、担任のB児の捉え方が変化し、
B児に変容が見られた事例を紹介します。
○入園当初…興味のままに行動する―補助の先生との毎日の振り返りから―
B児は、二人兄弟の一番上で、3歳で入園。入園前の情報はない。母親は育てに
くさを感じているものの、どうしたらよいのか分からず、B児に手を焼いている様
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(178ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 178ページ子。
B児は、初めての園にも物怖じせずに遊び出した。園庭の遊具が気に入った様子
で、入園式後、母親と園庭の遊具でいつまでも遊んでいた。次の日、担任は保育室
で遊べる環境を用意して園児を待っていた。B児に「おはよう」と声を掛けると、
担任とは目を合わせず、昨日遊んでいた園庭の遊具のところに走って行ってしまっ
た。B児のことを補助に入っている先生にお願いして、担任が他の園児の対応に追
われ、呼びにいくことができずにいると、補助の先生と一緒におやつの時間に保育
室に戻ってきた。手洗いやトイレは自分で済ませることができたようだ。帰りの支
度をすると、外にすぐに出ようとするので、「先生と一緒に行こうね」と手をつな
ごうとすると、手を振り払われてしまった。「お母さんのところに連れて行ってあ
げるからね」と一緒に行くようにすると、何とか手をつないで一緒に歩いてくれた。
アリを見つけると、「アリさん…」と動かなくなり、他の園児も同じようにアリに
気をとられて進めなくなってしまった。
園児が帰った後、補助の先生と、B児について話をしました。補助の先生は、「この
くらいの年齢の幼児は自分の興味のあることしか、目に入らないから仕方ないですね」
と言っていました。養護教諭は、入園初日のB児が好きな遊具に走っていく様子を見
て、あまりにも周りの状況が見えていないことが気になるようでした。自分の「興味
のままに行動する、目についたもの(この日は遊具、アリなど)に反応するのはこの
くらいの年齢の幼児の特徴ではあるものの、B児の行動に違和感を感じたようでした。
そこで、まずは、B児の行動を規制するのではなく、次の日からは、必ず誰かがB児
の行動を把握するようにしました。
○興味がめまぐるしく変わっていく-自分はこうしたいという思いの中で-
-学年主任と共有-
多くの園児が園に慣れ、それぞれのお気に入りの遊びができてきた。B児は、
友達の楽しそうにしている雰囲気が分かり、遊んでいるところに行くが、友達の
使っているものを取ってしまう。砂場で遊んでいると、X児が使っているスコッ
プをB児は無理に取って使い始めてしまった。取られてしまったX児は、泣いて
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(179ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 179ページ訴えるが、B児は返さない。担任は「これは、Xちゃんが使っていたんだよ。こ
っちを使おうね」と同じ種類のスコップを渡すが、ゆずらない。仕方なく、X児
に新しいスコップを使ってもらうことにした。B児と先生が一緒に砂の山を作っ
ていたが、先生がちょっと目を離した隙に、砂場からいなくなってしまった。遠
くから泣いている声が聞こえ、行ってみると、B児がブランコに乗ろうとしてY
児を押しのけている。「だめだよ! Bちゃん」とZ児が止めると、急に表情が変
わってZ児に向かって砂を投げつけた。担任が「ブランコ乗りたかったの? お
友達のこと押しちゃったの?」と聞くと「押してないよ、Bが乗るの!」と言っ
てブランコに乗り始めようとする。Y児とZ児には「ブランコにどうしても乗り
たかったんだね。順番守れるように先生からお話しておくね」と言って別のブラ
ンコに乗るように促した。しばらくブランコに乗った後、「お友達、困っていたよ
ね」とB児に伝えたが、何のことか分かっていない様子。
担任は、学年主任に相談してみました。主任からは、この年齢の幼児は友達の使っ
ているものが目に入るとすぐに欲しくなってしまうから、クラスの人数に近い数だけ
同じものを確保しておくこと、B児の分は別に準備しておくこととのアドバイスをも
らいました。また、目に入ってやりたいと思ったことは、自分で良いか悪いか考える
前に、やってしまうようなところがあるので、トラブルを未然に防げるような配慮が
必要、否定的な言葉に反応している姿から自分に自信がないのかもしれないので、家
庭での様子について保護者と話をしてみた方がよいとも言われました。園では、B児
が否定される場面を減らし、B児の思いを受け止めながら、B児と一緒に方法を考え
ていけるような支援も必要ではないかということになりました。
○支援について保護者と共に考える-園外での様子を知る-
B児が他の幼児から意地悪な子という印象をもたれないようにと担任は配慮し
ていたが、友達とのトラブルが絶えず、母親と話をする機会も増えてきた。母親と
の関係性ができ、母親が入園前や家庭での様子を少しずつ話してくれるようになっ
てきた。入園前は親子教室に通っていたとのことだが、そこで自分勝手に行動して
しまうことが目立ち、恥ずかしかったこと、小さいころからスーパーに買い物に行
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(180ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 180ページくと必ず迷子になっていたこと、家では言うことを聞かないので厳しく叱ってしま
うことが多いことなどを話してくれた。
担任は、保護者の大変さを受け止めながら聞くようにしました。また、園では、目
につく遊具に反応してしまうことが多いけれど、友達とトラブルになる前に同じもの
を必ず準備しておくことや、否定的な言葉に過剰に反応してしまい、衝動的な行動が
出てしまうことがあるので、一度話を聞いたり、時間や場所を変えて気持ちを切り替
えられるようにしたりしていることを伝えました。担任は、今後は、B児の得意なこ
とを見付けて自信をもてるような指導をしていくことにしました。
○今後の指導の方向性を考える-スクールカウンセラーに相談する-
これまでの園での様子から、B児は、興味や関心の移り変わりが大きく、衝動性
があると捉え、B児の困難さに応じた配慮についてスクールカウンセラーに相談す
ることにした。スクールカウンセラーに、B児の普段の園での様子を見てもらった。
その日は、幼児皆で保育室や園庭で大きな画用紙にローラーで絵の具を塗る遊びを
楽しんでいた。B児もローラーが楽しくなっていろいろなところに塗ることを楽し
んでいた。すると、自分が絵の具だらけになることが楽しくなり、次には全ての水
道を全開に回して、水を思い切り出すことが楽しくなってきたようだ。さらに、自
分が足洗い場に寝そべって水しぶきを浴びることが楽しくなったようだ。
気持ちを発散させるような遊びや水に関する遊びには特に興奮し、積極的に遊びま
したが、エスカレートしすぎてしまい、担任は対応が間に合わないことがしばしばあ
りました。保育参観後のスクールカウンセラーとの協議において、多動の傾向や衝動
性が強い傾向が見られるので、生活の中でB児がしてもよいことが分かりやすい環境
のつくり方を工夫することが大切であること、B児の困難さや支援の手立てを園全体
で共有することになりました。また、園での支援などについて、保護者の気持ちにも
配慮しながら、共有することになりました。
○B児の得意なことを見つけて-他の友達との関係性を考える-
運動会の練習のとき、B児は自分の出番を待てず、自分のやりたい遊びを続け
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(181ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 181ページていることが多く、担任は困っていた。玉入れが始まると、楽しそうな様子にB児
も交じってきた。玉を思いっきり投げることが楽しくて何度も楽しんでいる。最初
は他の幼児が玉入れを終えてもB児は投げ続けていたが、何度も繰り返すうちに笛
の合図で終わりということが分かり、友達と一緒にルールを守って遊ぶことができ
るようになった。B児は、体の動きが活発で投げることも得意だったので、担任が
「Bちゃんのチームは玉入れ強いね」と他の幼児にも聞こえるように褒めると、「ほ
んとだね」、「Bちゃん、投げるの上手だからね」、「Bちゃん、次も頑張ろうね」と
友達から声を掛けられ、B児も嬉しそう。玉入れの練習には毎日張り切って参加し、
運動会が終わった後もクラスで玉入れ遊びを楽しんだ。
運動会の練習は苦手だったのですが、玉入れのルールが分かりやすいことでB児が
張り切って参加できました。そのことを担任がすぐに気付き、B児の自信につながる
言葉掛けをしました。他の幼児にも聞こえるようにしたことで、他の幼児がB児のよ
さに気付くきっかけになりました。
事例から読み取れること
○日々の出来事から行動の特性を把握していくことが大切です。
担任のちょっと気になる、幼児の行動に対して違和感があるという場面があったと
きには、毎日のちょっと気になる場面、行動、出来事などを記録しておき、振り返っ
たときに、どのような場面で苦手なことがありそうなのかなど、一緒に関わっている
先生と情報共有し、行動の特性を把握していくことが大切です。どのようなときにど
のような行動をするのかということを少しでも客観的に捉えていくことを積み重ねて
いくことが大切です。ここでは、まずは、B児の様子を把握できるように補助の先生
が傍について注視することから始めています。
○その時々で考えられる支援を試していくことで実態把握を更に深めます。
障害の有無がはっきりしていない場合には、特に日常の遊びの状況から対応を判断
する必要があります。担任や副担任だけではどのように対応したらよいか判断が難し
い場合や、他の幼児との関わりの中で危険なことが伴うときには、学年主任等を中心
に園全体として相談することが大切です。他の幼児とのいざこざにならないように、
人数分に近い数の遊具を出しておくことや、いざこざの際には当該幼児の思いを周り
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(182ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 182ページの幼児に代弁するなど、特別な支援ではなくても有効な支援はないかを探っていきま
す。そうすることで、遊具へのこだわりや当該幼児なりの出来事の捉え方などにより
詳細に気付いていくことにつながります。初めは、その場その場での対応しかできな
いかもしれませんが、同じような場面が多く見られたり、最初の支援の方法ではうま
くいかないことが見えてきたりします。当該幼児が落ち着いて行動できた支援や、そ
うではなかった支援を整理し、当該幼児の支援について園全体で検討するようにしま
す。その際には、できるだけ具体的な場面を挙げて、多くの先生で意見を出し合うこ
とも重要です。
〇実態把握で気付いた当該幼児の特性に応じた指導や対応の仕方を共有します。
実態把握の中で、B児は特に否定的な言葉を掛けられたことに反応するのではない
かとの見方が出てきました。他の幼児に対しての危険な行動などは制止しなければな
らないこともありますが、「だめ」、「やりません」など否定的な言葉を掛けるのではな
く、「どうしたかったのかな?」など本人の思いを聞きながら、気持ちが落ち着くよう
にするための方法を見付けることが有効なようでした。保護者から話を聞く中で、家
庭での関わり方なども知ることができます。ここでは、家庭では言うことを聞かない
ことが多く、その度に厳しく叱っているとのことでした。大人から行動を強く規制さ
れたり、叱責されたりしてそのことに対して反発することが増えたり、自己肯定感が
低くならないような関わりを園の中では心掛けることを共有するようにしました。保
護者の気持ちに配慮しながら、実態把握の中で気付いた当該幼児の特性に応じた対応
の仕方について考えていくことが必要です。
○実態把握の積み重ねで見えてきた好きなことや得意なことを中心に、他の幼児への
理解を促す場面を見付けていきます。
実態把握を重ねていくと、行動の特性や、出来事の理解の仕方など、その子なりの
特性が分かってきます。得意なこと、苦手なことなども分かってくるでしょう。皆と
一緒の活動が苦手な幼児も、分かりやすいルールがあることで、遊び方が理解しやす
い場合もあります。さらに、当該幼児の好きなことや得意なことを先生が理解し、そ
のことを中心に他の幼児との関わりをつくり、他の幼児に分かるように褒め、よさを
認め合える関係性を築けるようにしていくことを忘れないようにしたいものです。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(183ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 183ページ○家庭と情報共有し、入園前のこと、園外での様子を把握し、障害のある幼児などの
理解を深めます。
園での場面だけでなく、家庭での様子やこれまでの子育ての困難さなどを共有し、
対応の仕方を一緒に考えていくことは、どの幼児にとっても必要なことです。特に、
障害のある幼児などをもつ保護者に対しては、困難さを受け止め、家庭での様子を聞
くことで、園での対応を丁寧に考えていくことができます。保護者が、当該幼児の特
性の理解が不十分なときには、日々の当該幼児の実態把握を丁寧に積み重ねていくこ
とが重要です。また、保護者から入園前の様子や、園以外の場での様子や困難さなど
の情報が得られると、総合的に当該幼児のことが捉えられるようになります。保護者
との十分な信頼関係を築いた上で専門機関等への相談なども話題にしていくとよいで
しょう。
(第3章2.合理的配慮を含む必要な支援を考えるために必要なアセスメント 19
頁参照、第4章1.障害のある幼児などの困難さに応じつつ全体的な発達を促す支援
の在り方 35 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(184ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 184ページ事例3 障害のある幼児などの困難さから支援を考えるために園内委員会を活用
する
障害のある幼児などの困っている姿に出会うと、担任も戸惑い悩みます。その
悩みを一人で抱え込むのではなく、先生全員で思いを共有し知恵を出し合い、当
該幼児の健やかな成長につなげていくことが大切です。当該幼児の困難さについ
て先生間で共通理解を深め、当該幼児の実態に応じた支援を考えるためには、園
内委員会をどのように活用したらよいでしょうか。
【ポイント】
●園内委員会は当該幼児や先生からのSOSに応じ、適時、開催しましょう。
●次の視点を大切にして、先生間の協議を行いましょう。
・ケース検討は具体的な記録に基づくこと
・当該幼児の困難さのみへの注目は避け、よさも含めて総合的に捉えること
・障害特定ではなく、客観性をもって当該幼児の実態を捉えること
・当該幼児の実態を捉える視点は具体的であること
・どのような支援(先生の関わりや環境の工夫等)があれば、当該幼児は安心し
て遊びに没頭できるのか、他の幼児との関わりが広がるのか、場面を想定して
具体的にアイデアを出すこと
・当該幼児のよさや困難さに関して、保護者との共有に向け、今の保護者の気持
ちに寄り添った段階的な情報共有について話し合うこと
●必要に応じて、関係機関と連携しましょう。
●終了時には、次回の開催に向けて取り組むことを確認しましょう。
先生は、障害のある幼児などの園での遊びや生活の様子から、当該幼児の発達の遅
れや偏りに気付くことがあります。このような気付きを大切にして、先生全員で当該
幼児の困難さについて話し合うことから、必要な支援は始まります。このとき、障害
の有無を判断することが目的ではなく、目の前の幼児の困難さを適切に捉え、困難さ
に応じた支援を検討することが大切です。園内委員会は、当該幼児を理解し、健やか
な発達を促すために園全体で取り組むための組織であり、この組織を有効に活用する
ことにより先生全員が共通理解を図り、組織的な支援をすることができます。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(185ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 185ページ障害のある幼児などの困難さを捉えようと話し合いをしている二つの園内委員会の
様子を紹介します。先生がそれぞれに意見を出し合い、当該幼児の困難さへの理解を
深めるためには、どのようなことに留意すればよいのかについて考えていきましょう。
園内委員会① 「視線の合わない」C児への対応
2年保育 4歳
入園当初の5月の園内委員会では、視線を合わせない、他の幼児との関わりが少な
い、場面の切り替えに遅れるといったC児の様子について話し合いました。しかし、
当該幼児の困難さの要因が分からなかったので、どのような視点から更に当該幼児の
姿を見ていけばよいのかについて共有しました。
先生全員で共有した視点に注意して当該幼児の姿を見た結果、視覚的な問題よりも
興味や関心の偏りや経験不足による不安が強い傾向にあることが分かったので、保護
者や関係機関と連携した支援について検討しました。
園内委員会の様子は次のとおりです。
5月の園内委員会
「遊びが広がらない、他の幼児との関わりが見られない」など、新入園児の気にな
る様子を共有することになりました。その中で、視線が合わず、遊びが広がらないC
児について何に困っているのか、丁寧に姿を捉えることとなりました。最初に、担任
から具体的なエピソードの報告がありました。以下は、報告のあったエピソードのう
ちの一つです。
【担任からのエピソード報告】
登園時、「おはよう」と声を掛けても、遠くを見て目を合わせようとしないのです。
最初はお母さんの陰に隠れていたので恥ずかしいのかなと思ったのですが、一人で
玄関に入ってきたときに声を掛けても反応がありません。近づいて「おはよう」と
言うと、目を合わせずに単調な声で「おはよう」と返ってきます。室内遊びが多く、
友達との関わりもあまり見られません。場面の切り替えに遅れて、部屋の隅で固ま
ってしまうことがよくあります。
担任からC児の具体的なエピソードが語られると、他の先生からもC児の困難さに
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(186ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 186ページ関した意見がありました。しかし、一度の園内委員会ではC児の困難さの的確な把握
や困難さに応じた支援策の決定は難しく、次回の開催までに各先生が何に取り組むの
かについて話し合い、次のとおりまとまりました。
【C児の困っている姿について丁寧に観察】
○ 「視線が合わない」という状態は、物が見えにくい、人と関わるのが苦手等、様々
な要因が考えられます。C児の困難さを適切に捉えるため、具体的な観察場面につ
いて共有しました。
・物が見えにくいという視点から
C児は周りをどのように見ているのか、見えているのかについて、日常生活での
視線の向け方に注意します。例えば、物を注視することはできるか、前に立つ先生
に注目することはできるか、絵本や紙芝居の読み聞かせのときの視線はどうかなど
について、気を付けて見るようにします。
・人と関わるのが苦手という視点から
わらべ歌やにらめっこなどの遊びの様子、人への関心や他の幼児からの働き掛け
への応じ方、普段の言葉のやり取りなどについて、気を付けて見るようにします。
「対人関係」に課題が見受けられる場合、本人の特性によるものか、初めての集団
生活での戸惑いのように環境の影響なのかなどについて丁寧に検討する必要があ
ります。そのため、日常的な関わりの記録を行うとともに、生育歴や保護者の関わ
りの様子などの情報収集を行うこととしました。
・場面の切り替えに遅れるという視点から
場面の切り替えが難しいのは指示がうまく理解できていない可能性があります。
他の幼児の様子を見て動く様子が見られるか、普段の言葉のやり取りはどうかな
どについて、気を付けて見るようにします。また、個別の声掛けや、次の活動や遊
び方の手順の提示などの視覚的ガイドの手立てを講じて、C児がスムーズに動け
るかどうかも確認します。
・発達全般の視点から
体の動きや生活動作など、発達全般の状況も確認する必要があります。
【C児が楽しく遊んでいる姿について丁寧に観察】
○ 楽しく遊べることが支援の手掛かりになることから、C児の好きなこと、興味や
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(187ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 187ページ関心について探ることになりました。例えば、スムーズに参加して、豊かな関わり
が見られるのはどんなときか、笑顔や言葉が発せられるのはどのような場面かにつ
いて、気を付けて見るようにします。
6月の園内委員会
○C児の実態の把握
5月の園内委員会で示された視点に注意して見てきたC児の姿を共有し話し合った
ところ、視覚的な問題よりも興味や関心の偏りや経験不足による不安が強い傾向があ
ることが確認されました。他の幼児と一緒に行う運動遊びや製作活動など、初めての
場面では遠巻きに見ているけれど、2 回目には近づいて覗き込む様子が見られること
も分かりました。保護者は不安を抱きつつも個人差の範囲であると受け止めている様
子でした。
○園での支援
園としては「個別の指導計画」を作成して、具体的な支援方法を共有し実践すると
ともに、記録を積み重ね、児童発達支援センターからの巡回訪問の際、ケース検討対
象とすることにしました。近々行われる保護者との面談では、C児の園での様子と園
での支援について伝えながら、4月以降の成長を保護者とともに確認し、今後に向け
て共に取り組めることについて話し合う予定です。保護者が専門機関への受診を検討
するときのために、特別支援教育コーディネーターが地域の関連機関の情報を整理し
ておくことになりました。
園内委員会② 「落ち着きがない」D児への対応
3年保育 3歳児
入園後しばらくした園内委員会で、「クラスが落ち着かない。特にD児が落ち着か
ないことがきっかけになっている」との先生からの相談を取り上げて、話し合うこと
になりました。話し合いの中で、D児は聞こえにくい可能性があるとの意見がありま
したが、発達の個人差などの他の可能性も視野に丁寧にD児の様子を見るとともに、
聞こえにくさの支援についても合わせて行ってみることとしました。
その結果、聞こえにくい可能性が高いことが分かり、視覚的手掛かりや正面からの
声掛けが有効であることも分かりました。家庭での様子や保護者の思いなども聞きな
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(188ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 188ページがら、聴覚特別支援学校と連携し、必要に応じて助言を得つつ、D児の支援を行うこ
とになりました。
園内委員会の様子は次のとおりです。
春の園内委員会
【担任からのエピソード報告】
D児は、いつもきょろきょろしています。じっと座っていることもありますが、
誰かが動き出すとすぐ後をついて動き出します。園庭では遊具を中心に体を動かし
ていることが多いです。友達のことはよく見ていてまねをしています。遊びに夢中
になると声を掛けても振り向きません。言葉はあまり多くなく、何かあると指差し
て伝えます。友達が声を上げて泣いたときに一緒に泣き出し、わけを聞いても何も
言わず、しがみついて泣き続けていました。最近、そんなことがよくあります。ど
うしたらいいでしょうか。
担任からD児の具体的なエピソードが語られ、D児の困っている様子について話し
合いました。その結果、いつもきょろきょろしているのは聞こえにくいから視覚情報
を探しているのではないか、他の幼児が動くとついていくのも周囲の声が聞こえにく
いので周りの行動に合わせているのではないかなどの意見がありました。しかし、発
達の個人差などの可能性も否定できないため、丁寧にD児の様子を見るとともに、聞
こえにくさへの支援についても合わせて行ってみることとしました。支援について
は、具体的なアイデアを出すようにしました。
【D児の困っている姿や支援の有効性について丁寧に観察】
○ 聞こえにくい可能性があるとの意見がありましたが、発達の個人差などの可能
性も視野に、幼児の困難さを適切に捉えるため、具体的な観察場面について共有
しました。
・3歳児の発達の段階の視点から
活発に動くことや夢中になると声掛けに気付かないこと、友達が泣くとつられ
て泣くということは、3歳児にはあり得ることです。何をきっかけに動き出す
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(189ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 189ページのか、声掛けに気付かないのはどういう場面か、誰かが泣くと必ず泣くのかな
どについて、状況や頻度を客観的に把握することとしました。また、言葉の理
解や表出の状況を把握するため、言葉での指示は伝わっているか、ルーティン
でない活動に迷わず参加できているかなどについても、気を付けて見るように
します。なお、他の幼児との言葉のやり取りなどのように、発達の遅れと聞こ
えにくさのいずれにも該当する状況については、より丁寧な周囲の状況や幼児
の様子の把握が必要となります。
さらに、十分に参加できている運動的な遊びや製作活動などにおいて、D児が
困っている様子がないか確認し、発達状況を把握するようにします。
・聞こえにくいという視点から
担任から報告されたエピソードは、聴覚に障害がある場合に起こりうる行動で
あることを共有し、「聞こえ」の様子を観察することとしました。「きょろきょ
ろしている」のが顕著に見られるのはどのような場面か、言葉の表出はどんな
ときに見られるか、他の幼児とのやり取りはどのようになっているかなどにつ
いて、気を付けて見るようにします。さらに、聞くことに困難があるために視
覚から情報を得ようとしている可能性を考えて、視覚的な手掛かりの提示や正
面からの声掛けをしてみることにしました。
【D児と他の幼児との関わりへの支援】
○ 周囲の音声が聞こえにくいため、D児が他の幼児を遊びに誘うことが少なく、
次々に展開する遊びの場合には状況が分からなくて不安を感じている可能性があ
ることから、先生がD児に聞こえるように個別に声掛けをしたり、イラストや身
振り手振りで伝えたりすることにしました。
○ D児にとって、他の幼児が泣くことはとても不安なことのようです。不安の原
因はまだ分かりませんが、他の幼児が泣き出したときには、D児が落ち着けるよ
うに、集団から離したり、状況を説明したり、先生が寄り添ったりするようにし
ました。
初夏の園内委員会
園全体で丁寧にD児の姿を捉えたところ、D児は「聞こえ」に課題がある可能性が
高く、視覚情報の提示や正面での声掛けが支援として有効であることが分かりました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(190ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 190ページ3歳児健診の結果について入園時資料を確認するとともに、「聞こえ」の状況など、D
児の育ちについて保護者はどう受け止めているか、面談を行うこととしました。保護
者の承諾が得られれば、「聞こえ」の状況を把握し、さらに支援策について検討するた
めに、聴覚特別支援学校の巡回相談を活用する予定です。
夏の園内委員会(保護者面談後)
○保護者面談から分かったこと
保護者もD児の様子について、「ご飯だからおもちゃを片付けて」と言っても知ら
ん顔をしているなど、言ったことが伝わらないことがあり、つい叱責することが多く
なっていると悩んでいたことが分かりました。D児は強く叱られる経験を繰り返して
不安が募っていることが推測されます。このことが、友達が泣くことに敏感になって
いる理由かもしれません。聞こえにくい可能性が保護者と共有できたので、専門機関
への受診を勧めることを確認しました。
○関係機関との連携
保護者の承諾が得られたので、D児の様子を聴覚特別支援学校と共有し、D児が安
心して園での生活を送るための環境の構成や配慮の在り方について具体的な助言を受
け、「個別の指導計画」を作成することとしました。
クラス担任は、D児が聞こえにくいことを踏まえて、引き続き、正面からの声掛
け、ジェスチャーや絵カードを用いての説明などに取り組むこととしました。D児に
とっての分かりやすい説明は他の幼児にとっても分かりやすいことを確認し、クラス
経営上の工夫につなげました。
事例から読み取れること
園内委員会で大切にしなければならないのは、全ての先生が、障害のある幼児など
に対する配慮の必要性を共通理解するとともに、先生間の協働により指導内容や指導
方法が充実することです。
二つの事例から、園内委員会を進める上で大切にしたいことを確認します。
〇障害のある幼児などの姿を全先生で客観的に捉える視点
日々の保育において、意識して関わる場面や支援の手立てについて具体的に提案し
合いながら、幼児の姿をより精緻に捉えようとしています。当該幼児が見せる姿が障
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(191ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 191ページ害に起因するものなのか、それともその他の要因によるものなのか、多角的な視点で
協議しています。その姿は一過性のものか、頻繁に見られるものか、環境や場面によ
って変わるのか、関わり方によって変わるのか、検討することが大切です。
〇指導内容や指導方法の共有と実践
事例では、園内委員会で確認された情報を全ての先生が共有し、それに基づく指導
内容や指導方法を全ての先生が理解し実践しようとしています。支援の具体的手立て
を共通にすることにより、障害のある幼児などは日々の生活に安心感を得ることがで
きます。そのためにも個別の指導計画の作成が有効です。
〇障害のある幼児などの姿とその背景を読み解く視点
障害のある幼児などの困っている姿の背景として、家庭環境や生育歴が関係してい
る場合もあります。また、身体の動きの困難や感覚の障害が潜んでいる場合もありま
す。いずれにしても、園での姿を観察するだけでは情報を得ることができません。保
護者や関係機関との連携が必要になります。
〇保護者との連携における留意点
入園時に障害が明らかになっていない場合には、保護者も当該幼児の様子を十分把
握できていない場合が多いと考えられます。保護者との意見交換や情報共有について
は慎重かつ謙虚に取り組まなければなりません。十分な信頼関係を築き、当該幼児の
困っている姿を共有できたときに連携がスタートします。C児の事例では、保護者と
の面談を重ねながら専門機関へつなげる方針を立てています。
〇関係機関との連携と「個別の教育支援計画」
D児の事例では、保護者の承諾を得た上で、聴覚特別支援学校と連携してD児への
支援を検討しています。医療機関の受診と併せて、D児に関わる関係機関が協働して
「個別の教育支援計画」を作成し、長期的な一貫した支援を見据えた体制を築くこと
が大切です。
(第5章1.体制整備の必要性 128 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(192ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 192ページ事例4 外部有識者の助言を生かして支援の手立てを考える
障害のある幼児などの支援を考える際には、障害に関する専門的な知識等が必要で
す。外部有識者の助言を活用することも重要な方策の一つです。当該幼児の状況や感
じている困難さを専門的な視点から把握し、障害の状態等に応じた具体的な支援方法
などについて相談することができます。一方で、来園する外部有識者が園の訪問に慣
れていないということもあります。保育について、また自園の特色や体制などを伝え
理解を図ることは、当該幼児が集団の中で力を伸ばしていくための支援を考える上で
重要なことです。
外部有識者による巡回相談などを活用して、当該幼児の障害の状態等に応じた支援
を考えるには、どのようなことを大切にするとよいでしょうか。
【ポイント】
●双方の専門性を発揮して、障害のある幼児などの支援を考えましょう。
●事前の準備や事後の取組を行い、確実に実践につなげましょう。
●保育に関する理解を図りましょう。
●外部有識者の助言と幼児教育を考え合わせて、支援を検討しましょう。
ここでは、2年保育4歳児E児について、巡回相談を経て園での支援を考えていっ
たプロセスを紹介します。
① 入園当初のE児の様子と保護者との関わり
2年保育4歳児 4月
入園式の日。保護者と共に登園したE児は少し緊張した面持ちでしたが、保護者と
一緒に保育室に入り、自分のロッカーを見るなどしました。けれども、式場である遊
戯室に入ると大声で泣き出し、入園式は途中で保護者と退出しました。式後の保育室
での活動には保護者に抱かれながら泣かずに参加し、先生の読む絵本を見ていました。
帰りの挨拶をする際に、先生は保護者に、E児のペースでゆっくり慣れていきましょ
うと伝えました。
翌日以降、E児は保護者との別れ際は不安そうにしていましたが、先生と一緒に保
育室にある乗り物のおもちゃで遊ぶなどしながら、徐々に慣れていきました。とりわ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(193ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 193ページけ園庭で遊ぶことを好み、走り回ったり好きなテレビ番組のキャラクター(以下、キ
ャラクターとする)のまねをしたりして笑顔が多く見られました。
園生活に慣れてくると、楽しく遊ぶ一方で、近くにいる他の幼児をぶったりけった
りする、他の幼児が遊んでいる積み木を倒したりするなどのことが目立ち始めました。
先生はE児に、ぶたれたり遊んでいるものを壊されたりすると、相手は痛かったり悲
しかったりすることを、その都度伝えました。E児は、そのときには「分かった」「ご
めんね」と言いますが、同様のことは繰り返されました。また、対面式や誕生会、避
難訓練などを嫌がり、遊戯室に入ると泣き出してその場から離れることが続きました。
保護者には、降園時にその日の楽しかった様子を伝えることを中心にしながら、徐々
にうまくいかない場面のことや先生の対応を伝えました。保護者は、家庭でのエピソ
ードや保護者が感じる育てにくさについて少しずつ話すようになっていきました。先
生は、保護者が困っている状況やこれまで丁寧に配慮しながら子育てをしてきている
ことなどを受け止め、園は保護者と一緒に子育てをしていく場であることを伝えまし
た。その上で、巡回相談の仕組みを説明し、E児について相談することを提案し、了
承を得ました。
② 巡回相談の実際(準備、当日、事後)
事前準備
巡回相談で来園する外部有識者が、園の訪問は初めてであるとの情報を得て、保
育や自園の方針などを丁寧に伝える必要があると考えました。そこで、2種類の資
料を事前に準備することとしました。
ア 保育や自園の方針や体制などを伝えるために(管理職や特別支援教育コーディ
ネーターが準備)
・既存の保護者向けの説明資料など(秋の入園希望者対象の園説明会資料や年度
当初の保護者会資料)を活用して作成したもの
・園要覧、園便り等
イ E児の様子を伝えるために(担任が準備)
・これまでの支援の経過や最近の様子を、学年会などこれまでに話し合った記録
や、日常の保育記録を基にポイントをまとめておく。視点は、日常の記録の視
点(遊び、人間関係、生活)とする。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(194ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 194ページ・担任が対応に苦慮している点について、具体的なエピソードと現時点で行って
いる支援の方向性や方法をまとめておく。
巡回相談の当日は、参観の前に園長から外部有識者に自園の概要や特色を伝え、
保育室の場所を案内しながら、実際のE児の姿を基に保育について説明することと
しました。また、個人情報が含まれるため、イの資料は項目のみ記載したものを配
布し、具体的な内容は口頭で説明することとしました。
巡回相談 当日
外部有識者は、園長から園の概要等を聞き、園内を見ながら保育について説明を受
けました。その後、E児の在籍するクラスで自由に参観し、保育後に協議会に参加し
て助言及び質疑応答を行いました。
<参考>当日の日程
9:30 来園 園長から園の概要や保育の説明、E児の概要を説明する。
園内案内
10:00 E児の在籍するクラスの保育参観
・好きな遊び
・片付け
・クラスでの活動
・昼食(弁当)
(昼食休憩)園長等と昼食を取りながら懇談
・好きな遊び
・身支度
・降園時の活動
・降園の様子
14:20 協議会(司会:特別支援教育コーディネーター)
・園長挨拶
・担任からE児に関する状況や指導について説明
・外部有識者からE児の様子や今後の支援について説明
・E児の発達等や今後の支援について協議
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(195ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 195ページ【外部有識者からの報告】
〇E児の様子について
・全体的に落ち着いて生活している。注意が移りやすい傾向や行動のコントロール
が難しい傾向が見られる。
・身支度や生活面では、先生が近くで声を掛けたり見届けたりすることで、時間は
かかるが最後までできている。
・ボタン掛けなど細かな作業等は、経験不足なのか苦手なのかは、継続して様子を
見たい部分である。
・戸外で、好きなキャラクターになりながら、走ったりポーズを取ったりしながら
笑顔が多く見られている。
・友達の様子を目で追っていたり、後をついて動いたりすることから、関心がある
様子である。
○担任が苦慮していることについて
<「友達をぶったり、使っているものを壊したりしてしまう」ことについて>
・本日も複数回見られた。どの場面も、仕草やつぶやきからキャラクターになって
いるように見受けられる。先生がE児の名前を呼んだりたしなめたりする口調で、
ハッとする様子があった。その後はすぐに「ごめんね」と言い、先生の話には「分
かった」と応じている。「分かった」と言っているが理解しているかどうかは検討
が必要であると考える。
・クラスでの集合時にも、つぶやきや仕草からキャラクターになっているように見
える。
<全体の集会などに、参加しにくいことについて>
・大勢で集まることや遊戯室という場所への不安などが予想される。どのようなと
きにどのような反応をするのか、事実を捉えて対応を考えていく。
・その場所へ行くことを強く嫌がったり激しく泣いたりするなどの場合、嫌な場所
(活動)という印象が強くついてしまうため、無理強いすることは望ましくない。
園生活が楽しいと感じることを優先して、少しずつ進めてはどうか。
・特定の場所を嫌がる場合、その幼児にとって何らかの原因があると考えられる。
例えば暗い、圧迫感があるなど様々であるが、受け止めや感じ方の強さは人によ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(196ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 196ページって違い、幼児はそのことを明示的に意識したり言語化したりすることは難しい。
外部有識者による報告の後、E児の実態及び今後の指導について、率直に意見を出
しながら協議しました。これまで気付かなかったE児の様子や、担任が指導に苦慮し
ている点を主な観点としています。
【協議】〇園の先生 ●外部有識者
<E児の様子について>
〇好きな遊び以外のときにも、キャラクターになりきっている時間が長いことが初
めて分かった。
〇何かになりきって楽しめることは、幼児期の発達としても大切で、E児のよさで
あると思っている。切り替えが難しいことは気付かなかった。
<友達をぶったり、遊んでいるものを壊したりすることについて>
〇友達をぶったり、遊んでいるものを壊したりするときも、E児にとってはキャラ
クターになりきっている延長なのかもしれない。そのキャラクターになって遊ぶ
ことで、行動がエスカレートしてしまうのではないだろうか。
〇ぶったり壊したりすることばかりではなく、楽しく遊ぶ場面も多く、園生活の安
定にもつながっている。プラスに捉えたい。
〇他の幼児への関心も見られてきているので、なりきって遊ぶ楽しさを生かしなが
ら、一緒に動く楽しさを高めたり、他の体験を織り込んだりしていくことができ
るとよいのではないか。
●遊びは、同じ活動に見えても一人一人に応じるように展開されていくことが分か
った。その幼児の興味や関心や楽しさを重視することは、障害のある幼児などに
とっても大変重要である。
●他の幼児との関わりを無理なく促すことは、園だからこそできることである。
E児は、結果的には友達を怒らせてしまっているが、本当は友達と遊びたいと願
っているように感じる。
●止める必要がある行動は、起きてしまう前に止められることが望ましい。E児に
とって分かりやすく、否定的でない端的な言葉や身振りを使って、いつも同じよ
うに働き掛けることが効果的であるように思う。E児への関わり方を、全ての先
生で共有できるとよい。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(197ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 197ページ●長期的な見通しを共有することも大切である。E児は、今は行動のコントロール
ができにくい状況である。まずは先生の言葉や行動などがE児にとって外からの
ブレーキになる。2年間を通して少しずつ、E児が外にあったコントローラーを
自分の中にもっていけるようなイメージで進めてはどうだろうか。
<集会への参加が難しいことについて>
〇今は無理をさせないことが重要であることは理解した。ただ、避難訓練だけは命
に関わることでもあり、参加させたい。
●集団生活の上で、また教育的な側面からも避難訓練が重要であることはよく分か
る。参加する活動について軽重をつけてはどうか。
協議会終了後、週末の学年会でE児の指導を具体的に考えることを確認して、解散
しました。
事後の話し合い
学年会で、翌週の打ち合わせの後、外部有識者との協議を踏まえてE児の指導につ
いて話し合いました。
【学年会】参加者 クラス担任2名 特別支援教育コーディネーター(主任)
<E児の様子について> 〇先生の発言 ◆今後の支援
〇皆で集まっているときや、ゲームをしているときに、つぶやいたりポーズを取っ
たりしていることが多くある。声を掛けるときは、遠くから呼びかけるよりも近
くで話し掛けた方が、ハッと気付くようだ。
◆好きな遊びからクラスの活動の時間などの切り替えの際に、キャラクターになっ
たままでいる様子のときには、肩に触れたり正面から向き合ったりして穏やかに
名前を呼ぶ。そして、両手をとって「Eちゃんマン、お、し、ま、い」と合図を
する。
〇腕輪状のものを何色か用意しておいたところ、好きなキャラクターになっている
他の幼児が使っているのを見て、E児も身に着けた。「おんなじ」と言って友達と
一緒に走ったりポーズをとったりしていた。
◆簡単に身に着けて友達と一緒の気分を味わえるもの、巧技台からジャンプするな
ど運動的な要素のもの、ショーのように曲をかけながら踊ることなど、なりきる
楽しさは大切にしながら、体験を広げていけるような環境を構成する。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(198ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 198ページ<友達をぶったり、遊んでいるものを壊したりすることについて>
〇すごい勢いで走ってきたときに、否定的でない言葉をと思い、とっさに「Eちゃ
ん、ブレーキ」と言った。E児がキュッと止まったので、「止まれてよかった。ぶ
つからなかったね」と言うと、うなずいていた。こんな感じだろうか。
〇E児が止まることができたのであれば、それを続けてみたらよいかもしれない。
うまく止まれたら「ナイス、ブレーキ!」とか、端的でリズムのよいほめるフレ
ーズを使ってはどうだろうか。
◆「Eちゃん、ブレーキ」、「ナイス、ブレーキ!」のフレーズを変えずに関わって
みる。うまく伝わらないときには、身振りを加える等しながら、E児にとって入
りやすい言葉や身振りなどを探っていく。
〇行動のコントロールについて意識してみると、例えば鬼ごっこで合図を聞いて動
くことや、音楽に乗って体操すること、音に合わせて静かに歩いたり思い切り跳
んだりすることなどは、E児にとって、意識して行動をコントロールする体験に
もなっていると思った。
◆動きのメリハリのあるもの、慎重に動くなど動きのコントロールを伴うものを、
クラス皆で遊ぶときに意識的に取り入れていく。
その他、集会は避難訓練のみ先生が抱いて入口から訓練の様子を見るなどして、
参加の方法を考えていくこと、遊戯室の窓下に、明るい色のカーテンを掛けること
などを話し合いました。
その後、学年会で話し合ったことを実践し、E児の様子に応じて調整しながら支援
を続けていくことにしました。併せて、個別の指導計画の案を作成しました。その
際、園の様式にある「遊び、人間関係、生活」の視点に加え、E児独自の視点として
「行動のコントロール」を加え、月末の園内委員会で検討することとしました。
また、保護者へは、巡回相談後にE児に対する支援で行っていることやそのときの
E児の様子などを伝え、E児にとって分かりやすい方法を共有しました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(199ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 199ページ事例から読み取れること
外部有識者との連携を進める上で大切にしたいことをまとめます。
1 双方の専門性を発揮して、障害のある幼児などの指導を考えます。
外部有識者には様々な職種があり、連携の方法も多様です。どのような場合でも、
当該幼児の実態を基に双方の専門性を発揮して、当該幼児のよりよい成長を一緒に考
えていくことが重要です。
①保育に関する理解を図ります。
外部有識者に保育を理解してもらうことにより、園生活を生かして、障害のある幼
児などが力を伸ばしていくための支援を共に考えることができます。事例にあるよう
に、既存の資料を生かした資料作り、実際の保育場面を見ながらの説明などを通して
伝えていくことが考えられます。
②外部有識者の見立てやアセスメントから学びます。
事例では、E児の様子を専門的な視点から観察し、園の先生と協議をする様子が示
されています。当該幼児の状況によっては、発達検査などの方法を用いたアセスメン
トが行われることもあります。障害の特性や程度によっては、当該幼児自身ができる
ようになることを目指して支援を行うことが重要である場合もあります。外部有識者
からアセスメント等の結果を示された際には、その背後にある検査等の方法や障害の
専門的な観点からの見解などを合わせて聞くことが大切です。
障害に関する専門的な観点からの見立てやアセスメントは、障害のある幼児などの
幼児理解をより深め、障害の状態等を踏まえた当該幼児に適した支援を考えることに
つながります。
③外部有識者の助言と幼児教育を考え合わせて、支援を検討します。
事例では、「端的な分かりやすい言葉で関わる」、「外からのコントロールからE児
自身のコントロールへ」といった外部有識者の助言を受け止めながら、園生活の中で
E児に適した支援を考える様子が示されています。
外部有識者との連携の中では、アセスメント等の結果に基づいた具体的な支援の方
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(200ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 200ページ法を示されることがあります。療育機関等では日常的に行われる方法でも、当該幼児
だけを対象にした教材や活動を個別に行うことは、幼児教育の特質を生かした支援と
は言い難いこともあります。専門的な方法を学びながら、園生活の中で当該幼児のも
てる力を伸ばすためにどのように体験を重ねていくことが必要かを考えていきましょ
う。その際、障害のある幼児などと他の幼児との関係性を捉える、障害の状態等に応
じた支援の中で他の幼児と共有できることを見出して、クラスの幼児皆にとって楽し
いことになるように工夫するなどのことが考えられます。さらに、このことは、障害
のある幼児などを含む全ての幼児にとって、園生活が充実することにもつながりま
す。障害に関する専門的な知識や方法と幼児教育を併せて考え、当該幼児に適したも
のになるようアレンジしていくことは、園の先生の専門性と言えるでしょう。
2 連携の機会を有効に活用するために、事前の準備や事後の取組を確実に行いま
しょう。
巡回相談等、外部有識者との連携の機会は限られていることが多いものです。貴重
な機会を有効に活用するためには、事前の準備や具体的な指導につなげるための事後
の取組が重要です。
①相談する障害のある幼児などの状況を的確に伝えましょう。
相談する障害のある幼児などの状況を端的に説明できるよう、外部有識者に伝えた
いポイントを明確にし、当該幼児の実態を整理しておきます。資料作成に負担がかか
りすぎないよう、新たな資料ばかりでなく、日常の記録や園内委員会で作成したもの
など、既存の資料を活用してもよいでしょう。資料作成や共有に当たっては、個人情
報保護の観点から、口頭での報告や配布資料の回収など、資料の扱いを決めておくこ
とが必要です。
事例では、初めて相談したときの様子が示されています。そのため、E児の全体的
な発達や先生が苦慮していることについて協議されています。2回目以降は、前の回
で焦点化されたことに絞って、指導の経過や当該幼児の様子を説明することが考えら
れます。この事例の場合、例えばE児の場面の切り替えに関すること、行動のコント
ロールに関すること、集会への参加に関することなどが該当するでしょう。
次回の計画に当たっては、当該場面が現れやすい時間帯に参観を設定したり、当該
場面を撮影したビデオを活用したりするなどのことも、当該幼児の状況を的確に伝え
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(201ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 201ページる手段として有効です。
②外部有識者との協議を踏まえ、確実に実践につなげましょう。
巡回相談等で話し合われたことは、実践につなげていくことが重要です。そのた
め、支援の方向性や具体的な方法を確実に検討し実施することが求められます。当
日、外部専門家との協議の後に話し合うことも考えられますし、事例のように、期日
を決めて後日話し合ってもよいでしょう。
事例では、学年会までの間に、担任が外部有識者の助言を念頭に置いて、改めてE
児の姿を捉えたり具体的な手立てを試行したりしています。その上で他の先生と話し
合うことで、よりE児に合った支援を考えることにつながっています。さらに、検討
した内容を個別の指導計画に反映させ、全ての先生で共有しながら指導を進めていく
ことも重要です。
また、保護者に巡回相談等を経て支援を工夫した点や、その際の当該幼児の様子な
どを伝えることも大切です。当該幼児にとって有効な支援を家庭と共有するととも
に、保護者が専門機関とのつながりを考えるきっかけの一つになることも期待されま
す。
(第2章(5)互いの専門性を発揮する専門機関との連携 11 頁参照、第5章4.
(2)巡回相談 143 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(202ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 202ページ事例5 個別の指導計画の作成を通して、障害のある幼児などの発達に必要な体験を
考える
個々の障害のある幼児などの実態に応じて適切な指導を行うためには、個別の
指導計画を作成するとよいでしょう。個別の指導計画は、教育課程を具体化し、障
害のある幼児など一人一人のねらい、指導内容及び指導方法を明確にして、きめ
細やかに指導するために作成するものです。個別の指導計画は、作成して終わり
ではなく、PDCAサイクルによる見直しを行うことが大切です。
【ポイント】
●個別の指導計画作成の流れ
①障害のある幼児などの姿から実態を把握しましょう。
②ねらいを考えましょう。
③環境の構成を考えましょう。
●個別の指導計画作成に当たっての留意点
・障害のある幼児などの現状、強み、思いを把握しましょう。
・多面的・多角的な視点で検討しましょう。
・障害のある幼児などの困難さだけに着目するのではなく、その幼児のよさや
得意なことを大切にし、その幼児を肯定的に捉えましょう。
・スモールステップを意識しましょう。
ここでは、一斉的な活動や行事等に参加しようとしない4歳F児の実態や指導の過
程の振り返りを通して、個別の指導計画におけるねらいや指導内容、指導方法につい
て検討したF児(3年保育4歳児)の事例を示します。
①F児の実態を把握する
F児は、気になるものなどを見付け自分の世界に入ると、全く周りの状況は意識の
中に入らず、ずっとそのことをやり続けます。友達のしていることに興味はあるよう
で近くで見ていたり、まねてみようとしたりすることはありますが、関わりはほとん
どありません。また、クラス全体での活動などには、自分から参加しようとはしませ
んが、支援員の言葉掛けなどにより、気分が乗ると参加することもあります。
最近、F児は給食を食べ終えるとランチルームの中をうろうろと歩き回るようにな
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(203ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 203ページりました。以前は、友達が食べ終わるまで、おとなしく席に座って待っていましたが、
今はじっとしていません。席に着くように声を掛けますが、担任の言葉は全く耳に入
らない様子です。担任は、先輩の先生にアドバイスを求めることにしました。
先輩の先生からは、「F児が歩き回らないようにするのではなく、なぜF児が歩き
回るのかを考えるのよ」とアドバイスをもらいました。そこで、支援員とともにF
児の言動を観察し、F児の思いを推し量ってみました。その結果、「最近、食事のペ
ースが早くなり、友達より早く食べ終わってしまい、次に何かすることを探してい
るのではないか」という仮説にたどり着きました。そのことを先輩の先生に報告す
ると、「F児は、自分から楽しみを見付けて活動したいという思いをもてるようにな
ってきたのね」と言われました。
担任は、F児が歩き回らないように行動の制限をかける指導をするのではなく、「な
ぜ、F児は歩き回るのだろう?」と問い直すことで、F児の思いが分かり、F児の行
動についても理解することができることに気付きました。そこで、担任は、F児をも
っと深く理解するために、様々な場面でF児のエピソードを集め、次の表を作成して、
まとめてみました。
保育室 保育室以外
一斉的
な活動
体を動かす活動は、先生の支えに
より参加するが、途中でやめたり、
また参加したりする。
運動会のリレーの練習で、わざ
と転んで、転ぶ感覚を繰り返し楽
しんでいる。
自由に
遊んで
いると
き
人形を使って遊ぶことが好きで
ブロックで家を作り、自分なりにイ
メージをわかせて遊んでいる。
幼児が複数名で追いかけっこを
していると、近くで同じようにや
ってみようとする。
生活場
面
朝の気分で、自分から身支度をし
たりしなかったりする。
食事を終えると歩き回る。お気
に入りの椅子があり、そこに座っ
て周りを眺めている。
F児は、周りの環境や条件が変わると全く違う姿を見せることが分かりました。そ
して、担任は、これまで一斉的な活動や生活場面だけでしかF児の姿を見ていなかっ
たことに気付き、一方的な面からしかF児を理解していなかったことを反省しました。
そのことを先輩の先生に話すと、先輩の先生から、「あなたは、多様な場面でのF児の
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(204ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 204ページ生活の様子、『最近変わってきたな』とか『どうしてこのような行動をとるのか』など、
気になった場面を記録していたから、この資料をまとめることができたのよ。でも、
F児の困ったことに着目しすぎて、F児を多面的・多角的に捉えることの意識が少し
低くなってしまったのかもしれないわね」と言われました。
②ねらいを考える
次に、担任は、F児のよさや得意なことと困難さを踏まえて、ねらいを作成するこ
とにしました。F児の実態を捉えるときと同様、F児の困難さだけに着目するのでは
なく、他の幼児と同じように、F児の中に育ってきているものを捉えた上で、F児の
よさを生かしながら困難さに応じた必要な支援をすることが大切であると考えました。
F児に対して、担任は「クラス全体の活動に楽しく参加してほしい」と思いました。
様々な場面でF児のエピソードから、「幼児が複数名で追いかけっこをしていると、近
くで同じようにやってみようとする」に着目しました。F児は、他の幼児と共に追い
かけっこはしていませんが、他の幼児がしていることが気になってきていると考えた
先生は、今のF児には、他の幼児の存在を肯定的に思うこと、他の幼児の中にいる心
地よさを経験することが大切であると考えました。他の幼児と同じ活動を求めたり、
他の幼児の発達の状況と比較したりするのではなく、F児なりのやり方で他の幼児と
関わっていけるようにすることが、F児が抱える困難さに応じた支援をする上で大切
であると考えました。F児が他の幼児の中にいる心地よさを経験していくためには、
その時々の遊びをF児自身が楽しむことが大切であるとも考えました。他の幼児と直
接的に関わらなくとも、他の幼児と共有した場や空間、時間がF児にとって心地よく
楽しいものであれば、F児は他の幼児との心の距離が次第に縮まっていくのではない
かと考えました。これらから、担任は、ねらいを「自分の好きな遊びを十分に楽しみ
ながら、友達の中にいる心地よさを感じる」にしたいと思いました。
しかし、担任は、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」のことが気になりました。
卒園までに「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が育っていくためには、このね
らいではだめなのではないか、F児の今の実態に応じたねらいを設定することとの関
係をどのように考えたらよいのかについて迷いが生じました。そこで、先輩の先生に
相談したところ、「『幼児期の終わりまでに育ってほしい姿』は到達目標ではないのよ。
今、あなたが設定したねらいは、将来的には、『協同性』などにつながっていると思う
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(205ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 205ページわ。でも、幼児の発達の状況などによって、どのような姿として現れるのかは違うわ。
卒園時に、F児なりの『幼児期の終わりまでに育ってほしい姿』が現れていればいい
のではないかしら。先生が、『幼児期の終わりまでに育ってほしい姿』を念頭において
指導することは大切だけれど、目の前の幼児の実態を踏まえて、その幼児なりの発達
のペースに応じることが大切なの。もちろん、他の幼児と関わることに困難さを抱え
ている幼児について、その幼児の好きにさせていては他の幼児と関わる機会がない可
能性がある。だから、あなたは、他の幼児と場や空間を共有する経験を重ねて、次の
ステップにつなげようと思ったのでしょう。それに、きっと、F児に経験してほしい
ことは他にもたくさんあったと思うけど、優先順位を考えて、F児にとって、今、大
切にしたい経験に絞ってねらいを設定していることもよいと思うわ」と助言されまし
た。
③環境の構成を考える
ねらいを「自分の好きな遊びを十分に楽しみながら、友達の中にいる心地よさを感
じる」と設定したので、F児のよさや困難さを踏まえた指導内容や指導方法を考える
必要があります。そのため、ねらいで示したようなことをF児が体験できるように、
困難さに応じた支援も考慮して、環境の構成を具体的に考えることにしました。
今、F児は、人形遊びや先生との追いかけっこ、友達のしていることに興味があり
ます。一方、クラスの幼児は、リレーごっこや鬼ごっこ、ブロック遊びに興味があり
ます。F児が遊びに没頭するためには、保育室のどこかに人形遊びのコーナーを作っ
て、一人でじっくり取り組めるスペースが必須だと思いました。また、F児と他の幼
児との接点が生まれそうな遊びとして、追いかけっこが考えられます。そこで、一日
の生活の流れの中で鬼遊びをするようにしたらよいと思いました。そうすることで、
F児がやりたいことをやりながら、思わず他の幼児と関わってしまうような場面をつ
くることができるのではないかと考えました。そして、具体的にF児やクラスの幼児
が遊んでいる姿を想像しながら、どのようなものを使ってどのような状況をつくると
よいのか、また、どのような支援が必要なのかを考え、環境の構成を具体的に考えて
いくことにしました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(206ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 206ページ④保育を振り返り、次の指導に生かす
毎日の保育を振り返り、見直し、改善していくことはもちろんですが、F児の実態
に応じたねらいや指導とするためには、定期的な見直しが必要です。F児の発達を見
通しながら、計画的に指導を始めて3か月が過ぎたところで、担任は、改めてF児の
姿を捉えてみることにしました。
最近、F児は、友達に敬遠されることが多くなってしまいました。担任は「他の幼
児が使っているものを取ってしまったり、他の幼児へのスキンシップが過剰になって
しまったりして、他の幼児といざこざを起こすことが多くなって困っているんです。
前はそんなことなかったのに」と、先輩の先生に相談しました。すると、先輩の先生
から「それはF児の中で、他の幼児と直接関わりたい気持ちや他の幼児のしているこ
とが面白そうで自分もやってみたいと思う気持ちが育ってきたからじゃないの?」と
言われ、ハッとしました。
「自分の好きな遊びを十分に楽しみながら、友達の中にいる心地よさを感じる」を
ねらいとしていましたが、F児は他の幼児と直接的に関わろうとしています。したが
って、ねらいも見直す必要があります。その際には、どのような状況がF児の変容を
生み出したか、F児にとってどのような支援が効果的であったのかなどについても振
り返って考えることが大切です。担任はF児のお気に入りの場をクラスの幼児が遊ん
でいる様子が見える場所に設定したり、F児が他の幼児と関わっているときは遠くか
ら見守ったりするなど、F児と他の幼児との関わりを大切にしてきました。F児のお
気に入りの場の位置は、F児が自分の遊びに没頭しながらも、クラス全体の雰囲気を
感じられる位置であり、今のF児にとって最適な環境であったと考えられます。今後
は、F児が直接的にクラスの幼児と関われるように、F児のお気に入りの場所の囲い
を少し低くしようと思いました。それと同時に、F児のよさをクラスの幼児に知らせ
るために、F児の興味や関心がある遊びに周囲の幼児を誘ってみようと考えています。
また、個別の指導計画やF児の変容の過程を園全体で共有し、園の先生全員が同じ方
針でF児の指導に当たることが必要であると感じ、修正した個別の指導計画を次回の
園内委員会で協議することにしました。
事例から読み取れること
個別の指導計画の作成の流れは、指導計画の作成と同じであることが事例から分か
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(207ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 207ページります。しかし、障害のある幼児などは、障害の特性等により発達に偏りなどがある
場合があります。発達の偏り等にばかり着目して、当該幼児を否定的に捉えたり、当
該幼児の発達の過程や状況と乖
かい
離した当該幼児にとっては負担過重ともなりかねない
ねらいを設定したりすることのないようにすることが大切です。障害のある幼児など
が感じる困難さは一様ではありませんが、「第4章 障害に関する基本的な理解と障
害のある幼児などの困難さに応じた支援の手立ての考え方」において、困難さや支援
の例を掲載しています。障害のある幼児などの抱える困難さの原因を考え、その困難
さに応じた支援を考え、環境の構成を検討する中でその支援についても併せて検討し
ていくことが大切です。そして、障害のある幼児などが抱える困難さについて、「でき
ないこと」と捉えるのではなく、当該幼児なりの発達の過程として温かなまなざしで
肯定的に捉えることが大切です。この事例において、先生が、個別の指導計画の作成
に当たって大切にしたことをまとめます。
①障害のある幼児などにとっての幼児教育
障害のある幼児などは、他の幼児と同じように幼児教育を受けています。したがっ
て、幼稚園教育要領等に示されたねらいや内容も同じです。一人一人の発達に応じて
必要な経験を導き出し、環境を通して教育を行うことも同じです。そのことを踏まえ
た上で、障害の状態等に応じた指導方法の工夫をすることが大切です。幼児教育は、
教育の成果がすぐに現れないこともあります。だからこそ、幼児の発達を見通して、
幼児の発達を促すような指導の方向性を探っていくことが重要です。
②障害のある幼児などを肯定的に捉えること
障害のある幼児などは、先生にとって理解し難い言動をすることがあります。先生
は、どうしてもその言動を「困ったこと」と捉えて抑制してしまいがちです。しかし、
その言動を抑制したところで、その場の言動に変化はあるかもしれませんが、長期的
な視点で障害のある幼児などの発達を考えると、あまり効果はありません。障害のあ
る幼児などの言動は、その幼児の発達の過程において必要なものであり、その言動か
ら当該幼児の思いを推し量ることで、今、当該幼児にとって必要な体験が見えてきま
す。障害のある幼児などの抱える困難さについて、否定的に捉えるのではなく、当該
幼児が今の自分の興味や関心、能力等に応じて必要としている体験を読み解くヒント
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(208ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 208ページとして捉えることが大切です。そして、当該幼児なりの変容していく姿を捉え、その
成長を先生間で喜び合う姿勢が大切です。
③目の前の障害のある幼児などの実態に応じたものとすること
障害のある幼児などは成長していきます。先生の目の前にいる障害のある幼児な
どの実態に応じて、個別の指導計画の見直しをする必要があります。そのためには、
当該幼児の実態を捉えるため、当該幼児の現状、強み、思いなどについて、多面的・
多角的な視点から定期的に園内で話し合います。そして、スモールステップを意識
しながら、目の前の障害のある幼児などの実態に応じたねらいを考えます。
こうしたPDCAサイクルを構築することにより、先生は、目の前の障害のある幼
児などの言動に振り回されることなく、発達を見通して指導することができるように
なります。そして、指導内容や指導方法などが明確になり、よりきめ細やかな指導が
可能となります。
(第2章(2)教育課程と一人一人の発達に応じた指導 8頁参照、第2章(4)園
における個別の指導計画の考え方 10 頁参照、第5章2.(2)個別の指導計画 137
頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(209ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 209ページ事例6 障害のある幼児などの実態に応じた行事参加について考える
園で行われる様々な行事においては、障害のある幼児などに応じた指導を考えて
いく必要があります。その行事が当該幼児にとって、どのような意味をもつのかを
考えながら、これまでの経験を踏まえて、当該幼児にとって今、発達に必要な体験
が得られるように、行事が終わった後の園生活も見通した上で考えていく必要があ
ります。
そして、障害のある幼児などが行事に期待感をもち、主体的に取り組むことがで
きるように、先生は当該幼児の困難さに応じてどのように取り組むのか支援を考え
ていきます。
また、行事の多くは、保護者が日頃の障害のある幼児などの育ちの様子を参観し
たり、保護者自身も一緒に参加したりする機会となるため、当該幼児の保護者への
配慮も同様に考えていく必要があります。
【ポイント】
●園全体で組織的、計画的に取り組みましょう。
●これまでの指導の積み重ねを生かして指導内容や参加の仕方を検討しましょう。
●当該幼児や保護者と思いを共有し、参加の仕方や配慮について理解を得ながら進
めましょう。
ここでは、行事を通してG児の3年間の取組の変容とそのときの状況に応じた支援
策について紹介します。
<G児について>
G児は3歳児からの入園です。右半身に麻痺
ひ
があります。動作は体の左側で行うこ
とが多いようです。右手や右足はゆっくりとぎこちなくですが、動かすことができま
す。一つ一つの動きがゆっくりのため時間がかかったり、バランスを崩して転んだり
してしまうことがあります。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(210ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 210ページ①3歳児 〜保護者と一緒に安心して取り組む〜
G児は、入園当初から、保護者と離れることに不安な表情を見せていました。1学
期に保護者と一緒に遊ぶ参観の機会があり、保護者と一緒にリズムに合わせて踊るこ
とが楽しかったようで、普段の遊びでも少しずつ体を動かすことの楽しさは感じてい
るようでした。
そこで運動会では、G児への安全面に配慮しながら、リズムに合わせて歩いたり、
他の幼児と手をつないで入場するようにしたり、リズムの曲のテンポもG児ができそ
うなゆっくりした曲を選んだりするなどの工夫をしました。更にリズム遊びは、保護
者と一緒にあまり動かずにその場で踊るような構成を考えて、安心して取り組めるよ
うにしました。
当日、G児は、入場行進では落ち着いて参加しましたが、リズム遊びになると、い
つもの雰囲気とは違う雰囲気に緊張したのか、踊らずに保護者に抱きついたまま何も
せずに友達が踊っているのを見ていました。
②4歳児 〜友達と一緒に楽しんで取り組む〜
1学期の保育参観で、保護者と一緒にフリスビーで遊んだところ、G児は回転をか
けて飛ばすのが上手で、周りの幼児たちも驚くほどでした。これをきっかけに自分か
ら友達に声を掛けて遊んだり、戸外でも活発に遊んだりするようにもなってきました。
そこで、運動会では、友達と一緒に楽しめるように、4人が力を合わせて取り組む
乗り物競争を取り入れました。何度か遊ぶ中でG児がいるチームは「G児がいるから
遅い」「Gちゃんは、(乗り物を)両手で持てない」などの声が上がりました。G児は、
「もうやりたくない」と言い出しました。先生は「この乗り物は、4人の運転手さん
が揃わないと動かないんだけどな。Gちゃん運転手さんがいないと困るなあ」と言い、
続けて「Gちゃんはこの前のフリスビーを投げて遊んだとき、とても上手だったよね」
「何かいい方法がないか、先生、考えてみるね。皆も何かいい方法があったら教えて
ね」とG児のいるチームの幼児に投げ掛けました。
園内では、会議で、G児も楽しめるように乗り物を改良すること、フリスビーでの
経験を生かして、ボールを投げる的当ての要素を組み込むこと、走る距離を短くする
ことなどの検討をしました。
そして、段ボール箱で作った乗り物の持ち手の部分を、G児が持ちやすいように大
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(211ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 211ページきめの穴を開けて、G児が遊びの中でいつでも使えるように出しておき、段ボールの
乗り物の持ち方や走り方などを自然となじめるようにしておきました。
直前の練習では、G児は得意の的当てで力を十分に発揮し、G児がいるチームが勝
ちました。「やったー!」とG児もチームも大喜びでした。先生は「Gちゃんの的当て、
すぐに当たったね」「今日は、皆、運転がとても上手だったね、息がぴったりだったね」
と声を掛けました。
運動会当日、G児は、チームの友達と楽しそうに乗り物競争に参加し、満足した表
情を見せていました。
③5歳児 〜自信をもって取り組む〜
G児は、5歳児になり体力もついてきて、友達と一緒に遊ぶ楽しさや、体を動かし
て遊ぶ楽しさなどを重ねてきたことで、様々に表現することの楽しさも味わえるよう
になってきました。今まで思うように体が動かないことで不安を感じていることもあ
りましたが、困っていることを自分の言葉で伝えるようになるなど、成長した姿も見
られています。そのようなG児の姿にクラスの幼児のG児に対する理解も進んできて
います。
これまでのG児の姿から、2月の発表会では、G児にどのようなことを願うのかを
園内で検討しました。担任は「これまでの経験を生かして、友達と様々な表現を楽し
み、自信をもって取り組んでほしい」と考えました。
5歳児では「ブレーメンの音楽隊」の劇を行うことになり、G児はロバの役を選び
ました。ロバ役の友達同士で、「ロバはギターを弾いて登場しようよ」「一人ずつ弾く
のはどう?」「何の曲にする?」などの考えを出し合い、早速、自分たちで材料を探し
ギター作りが始まりました。G児は、友達が作っている様子を見ながら作り始めまし
たが、細かな製作など、自分で上手にできないところは言葉で自分のイメージを伝え、
友達に手伝ってもらいながらギターを作りました。
G児は、作ったギターを手に持ち、「いいこと考えた」と言って、友達に手伝っても
らいながらギターの端にスズランテープを付け、肩にかけられるようにしました。そ
して、早速、肩からかけて右手でギターを押さえ、左手を上下に動かし、左を向いた
り右を向いたりして弾いて見せると、それを見ていた周りの幼児から「Gちゃん、格
好いい!」「本当に弾いているみたい」と声を掛けられて、嬉しそうな表情を見せまし
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(212ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 212ページた。先生も「ロバの人たち、皆それぞれギターの弾き方が違って面白いね。一人ずつ
弾くっていいこと考えたよね」と声を掛けると、その後、自分たちで登場の仕方やギ
ターを弾く順番などを話し始め、G児は「皆、何番目がいい?」、「ロバだから格好い
いのがいいよね」などと、リードする姿も見られるようになりました。他のロバ役の
幼児たちが考えた表現とは違う、G児なりに考えたG児らしい表現がクラスの皆から
認められたことが自信となったようです。G児は当日の発表会では、大勢のお客さん
の前で堂々と演じることができました。
保護者もG児の成長を喜ぶとともに、他の保護者もこれまで行事を通しての育ちを
見てきたことで、G児の成長を共に喜ぶ様子も見られました。
事例から読み取れること
障害のある幼児などが行事に向けて取り組む際に大切にしたいことをまとめます。
1 障害のある幼児などの状況に応じた指導内容や指導方法を園全体で検討し、組織
的、計画的に取り組みます。
先生は、行事から得られる体験的な学びを期待して、クラスの一つのまとまりを意
識するあまり、つい統一感や参加を促してしまうことがあります。
行事は、そもそも幼児の生活に変化や潤いを与えるものであり、幼児が主体的に楽
しく活動できるようにすることが大切です。そのため、障害のある幼児などに無理を
させることがないように、園としての方針やその行事を通して何を体験してほしいの
かについて、ねらいや内容を十分に検討する必要があります。
事例のように、運動会や発表会などでは、いつものやり方にとらわれず、プログラ
ムの構成や内容を当該幼児にとって参加しやすいものに工夫するなど、園全体で考え
ていくことが大切です。
さらには、行事によっては、全部参加することを求めず、一部参加するなど、当該
幼児の状況に応じて考えていくことも必要です。行事は、参加することが目的ではな
く、行事の準備も含めて、幼児が何を体験し、何を学ぶのかが重要です。その体験や
学びは幼児ごとに異なります。行事だからといって、画一的な体験や学びがあるわけ
ではありません。
事例では、3歳児のときには、安心して取り組めるように保護者と一緒に参加する
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(213ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 213ページような内容にしました。G児は園での生活に慣れつつありますが、他の幼児と同じ動
きをすることは困難であり、ときには、慌ててしまいふらつくこともあります。その
ことをG児も何となく感じて不安そうです。そのため、保護者がG児に笑い掛けなが
ら踊ることで安心できることや、G児がふらつくようならすぐに手を差し伸べること
ができるようにすることが大切だと考えました。練習では参加できましたが、本番で
は参加できませんでした。しかし、練習で他の幼児と一緒に踊った経験は、G児に他
の幼児と関わろうとする気持ちを育みました。また、リズム遊びを繰り返すことで、
自分なりに工夫して体を動かすことも体験することができました。そうした体験は、
行事終了後の日々の生活の中でも、遊びの工夫として生かされていきます。そして、
学年が上がるにつれて、これまでの経験を生かした行事の工夫について検討すること
が大切です。その際、担任のみで検討するのではなく、園全体で話し合うことが大切
です。例えば、練習のときに常に保護者が園に来ることができるとは限りません。そ
ういった場合には、保護者の代役となる先生を決めておく方がよいでしょう。また、
G児も他の幼児も楽しむことができる振付や、日々の園生活の中でリズム遊びをどの
ように取り入れるのかなどについても園全体で話し合うようにしましょう。他の先生
からのアイデアも取り入れながら、G児も他の幼児も楽しむことができる行事となる
ように工夫します。
2 日々の積み重ねの延長上に行事があることを意識して、障害のある幼児などの得
意なことや好きなこと、育ってきたことが発揮できるようにします。
行事によっては、少し長期的に取り組む必要があります。そのため、取組の過程で
は、障害のある幼児などがこれまで経験してきたことを生かしながら、その日、その
時間で体験してほしいことを少しずつ積み重ねて、無理が生じないように、また、期
待をもって当日を迎えられるようにします。
事例では、G児は、他の幼児から「遅い」などと言われ、「もうやりたくない」と言
い出しますが、先生は、G児がボールを投げるような動きが得意であることを思い出
して、それを乗り物競争の要素に取り入れていくことにしました。
障害のある幼児などが期待をもって楽しく参加できるようにするためには、日々の
「楽しかった」、「できた」という小さな成功体験を積み重ねることが大切です。当該
幼児の得意なこと、これまでの経験の中で育ってきていることなどを捉え、取組の内
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(214ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 214ページ容に生かしていきます。
何度も繰り返し取り組むことで慣れてくることはよいことですが、先生が「あとも
う1回やろう」と言って、練習の回数を増やしたり、準備不足で当該幼児が待つ時間
が長くなったりすると、楽しさや期待感は薄れてしまいます。当日までの見通しをも
ちつつ、当日に向かうまでのその時々の当該幼児の気持ちを捉えて、参加できそうな
時間、回数などに配慮して進めていきましょう。
3 保護者と思いを共有し、参加の仕方や配慮について理解を得ながら進めます。
多くの保護者がこの日を楽しみにしています。期待が大きい一方で、障害のある幼
児などの保護者は、我が子が参加できるのかといった不安や周りの保護者の目を気に
して参加しない保護者もいるかもしれません。園として大事にしている体験を、障害
があるからといって体験できないことはとても残念なことです。そうならないために、
保護者の思いを十分に聞き取り、当該幼児が楽しく取り組めるように配慮する必要が
あります。
また、行事は、日々の遊びとは少し異なり、その日だけの特別感があります。その
意味では、いつもと違う雰囲気であることや普段よりも大勢の大人がいたり、見慣れ
ない人がいたりすることによって、当該幼児が取組の過程で見られた姿と異なる姿を
見せることがあります。
そこで、事前に本人や保護者に場所や物を見てもらう、取組の過程を見てもらうな
ど保護者と共有するなどし、安心して取り組めるようにすることも考えられます。
事例では、3歳児のときに、練習は保護者と一緒にリズム遊びに参加していますが、
本番では参加することができませんでした。保護者は、本番で他の幼児と同じように
できなかったことから、悲しそうであったり、将来への不安を口にしたりする様子が
見られました。本番では多くの保護者が見ていることなどもあり、リズム遊びに参加
できませんでしたが、練習でG児が体験したことはG児の成長にとって貴重な体験で
あること、園での他の幼児との生活や保育参観などの体験を繰り返すことで多くの人
が見守る中でも自己発揮できるようになっていくことなどを、先生は保護者に説明し
ました。また、G児とは、他の幼児と一緒に入場する楽しさを共感し、リズム遊びは
G児も一緒だともっと楽しかったという先生の思いを伝えるとともに、行事を終えた
数日後に園生活の中にリズム遊びを取り入れるなど、G児と達成感や喜びを共有する
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(215ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 215ページことも考えられます。そうして、G児が次の行事への期待感をもてるように配慮する
とともに、保護者とも期待感を共有するようにします。4歳児のときには、得意な遊
びができてきています。活動の際に必要な配慮についても、先生が具体的に考えられ
るようになっています。G児が安心して楽しめるように、活動への配慮を行うととも
に、保護者と行事の参加の仕方についても共有するようにしましょう。本事例では、
G児は全ての行事に一人で参加していますが、状況によっては、先生や保護者が近く
で声を掛けたり、ある行事には参加せずに応援したりすることもあるかもしれません。
行事前に保護者と相談し、G児の気持ちや状態に応じた柔軟な対応ができるようにす
ることが大切です。さらに、5歳児になると、幼児同士で考えを出し合う姿が見られ
るようになります。このことはG児も同様です。障害の有無にかかわらず、幼児が互
いの思いを共有し、発表会に向けて準備できるようにします。ギター演奏の表現方法
は、幼児なりの工夫や発想を生かせるようにすることで、G児は動かしやすい左手で
自分の思い描く弾き方を実演し、楽しそうでした。他の幼児も、G児の演奏の様子を
見て、それぞれに自分なりの演奏を工夫しています。
全てを先生が考えて決めるのではなく、当該幼児の思いを丁寧に受け止め、クラス
でどのように取り組んだらよいかを考える、大事な成長の機会として捉え、保護者に
対してもそうした幼児同士の育ち合いの機会となることの理解を得ながら進めていく
ことが大切です。
(第5章 2.個別の教育支援計画と個別の指導計画 134頁参照、第5章6.保護者
との連携 148 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(216ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 216ページ事例7 多様な幼児が共に遊びや生活を楽しむことのできる関係をつくる
幼児は、園で多数の同年代の幼児と関わり、気持ちを伝え合い、協力して活動に
取り組むなどの多様な体験をし、その過程で、支え合って生活する楽しさを味わい、
主体性や社会的態度を身に付けていきます。
障害のある幼児などには、他の幼児と同じ環境の中では、その体験や態度を身に
付けていくことが難しく、障害のある幼児などの困難さに応じた支援が必要となり
ます。また、障害に応じた合理的配慮やクラスの幼児たちと共に育つための配慮が
必要となります。しかし、このことによって、障害のある幼児などが集団に入れな
いと思うことは適切ではありません。障害のある幼児などだけではなく、他の幼児
にとっても、豊かな体験の機会を逃すことになりかねません。障害のある幼児など
の困難さに応じた支援を行うとともに、当該幼児のよさを生かしたクラスづくりが
大切です。
【ポイント】
①入園当初は、障害のある幼児などが園で安心して過ごせるよう、保護者との分
離の時期、先生と保護者の関係、環境の工夫などを考えましょう。
②障害のある幼児などの困難さに応じた支援の下、先生と一緒に遊びが楽しめるよ
うにしましょう。
③先生を仲立ちとして他の幼児と関わっていけるようにしましょう。
④障害の有無にかかわらず、幼児が育ち合える関係をつくりましょう。
<H児を取り巻く状況>
・4歳のH児は自閉スペクトラム症があり、知的障害もあると診断されています。
・保護者はH児の診断により早期から療育機関に通わせ、入園後にも療育機関を利
用しています。
・感覚過敏があり、身に着ける物を嫌がったり、着る物へのこだわりがあったり
します。
・一つのことに取り組む持続時間が短く多動の傾向があり、危険への判断ができな
いので安全を確保するために補助する先生(補助者)を配置しています。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(217ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 217ページ<入園までと入園当初の取組>
H児の姿 先生の支援
・入園申し込みの際に、保護者からH
児の状況を聞く。
・入園が決まり、4月以前に園庭開放
の際に遊びに来る。
・入園式は、泣いて会場や保育室内に
入ることができず廊下で過ごす。
・2日目、園庭のブランコで遊んで過
ごす。
・3日目、所持品の始末をしてから園
庭のブランコで補助者に見守られて
遊ぶ。
・園に慣れるため、未就園児対象の園
庭開放に来ることを提案する。
・来園時に、先生は意識的にH児と保
護者に声を掛ける。
・入園式の翌日は保護者に一緒に過ご
してもらうことを提案する。
・補助者と保護者が見守る。
・前日と登園時の様子で、保護者には
送迎後すぐに帰ってもらう。補助者
から、「おはよう、Hちゃん今日もブ
ランコして遊ぶ?」と声を掛け、ブ
ランコで遊べるようにする。
自閉症のあるH児は、初めての環境に不安を感じやすいので、安心して入園を迎え
られるようにするために、園庭開放などを利用して園内に入ることや雰囲気に慣れて
いけるようにしました。そして入園当初は、保護者がそのまま園でH児と共に過ごし、
安心感をもてるようにもしました。クラスの幼児たちは保育室で遊んでいても、H児
は、補助者と一緒に好きな場所で好きなことをして過ごし、園が楽しいと感じること
ができるようにしました。
この時期の環境の工夫は次のとおりです。
・靴箱、ロッカー、幼児たちが集まるときのH児の位置は、H児に分かりやすいよう
に端にして、目印となるシールを貼る。端にすることで、補助者の動きが他の幼児
の活動の妨げにもならない。
・登降園の際に毎日行うことは、絵で表示しておくことでH児を含めて、皆が自分で
身の回りのことをできるようにする。
・集まって先生が話をするときは、視覚優位のH児が集中できるように、視線の先の
物には布を掛けた。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(218ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 218ページ<園で安心して過ごすために>
H児の姿 先生の支援
・補助者がブランコの絵カードを見せ
「Hちゃんブランコに行く?」と遊
びたいことを確認する。「先生(担任)
に言ってこよう」とH児に声を掛け
る。
・補助者がH児を連れ「先生、ブラン
コに行ってきます」と代弁してから
園庭に出る。
・園庭で遊ぶ際のカラー帽子はかぶら
ず、補助者が持って出る。
・戸外遊びを好み、連日ブランコや築
山からのフープ転がしをして遊ぶ。
・絵カードを用いて、意思確認をする。
・「先生、園庭に行ってきます」と行
き先を伝える約束事を設け、H児
が補助者と一緒に意思表示してい
る雰囲気をつくる。
・無理にカラー帽子をかぶせず、柔軟
に対応する。
・好きなことができることで、園を楽
しいと思えるようにする。
入園してしばらくは室内遊びを中心としたり、園庭の遊びでは遊具を限定したりし
て安全に遊べるようにします。しかし、限られた場や遊具だけで過ごすことが難しい
場合がありますので、補助者は柔軟な対応をするようにしました。H児はブランコが
好きなので、好きなブランコ遊びを楽しめるようにしました。
また、言葉で意思表示をすることが難しいので遊具や場所、物や人などの絵カード
を作成し、H児と先生とのコミュニケーションツールとしました。H児は感覚過敏が
あり、カラー帽子を嫌がったので、無理強いせず、夢中になって遊んでいてかぶれそ
うなときにそっとかぶせることを繰り返すようにしました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(219ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 219ページ<Hちゃん、何か違う>
クラスの幼児の姿 先生の支援
・「Hちゃん、何で話さないの? 赤ち
ゃんなの?」と発語がないことが気
になる幼児は担任や他の先生に繰り
返し聞く。それでも「えー、どうし
て」と不思議に思っている幼児がい
る。
・H児はリズムや音楽的なことが好き
で、歓声を上げながら体を動かして
楽しんでいる。他の幼児は、何か違
うなと感じている。
・「そうね、今はまだ話せないけど、赤
ちゃんじゃなくて皆と同じ4歳よ」、
「話せるようになるまで少し時間が
かかっているの」、「話せないけど先
生たちがHちゃんの気持ちを知らせ
てあげるね」、「背の高い人や低い人
がいるように、話せるようになるま
でに時間のかかる人もいるの」など、
対応する。
・「Hちゃんも楽しいね」と楽しさやそ
の表現の仕方を言葉で伝えて知らせ
る。
他の幼児たちは、H児が言葉を発しなかったり異なる動きをしたりする姿からなん
だか自分とは違うと思い始めます。不思議に思う幼児の気持ちを受け止めながら、人
それぞれが異なっていてよいことを伝えます。また、楽しさや嬉しさの表現の仕方も
様々でよいことを知らせます。このことは、H児だけのことではなくクラスの幼児一
人一人に違いがあり、違っているからこそ個性を大事にしていきたい先生の姿勢を伝
えています。
<H児が友達の遊びの場に加わるために>
H児の姿 先生の支援
① H児はX児が積み木でタワーを作
る遊びに興味をもち、タワーを崩
す。X児が「やめて」と怒る。補助
者が「ごめんね。Hちゃんもやりた
いって」と言う。X児が再度積んで
① 友達と関わるよい機会として、様
子を見守る。
・積むことを楽しみたいX児と崩すこ
とを楽しみたいH児とで、楽しみ方
が異なる。H児に相手が嫌な気持ち
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(220ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 220ページいくとH児もまた同じように崩そ
うとするため、補助者が止めよう
とする。X児はH児を叩き、「もう、
やめてよ」と怒る。補助者がH児に
対して「Xちゃん崩されるの嫌な
んだって」と言う。
② 積み木で電車を作って遊んでいる
幼児たちの場にH児が入ろうとす
る。Y児に「入っちゃだめ」と言わ
れる。補助者が「どうして」と聞く。
「入れないから(狭いから)」と答
える。補助者は「そうか」と答える。
・H児の座る場所ができたことで、「い
いよ」と受け入れてもらえる。
③H児が友達の遊びに興味をもち近く
で見ている。また、ときには人にぶ
つかったりすることもあり、補助者
と一緒に、遊びや人との関わりに必
要な言葉を知っていく。
であることを知らせる。
・「Hちゃんも自分で積んでみる」と隣
で同じことをして遊ぶことを提案す
る。
② 「そうか」とY児の思いを受け止
めつつ、積み木を増やして場所を
広げてH児が座れるようにする。
「ここに座るようにすればHちゃ
ん入れてもらえる」と交渉する。
③ H児に「入れてって言ってみよう」
と声を掛け、補助者が「入れて、H
ちゃん入れてもらえるかしら」と
仲立ちをする。
また、「ぶつかったからごめんね、
だね」とH児に必要な言葉を知ら
せて一緒に言う。
6月頃になると2~3人の幼児たちで場をつくって遊ぶようになります。H児も周
りの友達の遊びに興味をもつようになります。しかし、H児は相手の思いを察するこ
とや「やめて」と言われても動きを止めることができません。そのため、先生がH児
に代わって遊びに必要な言葉「入れて」、「貸して」、「ありがとう」を言って仲立ちを
したり、「後でだって」、「今使っているみたい」など幼児たちの思いを端的にH児に知
らせたりしながら他の幼児と関わる機会をつくっていきます。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(221ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 221ページ<1学期末になるとクラスの一員として受け止められるように>
H児の姿 先生の支援
①補助者の支援があると「貸して」が
言えるようになり、物を媒介に少し
ずつ友達との関わりがもてるように
なる。また、友達と同じ場で、補助
者を仲立ちに友達と同じ物に関わり
ながら短時間一緒に過ごすようにな
る。
② H児と補助者との遊びに興味をも
ったZ児が、H児と同じことをし
ながら関わりをもつようになる。
③ ク ラ ス 活 動 で の リ ズ ム 遊 び の 際
に、歓声を上げながら体を動かし
て遊ぶことを楽しんでいる。
① 友達と同じ場で過ごす中で、互い
の思いを言葉で伝えて仲立ちをす
る。
② H児を支援しながら、周りの幼児
との関わりや同じ動きをする楽し
さを感じられるようにする。
③ リズム遊びの楽しさを受け止め、
共感していく。
一緒に生活していく中で、他の幼児は自分とはどこか違うと感じながらも、H児の
特性が何となく分かってくるようになると、補助者の見守りや仲立ちによって、友達
と同じ場で過ごすことができるようになっていきます。また、幼児が皆でリズム遊び
をするときには、歓声を上げながら体を動かす行為がH児の楽しみ方であることを受
け止められるようになってきます。
<できたり、できなかったりすることがある>
H児の姿 先生の支援
・身の回りのことを自分でやろうとす
ることやできることが増えていく。
その一方で、身の回りのことや弁当
の片付けなど全てを嫌がる日もあ
る。
・その日、そのときの姿を受け止めな
がら、「○○するよ」と声を掛けたり、
「今日は先生がしておくからね」と
手伝ったりする。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(222ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 222ページ・参観では、前半の集会には参加でき
るが、後半の遊びの時間には参加で
きない。更に「おやつを食べるよ」
と会食に誘うと一度は戻るが、おや
つを見て離席する。
・いつもと違う雰囲気では、活動が切
り替わるときに誘うが、無理強いを
せずにH児の思いに寄り添う。
H児は、朝の家庭での出来事や登園途中の出来事、体調など、きっかけは様々であ
るがちょっとしたことをきっかけに、朝、保護者と離れたがらずぐずったり、自分で
できることをやろうとしなかったりするなど、日頃できていることでも崩れてしまう
ことがあります。登園時に保護者からその要因を聞いたり、受け入れ方を考えたりし
ていきます。いつもは自分ですることでも、先生や補助者が代わりに行うなどをして、
H児の気持ちを受け止め、気持ちが切り替わることを支えるようにします。また、い
つもと違う雰囲気の行事や会場などに対応することが難しいので、H児の思いに寄り
添いながら、活動の切り替え時などに誘うようにしています。
<3学期 友達との関わりを通して>
H児の姿 先生の支援
・年長組から誕生会の引継ぎを行う。
「Hちゃん誘ってあげて」とY児に
補助者が声を掛ける。Y児に「Hち
ゃん行くよ」と背中をポンポンと合
図され、一緒に前に出る。司会用の
積み木に乗る際にも「ここ」と教え
てもらって並ぶ。
・同じ係の友達の後に付いて自席に戻
る。
・H児に直接働き掛けるのではなく、
「Hちゃん誘ってあげて」と友達の
関わりによって行動を促す。
・同じ係の幼児にはH児に関心を寄せ
てもらう。
・戻ってきたときに「Hちゃんもでき
たね」と褒めるとともに「Yちゃん
ありがとう」と声を掛ける。
H児への支援について、友達を介してもできるようになってきます。そのきっかけ
を先生が周りの幼児に気付かせたり知らせたりすることが大切です。その行為は、障
害の有無にかかわらず、困っている友達や自分の順番などを忘れている友達に声を掛
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(223ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 223ページけることと同じで、人への関心や思いやりの気持ちにつながっていきます。
<H児ちゃんキラキラしているものが好きだよね>
H児の姿 先生の支援
・冠を作っている友達に関心をもった
H児に「H児ちゃんキラキラしてい
るものが好きだよね」とZ児が言う。
・先生がキラキラする材料を出すとH
児も冠を補助者と作り、キラキラを
貼る。
・Z児が「H児ちゃんもお城ごっこに
入る?」と誘い、友達と同じ場で遊
ぶ。
・キラキラしているものとして、大き
めのスパンコールやシールなどを提
示する。
・冠は補助者が主となって作り、キラ
キラを貼ることをH児が楽しめるよ
うにする。
・同じものを身に着けることで友達と
のつながりがもてるようにする。
H児の好きなこと、興味や関心のあることなどについて、クラスの他の幼児が分か
るようになっていきます。H児の興味や関心のあること、遊具などの物をきっかけに、
先生が環境を用意することで、友達と一緒に遊ぶようになってきました。
<5 歳時のリレーを通して>
H児の姿 先生の支援
・クラスの円周リレーに初めて参加す
る。走順を確認したり、並んだり、
ビブスを着けたりする時間には参加
せず、直前に列に入る。
・リングバトンを受け取り、補助者が
伴走し、トラック内に入りながら一
周する。
・その次の回では、H児は3走目に走
る。担任はトラック内、補助者は前
・活動の環境が整った段階で参加を促
して、気持ちが途切れないようにす
る。
・トラックは白線だけでは走るコース
を区別しにくいため、皆にとっても
分かりやすくなるように小さいコー
ンを置く。また、一緒に走り、走る
範囲を知らせる。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(224ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 224ページ方で一緒に走り、「頑張れ」と声を掛
ける。チームの友達が「頑張れ」と
応援する。
・リレーでは、H児のチームの負けが
続く。次回に向けた走順決めで、「H
ちゃんの番までに差をつけておくと
いい」という意見が出る。結果は後
半の幼児が力を抜いて負けたため、
担任が一生懸命走ることについて話
す。
・運動会の走順決めでは、「Hちゃんの
後の後半で、僕やMちゃんが速いか
ら追い上げるよ」、「それがいいね」
と追い上げる作戦に決まる。「Hちゃ
んいるから負ける気がする」と言う
N児の発言を受け、先生が「Hちゃ
ん、走るのが得意ではないから、抜
かされて嫌だなっていう気持ちはわ
かるよ」と、これまでの負け続きの
経験を振り返る機会にする。N児「で
もHちゃん仲間だから」、O児「同じ
〇〇組だから」、P児「〇〇組の一員
なんだよね」と言う。
・運動会当日はH児の着たい洋服では
ないことや会場の雰囲気になじめ
ず、参加できない。
・運動会後、「この前はHちゃんがいな
かったから勝てたんだよ。Hちゃん
・負けが続くチーム内の幼児の気持ち
を受け止めつつも、一人一人がH児
と一緒に頑張ろうとする気持ちをも
ってほしいことを伝える。
・気持ちが落ち着くのを待ったり、リ
ングバトンを見せて誘ったりする
が、保護者と共に参加の難しさを感
じる。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(225ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 225ページがいたら負けちゃうよ」と言う幼児
に対して「Hちゃんがいても勝てる
かもしれないよ」と言う幼児がいる。
そこで、リレーをしてみることにな
った。リレーの結果は同着となる。
H児の走りが早くなり、「Hちゃん頑
張ったね」、「Hちゃんがいても勝て
るって言っていたとおりだった」と
喜んだり、自分の追い上げで勝てた
と自信につながったりした幼児がい
る。
・H児の頑張りを喜び、同着ゴールの
嬉しさを共感する。
幼児同士が話し合う時間は、言葉でのやり取りが苦手なH児は参加が難しいようで
す。また、準備に時間を要する場合も、参加する時間まで気持ちが続かなくなるよう
です。そのため、他の幼児で先に準備を進め、ある程度準備が整ってからH児は参加
するようにしました。
H児の入るチームは負けることが多くありました。そのチームの幼児たちの負ける
悔しさを受け止めながらも、一人一人が一生懸命走ることや互いの走力を補い合って
頑張ることを経験してほしいと思い、先生は幼児に声を掛けました。一つのことを成
し遂げた嬉しさなどを幼児同士が共感し合える経験の積み重ねが、幼児同士の心のつ
ながりを深めていきます。
<H児が園で楽しそうでよかった>
H児の姿 先生の支援
・5歳児の表現活動では、カニの役で
「さるかにがっせん」の劇に参加す
る。
・保護者や兄姉が参観する。
・H児の兄が帰り際に「Hちゃん、楽
・参加する役をH児と決め、同じ役の
幼児との仲立ちをしたり、参加する
時間まで気持ちをつないだりする。
・兄なりにH児が園でどうしているの
か心配していた様子。兄の思いを受
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(226ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 226ページしそう。よかった」と言って帰る。 け止め、H児の成長した姿を共に喜
ぶ。
H児の兄は、家族としてのつながりや喜びを感じながらも、生活のしづらさや周り
からの視線を感じているのかもしれません。H児が園で皆と一緒に楽しく生活できる
ことは、家族にとっても安心感や喜びにつながっていきます。
H児と他の幼児との関わりを振り返り、担任は次のように感じました。
《H児の姿を通して》
・友達や先生をモデルとして刺激を受け、興味や関心を広げたり、やってみようと
する機会やできるようになったりすることが増えていった。
・様々な人との関わりを通して、支援を受けながら、遊びや生活に必要な言葉を知
ったり獲得したりして、気持ちが伝わり合う嬉しさを感じるようになった。
・友達との遊びやクラスの活動に部分的に参加することを通して、自分が受け止め
てもらえる嬉しさや皆と一緒に活動する楽しさを感じるようになった。
・友達から刺激を受けたり繰り返したりすることで自立に向けた基本的生活習慣が
身に付いてきた。
《他の幼児の姿を通して》
・どこか違う、何か違うと感じるその思いを先生が受け止め、H児の気持ちやよさ
を伝えることで、一人一人に違いがあることや、違いがあってよいことを幼児な
りに理解していった。
事例から読み取れること
集団生活の中で幼児の行う活動は、個人での活動、グループでの活動、クラス全体
での活動など多様な形態で展開されることが必要です。特に、幼児教育においては、
一人一人に応じることが大切にされていますが、このことは個人の活動のみを重視し
ているということではありません。グループやクラス全体などいずれの活動において
も一人一人が生かされることが必要であることを意味しています。そのためには、集
団が、障害の有無にかかわらず、一人一人の幼児にとって、安心して自己を発揮でき
る場になっていることが大切であり、先生と幼児、さらに、幼児同士の心のつながり
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(227ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 227ページのある集団とならなければなりません。そのためには、以下のような配慮が大切で
す。
①入園当初は、障害のある幼児などが園で安心して過ごせるよう、保護者との分離
の時期、先生と保護者の関係、環境の工夫などを考えます。
安心して園での生活を楽しみ、先生との信頼関係を基盤に他の幼児との関わりを深
めていけるようにすることは、障害の有無にかかわらず、全ての幼児に必要な配慮で
す。しかし、障害のある幼児などは、新しい環境に慣れるのに時間を要したり、障害
の状態等に応じて安心できる環境が異なったりします。入園当初に、保護者が当該幼
児と一緒に過ごすかどうかは、当該幼児にとっては、周囲の環境の全てが見知らぬも
のとなるのか、自分がこれまで親しんできた存在があるのかという点で大きな違いが
あります。当該幼児が親しみ信頼する保護者、当該幼児、先生が、遊びや生活を共に
することから始まり、当該幼児が先生との信頼関係を構築し、園での生活に慣れてい
けるようにします。また、登降園の際に毎日行うことは、絵の表示で分かりやすく示
して生活の流れの見通しをもてるようにするなど、当該幼児の困難さに応じた環境の
工夫も行う必要があります。
②障害のある幼児などの困難さに応じた支援の下、先生と一緒に遊びが楽しめるよう
にします。
障害のある幼児などの園での遊びや生活の様子を観察し、当該幼児の困難さに応じ
た支援について検討を行います。支援策について、最初は試行錯誤することでしょう。
しかし、次第に、当該幼児がどのような場面で不安や不快に思うのか、どのような支
援が有効であるのかが分かってきます。先生が、当該幼児との関わり方が分かってく
るように、当該幼児も次第に園での遊びや生活に慣れてきます。
しかし、この時期はまだ他の幼児と積極的に関わることはできません。同じ場や空
間を他の幼児と共有することで精一杯の時期なのかもしれません。他の幼児との直接
的な関わりはなくとも、同じ場や同じ空間を共有することで、当該幼児と他の幼児の
心の距離は縮まっていきます。そうして、当該幼児が他の幼児の楽しんでいる遊びに
興味や関心をもったりするようになっていきます。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(228ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 228ページ③先生を仲立ちとして他の幼児と関わっていけるようにします。
当該幼児は自分の気持ちを他の幼児にうまく伝えることが難しいようです。先生が、
当該幼児の気持ちを他の幼児に伝えることで、物の貸し借り等から始まり、次第に他
の幼児と共に遊ぶようになっていきます。
一方、他の幼児は、当該幼児の言動を見ていて、「Hちゃん、何かが違う」と感じた
りするかもしれません。他の幼児だけでは気付きにくい当該幼児の思いや状況、伝わ
りにくいが頑張っている姿などを先生が代弁することが大切です。そうすることで、
他の幼児は当該幼児を理解し、ありのままに受け入れていくことができます。更に大
切なことは、先生が当該幼児を、他の幼児と同様に尊重することです。できないこと
の多い当該幼児に対して、怒ってばかりいる、手伝ってあげるという姿勢で先生が関
わると、他の幼児もそのように接してしまうかもしれません。先生は、障害の有無に
かかわらず、幼児一人一人を尊重し、受け止める姿勢が大切です。
④障害の有無にかかわらず幼児が育ち合える関係をつくります。
当該幼児の困難さに応じた支援が、幼児同士の関わりの中で自然に取り入れられる
ようにします。先生が、当該幼児の気持ちや頑張っている姿を伝えてきたので、他の
幼児も当該幼児と一緒に遊ぶときに絵カードを使ったりするなどの支援が、当たり前
のこととして受け止めていけるようになるとよいでしょう。また、活動によっては、
途中から参加したり、できないことがあったりするかもしれません。しかし、苦手な
ことや不得意なことがあるのはどの幼児も同じです。そして、当該幼児にも好きなこ
とや得意なことがあります。それぞれの幼児のよさを生かし、学び合える関係づくり
が大切です。
(第3章4.障害の有無にかかわらず一人一人のよさを生かすクラス経営 27頁参
照、第4章各項目の(4)困難さに応じた支援を活用して園での遊びや生活を展開す
るにおけるコラム参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(229ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 229ページ事例8 先生の実践経験を考慮し、活発な協議ができる園内研修を考える
障害のある幼児などが、園での遊びや生活を通して成長していけることが大切で
あり、先生には、特別支援教育に関して学び、障害のある幼児などへの理解を深め、
実践に生かしていく力が求められます。そのためには、園内研修等を通じて、障害
のある幼児などの困難さに応じた支援について具体的に学び、自らの保育を振り返
り、明日の保育に生かしていけるようになることが大切です。
【ポイント】
●園の実態や課題を捉え、先生が必要な学びを得られる研修を計画しましょう。
・園の実態や課題から研修内容を考えましょう。
・年間の研修の計画を考えましょう。
●記録を活用し、当該幼児の困難さや支援について具体的に協議しましょう。
・具体的に協議する方法を考えましょう。
・協議を深められる題材を考えましょう。
●各先生の迷いや不安を受け止め、実践経験を生かした活発な協議としましょう。
・各先生の思いや経験を生かした協議とする方法を考えましょう。
・活発な協議とする方法を考えましょう。
ここでは、A園において、園の実態や課題を踏まえて年間の研修計画を作成し、先
生同士の学びが深まるように協議を深めていった事例を示します。
①園内研修の年間計画を考える
A園には、4歳児クラスに障害のあるI児が在園しています。4歳児クラスの担任
は先生になって2年目なので、I児にどのように対応したらよいのか戸惑っているよ
うです。園全体でI児の支援について話し合うためには、障害に関する理解を先生一
人一人が深めていく必要があります。
特別支援教育コーディネーターは、園内研修の第1回は、まず幼児理解の基本に立
ち戻ることが大切だと考えました。幼児のできないことに目を向けるのではなく、な
ぜこのような言動をしたのかといった幼児の内面を推測することの大切さを再確認し
たいと思いました。そうすることで、幼児が何に困っているのか捉えようという意識
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(230ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 230ページがより強くなるのではないかと思ったからです。そして、第2回以降は、障害のある
幼児などの活動の様子を記録した資料を用いた事例検討を通じて、当該幼児の困難さ
や困難さに応じた支援について具体的に協議をしたいと考えました。この協議のテー
マは、園の1年間の流れを踏まえ、次のように考えました。
・1学期の終わりに保育を振り返り、個別の教育支援計画や個別の指導計画に生かし
たい。
・2学期、3学期には運動会や生活発表会といった行事があるので、その前に、日々
の保育における支援をこれらの行事に生かしていくことを考えたい。
・3学期には、障害のある幼児などの困難さに応じた支援において、保護者の気持ち
の揺れ動きに配慮した支援や保護者と当該幼児の育ちを共有すること、専門家の助
言を得ながら支援を考えることの大切さについて、保護者や関係機関との連携も含
めて、園長を中心にこれまでを振り返り、今後に向けて意見交換を行いたい。
こうしたことを踏まえ、園内研修の年間計画の案を次のとおり作成しました。
◆令和〇年度 特別支援教育に関わる園内研修年間計画(案) A園
月 テーマ
4 月 幼児一人一人を理解すること
以下について園長から話をした後に先生同士の協議
・幼児の言動の奥に潜む思いを捉え、その思いを尊重した支援をする
・幼児を肯定的に受け止め、よさや好きなことを捉える
6 月 障害のある幼児などの遊びや生活の記録の取り方
I児の園での活動の映像を見て、先生がそれぞれに記録を取り、次のこと
などの話し合いを行う。
・I児の印象に残った言動、気になる言動
・気になる言動について、それはどのような状況で起こっているか
話し合いを通して、I児の困難さや支援の手立てを考えるために必要なこ
とをしっかりと記録するためには、先生は日頃から何を意識する必要がある
のかを考える。
8 月 「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」の作成
1学期のI児の記録を持ち寄り、個別の教育支援計画や個別の指導計画に
ついて話し合う。
10 月 日々の保育における支援の見直しと運動会に向けた支援の検討
特別支援学校(知的障害)から講師を招き、保育参観を通して見えてきた
I児が感じているであろう困難さや支援の手立てについて講師から助言を
得た後に、先生が感じている疑問や不安、考えている支援などについて意見
交換をする。そして、運動会に向けた支援についても考える。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(231ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 231ページ12 月 日々の保育における支援の見直しと生活発表会に向けた支援の検討
I児の活動の映像を見て、I児が感じているであろう困難さや支援につい
て話し合う。話し合いでは、I児の成長を踏まえた支援の見直しを意識する
ようにする。そして、生活発表会に向けた支援を考える。
1 月 関係機関と連携し、園として障害のある幼児などと保護者を支援する体制の
整備
関係機関との連携や専門家の助言を生かした保育や保護者支援について
考える。さらに、これまでを振り返り、今後の支援の体制や内容について話
し合う。
②園内研修を充実させる方策を考える
先生が障害のある幼児などへの支援について理解を深めていくには、各回の研修が
充実し、先生同士の協議が活発であることが大切です。A園には、B先生(5歳児担
任、経験年数 15 年目)、C先生(3歳児担任、経験年数6年目、特別支援教育コーデ
ィネーター)、D先生(I児の担任、経験年数2年目)がいます。特別支援教育コーデ
ィネーターであるC先生は、12 月の園内研修では、経験豊富なB先生の知見、D先生
が捉えるI児の成長の様子などについて共有したり協議を深めたりしたいと考えまし
た。そのため、I児の遊びや生活の映像を視聴し、I児が抱える困難さや支援につい
て具体的に協議することにしました。C先生は司会を務め、各先生の感じたことや考
えたことを引き出せるように、参加した先生に質問したり、論点を整理したりするこ
とを心掛けました。
日頃のI児の園での様子
I児(3年保育4歳児)は、活発で遊ぶことが大好きですが、友達といざこざ
になることが多いです。新しい環境や初めての活動に不安が大きく、参加しにく
いところがある一方で関心があることには一生懸命取り組みます。周りの友達と
一緒に遊ぶこともありますが、かっとなって手が出たりいざこざになったりして
遊びから離れることがよくあります。人が多くざわざわした感じが苦手なよう
で、お弁当のときは、皆の用意ができてから保育室に入ります。担任はI児と信
頼関係を築きつつありますが、行動はあまり変わらず、I児に関わることで全体
の遊びの流れを止めてしまう難しさを感じています。
(映像1)10 月、保育室
遊びの片付けが終わり、数人の幼児がトイレに行くために歩き出しました。そ
の中のX児の手が立っていたI児の体に触れると、I児は黙ってX児のお腹のあ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(232ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 232ページたりを叩きました。
「Iちゃんが何もしていないのに叩いた」とX児が担任のところに伝えに行き
ました。担任はI児、X児と目線を合わせながら、何があったのか尋ねたり思い
を聞き出したりしましたが、I児の表情は硬いままでした。
(映像2)12 月、遊戯室
生活発表会に向けた活動で、クラスの幼児たちは遊戯室でネコになって劇遊び
をしていました。I児は遊戯室の隅で支援の先生と一緒にコマを回して遊んでい
ました。劇遊びで、ネコが海へ出かける場面になると、I児は立って皆が劇遊び
をしているところに行き、素早い動きで走り回ります。Y児が「Iちゃん、やめ
て。危ない」と言いますが、I児は構わず走りながら友達にぶつかっていきまし
た。
支援の先生がI児に「Iちゃんネコも海におでかけしたいのかな」と言いなが
ら手を引き、ネコのお面を見せました。I児はお面を見てしばらく黙っていまし
たが、首を横に振ります。支援の先生が、「じゃあ、Iちゃんはもしかしてお魚さ
んかな? ネコさんにつかまらないように、先生と一緒に静かに見ていようか」
と声を掛けると、支援の先生の手を握ってその場に座りました。Y児は「Iちゃ
んはお魚やから、泳いでたんやね」とI児の顔を覗き込みました。担任が「さ
あ、大きなお魚がいるみたいよ。ネコさんたち、船に乗ったかな。皆で出発!」
と声を掛けると、幼児は船に乗り込み、口々に「出発だ!」、「大きな魚を探しに
行こう」などと話しています。I児は支援の先生と一緒に座り、ネコたちが船に
乗って出発するところを見ていました。
まずは、映像1について協議を行いました。
C先生:今日はビデオを見ながら、I児の支援について考えていきます。I児は、入
園当初に比べ、友達と遊ぶなど成長がうかがえます。友達との関わりが増え
てくると、いざこざも生じます。D先生、映像1を見てどうでしたか。
D先生:戸惑ったように立っているI児の表情から、ざわざわした感じが嫌というこ
とが分かります。私は、I児は自分の前を人が横切ることで嫌な気持ちにな
り、近くにいたX児につい手が出てしまったと考えました。
C先生:確かにビデオからそのようにも見えますね。ではもう少し踏み込んで考えて
いきましょう。D先生はなぜそのように考えたのですか。また、ビデオを見
て、改めて、I児にどのように関わったらよいと思いますか。
D先生:なぜと言われるとうまく言えませんが、I児は、自分から悪いことをしよう
とする意識はないと思います。それをどのように他の幼児に伝えていけばい
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(233ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 233ページいのか悩みます。他の幼児も遊びに夢中だと気にならないようですが、何度
もされると嫌なようで私のところに言いに来ます。私はついI児に謝るよう
に促して、その場を収めてしまいがちです。どのようにI児の思いを理解し
代弁するといいのかを考える必要があると感じました。また、他の幼児がI
児の思いを受け止められるように普段から関わる必要がありますね。
B先生:他の幼児も含めて考えることは大切ですね。では、I児が困っていることに
ついて考えてみます。無意識に手が出てしまうなら、自分の衝動を抑えるこ
とが難しいのだと思います。目の前を人に横切られると、視界が遮られたよ
うに感じて不快になり、衝動的に叩いてしまったと考えてみます。この場合、
このようなことが起こらないような指導を考えた方がよいと思います。
D先生:私は、何かあってから支援を考えるところがありました。人の流れを考え、
I児の周りで人が密集しないように環境を考えることも必要ですね。
C先生:I児の困難を捉えると何らかの障害の特性に結びつくかもしれません。私た
ちは診断をする立場ではありませんが、発達障害について学ぶことも必要で
すね。しかし、障害のある幼児などの困難さは一様ではないので、I児の実
態から困難さを捉える必要がありますね。
D先生:それが難しいです。支援についても、前にうまくいっても次もうまくいくわ
けではないのでいつも悩みます。B先生はどうしていますか。
B先生:私も悩みながらやっています。普段、私たちは気持ちを切り替えながら過ご
しています。I児は、気持ちの切り替えがうまくできないのだと思います。
先生が、I児に何かをするのをやめさせることに焦ること、保育の流れを優
先してI児の思いを結果として無視することにならないようにしたいですね。
C先生:B先生が考える支援について具体的に教えてください。
B先生:例えば、気持ちの切り替えがしやすいように、お弁当の時間が近づいたら、
遊んでいるI児に後5分でお弁当であることを伝えたりします。クールダウ
ンのスペースを保育室の隅に用意し、不快な気持ちになって衝動的に叩いて
しまったときには、一時的にそこに行って気持ちを落ち着かせる、「10、数
えようね」、「深呼吸してみよう」等、気持ちをコントロールする方法を事前
に一緒に考えて探っておき、不快そうな様子を示したときには、「Iちゃ
ん、深呼吸!」と言って落ち着くよう促す、「気持ちカード」を用意してお
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(234ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 234ページいて、今の気持ちをカードから選んで担任のところへ持っていき、担任に自
分の気持ちを分かってもらうことで落ち着かせるなどの工夫をしています。
I児が落ち着いた後で、叩かれた幼児の気持ちも伝えるようにしています。
そして、「お友達の後ろに並べたね」、「最後まで座ってお話聞けたね」、「一
番でなかったのに怒らなかったね」など、できたことをほめてI児に行動の
規範を示します。してはいけない言動には、短い言葉で区切ってはっきりと
伝えます。例えば、走っていて危ないなら「廊下は歩きます」、場に合わな
い大声で話していたら「1の大きさの声で話します」等です。できるだけダ
メといった否定的な表現を使わず、どうすればよいかについて具体的で分か
りやすい指示を心掛けます。
C先生:同じ場にいる他の幼児が遊びを楽しめるように配慮しながら、I児の思いに
共感して支援をすることが大切なのですね。そうするうちに、I児が他の幼
児と同じ場にいることができるようになり、次第に他の幼児とも関わるよう
になって楽しいことを共有したりしていくのですね。
休憩をはさんで、映像2について協議を行いました。
C先生:2月の生活発表会に向けて、幼児は劇遊びなどをしています。D先生、映像
2を見てどうでしたか。
D先生:I児はクラス全体の活動に参加しておらず、保育に入ってほしいと思います。
C先生:支援の先生は、今のI児の興味や関心を考えてコマ遊びをしていたのではな
いでしょうか。しかし、隣で劇遊びをしていればI児も興味や関心をもつか
もしれないということも考えたのではないでしょうか。
D先生:私はそこまで考えていなかったです。クラス全体の活動とI児の支援につい
て、支援の先生ともっと話し合う必要がありますね。確かにその後、I児は
走るという表現の仕方で危なかったですが、遊びに参加していましたね。
B先生:I児が走っていたのを、I児なりの表現で遊びに参加していたと捉えたこと
は素晴らしいと思います。走ることで、体で表現し楽しんでいたと考えられ
ますね。無理に集団での遊びに誘うのではなく、I児の気持ちが向くのを待
つのも大切です。
D先生:ほめていただいて嬉しいです。幼児をほめることの大切さを再確認しました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(235ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 235ページB先生:遊戯室でのコマ遊びにも意味があると思います。遊戯室の隅で、大好きな先
生と好きなコマ遊びをして楽しく安定した気持ちで過ごします。I児は、遊
戯室が楽しい場であると感じています。これから生活発表会に向けて遊戯室
で活動するのに、遊戯室は楽しいことが起こる場であると思うことは大切で
す。この日、コマ遊びをして楽しい気持ちのまま、皆の劇遊びに自分から入
っていったのだと思います。
C先生:しかし、周りの幼児からは「危ないからやめて」と声が上がっていました。
この場面は、先生の支援についてどう考えていけばよいでしょうか。
D先生:私なら、I児の行動を止めるために「危ないから止まろうね」と声掛けした
と思います。しかし、映像1の協議で、否定的な言葉ではなく、分かりやす
くて具体的な指示が大切とB先生がおっしゃっていました。支援の先生はど
う考えていたのでしょうか。
B先生:「Iちゃんネコもおでかけしたいのかな」と声掛けすることで、I児の劇遊び
に参加したいという気持ちを大切にしたのだと思います。そして、小道具の
面をすかさず出したのだと思います。
C先生:先生のこの一言をきっかけに、他の幼児は、I児を危険なことをする子では
なく、魚役で劇遊びを楽しんでいる仲間として受け止めたように見えました。
B先生:I児の走りたい衝動を無理に抑制するのではなく、気持ちの切り替えができ
るスイッチのような言葉掛けが有効なのではと思いました。私の想像ですが、
支援の先生に「Iちゃんネコ」と呼び掛けられて、「ネコ? 違う、ネコじゃ
ない」と考えて、首を横に振っています。他の幼児も、「ネコになってたの?
それとも魚?」等といつのまにかI児の立場で考えていたのだと思います。
C先生:「静かに座りなさい」と言わなくても、「先生と一緒にネコさんにつかまらな
いように見ておこうか」と言われると、「(自分はお魚だから)ネコに見つか
って食べられないようにしないと」と思ったのかもしれませんね。
B先生:I児は、お話の世界でイメージを広げて楽しく遊ぶことがやや難しいのかも
しれません。常に支援がうまくいくとは限りませんが、今日のような体験を
積み重ね、イメージを広げる楽しさを味わってほしいと思います。
C先生:劇遊びのお面や船などのように、遊びたくなるような具体物があるとイメー
ジがしやすくなるかもしれませんね。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(236ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 236ページD先生:行事があると、クラスでの遊びを進めていきたいと、つい焦ってしまいがち
ですが、I児だけでなく、クラスの幼児一人一人の思いを受け止めてクラス
活動を展開するにはどうしたらよいか、改めて考えていきたいです。
C先生:I児の困難さに応じた支援、I児を含めた全ての幼児が育ち合える関係づく
りについて考えていきたいですね。保育にも支援にも正解やマニュアルはあ
りません。今日の研修の学びを実践に生かし、次回の園内委員会で報告する
ようにしましょう。
事例から読み取れること
A園の事例を踏まえて、園内研修を企画・立案し、実施する上で大切にしたいこと
をまとめます。
〇園の実態や課題を捉え、先生が必要な学びを得られる研修を計画します。
・園の実態や課題から研修内容を考えます。
先生の経験年数や保育における課題などを踏まえた研修の計画が大切です。研修内
容は、基礎的環境整備と合理的配慮、障害のある幼児などの困難さに応じた支援、個
別の指導計画、クラス経営、保護者の気持ちに寄り添った支援、関係機関との連携な
ど、多様な内容が考えられます。1年間で全ての内容を深めていくことは困難です。
今抱えている園や先生の課題などから、特別支援教育に関することを一通り取り上げ
るのか、特定のテーマに焦点を当てて年間計画を作成するのかなどを考える必要があ
ります。研修として取り上げてほしいことを園の先生にアンケートをすることも考え
られます。園に経験年数の長い先生がいるのか、障害のある幼児などを担任した経験
のある先生はいるのか、経験年数の短い先生はいるのか、幼稚園教諭の教員免許状や
保育士の資格を有しない者がいるのかなど、研修参加者の保育や特別支援教育に関す
る知識や経験を考慮して、今学んでほしいことから研修計画を考えることもあるでし
ょう。
・年間の研修の計画を考えます。
研修を通して、先生が学びを深めていけるよう1年間の研修計画を考えることが大
切です。例えば、第1回では、障害に関する知識を得たいので、専門家から障害に応
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(237ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 237ページじた困難さや支援の手立てに関する話を聞き、第2回では、在園する障害のある幼児
などの困難さや支援について考えるなど、先生に何を学んでほしいのかを考えて、研
修の目的を設定し、その目的に応じた研修内容を考えます。なお、外部から専門家を
招く場合、障害のある幼児などの遊びや生活の様子が専門家に伝わるように、保育参
観に加えて日々の記録などを準備することなどが考えられます(事例4参照)。
そして、園内研修の年間計画が毎年同じでは意味がありません。過去の園内研修、
参加する先生の保育経験や参加した研修、園や先生が抱えている課題等を踏まえて、
年々、研修を通した学びが深まるようにすることが大切です。障害のある幼児などが
在籍していないから特別支援教育に関する研修は不要とするのではなく、いつでも障
害のある幼児などを受け入れることができるように研修を通じて学び続ける姿勢が大
切です。そうした姿勢が、在籍している幼児の抱える困難さに関する早期発見・早期
支援にもつながります。
〇記録を活用し、当該幼児の困難さや支援について具体的に協議します。
・具体的に協議する方法を考えます。
映像などの記録を活用した事例研究は、具体性をもって障害のある幼児などの支援
について理解を深めることができます。「困難さに応じた支援」と言われても、具体的
にどう行えばよいか分からないと思う先生もいます。研修参加者全員で同じ映像を見
ながら協議することで、当該幼児の気持ち、抱えている困難さ、支援について具体的
に話し合うことができます。さらに、自身の保育について映像を通して振り返ること
で、そのときの当該幼児の表情や言動、周囲の幼児の反応などについて改めて考える
ことができます。その遊びの場面で行った先生の対応について、他の先生から具体的
な意見や助言も出てきます。他の先生の当該幼児の気持ちの捉えについて、巻き戻し
て再生することで確認することもできます。そうして、協議を深めていく中で、一人
では気付けなかった新たな気付きも生まれてきます。また、他の園や先生の過去の保
育における事例研究を扱うことも考えられます。他の幼児の遊びや生活の様子を見る
ことで、困難さの多様性を知るとともに、支援のヒントを得ることができるかもしれ
ません。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(238ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 238ページ・協議を深められる題材を考えます。
事例研究では、どのような場面の記録を対象とするのかが大切です。A園の園内研
修では、短時間で視聴できる映像を2つ選んでいます。映像1は、当該幼児が自身の
衝動を抑えられず他の幼児を叩いてしまった事例です。この事例を通して、I児の気
持ちや困難さの要因について理解を深めていけるように協議をしています。そして、
そのような状況をつくらない、ダメなどの否定的な言葉掛けをしない、当該幼児の気
持ちを他の幼児に伝えることなどを確認しています。映像2は、映像1で確認した支
援を実践していると考えられます。映像1で確認した支援策について、映像2を見て、
経験豊富な先生の解説なども聞くことで、どのように支援をしていけばよいのかにつ
いて、経験年数の短い先生も具体的にイメージしながら考えることができるのではな
いでしょうか。
〇各先生の迷いや不安を受け止め、実践経験を生かした活発な協議とします。
・各先生の思いや経験を生かした協議とする方法を考えます。
経験年数の短い先生は、幼児の捉えや指導に自信がもてないことがあります。障害
のある幼児などとなれば、一層迷いや不安があるかもしれません。経験年数の短い先
生が、研修においてそうした思いを述べられるよう、共感を示しながら話しやすい雰
囲気をつくることが大切です。そうすることで、経験年数の長い先生は、経験年数の
短い先生が何に困っているのか知ることができ、適切な意見や助言が可能となります。
何を話しても大丈夫と考えた経験年数の短い先生の質問から、協議が発展し、経験年
数の長い先生も自身の保育を見直すきっかけとなるかもしれません。A園の研修にお
いて、D先生の質問に答えて、B先生が自身の経験を踏まえながらI児の具体的な支
援について話すとき、明日からの保育に生かせる具体的な助言だけではなく、悩んで
いるのは自分だけではないことも知ってほしいと思っていたのではないでしょうか。
・活発な協議とする方法を考える
話しやすい雰囲気の中で協議を深めていくためには、司会者のファシリテートが大
切です。特別支援教育に関する知識を基に、各先生の経験を考えて質問をしたり、論
点整理をしたりして、協議を深められるようにします。
A園の研修では、映像視聴後の感想は、経験年数の短いD先生に最初に求めていま
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(239ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 239ページす。D先生が何に気付き、何を疑問に思ったのかを聞きます。必要に応じて、B先生
の経験を話してもらい、I児の気持ちや困難さ、支援を考えるヒントとしていきます。
B先生は、自分が考えたI児の気持ちなどについて全部話すのではなく、途中で止め
ることで、他の先生が考えることを促しているようにも見えます。また、C先生が、
研修の目的を意識しながら、自身の特別支援教育に関する知識を活用し、協議の内容
を整理したり言い換えたりしながら視点を示しています。
様々な経験をもつ先生がそれぞれの役割をもって研修に前向きに取り組むことで、
保育のモチベーションを高め、先生の資質能力の向上につながるようにしましょう。
(第5章1.体制整備の必要性 128頁参照、第5章3.先生の理解推進と専門性の
向上 140 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(240ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 240ページ事例9 園が療育機関での助言を生かしながら障害のある幼児などの育ちを考える
幼児は生活する場所によって異なる姿を示すことも少なくありません。園と療
育機関で見立てが違ってくる場合もあります。情報ばかり集めすぎて混乱したり、
専門機関からの意見ばかりを参考に障害のある幼児などに関わったりなど、園で
過ごす障害のある幼児などの姿を抜きにした関わり方をしてしまうことはないで
しょうか。個人的な関わりや少人数での関わりの多い療育機関での姿と大勢の同
年齢のこどもたちの中での姿に違いがあって当然です。互いに見学し合ったり、意
見交換し合ったりして情報共有をしながら総合的に障害のある幼児などの理解に
つなげていきます。
【ポイント】
●障害のある幼児などの実態と園での生活の様子、療育機関での様子や支援策に
ついて具体的に話し合いましょう。
・園での当該幼児の遊びや生活の様子、困っていることを具体的に伝えるようにし
ましょう。
・療育機関における支援策や支援策の意図について聞き、当該幼児の支援策を考え
るヒントとしましょう。
●療育機関からの助言を園での生活に生かしましょう。
・療育機関と園で一貫した支援策を講じることは大切です。療育機関からの助言を
取り入れるようにしましょう。
・園では他の幼児も共に生活しているなどの環境の違いから、療育機関と同じ効果
があるとは限りません。その場合には、園での当該幼児の生活する様子から支援
策を見直しましょう。
危険な行動が多い4歳児女児(J児)の事例から(3歳児から療育機関と併用)
家庭での行動面においても高所に登る、道路に飛び出す、家の鍵を開けて出歩き保
護されるなど危険な場面があったそうです。保護者が行政の相談窓口に相談し、入園
の少し前から療育機関に通っていました。園では興味や関心の向くまま突発的な行動
も多く、安全上の心配や認知面の幼さなどがあり、J児の特性の理解やどのように園
生活をしていくのかなど、3歳児のときから療育機関との連携を深めてきました。保
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(241ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 241ページ護者の同意を得た上で、療育訓練や園の様子を相互に見学し、保育をする中で悩んだ
ときには電話で相談し、年間を通してこまめに療育機関と連携を取り園での成長を考
えていきました。
<園での関わり> <療育機関での関わり>
<園での姿> 4 月
進級当初、新しい保育室にいら
れず、職員室で過ごすことが多く
なった。職員室なら安心して過ご
せるようなので、しばらく見守る
ことにした。
アドバイスをもとに園での対応を
考える
<園での姿> 5 月
J児の不安な気持ちを理解し、
J児が今どこにいるのかなど居場
所を互いに知らせ合うようにし、
「お部屋に戻ろう」、「今は何をす
る時間かな」などの問い掛けはせ
ず、J児がいたい場所でやりたい
ことができるようにした。6 月にな
るとクラスにいられる時間が長く
なってきた。
園での様子を電話で相談
<療育機関からのアドバイス>
新しい部屋にいられず職員室で
過ごすことが多かった姿について
は、4 月当初の新入園児のざわつき
や新しい保育室等の様々な周囲の
変化を敏感に感じ取る特性による
のではないか。新しい環境を受け
入れられるようJ児の気持ちに寄
り添うよう心掛けるとよいのでは
ないか。
療育機関での様子を見学
<療育機関での姿>
生活のこと、遊びの準備など、写
真や絵カードで視覚的な指示を行
っていた。それらを一つずつロー
ルプレイングで行っていた。次に
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(242ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 242ページ園でも療育機関でしていることを
取り入れる
<園での姿> 6月
朝の支度など、身の回りのこと
を絵カードで提示し一つ一つ行う
ロールプレイングをしてみたが興
味が持続しなかった。園の中では、
折り紙や塗り絵、積み木や粘土、お
ままごとなど他に刺激を受けやす
い環境があり、興味や関心が遊び
に向いてしまうようだった。
園ならではの方法を考える
クラスの遊びの中で忍者ごっこ
を楽しんでいたので、朝の準備も
遊び感覚でできたらと考え「忍者
に変身しよう」と絵で示し、準備や
着替えができたら一つ一つ塗り絵
を塗っていくことにした。身辺整
理を行えば塗り絵が完成する楽し
さもあり、準備の手順や回数の見
通しにもつながったようだ。1 月に
は朝の身辺整理は自分で行えるよ
うになった。
行く教室や使う遊具などもカード
で示してあり、自分から進んで行
動していた。
園での様子を参観
<療育機関の方の感想>
園では、大勢の友達の中で「忍
者」に変身することを楽しんでい
た。基本的な生活習慣について、療
育機関ではロールプレイングで行
っていたが、園の中で遊びの一環
として楽しみながら身辺整理して
いくということは意外だった。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(243ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 243ページ療育機関と園のお互いの参観から
療育機関では、室内は余計なものがなく、整然としていて、J児の気が散ることな
く先生の話を聞ける環境でした。また、やることや場所などが写真や時系列で示され
ているので、今、どこにいるのか、何をする時間なのかが明確になっていると感じま
した。一方、園では、いろいろな遊具が同じ室内に置いてあったり、遊んでいる幼児
がいたりして、J児にとっては情報が多い環境であることを改めて感じました。療育
機関からのアドバイスをもとに、園の中でできることをしてきましたが、ロールプレ
イングに関しては園の中ではあまり効果がなかったので、園で楽しんでいる遊びを取
り入れることにしました。そのことで、同じクラスの友達も一緒に楽しみながら身辺
整理ができるようになってきました。療育機関の方の参観では、園の遊びを取り入れ
た支援が意外ではあったものの、周りの友達と一緒だからこそ、できることもあるの
だろうという話になりました。また、一つ終わったら一つ絵を塗ることができるとい
う分かりやすさもJ児にはよかったのかもしれないという話も出ました。園では今後、
周りの友達との関わりも含め、支援を考えていくようにしました。
<園での関わり> <療育機関での関わり>
<園での姿>
ホールや園庭に集まっていると
き、クラスで全体に指示を出して
いるときなど、衝動的にクラスを
飛び出していくことがある。その
都度、「今はだめだからね」と声を
掛けていたが、ふり払って出てい
こうとすることが増えた。
アドバイスをもとに園での対応を
考える
園での様子を電話で相談
<療育機関からのアドバイス>
活動や集まり、食事のときなど
衝動的にクラスから出ていくとき
には「行ってきます」と先生に伝え
るようにしてみてはどうか。施設
では、座る場所を指定しています。
ホール等でも示したり椅子を用意
したりしてJ児のいる場所をつく
ってみるのはどうか。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(244ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 244ページ<園での姿>
ホール等に集まっているときで
も、「行ってきます」の約束をして
出かければ、よいことにした。少し
ずつ「行ってきます」の意思表示が
できるようになってきた。J児が
クラスから出て来たときには「先
生に行ってきますって言ってきた
かな」など確認するようにして「行
ってきます」が伝えられるように
園全体で共有した。
園でのその後の姿
どこに行きたいのか、尋ねたり、
写真で示せたりするようにした。
「○○に行ってよいですか」と聞
くようにもなってきた。伝えるこ
とで自分が今何をしたいのか冷静
に考え、動く経験ができてきたと
感じている。
療育機関での様子を見学
<療育機関での姿>
療育機関では、J児以外の幼児
も、教室から出ていく際には、「〇
〇に行ってきます」という写真カ
ードを用いてどこに行くのか、自
分で示せるような工夫がされてい
た。言葉でなくても意思を伝える
ことができる環境が当たり前に準
備されているので、幼児が困らな
いで意思表示できていた。
J児のできるようになったことをクラスの他の幼児と共有する
皆でいるときに別な場所に行こうとする際、「5の針になったら行こうか」などと
促すと、少しずつ我慢もできるようになってきた。職員室で過ごしている際も、「今
読んでいる絵本が終わったら戻ろうか」、「6の針になったらクラスに戻れるかな」
などいつ戻るのか自分で決め、目安がもてるようにすることで、クラスに戻ること
がイメージできてきた。クラスの友達から「Jちゃんは、こうすると待てるんだよ
ね」と受け入れてもらったり、クラスの友達から声を掛けてもらったりする中で、ク
ラスで過ごしたいという思いが少しずつでてきた。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(245ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 245ページJ児にもクラスでの役割をもたせることで
クラスで連絡ノートなど配る際に、友達に配る役割をJ児にお願いした。友達の
マークや名前を覚えたり、クラスの一員として役に立つ喜びや、友達から求められ
る嬉しさを感じたりできた。クラスの幼児たちがJ児と関わる姿も多くなった。劇
ごっこに参加し、友達と一緒にセリフを言ったり、出番まで友達が準備した椅子に
座って待ったりできた。友達への関心が深まり、2月頃にはごっこ遊びや少人数で
のやり取りを楽しめるようになった。
事例から読み取れること
〇療育機関の助言から幼児理解を深めます。
療育機関とこまめに情報交換をしてきたことで、園で困ったと感じる行動に対して
の理解が深まります。園で先生が困ったと考えてしまう行動でも、その背景にはJ児
なりの行動の特性や本人の困難さがあり、それらを理解し関わり方を変えてみること
で、J児への理解が深まります。そして、それらを園全体で共有することで、J児に
とって安心できる環境をつくることができました。
〇療育機関の見学をもとに園内で支援の方法を考えます。
療育機関の環境を実際に見ることで、療育機関の方のアドバイスがより分かるよう
になります。また、園の中でできそうなことを考える手掛かりにもなります。療育機
関では、写真やカードを用いて視覚的に分かりやすく、必要な情報しか入らないよう
な室内の環境がJ児にとっては分かりやすいのだろうということが実際に見学したこ
とでよりイメージしやすくなっています。園では、他の幼児が興味や関心に応じて遊
べるように様々な遊具や用具を置いておくことも必要であり、全てが療育機関と同じ
ようにはできません。しかし、写真やカードを使うことで、言葉でなくても互いに意
思を理解することができたり、自分がどこにいるのか把握できたりするので、他の幼
児にとっても分かりやすい環境として取り入れることにしました。
〇園での様子から次の支援の方向を考えます(参観してもらったことで)。
身支度などのロールプレイングは、園ではあまり効果がありませんでしたが、遊び
を取り入れた方法がJ児にとっては意欲的にでき、その様子を見てもらったことで、
大勢の幼児の中でのJ児の育ちが共有できました。その後のJ児への支援について意
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(246ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 246ページ見交換の場面では、クラスの幼児とJ児との関係を大切にしながら支援することが話
題になりました。また、具体的な支援の方法について、園の様子をイメージして話し
合えるようになりました。
療育機関からの助言の園生活への生かし方について、大切なことをまとめます。
①療育機関での支援の方法を知り、園での障害のある幼児などの困難さや指導上の工
夫などを考えます。
・療育機関からの情報提供や支援策を知ることで、障害のある幼児などの発達の程度
などを把握しましょう。療育機関ではどのような療育が行われているのかを知るこ
とが大切です。また、園内で指導内容や指導方法の工夫など情報共有も大切です。
今はどのような支援を模索しているのかなど園内で共有しましょう。
・園では個別に療育を行うことは難しいですが、状況に応じた支援を知っていること
で、障害のある幼児などの困っていることを知り、指導に生かすことができます。
また、障害のある幼児などは行動面や発語、言葉の理解や人間関係、考え方や喜怒
哀楽の成長が複雑な場合が多く、当該幼児が一番困っているのではないでしょうか。
療育機関からの情報提供や支援策を理解することで、苦手なことや得意なこと、発
達の状況なども知っておくことが大切です。当該幼児の特性を理解し、園での支援
策や指導上の工夫を積み重ねていくことが重要です。
②療育機関からの助言を生かしながら、園での実態に合わせ支援策を見直します。
・療育機関と園では環境などが違い、療育機関からの助言どおりにはいかない場合も
ありますが、療育機関だからできること、園だからできることと分けて考えるの
ではなく、障害のある幼児などの困っていることを理解し、園の環境の中で療育
機関からの助言を生かし支援策を考えていくことが大切です。また、園の生活の
中で当該幼児に応じた支援ができたことなど、当該幼児の成長や園での支援策な
どを療育機関と共有できれば、互いに当該幼児の理解が深まります。療育機関の
専門性や幼児教育の機能を十分に生かし、長期的な視点で幼児への教育的支援を
行いましょう。(第5章5.専門機関との連携 144 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(247ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 247ページコラム
障害のある幼児などが通う療育センターへの訪問を通して園の先生が感じたこと
園は、家庭、地域及び医療や福祉、保健等の業務を行う機関と連携を図り、個別の
教育支援計画を作成します。療育機関等でも、個別の支援計画などを作成し、その支
援方針を踏まえて日々の生活を展開しています。障害のある幼児などが園以外の場で
どのような生活を送っているのかを知ることにより、当該幼児の生活の流れを踏まえ
た上で、園での生活を考えることができます。また、療育機関等と連携した支援策を
考えるに当たっても有益な情報となり得ます。そして、連携に当たっては相互理解が
大切です。園に関して理解を求めるだけではなく、療育機関の役割や活動についても
理解するように心掛けることが大切です。
ここでは、参考に、園の先生が療育機関を訪問した例を取り上げます。各施設や障
害のある幼児などの実態によって活動は異なりますので、訪問や意見交換を通して理
解を深めていきましょう。
この春に4歳児クラスに発達障害の疑いのある幼児が入園しました。この幼児は、
3歳のときから療育センターに通っていたので、これまで療育センターでどのような
生活をしてきたのかを知るために、園の先生で施設見学に行きました。
療育センターでは、発達障害の診断のある幼児が多く、支援のニーズも大きいクラ
スを見学しました。障害のある幼児など9名を3名で担任しています。障害のある幼
児などは4時間程度を療育センターで過ごし、大まかな流れは以下のとおりです。
10:00 登園
10:10 朝の身支度・着替え・排泄
せつ
・自由遊び
10:45 朝の集会
11:00 クラス活動
11:40 自由遊び
12:00 給食
12:30 歯磨きなど
13:00 クラス活動
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(248ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 248ページ13:15 自由遊び・着替え・排泄
せつ
13:40 帰りの集会・降園
部屋は、集団・自由遊び・個々に遊ぶスペースなどが障害のある幼児などに分かり
やすく設定されています。写真やイラストを使ったスケジュール表、コミュニケーシ
ョンに使えるカードなどが置かれており、障害のある幼児などの困難さに応じた工夫
が部屋の中に多くありました。
朝の集会は、担任が各幼児の写真を示して名前を呼んだり、手遊びをしたりしてい
ます。あえて毎日同じことをすることで、安心して療育センターでの生活ができるよ
うにしていました。クラスの幼児は認知的・発達的な状況が異なるので、グループを
2つに分けて活動をしていました。あるグループはお店屋さんごっこです。お客さん
役の幼児は、担任から提示されたカード(イラスト・言葉)にかかれている「もの」
をお店役の幼児のところに持っていきます。そして、最後には、買った「もの」を使
ってカレーを作ります。もう一つのグループは、ブロックや積み木で遊びます。この
グループは、午後には話し合いながらゲームをしていました。これらの活動の中で、
担任は、各幼児の困難さに応じた支援を随所で行っていました。このようなクラス活
動に加え、幼児が自由に遊ぶことができる時間、一人一人の幼児に応じた個別的な指
導の時間もありました。個別的な指導の時間が充実しているからこそ、他の幼児と関
わるクラス活動もできるのだと感じました。そして、自由に遊べる時間があるから、
他の時間で集中することができるのかもしれないと感じました。
幼児が帰った後に、支援方針などについて意見交換をしました。療育センターでは、
大きなビジョンとして「サービス等利用計画書」を作成し、その計画に基づき「個別
支援計画」を作成します。各幼児の得意なことや苦手なことなど、各幼児の実態を把
握した上で作成していました。長期目標を二つ程度設定し、現在の様子(食事・排泄
せつ
・
支度などの基本的な生活習慣、運動・感覚、遊び、コミュニケーション、対人・社会
性、集団活動)を踏まえて、支援内容と具体的な手立てを考えていました。こうした
考え方は園と同様であり、療育センターでも、組織的かつ計画的に行っていました。
療育センターでは、その幼児に応じた組織的、計画的な支援が展開されていると思
いました。例えば、幼児がこの後の行動を見通しやすいように、毎日同じことを繰り
返したり、時間の区切りを毎日同じにしたり、イラストなどの視覚情報を部屋に提示
したりなどすることによって、安心して過ごせるのだと感じました。しかし、園での
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(249ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 249ページ集団生活の中では、一つの遊びが別の遊びに発展したり、他の幼児のふとした思い付
きから予定していたスケジュールを大きく変更したりすることもあります。他の幼児
は、そうした生活の中で出会う出来事を楽しみ、楽しむことで多くのことを学んでい
きます。しかし、障害のある幼児などは、その特性から、それらの出来事を楽しむた
めには、少しだけ多くの時間を要したり、特別な配慮が必要だったりするのかもしれ
ません。
療育センターと連携して障害のある幼児などの支援を行い、当該幼児が年長になる
頃、保護者の方から、「療育センターでは、少人数で先生の人数も多く、幼児たちへの
フォローも手厚いので落ち着いて過ごせていたように思います。園では、幼児の人数
が多く、大きな集団に入って自分なりに考えて行動する力やお友達と関わることがで
きるようになってきたと思います。療育センターと園の先生の両方からうちの子の様
子を聞くことができたので、いろいろな姿を知ることもできました」との話がありま
した。この発言から、園、療育センター、家庭が、それぞれの役割を果たしつつ、連
携することの大切さを再認識しました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(250ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 250ページ事例 10 家庭、園、関係機関が連携して障害のある幼児などの支援を考える
障害のある幼児などへの支援を行っているのは、園だけではありません。家庭
では保護者が、児童発達支援センター等では指導員等が、医療機関では医師や看
護師が関わっています。保護者や関係機関と連携して一貫した支援を行うことが
大切です。
【ポイント】
●障害のある幼児などが関わる関係機関や家庭での幼児の実態、保護者の願い、
支援策等を共有しましょう。
●支援の方針を共有した上で、それぞれの生活の場で示す障害のある幼児などの
実態に応じた具体的な支援策を共有しましょう。
●個別の指導計画との関連を図り、先生自身の保育に生かせるようにしましょう。
幼児の生活は、家庭と園で連続しています。療育機関等に通っている場合には、こ
こでの障害のある幼児などの生活も含め、家庭、園、関係機関が連携して、初めて当
該幼児の生活する姿全体を捉えることができると言えるでしょう。当該幼児の生活す
る姿から困難さを捉えるためには、家庭、園、地域の連携が必要です。そして、それ
ぞれが個別に支援策を作成していては、当該幼児の生活する場所によって支援策が異
なってしまい、当該幼児は混乱してしまう恐れもあります。障害のある幼児などの抱
える困難さに対応した支援を行うためには、当該幼児に関わる様々な大人が、困難さ
や支援方針を共有することが大切です。
家庭、園、関係機関の連携は一朝一夕に実現するものではありません。園と保護者
との連携、関係機関と保護者との連携を基盤に、3者の連携を深めましょう。
集団の雰囲気が苦手なK児の発達を共有するまで
2年保育5歳児
K児は、幼児が大勢集まって何かをする雰囲気が苦手で、そのような状況になると
奇声を上げたり保育室を飛び出したりします。園からの勧めで、4歳児の 10 月から発
達支援センターに通っています。
年長に進級し、新しく担任になった先生は、K児に対して環境の構成を工夫してみ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(251ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 251ページたり、様々な関わり方を試してみたりしましたが、症状はだんだん強く現れるように
なりました。
○保護者の思いを知る
担任は、園でのK児の様子を保護者に伝えながら、保護者の思いを聞くことにしま
した。
「皆と同じ行動をとってほしい」と願う保護者 (4月)
保育室に入ってきた保護者の表情はとても硬く、担任に何か指摘されるのではな
いかと構えているようでした。保護者の気持ちを少しでもほぐすために、K児には
お気に入りの固定遊具があって、そこで体を動かして遊ぶことが大好きなことから
話し始めましたが、保護者は「そのとき、他の子は何をしていたんですか?」と、
我が子が皆と同じ行動が取れないことをとても気にしていました。「他の子も、そ
れぞれ好きな遊びに取り組んでいました」と伝えましたが、「ずっと自由に遊ばせ
ていて指導はしないんですか? うちの子は、発達支援センターではきちんと椅子
に座って、先生の言うことを聞きながら工作をしたり、紙芝居を見たりすることが
できます」と担任の指導方法に疑問を感じているようです。
保護者は、K児の好きなことや得意なことに目を向ける余裕はなく、K児が他の幼
児と同じように行動できることを望み、担任の指導方法に不満があることが分かりま
した。しかし、一方で、その話しぶりや表情から、実は園でのK児の姿に戸惑いを感
じ、不安を抱えながら子育てをしていることも感じ取れました。保護者には、園で展
開される生活や指導の在り方について丁寧に伝え、少しずつ理解してもらう必要があ
ると考えました。また、保護者から、初めて発達支援センターでのK児の様子を聞き、
今後の指導の手掛かりになるのではないかと考え、その指導や支援の方法について詳
しく知りたいと思いました。
○関係機関から情報を得る
早速、保護者に了解を得て、発達支援センターに連絡をし、出向いて話を聞くこと
にしました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(252ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 252ページ「落ち着いて紙芝居を見ている」発達支援センターでのK児の姿 (5月)
発達支援センターの相談室はとても落ち着いた雰囲気でした。指導員は「K児は
パズルや積み木など構成しながら遊ぶ遊具が大好きで、じっくり取り組むことがで
きますよ。紙芝居や読み聞かせも大好きです」と言いました。園での姿との違いに
驚き、「最初から落ち着いていましたか?」と質問をすると、「いいえ、紙芝居のと
きは、最初は相談室から出て行ってしまったんです。だから、1対1の読み聞かせ
から始めて、少しずつ一緒に聞く人数を増やしていきました。今では 10 人くらい
なら一緒に聞けるようになりました」と教えてくれました。その他にも、K児の周
りに必要以上にものを置かないこと、語りかける声の音量に留意していること、活
動に見通しがもてるようにしてから始めることなど、K児が集中して活動に取り組
めるように工夫していることを教えてくれました。K児は戸外で体を動かして遊ぶ
ことが大好きなこと、幼児が大勢集まる状況が苦手なことなど、園での様子を伝え
ると、「発達支援センターでは外で体を動かして発散するような遊びはしていませ
ん。もしかしたら、こちらでの活動に多少ストレスを感じていて、それを園で発散
しているのかもしれませんね」と答えてくれました。
そして、「K児にとっては、園も発達支援センターも生活の場です。お互いに情
報交換をしながら、K児への関わり方を考えなければならないですね」と今後も連
携する意思を確認し合うことができました。
発達支援センターでは、K児は落ち着いていました。K児の言動は、周りの環境条
件にかなり影響されることが今回の訪問で分かりましたので、発達支援センターのK
児への支援の方法を参考に、今後の指導について検討することになりました。しかし、
園は、集団での生活の場でもあります。全てを発達支援センターと同じにすることは
できません。幼児教育の特質について保護者や発達支援センターに理解を求めながら、
K児の支援策を共有していく必要があります。
○保護者に園の役割を説明する
保護者と面談をする前に、発達支援センターで得た情報を園全体で共有し、K児の
発達の見通しや今後の指導の在り方について話し合いました。
面談の当日、担任は、特別支援教育コーディネーターにも同席してもらおうと考え
ましたが、保護者はあまり気が進まない様子だったので、園長室で二人きりで話すこ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(253ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 253ページとにしました。
「なぜ園ではできないのでしょうか」と訴える保護者 (6月)
担任は、発達支援センターでのK児の姿を見て驚いたこと、発達支援センターで
の支援が参考になったことを保護者に伝えました。それに対して保護者は「もとも
と家では、物事に集中してじっくり取り組むことができる子でした。発達支援セン
ターに通うようになって、できることが増えました。指導員さんの言うことはよく
聞けるし、皆と一緒に行動できます。なぜ園だと、うちの子だけが目立ってしまう
んでしょうか」と涙ながらに訴えてきました。担任は、これまでのK児への指導が
うまくいかずに困っていたことや、K児らしさを十分に発揮させてあげられない自
分への不甲斐なさを正直に話しました。さらに、保護者の言い分を十分に受け止め
た上で、「Kちゃんは、毎日、楽しそうに体を思いきり動かして遊んでいます。これ
は、体幹をきたえたり、体をスムーズに動かしたりするための大切な経験です。そ
して、体を動かして遊ぶ心地よさを味わいながら、気分を発散しているのかもしれ
ません。園での指導の成果は、すぐに目に見えることが少なく分かりにくいのです
が、Kちゃんにとっては必要な経験です。このように、園では、Kちゃんの将来を
見通して、今、Kちゃんに必要な経験を考えて指導や支援をするようにしています」
と説明しました。そして「ぜひ、Kちゃんをどのように育てていったらいいのか、
一緒に考えていただけませんか? 家庭、発達支援センターと、その思いを共有し
た上で、園での指導を見直していきたいんです」と話しました。保護者は「ぜひ、
そうしてください」と少し安心した様子でした。
話をしていくうちに、保護者の表情は少しずつ柔らかくなっていきました。担任が、
正直に思いを伝え、共に考える姿勢で臨んだからだと思います。また、K児の具体的
な姿を示しながら幼児教育について説明したことも、保護者にとっては理解しやすく、
受け入れやすかったのかもしれません。
そして、園、家庭、発達支援センターが各々の役割を認識し、同じ思いでK児を育
てていけるように三者で話し合いの場をもつことにしました。
○長期的な視点でK児の発達を共有する
保護者と指導員に来園してもらい、保育参観後、2時間程度話し合うことにしまし
た。短い時間でも話し合いが充実するよう、事前に話し合う内容を伝えておきました。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(254ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 254ページまず、互いに「K児の様子や変容」と「支援の過程」を報告し合い、「K児にどのよう
な姿を期待するのか」「今後、各々がどのようにK児に関わったらよいか」などの意見
交換ができるとよいと思いました。
「三者の共通の思い」を話し合う (7月)
今回は、保護者と指導員が、園でのK児の姿を具体的にイメージできるよう、保
育室で話し合うことにしました。初めに、現在のK児の様子や4月からの変容、指
導や支援の過程について報告し合いました。
(担任)4月は、登園すると園庭に行き、一人で楽しそうに固定遊具を使って身体
を動かして遊んでいました。最近、友達のしている面白そうな遊びに興味
があるのか、ごっこ遊びをしている友達をじっと見ているところをよく見
かけます。友達が大勢集まる雰囲気に慣れるよう、K児の遊びを周りの子
に紹介したり、同じ興味をもつ友達とつないだりして、K児の周りに友達
が集まるよう工夫してきました。少しずつ、友達の存在を肯定的に受け止
めてくれるようになったのでしょうか。
(指導員)粘土や積み木などに関わって集中する時間が長くなりました。イメージ
も豊かで、いろいろなものが作れるようになりました。先日は、隣に座っ
ていたX児に「何を作ったの?」と聞かれて、「ライオン」と答えていまし
た。
(保護者)朝起きて身支度をする行動が素早くなりました。指導員さんのアドバイ
スどおりに、ある行動パターンをつくって、毎日、繰り返してきたので、
習慣になったみたいです。
様々な状況下でのK児の姿や4月からの成長を知り感動するとともに、どの姿も
K児であることや各々のK児への関わり方で参考になることなどについて確認し
ました。そして、「今後、K児にどのような姿を期待するのか」について意見交換を
しました。
(担任) 安心して友達の中にいられるようになってほしいです。
(指導員)友達と言葉でのやり取りができるようになってほしいです。
(保護者)他の子と同じ行動がとれるようになってほしいです。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(255ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 255ページ期待する姿は様々でした。しかし、もう少し長い目で見て、将来、K児にどのよ
うになってほしいかなどを話し合っているうちに、「今、K児にとって必要なこと
は集団の中で安定した情緒で過ごすことなのではないか」という三者の共通の思い
が出てきました。
「今後、K児にどのような姿を期待するのか」について、三者で意見を出してみると、
最初は三者それぞれの意見が出ました。園では、他の幼児との関わりが少しずつ見ら
れるようになってきましたが、他の幼児と一緒に遊んだり、話し合ったりする姿まで
はまだあまり見られません。他の幼児の遊んでいる様子が気になっているものの、多
くの幼児が様々な場所で思い思いに遊んでいるので、まだ少し落ち着かないのかもし
れません。一方、発達支援センターでは、園と比較して物や人が多くないこともあり、
他の幼児と言葉を交わすことも増えてきているようです。K児のそれぞれの生活の場
で示す姿を受け止め、発達支援センターで他の幼児と会話ができているからといって、
園で無理に会話を促すことは避けることになりました。発達支援センターで他の幼児
と関わる楽しさを知ったり、園で他の幼児と一緒に踊ったり歌ったりする体験を重ね
ていくうちに、園でも他の幼児と一緒に遊び、会話をするようになっていくと考えま
した。
そして、保護者の「他の子と同じ行動がとれるようになってほしい」という思いも
受け止めつつ、K児ができるようになったこと、K児が得意なことについて他の幼児
が感心している出来事などを伝えるようにしました。そうすることで、K児なりの成
長の様子や、K児の得意なことやよさに保護者が目を向けられるようにしました。
そうした話し合いを行い、三者共通の支援方針としては、集団の中で安定した情緒
で過ごすこととした上で、具体的な支援策はそれぞれの生活の場で示すK児の姿に応
じて検討することになりました。この具体的な支援策についても、その方向性などを
共有することが大切です。例えば、他の幼児と場や空間を共有し、同じ活動をするこ
とで、他の幼児と直接的な関わりはなくとも、何となく他の幼児と行動を共にしてい
るような雰囲気をK児が味わえるようにし、機会があれば他の幼児との会話を先生が
仲立ちするといった支援策を三者で共有することが考えられます。具体的には、園で
は、リズム遊びなど、他の幼児と同じ空間で同じ音楽を聴きながら踊れるように配慮
します。一方、発達支援センターでは、他の幼児と隣り合ってそれぞれに車を製作し
ながら、隣の幼児の工夫を取り入れたり、ときには自分の工夫を先生や隣の幼児に説
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(256ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 256ページ明する機会を設けたりすることなどが考えられます。家庭でも、他の幼児が今熱中し
ている遊びを取り入れてK児がその遊びに興味や関心がもてるようにしたり、一定時
間同じ遊びが続けられるように保護者が一緒に遊んだりなどが考えられます。このよ
うに、それぞれの場での障害のある幼児などの生活する姿に応じるとともに、支援策
について具体的に共有していくことが大切です。
○個別の教育支援計画を作成する
K児に対してきめ細やかな指導や支援を行うために、このように対面で話し合う機
会を設けることは、有効な手段の一つです。しかし、なかなか頻繁には行うことがで
きません。そこで、保護者の承諾を得て、今回の話し合いを基に、共有した支援の目
標、各々でどのような支援を行うのかなどを整理し、個別の教育支援計画として、ま
とめることにしました。個別の教育支援計画には以下のことなどを記載しました。
・保護者の願い
・K児の困難さや支援の内容
・得意なことや好きなこと、苦手なことや嫌いなこと
・生育歴、相談歴、診断の状況 等
個別の教育支援計画を作成することで、保護者や関係機関を含んだ複数の視点から
K児を把握することができます。また、K児の状況を踏まえた計画の見直しも3者で
検討することにより、一層K児の実態に応じたものとなります。そして、K児の成長
や成長の過程といった情報が蓄積され、3者で共有されることで、K児の将来を見据
えた支援についてよりよく考えていくことができます。
事例から読み取れること
保護者や関係機関と連携して障害のある幼児などの困難さに応じた支援を考える上
で、大切にしたいことについてまとめます。なお、家庭や関係機関と連携した支援に
ついては、障害のある幼児などの実態に応じて、随時、見直しを行うとともに、進学
や就職などにより生活の場が変わっても一貫した支援ができるよう、長期的な展望の
下、将来の生活を見据えた継続的な支援を行うことが必要です。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(257ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 257ページ〇障害のある幼児などが関わる関係機関や家庭での幼児の実態、保護者の願い、支援
策等を共有します。
障害のある幼児などへの支援については、園生活だけでなく、家庭や地域での生活
を含め、当該幼児が過ごす家庭や施設がその幼児の実態に応じた支援を共有すること
が大切です。教育、医療、福祉等の当該幼児に関係する人々が、それぞれの領域の専
門性を生かしつつ意見を出し合うことで、当該幼児が抱えている困難さに関しての理
解が深まり、支援ニーズが明らかとなります。
関係機関との連携に当たっては、まず、保護者と信頼関係を構築し、保護者に関係
機関と情報を共有することについて承諾を得る必要があります。保護者は、障害のあ
る幼児などにとって最も身近な支援者と言えます。保護者の願いなども聞き取り、一
人一人の実態やニーズに応じた支援目標を、家庭、園、関係機関で話し合い、共通理
解を得るようにします。そして、支援方針に基づき、各施設が行う具体的な支援につ
いても共有することが大切です。
〇支援の方針を共有した上で、それぞれの生活の場で示す障害のある幼児などの実態
に応じた具体的な支援策を共有します。
家庭、園、関係機関で支援方針を同じにしても、障害のある幼児などが見せる姿は
それぞれの生活の場で異なることがあります。これは、それぞれの施設における当該
幼児を取り巻く環境等が異なることが要因の一つと考えられます。例えば、当該幼児
と同じ場にいる幼児の人数、幼児当たりの教職員の人数、遊具や用具の種類や数、園
庭の有無や園舎の部屋数や広さなどが異なれば、当該幼児が感じる困難さも異なる可
能性があります。したがって、具体的な支援策については、それぞれの生活の場で見
せる当該幼児の実態に応じて考えます。そして、それぞれの立場や観点から見た支援
の在り方について共有し、役割を分担したり連絡を取ったりして支援を行います。
そのためには、当該幼児の実態とニーズ、支援目標、支援内容がそれぞれ関連をも
つようにすることが大切です。例えば、「当該幼児の実態とニーズを考慮すると、これ
からの目標は○○がよいのでは。その目標に向かって当該幼児が発達していくには、
家庭では○○、園では○○、関係機関では○○に取り組みましょう」といったように、
当該幼児の実態とニーズ、支援目標、支援内容の関連と各機関での役割分担や具体的
な支援策を共有するようにします。支援内容は、当該幼児にとって無理がなく、また
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(258ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 258ページ意欲をもって取り組めるかどうかを考慮します。また、支援が実際に行えるかどうか
についても考慮します。例えば、家庭における支援の場合、保護者が無理なく行える
支援内容かどうかについて考える必要があります。障害のある幼児など自身や支援者
にとってよりよい支援の在り方を話し合うことが大切です。
〇個別の指導計画との関連を図り、先生自身の保育に生かせるようにします。
連携で得た情報を基に、個別の指導計画を見直し、日々の保育に生かしていくこと
が大切です。また、個別の教育支援計画を作成し、家庭、園、関係機関での支援が整
理され共有されることで、自分の指導や支援を多面的・多角的に見直す機会ともなり
ます。さらに、個別の指導計画を作成して、障害のある幼児などへの指導や支援を明
らかにし、園内で共有することで自信をもって保育をすることができます。保護者や
関係機関との連携は、自分自身の保育の充実につながります。
(第5章2.(1)個別の教育支援計画 134 頁参照、第5章5.専門機関との連携 144
頁参照、第5章6.保護者との連携 148 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(259ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 259ページ事例 11 入園前の相談を活用して受入れ体制や支援を考える
入園するということは、初めての場所や人との出会いがあり、障害のある幼児な
どや保護者には期待とともに不安もあります。障害のある幼児などと保護者が安心
して入園するために、園はどのような準備をして受入れ体制を整えていけばよいの
でしょうか。
【ポイント】
●保護者から障害のある幼児などの状態を聞き取り必要な支援につなげていきま
しょう。
・保護者の思いを受け入れる温かい雰囲気で話を聞くことを心掛けましょう。
・当該幼児の状態を聞き取りましょう(具体的な障害の状態等、遊びや行動の特
徴、家庭で配慮していること、園に希望すること、通院の状況、緊急時の対応
など)。
●園での施設環境や体制を整えましょう。
・障害の状態等により必要な施設の安全性を確認しましょう(保育室、廊下等の
段差や物の配置、使用する椅子等の備品など)。
・当該幼児が安心して遊べる遊具や好きな物等の準備を進めましょう。
・園内での情報共有を進め、必要に応じて介助員等の配置を検討し、当該幼児の
安全を確保しましょう。
●入園前に園の施設や保育見学を行った上で支援策を保護者と共有しましょう。
・在園児の保育を見学したり、未就園児への施設開放の機会や新入園児一日入園等
で実際に遊んだりして、障害に応じた施設環境の整備や活動における支援につい
て考え、保護者と共有しましょう。
●関係機関との連携により、必要な支援につなげましょう。
・関係機関と互いの施設を訪問して連携を図り、当該幼児の行動や遊びの様子、
施設環境面での配慮事項等を共有し、園での生活にも生かしていきましょう。
障害のある幼児などが園に入園するに当たっては、入園前から園と保護者が連携す
ることが必要です。さらに、関係機関とも連携し、保護者の承諾を得た上で、情報を
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(260ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 260ページ共有して支援策、施設環境や体制を整え、当該幼児や保護者が安心して入園できるよ
うに準備をします。ここでは、保護者が視覚特別支援学校の教育相談部門に定期的に
相談しているL児が、入園するまでの事例を紹介します。
弱視のあるL児の受入れに当たって
2年保育4歳児での入園を考えたL児保護者から、園に問い合わせの電話がありま
した。L児は先天性の弱視です。保護者の希望により週2日園に通園したいが、入園
することは可能であるかとの問い合わせでした。保護者と日程の調整を行い、来園日
を決定して、その日の電話は終了しました。
〇保護者の園見学と面談
初めて保護者が来園し、園内の見学と園長との面談を行いました。始めに園の施設
を案内しながら、幼児の生活の流れや様子を知らせていきました。幼児が遊んだり生
活したりしている場面を見てもらいながら、「登園時に靴と上履きを履き替えますが、
靴箱の場所が分かれば自分で履き替えることはできますか?」と質問すると、「最初に
靴箱の位置を教えてもらえれば覚えることができます。そして、L児の場所に立体的
な目印をつけてもらえれば、自分で探して履き替えることができます」など、先生は
必要な支援について保護者から具体的に教えてもらうことができました。そのことに
より、保護者はL児が園で生活することを少しイメージすることができたようでした。
会話が進むにつれて、緊張気味だった保護者の表情も和らぎ緊張が解け、保護者から
も不安なことや分からないことについて質問がありました。
園内の案内後に園長との面談を行い、L児のこれまでの生育の様子やL児の見え方
に関すること、家庭で配慮していること、好きな遊び、園に希望することなどを聞き
取りました。次にL児と共に来園する日程を決定し、支援に関するアンケートを渡し、
次回の面談のときに記入して持参するようにお願いしました。
*支援に関するアンケート内容
・いつ、どのようなことで発達についての助言がありましたか
・保護者が困っていること、気になることはどのようなことですか
・生活習慣、衣服の着脱、食事、コミュニケーションなどで支援や配慮の必要なこ
とはどのようなことですか
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(261ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 261ページ・その他、日常生活で支援していることはどのようなことですか
・現在と今後で療育、発達検査、通院、通所があれば場所と回数を教えてください
・集団生活の中で配慮してほしいことはありますか
・その他、園に知らせておきたいことなど
〇L児と保護者での園見学と面談
2回目はL児と保護者が一緒に来園しました。保護者に手を引かれて初めて園に来
たL児は、玄関で音や匂いを確かめるような素振りを見せていました。靴を履き替え
るときには、手で段差や腰を下ろす場所を確認していました。L児に「こんにちは。
園の先生です」と声を掛けると、初めて聞く声に不審そうな表情を見せつつも、「園の
探検に行ってみよう」との問い掛けに、保護者と一緒に歩き出し、園内の探検に出発
しました。保護者と手をつないで歩きながら、壁や棚などに触れて物や位置を確かめ
ていました。保育室に入るとL児は立ち止まり、在園児が遊んでいる音や声や気配を
感じているようでした。楽器遊びの音に興味をもったため「鈴ですよ」と言って鈴を
渡すと、L児は手で触ったり音を鳴らしたりして鈴を確認した後、在園児と一緒に音
楽に合わせて鈴を鳴らす姿が見られました。先生は、L児の様子を見ながら、「靴箱な
どは触って確かめているから立体的な目印が必要なのね」、「鈴などの音が出るものを
使えば、L児にも分かりやすく、他の幼児と一緒に遊びやすいかもしれない」など、
園としての支援についてイメージをしました。
園内見学後、園長がL児と保護者との面談を行いました。持参した支援に関するア
ンケートの内容についてのことや、実際にL児が園を見学したり他の幼児と遊んだり
する様子から、気が付いたことや確認したいことなどを保護者に尋ねました。保護者
は、L児が遊びに参加したことを喜び、在園児との関わりに対して少し不安が薄れた
とのことでした。しかし、一方で、保護者がいないところで他の幼児と一緒に遊んだ
り、安全に生活したりできるのかという新たな心配が生まれたとも話していました。
その話を手掛かりに、L児が他の幼児と一緒に遊びや生活を安心して楽しむことがで
きるよう、施設等の安全の確保や具体的な支援について先生間で話し合うことにしま
した。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(262ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 262ページ〇保育に参加する機会の活用
L児と保護者に未就園児の親子登園などを紹介しました。実際に園の施設で遊ぶこ
とで気付くこともありますし、未就園児の親子登園では同年代の幼児が多く参加する
ため、保護者が一緒にいるという安心感の中で、L児が他の幼児と触れ合い、関わり
を深めていくことができます。また、入園前に、L児が園での遊びや生活を繰り返し
体験することで、L児はどこに何があるのかを知ったり、先生の声を聞き分けること
ができるようになったりなど、新しい施設に慣れていくことができます。さらに、L
児の保護者にとっても、他の幼児の保護者と知り合うきっかけにもなります。他の幼
児の保護者も、L児の遊びや生活の様子を直接見たり、L児や我が子と一緒に遊んだ
りすることで、L児への理解が深まります。
未就園児の親子登園を繰り返し、L児が安心して園で過ごす姿が見られるようにな
ってきたら、保護者はL児から離れ、先生がL児と関わる時間を設けます。保護者が
不在の場で、先生がL児と一緒に遊ぶ中で気付いたことを入園後の支援につなげてい
くようにしました。
〇園での施設環境や体制の検討
保護者からの聞き取りや、未就園児の親子登園でのL児の姿を踏まえて、園内委員
会でL児を受け入れるに当たっての施設環境の整備や支援体制について話し合いをし
ました。事前にL児の保護者が教育相談に通っている視覚特別支援学校に連絡を取り、
支援についての助言を得るようにしました。
施設等に関して次のような配慮を行うことになりました。
・保育室出入口の段差や柱、棚などに緩衝材を取り付ける
・靴箱やロッカーなど個人が使用する場所は動線から一番近い場所にして、L児が手
で触って分かるように立体的なマークを付ける
・L児が好きな音の出る遊具や感触を味わう遊具、CDラジカセや好きな曲の入った
CDなどを準備する
・運動遊び用に鈴の入ったボールを用意する
・活動時の座席は先生の声がよく聞こえ、先生がすぐに支援できる位置にする
・L児の活動支援や安全のために介助員を配置するとともに、先生全体で注意して見
守る
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(263ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 263ページ園内委員会で決定したことを保護者に伝え情報を共有しました。また、何か心配な
ことや不安なことがあった場合には、いつでも園に聞いてほしいことも伝えました。
〇親子で施設環境の確認
施設環境を整え、いよいよ入園式を迎えます。入園式の日は人が多く時間の都合も
あり、ゆっくりと確認することが難しいため、入園式の前日に親子で来園してもらい、
施設環境の確認をしました。正門からの動線、テラスや保育室の確認、靴箱やロッカ
ーなどの目印、段差や柱の緩衝材など、園で準備したことを実際に親子で歩いて確認
します。ゆっくりと時間をかけて確認できたことで、翌日の入園式には親子共に安心
して参加する姿が見られました。
また、事前に園歌の音源を貸し出したところ、L児は毎日のように聴いていたよう
で、入園式の園歌の場面では、一緒に口ずさむ姿が見られました。
事例から読み取れること
入園前に、L児と保護者には何度も来園してもらうようにしました。初めは緊張し
た様子でしたが、来園する度に園や先生への親しみが増していきました。直接会って
話をすることで、L児が園で安心して生活できるようにという目標に向かって、保護
者の思いに寄り添いながら、保護者と一緒に考えるようにしています。保護者の言葉
に耳を傾け、保護者が伝えたいことを十分に聞き取ることや、話しやすいと感じる温
かい雰囲気を大切にしています。障害のある幼児などの困難さに応じた支援を考える
上で、保護者からの情報は重要な手掛かりとなります。保護者との信頼関係を築きな
がら、しっかりと聞き取っていくことが必要です。
また、障害のある幼児などの実際の姿から支援の方法が見えてくることもあります。
入園前に直接当該幼児と関わったり、遊んでいる姿を見たりする機会を活用して、支
援のヒントを見付けていきましょう。
園内の施設環境の整備に当たっては、保護者からの聞き取りや関係機関からの助言
などを基に、できることから取り入れていくことが必要です。例えば、当該幼児に専
任の先生を配置してほしい、車椅子を利用しているのでエレベータを設置してほしい
などのように、保護者の要望の全てにすぐに応じることが困難な場合もあります。そ
の場合は、介助員の配置や必要に応じて保護者自身のお手伝いをお願いする、車椅子
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(264ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 264ページ用のスロープの設置や階段は先生が抱っこやおんぶをして移動するなど、次善の策に
ついて園内で検討し、保護者に相談しましょう。保護者が安心できるように、保護者
の要望に応じることが困難な理由や次善の策での当該幼児の生活について具体的に説
明するようにしましょう。安全を確保するだけではなく、当該幼児が安心して楽しく
園生活を送れるようにすることが大切です。
(第3章1.障害のある幼児などの遊びや生活を支える合理的配慮 14 頁参照、第3
章5.保護者との信頼関係を基盤とした子育ての支援 31 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(265ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 265ページ事例 12 園と小学校が連携して切れ目ない支援を考える
園は小学校教育を見通した教育を行っており、小学校では、特に入学当初では、
幼児期に近い活動と児童期の学び方を織り交ぜた教育に配慮しています。例えば、
入学当初は、園での掲示方法を取り入れて教室の掲示をしたり、弾力的な時間割を
設定したり、幼児期に親しんできた遊びを取り入れたりなどして、児童が安心して
小学校生活を送れるような基盤が大切です。その上で、障害のある幼児などが小学
校に安心して通うことができるようにするためには、どのようなことに配慮したら
よいでしょうか。
【ポイント】
●小学校における支援の検討の参考になるよう、保護者の承諾を得た上で、困難さ
や困難さに応じた園での支援について具体的に伝えましょう。
・幼児の障害の程度や状況、支援策、園での生活の様子や他の幼児との関わりなど
について具体例も交えながら話しましょう。
・現在の当該幼児の実態だけではなく、例えば、4 月からの当該幼児の成長や支援
策の見直しなどについて話しましょう。
・小学校の先生が、当該幼児の園での生活の様子を参観する機会を設けましょう。
ダウン症のあるM児に関する小学校への引継ぎ
ダウン症のあるM児は、人懐こく、大人と積極的に関わりをもとうとします。笑顔
で関わっていくことが多いため、保護者や周りの人から愛されています。安心して楽
しく、M児らしく伸び伸びと小学校生活を送ってほしいと担任は思っています。その
ためには、M児の実態に応じた支援の継続性が大切です。個別の教育支援計画や自治
体等で取り組んでいる就学支援シートなど、障害のある幼児などの実態や支援につい
て記載されている資料を活用するとよいでしょう。しかし、継続的な支援を実効性の
あるものとするためには、それだけでは十分とは言えません。当該幼児などがどのよ
うなことに困っているのか、先生はどのような意図の下に支援をしているのか、当該
幼児の成長等に伴う支援の見直しなどについて、園で生活する具体的な様子とともに
説明し、小学校の先生が具体的にイメージできるように努めましょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(266ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 266ページ【小学校に伝えた内容】
①障害のある幼児などを取り巻く状況
ダウン症があり、言語の遅れ、知的な遅れ、低身長などが見られる。3歳から療育
機関と連携して通所している。園には4歳で入園した。
②障害のある幼児などの特性や特徴
・人と関わることが好きで、皆と同じ場で過ごすことができるが、活動への参加は支
援を要する。
・音楽が好きで、リズムに乗って体を動かすことを好み、皆をまねて一緒に走ったり、
追いかけ鬼に参加したりする。手先の力は弱く鉄棒などをつかむ、ボールを投げる
などの動きは難しい。
・自分の思いは表情や態度で表すことがほとんどで、「いや」「だめ」と拒否するとき
は言葉で言い、手で払いのけたりふくれ顔をしたりして示す。M児なりに気持ちを
切り替えようとしても、こだわりが強くなり切り替えられなくなる傾向がある。
・周りからの刺激を受けやすく、自分でできることをしなかったり、食事に時間を要
したりする。
③障害のある幼児などの成長の様子
〇体の動きについて
【M児の姿】
・4歳の入園時は階段の上り下りを自分でしようとせず、抱っこを要求することが多
かった。2年間の生活で階段や段差等の足取りがしっかりしてきた。
・三輪車に乗ったり、音楽に合わせて体を動かしたり、粗大運動の機会をもつように
してきたことで、体のふらつきが少なくなってきた。
・指先の細かな動きを伴うペンでかくことや箸を使って食べることは難しく、大きな
画用紙にかいたり、スプーンやフォークなどで食べたりしている。
【配慮していること】
・発達がゆっくりなため、日常生活で体を動かし、粗大運動を積み重ねていくことで、
体の動きやバランスがよくなってきた。
・指先を使うことは個別に支援し、皆と同じようにできたという気持ちをもてるよう
にしている。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(267ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 267ページ〇活動への参加について
【M児の姿】
・興味をもったことを途中で終わりにすることができにくく、保育室に戻れなかった
り物を片付けられなかったりしていたが、クラスの皆が集まることを伝えたり、次
のことへの見通しをもてるようにすると、気持ちを切り替えてクラスに戻れるよう
になってきた。
・協同製作などは、個別対応でガムテープを切って渡して貼るようにしたり絵具で塗
る部分を示したりするなど、皆の中でM児ができることで参加し、一緒に活動する
ことを楽しんできている。
・乗り物ごっこ活動では、M児が乗り物に乗るだけでなく、先生に促されると年長の
仲間として乗り物を押す役割を行えるようになってきた。
【配慮していること】
・クラスへ参加の意識が育ってきているので、皆と一緒に活動する中でM児のできる
ことで参加したり、できる役割を担ったりして満足感が得られるようにした。
〇自己表出・気持ちの切り替え
【M児の姿】
・「だめ」、「いや」の拒否する言葉以外は、表情と態度で表していたが、名前を呼ばれ
たら返事をしたり挨拶の言葉を言ったりするなど、少しずつ発語や語彙が増え、思
いを伝えようとするようになってきた。
・自分の思いどおりにならないときは、先生の誘いを拒んだり物から離れようとしな
かったりしていたが、先生がM児の気持ちを言葉で表して受け止めたり、M児の気
持ちを満たす対応をしたりすることで、気持ちを切り替えることができるようにな
ってきた。
【配慮していること】
・自分の思いを伝えようとする行為が増えてきているが、まだ言い表せない言葉も多
いので、先生が気持ちなどを代弁して、M児の語彙が増えるようにした。
・気持ちの切り替えがしやすいように、「まだ遊んでいたいね。でも、お弁当を食べる
時間だから片付けようね。お弁当を食べたらまた遊ぼうね」といったように、先生
がM児の気持ちを受け止めていることを伝えるなどした。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(268ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 268ページ〇身の回りの生活習慣
【M児の姿】
・排泄
せつ
が自立し、自分からトイレに行くことができるようになった。
・基本的な身の回りのことは自分でできるようになったが、気が散ると進まなかった
り気が乗らないとやろうとしなかったりする。
【配慮していること】
・M児のペースを保証すると自分なりにやろうとすることやできることが増えてきた。
しかし、周りの動きや音に影響されて気持ちが向かなくなると、できることもやろ
うとしなかったり、時間を要したりする傾向がある。物の位置や座る場所を配慮し
て、しようとすることに集中できるようにした。
〇他の幼児との関わり
【M児の姿】
・人と関わることが好きで、皆をまねて一緒に走ったり、追いかけ鬼に参加したりす
る。
・自分の気持ちをうまく言葉で表現できないために他の幼児に思いが伝わらなかった
り、強いこだわりが生じて他の幼児といざこざが生じたりすることがある。
・M児はH児と一緒だと落ち着いて活動に参加できる傾向にある。H 児は、M児の思
いを確認しながら活動に誘ったり手伝ったりしている様子が多く見られるので、M
児も安心なのだろう。
【配慮していること】
・M児の気持ちを代弁して他の幼児に伝えるなどして、幼児同士が一緒に遊びを楽し
めるようにしている。
④保育参観などを通して
「③障害のある幼児などの成長の様子」において伝えたことを、実際のM児の生活
する姿から具体的に伝えていきます。紙や口頭での説明だけでは、先生の口調や周囲
の雰囲気、そういった環境の中でのM児の表情や言動は伝わりません。また、掲示物
や集まる場所の目印といった生活環境への配慮についても、実際に見た方がよく分か
ります。さらに、M児が他の幼児と遊ぶ様子から、興味のあることや好きな遊びの傾
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(269ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 269ページ向、遊びを楽しんでいる様子や困難さを感じたときのM児の様子なども知ることがで
きます。
保育参観を通した話し合いの様子
M児は園庭で三輪車に乗って遊んでいる。片付けてクラスに集まる時間になる
が、M児は遊びをやめることができない。先生がア「Mちゃん、片付けて保育室に
戻ります」と声を掛けると、「いや」と言って三輪車を放そうとしない。再度イ「M
ちゃん、片付けて保育室に戻りますよ。集まったら桃太郎の劇をするから」と声
を掛けても、「いや」と言って口をとがらせて怒る。そこで先生は、ウ「そうか、
まだ遊んでいたいのね。あと 1 周ぐるっとしたら終わりにしようね」と言い、三
輪車置き場で待つことにした。その間「Mちゃん、速い」と声を掛ける。
エ 三輪車置き場の手前に誘導して、一緒に片付ける。「Mちゃん、片付けるの上
手」と言うと笑顔で保育室に向かう。オ 自分で靴を履き替えて保育室に戻ること
ができた。
保育参観後の話し合いでは、保育参観中に見られたM児の姿と先生の声掛けな
どの支援(ア~オ)について、支援の意図を小学校の先生に伝えた。
ア 全体指示だけでは意識しにくいので、今することを、個別に、かつ簡潔に伝
えるようにしている。
イ 次にすることを知らせて見通しをもてるようにしている。
ウ 片付けることだけを知らせていくと、片付けたくない気持ちが募り頑固にな
っていく傾向がある。そこで、「いや」という返答や怒って拒否する態度を、も
っと遊びたい気持ちの表れと受け止め、1周乗ったら終わりにすることを提案
することでM児が納得するようにしている。
エ 一緒に片付けることで、M児の気持ちがそれないようにしている。
オ 自分でできる身の回りのことは、自分で行う姿を見守っている。
園での対応の仕方を具体的に知らせることは、小学校でのM児の支援につながるこ
とが期待されます。また、単に伝えるだけではなく、小学校の先生との意見交換の機
会をしっかりと設けるようにしましょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(270ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 270ページ事例から読み取れること
小学校への引継ぎに当たっては、保護者の承諾を得た上で、なるべく具体的に伝え
ていきます。障害のある幼児などにとって、生活の場が園から小学校に変わることは
大きな変化です。その変化に戸惑い、不安を感じ、園ではできることも一時的にでき
なくなったり、落ち着きがなくなったりするかもしれません。そうしたときに、園で
慣れ親しんだ遊びがある、集合場所の目印や掲示物といった生活空間があるといった
ことは、当該幼児にとって安心できることでしょう。また、先生の指示などについて
も、個別に簡潔に伝えてもらっていたのが、急に他の児童と一緒の全体の指示になっ
てしまっては、理解できないばかりか、不安もつのってしまうことでしょう。
当該幼児の実態に応じた支援が小学校に引き継がれ、安心して小学校での生活がで
きるようにするためには、小学校の先生が、小学校での学習や生活の支援をイメージ
できることが大切です。
なお、小学校での新しい生活に不安を感じているのは、当該幼児だけではありませ
ん。保護者も、「園でこれまでやってきた支援は引き継がれるのか。我が子の生活の様
子を知らない保護者もいるが、小学校ではそういったことにも配慮してくれるのか」
といったことを心配するかもしれません。保護者の承諾を得た上で、小学校に、これ
までの保護者の思いや要望、園とどのようなやり取りをしてきたのかなどについて伝
えましょう。そして、保護者の不安が軽減され、当該幼児だけでなく保護者自身も小
学校生活に期待がもてるように支援をします。
障害のある幼児などはゆっくりと新しい生活に慣れていきます。そうした様子を温
かな様子で見守り、継続的な支援をしていきましょう。そのためには、家庭や関係機
関とも連携した一貫した支援が必要であることも忘れてはなりません。
(第5章7.小学校への円滑な接続 155 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(271ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 271ページ事例 13 保護者の気持ちに寄り添うことで先生と保護者の協働を深めていく
我が子には特に支援の必要性を感じていない、あるいは、支援の必要性は感じて
いてもそのことを受け入れることができずにいる保護者に、特別な支援の必要性だ
けを説明することは、保護者が園に対して反感や不信感をもつことにつながる恐れ
があります。先生が障害のある幼児などの保護者と関わる際には、どのようなこと
に留意したらよいでしょうか。
【ポイント】
●信頼関係を築くことが大切です。
・日頃から会話を多くもつように心掛けましょう。
・まずは、当該幼児のよいところを伝えましょう。
・保護者の状態や心の機微を敏感に受け止めて、対応しましょう。
・当該幼児の成長を一緒に喜びましょう。
●様々な機会を活用し、情報を提供することが大切です。
・当該幼児の行動特性(障害特性)について、伝えましょう。
・当該幼児の行動の対応でうまくいったことについて伝えましょう。
・状況に応じて地域にある支援機関を伝えましょう。
幼児の障害の有無にかかわらず、幼児、保護者、園の先生との間で信頼関係を築く
ことは、基本です。特に、保護者との関わりでは、保護者の状態や心の機微を敏感に
受け止めつつ、コミュニケーションをとっていくことが重要になります。日頃から会
話を多くもつように心掛け、幼児のよいところを伝えるなどの関わりを重ねていくこ
とが大切です。コミュニケーションは、両者の関係性の上に成り立つものなので、先
生の話し方や態度も影響することを踏まえて対応するようにします。
子育てに困りながらも心を閉ざしていた保護者が、園や療育機関での支援を受ける
中で、保護者自身の状況を思い悩むことから、障害のある幼児などの困難な状況に目
を向けられるようになっていった事例を紹介します。この事例を通して、先生が保護
者の気持ちをどのように捉え、どのように関わったのか、そして、そのことによって
保護者の気持ちが変化していく様子について考えていきましょう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(272ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 272ページ保護者と先生の関わりの事例
○入園当初-信頼関係づくりと母親の状況の理解―
4歳で園に通い始めたN児は、乳幼児健診で「言葉が遅い」と指摘を受け、年に数
回、保健センターの発達相談に通っています。母親は友達と遊べないN児の行動が気
に入らないのか、園でもN児に向かって「ばか!」と大声を出すことがありました。
送迎時の母親の表情は硬く、N児は母親の表情をうかがうようにしていたこともあり
ます。母親は「Nに障害があることを認めたくない」という発言をしていましたが、
N児が遊ぶ様子を微笑ましそうに見ていることもありました。
担任はN児と一緒に遊ぶ時間をもつように心掛け、母親には、日頃から登降園の際
の挨拶や何気ない会話をするようにするとともに、N児のよいところや甘えてくるか
わいらしさを折に触れて伝えていきました。
ある日、母親が「夫に、発達相談で言語の先生やお医者さんの話を伝えるけど、う
まく伝えられなくて大変で…」と話しました。担任は「そうでしたか、大変でしたね。
難しいことを質問されるのですか?」と聞きましたが、内容については口をつぐんで
います。
N児の家族は、両親とN児の3人家族です。父親は会社員で、平日はN児と過ごす
時間はほとんどないようです。父親は、N児の発達の遅れについて気になりながらも、
発達相談に一緒に行ったことはなく、子育てにはあまり関わっていない様子が、母親
の話からうかがえました。また、N児の祖父母は、離れた土地に住んでいて、ちょっ
と来て家事や子育てを手伝ってもらうような関係ではないこともうかがえました。N
児のことについては、母親が一人で関わり、N児に関する様々な事柄は、母親が父親
に伝えているようでした。母親の表情が硬かったり、イライラしたりするのは、母親
の身近にサポートをしてくれる人がいないからかもしれないと、担任は思いました。
○園に慣れてきた頃
-気持ちの受け止めと障害のある幼児などの状況を保護者と共有-
担任にすっかり馴染んでいるN児の様子を見て、母親があるとき「Nは他の子より
遅れているから、焦ってしまうし…、イライラしたときや時間がないときは、どうし
ても怒鳴ってしまう」と話しました。この日をきっかけに、担任は、母親に「何か困
ったことはありませんか」と声を掛け始めましたが、「障害のあるこどもを育てたこと
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(273ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 273ページのない人が、いくら先生だって、分からないから」と答えて、N児を連れて、そそく
さと帰っていきました。
その後、担任は、N児のかいた絵を見せて「『ママ、わんわん』と言っていましたよ」
など、N児とのやり取りや遊びの様子などを詳しく伝えるようにして、声を掛け続け
ました。そのような働き掛けがしばらく続いたある日、母親は「Nを何とかしたいと
思っている」と話してきました。担任は「N児のこと、心配なんですね、N児の育ち
を一緒に考えていきましょう」と言って、N児の園での様子をこれまで以上に詳しく
母親に伝えるようにしました。
担任は、今までのようにN児のよいところだけを伝えるのではなく、N児が園の生
活で困っていることも伝え始めました。「皆でお遊戯をしているときに本を見ていた
ので、お遊戯をするように誘いましたが、怒って大声を上げていました。N児は、ど
うやってお遊戯に参加したらよいか分からなかったのかもしれませんね」そして、数
日後には、「お遊戯の順番を写真に撮って示したら、N児も皆と一緒に遊んでいました」
と、園でどのような工夫をしているのかも伝えました。
このようにN児の様子や成長を詳しく伝えていくことを続けていく中で、母親も家
庭での様子などを話し始めました。「家では園のように騒ぐことはないですけど、知ら
ず知らずのうちにこどものペースに合わせているかもしれないです…」、「障害がある
ということで、心をおおらかにしようと思うけど…納得できる部分もあるし…できな
い部分もある」と家での幼児の行動にうまく対応できなかったときの複雑な心の内を
語ってくれることもありました。
○支援について保護者と共に考える頃-専門機関との連携-
保健センターの発達相談に出掛けた母親は、相談員から「Nちゃんの言葉が増えて成
長発達が著しく、園に通ってよかったですね、と言われた」と、嬉しそうに担任に話
しました。担任は日頃の母親の子育ての努力をねぎらい、「園でも発達相談の先生と相
談したいので連絡を取ってもいいですか?」と尋ねました。そして、母親から発達相
談のことを詳しく聞くと、療育機関に通っていることが分かりました。今まで、母親
は療育機関に通っていることを認めたくなかったり恥ずかしかったりして、園に言え
なかったのかもしれません。他者から褒められることで、母親はN児の成長を実感で
き、また気持ちもほぐれてきて、園にも少しずついろいろなことを話せるようになっ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(274ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 274ページてきたのでしょう。
母親から了解を得た担任は療育機関に連絡を取りました。療育機関では、N児の個別
指導や母親との面接相談を通じて心の安定に取り組んでいました。その後、母親の了
解を得た上で、療育機関の担当者が園でのN児の様子を観察し、降園後に園の全先生
が加わって、療育機関の担当者とN児の状態や対応の仕方について話し合いました。
翌日、担任は「お母さんのお陰で、療育機関の先生から、N児のことや支援の仕方
を教えてもらいました。N児もお母さんも、これまで本当に頑張ってきたのですね。
これからは園と療育機関などの福祉機関とお母さんと一緒になって、N児のことを考
えていきましょう」と話しました。母親は、安心したような面持ちで、「これからもよ
ろしくお願いします」と微笑みながら言いました。
事例から読み取れること
保護者対応のポイントで示されていることは、園が保護者に対応するときにはいつ
も留意していることです。しかし、障害のある幼児などをもつ保護者の場合、子育て
に対する不安が大きく、そのことを周囲に相談することもできずに孤立していること
もあります。そのため、保護者の家庭環境等も踏まえながら、保護者の立場に立って
考え、保護者のその時々の気持ちに応じた一層丁寧な関わりが求められます。
それぞれの時期(状況)に応じた保護者対応について、各事例から読み取れること
を考えてみましょう。
○入園当初―信頼関係づくりと母親の状況の理解―
当初は、母親が我が子に向かって「ばか」と大声を出すなど、虐待の疑いも感じさ
せられる状況でした。虐待の背景には保護者の子育てへの不安や苦悩があることが多
いと言われています。このような状況のときに、一方的に指導することは反発を招き、
関係が遮断される可能性がありますから、子育てのつらさや頑張りを認めて接してい
くことが大切です。
先生は、母親との日頃の会話を大切にし、母親の話したい、話したくないといったそ
の時々の気持ちを大切にしながら、子育てのサポートの有無などの状況や母親の気持
ちを聞いています。そうした中で、母親が一人で子育てを担っていることや母親が得
た情報を父親に伝えるのに困っていることが話されました。母親自身も落ち込んでい
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(275ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 275ページるときに、我が子の発達の遅れを指摘されたことを父親に伝えなくてはならないつら
さも述べられました。その一方、母親は我が子の状態をしばしば夫に伝えており、夫
婦関係は悪くないことが推察できます。
この時期、母親は、我が子の発達の遅れが心配で、何とかしたいと思っていますが、
ただ厳しく接することになっていました。そこで先生は、まずは親子関係を改善する
ことを目指して、当該幼児のよさなどを母親に伝え、母親が当該幼児をより愛おしい
と思えるように配慮しています。
母親の心が先生に開かれ始めたのは、我が子が先生を信頼していること、先生も我
が子を大切に思って関わってくれていることなどが母親に伝わったからだと考えられ
ます。長い時間がかかりますが、この間、しつこくならない程度に、当該幼児の様子
を伝えたり、子育てをねぎらったりする丁寧な声掛けを続けていくことが必要です。
そして、母親は先生に自身の不安などを次第に話すようになっていきますが、「Nに
障害があることを認めたくない」「障害のあるこどもを育てたことのない人が…」とい
った発言もあります。我が子の障害を頭では理解していながらも、気持ちとしては受
け入れかねているのでしょう。母親は、「悲しみ・怒り・不安」を感じており、先生に
対して攻撃的な言葉を向けるかもしれません。先生は、母親が周囲に不満や怒りを言
わないとやっていけない気持ちであることを理解し、攻撃的な言葉も受け流すことが
大切です。
○園に慣れてきた頃
-気持ちの受け止めと障害のある幼児などの状況を保護者と共有-
「Nは他のこどもより遅れているし…」と言う言葉からは、また一歩、母親が先生
に心を開き始めたと推測できます。しかし、心を開いたからといって、すぐにN児の
課題を示して対応を求めていくことは控えるようにします。N児の様子を伝える中で、
N児が園で困っていることを伝え、それに対してどのように関わって、N児がどう変
わっていったかを伝えることが大切です。このことによって、母親は、N児の行動の
見方を理解するとともにN児の理解も深まっていきます。それは、幼児の小さな変化・
成長を具体的に実感できることにつながります。しかし、例えば、障害のある幼児な
どが家で落ち着かず、家での子育てに疲れている様子の母親に、園でのよい様子ばか
り伝えていては、保護者に寄り添っていることにはなりません。保護者の発言に耳を
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(276ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 276ページ傾けて、子育ての大変さをねぎらい、家での当該幼児の様子を推測し、場合によって
は対応策を一緒に考えていくことが必要です。
また、母親の「Nを何とかしたいと思っている」との発言は、当該幼児の困難な状
況に目を向け、子育てにしっかりと向き合うようになっている兆候です。このような
母親の意識の転換は、母親への対応を変えていく時期でもあります。当該幼児の困難
さに目を向け始めたからと言って、思い悩むことがなくなるわけではありません。保
護者の感情の機微を察して対応していくことが大切です。
さらに、母親が、障害を認めて当該幼児の状態や障害の特性からくる行動特徴を理
解したからといって、当該幼児への対応が必ずしもうまくいくとは限りません。親と
してこうした方がよいと分かっていても、うまく実行できないことがあります。子育
ての悩みを丁寧に受け止めつつ、日々の生活の中で生じる具体的な困難に対して具体
的に取り組む手立てについて、先生が保護者と共に考える姿勢が大切です。園で試み
たやり方を保護者に伝えたり、家庭での対応の仕方を聞いたりすることで、園と家庭
で、その環境ややり方は異なっていても、当該幼児を「一緒に育てている」という感
覚がもてるようになります。
○支援について保護者と共に考える頃-専門機関との連携-
園の大きな集団で、皆の動きについていけない、一斉の指示では何を伝えられてい
るのか分からず人と違うことをしている、人混みが苦手でクラスから離れたところで
一人でいるなどは、当該幼児が園で困っている様子です。早期から、療育機関等の関
係機関と連携して当該幼児の困難さに応じた支援をすることは重要です。
母親は、「保健センターの発達相談」と言っていましたが、実際は、療育機関に通っ
ていました。初期の頃に「発達相談」の内容を夫に伝えることの大変さを口にし、そ
の内容を担任から聞かれると、口をつぐんだのは、後から考えると、療育機関に通っ
ていることを明言したくなかったから、とも受け止められます。
母親は、意識はしていないかもしれませんが、当該幼児と関わる保護者・療育機関・
園は共に当該幼児を育てる仲間であり、連携の大切さに気付き始めたからこそ、園が
療育機関に連絡することを了承したのではないでしょうか。さらに、母親は、連携の
場に参加することで、日常生活での当該幼児への接し方の手立てや方向性、様々な制
度の活用について知るきっかけともなります。なお、保護者によっては、園に対し、
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(277ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 277ページ療育機関との関わりを伏せておきたかったり、逆に、療育機関に通っていることでよ
り細かな配慮を求めたりすることもあります。保護者の考え方は様々であり、保護者
の気持ちに寄り添った支援が大切です。
○全体を通して
本事例では先生の関わりと母親の気持ちの変容を中心に見てきました。全ての保護
者がこのように変わっていくとは限りません。家庭では困っていないので相談しよう
とは思わない場合、当該幼児以外に家族に認知症を患った高齢者がいる場合、保護者
自身に課題がある場合などもあります。卒園するまで、我が子の障害を認めない保護
者もいます。しかし、当該幼児の行動特徴を把握して、その対応を考えていく上で、
幼児の障害の診断の有無や保護者の障害受容の状況は問題視することではありません。
園生活で当該幼児が困っている現実に対応することこそが重要です。保護者とは、当
該幼児の困難さを共有し、その対応を一緒に考える関係をつくることが重要です。
そのためには、次のような先生の姿勢が大切です。
・笑顔で挨拶をし、話しやすい雰囲気をつくる
・保護者の話をよく聞いて、受け止める
・保護者の気持ちを推測してみる
・幼児の成長を一緒に喜ぶ
しかし、先生が保護者に歩み寄ってもすれ違ってしまうこともあります。それでも
日常的な関わり(挨拶や連絡帳など)や保育参観や保護者会など、様々な機会を活用
し、協働で子育てをしようという意識を発信し続けることが欠かせません。
そして、障害のある幼児などへの支援に関して、本人やその保護者だけでなく、家
族を視野に入れた支援を充実させていくことの重要性が指摘されています。障害のあ
る幼児などであるがゆえに子育ての困難さがより大きくなったり、障害受容をめぐる
悩みがあったりして、母親だけでなく、父親や祖父母、兄弟姉妹なども視野に入れた
支援が求められています。
(第3章5.保護者との信頼関係を基盤とした子育ての支援 31 頁参照、第5章6.
保護者との連携 148 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(278ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 278ページ事例 14 障害のある幼児などの保護者が一人で抱え込んだり孤立したりしないよう
な配慮について考える
我が子が入園すると、園での催しやPTAの会等を通じて、他の幼児の保護者と
の関わりも生じます。我が子に障害があるかもしれないと不安を感じている保護者
は、他の幼児の保護者と関わることに不安を感じていることもあります。保護者が
孤立しないような配慮について考えることは、障害のある幼児などと保護者が園で
安心して過ごすためには大切なことです。
【ポイント】
●安心して保護者会等に参加できるような配慮をします。
・最初は、他の保護者等と関わるときには、日常的に接している先生が近くに控
え、当該保護者が困ったり居心地が悪そうにしていたりしたら話題を変えるな
どの配慮をしましょう。
・保護者会では、園からの連絡事項に加え、保護者同士の会話の機会を設定しま
す。その際、当該幼児の保護者が安心して参加できる他愛のないテーマから、次
第に保護者同士が子育てに関して共感できるようなテーマへと発展させるな
ど、保護者同士の関係づくりに配慮しましょう。
・他の保護者に当該幼児の状況を説明する必要があるときには、必要に応じて専
門機関と相談しましょう。
●保護者に対して園以外の専門機関や先輩の保護者等を紹介します。
・日頃から地域にある関係機関の情報を収集したり、発達障害センター等との連
携を深めたりします。
・当該幼児の将来などに不安を抱えている保護者については、先輩保護者の話を
聞くことができる機会を設定することも考えられます。
障害のある幼児などが入園すると、その保護者も他の保護者と出会うなど、その世
界が広がります。また、我が子が他の幼児と過ごす中で、他の幼児の発達と比較して
しまうこともあるかもしれません。さらに、園での活動の中で幼児同士のいざこざが
生じることもあるでしょう。園という場や機能を通して保護者が体験することに関し
て園がどこまで関与するのかは難しい問題です。保護者の気持ちは、我が子や園の先
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(279ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 279ページ生との関係のみで決まるものではありません。核家族なのか、当該幼児に兄弟姉妹が
いるのかといった家庭環境、保護者の周囲に気軽に相談できる人がいるのかといった
状況、そして、園で保護者自身が安心して過ごせているのかといったことなど、様々
なことが影響します。園での多様な場面を例に、障害のある幼児などの保護者が、園
での生活や活動にどのように参加し、他の保護者とどのように関わっていくのかにつ
いて考えてみましょう。
事例① 保護者同士の関わりのきっかけづくり~安心して保護者会等に参加できる
雰囲気をつくる~
〇入園当初 ~障害のある幼児などの保護者が緊張~
4月、自閉スペクトラム症の診断を受けたO児(3歳)が入園してきました。
入園当初、保護者は、我が子が園での生活になじめるのか心配していると考えた担
任は、こまめに連絡をとるよう心掛けていました。しかしO児の保護者は緊張してい
るのか、新しいクラスでの保護者会の場でも、自ら他の保護者に声を掛けるような様
子は見られませんでした。担任が気にして「園で楽しく過ごしていますよ」と伝えて
も「ありがとうございます」という一言だけで、目も合わせずに帰って行ってしまう
日々が続きました。担任はその様子が気になって、保育後に電話をかけてみますが、
「家でどうですか」と聞いても「大変です。まあ、仕方ないですけど」とあまり家で
のことも話してはくれません。担任に話をしても、どうせ分かってもらえないという
ような気持ちの隔たりを感じました。
〇他の保護者との関わりの場面
降園時、当該幼児を待つ間、保護者同士が自然に言葉を交わしたり談笑したりする
風景が見られるようになってきました。
ある日、O児の保護者と数人の他の保護者とが話している様子が園長の目に留まり
ました。会話の流れから、「園が終わったら、近くの〇〇公園に一緒に行こう」と誘い
を受け、返答に困っている様子でした。他の保護者は、好意をもって遊びに誘ってく
れていることは分かりましたが、今のO児の保護者にとっては、それが負担に感じる
ことになるかもしれないと思い、園長はさりげなくその会話に入り、「Qさん、〇〇先
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(280ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 280ページ生が探していたわよ。一緒に保育室に行ってみましょうか」と流れを切り替えると、
「あ、そうなんですね。じゃ、すみません」と他の保護者に挨拶して、保育室に向か
いました。園長は、保育室に向かいながら、O児の保護者の今の気持ちをさりげなく
聞いてみました。O児の保護者は、「声を掛けてくれてありがとうございます。他のお
子さんと一緒に遊ぶのはまだ心配で」とは答えてくれましたが、何が心配なのかとい
ったことはまだ言いたくないようです。
〇園からのきっかけづくり
2か月が過ぎ6月となりました。園での様子を伝える保護者会を迎えました。この
中で、担任は、保護者同士が知り合う機会をつくって、互いの育児を語り合えるよう
な場となるようにディスカッションを企画しました。皆が話しやすいようにと考えて、
「夏休みに行きたい所」をテーマにしてみました。O児の保護者は、最初はとても表
情が硬く、緊張している様子でしたが、少人数のグループに分かれて、アイスブレイ
クなどをして、楽しい雰囲気づくりをしていった中で、O児の保護者も、O児と一緒
に出かけられる場所を探して、出かけようと努力しているという話に、グループの保
護者の方が興味をもって、「ここは、行ったことある? どうだった?」など、徐々に
O児の保護者を中心に話が盛り上がってきました。O児の保護者も、質問に答えてい
るうちに時々笑顔を見せるようになり、少しリラックスした様子で帰宅しました。
その後、普段の生活の中で、O児の保護者から笑顔が以前よりも見られるようにな
りました。担任は、O児が園で楽しそうに遊んでいた様子をできるだけ具体的に伝え
るようにして、O児の得意なことやよさを認める話題を伝えていきました。
2学期に実施した保護者会でも、保護者同士のディスカッションの時間を取り入れ
ました。「自宅での育児の困難さや解決の工夫」をテーマにしてみました。O児の保護
者が話しやすいようにと考えて、予め同じグループに、家族や兄弟姉妹で障害のある
幼児などがいる保護者など、O児の保護者の気持ちを理解してもらいやすい保護者が
入るように席を用意しておきました。
育児については、皆が悩みや不安を抱えていますから、ざっくばらんな話し合いで
はいろいろな悩みが出てきました。「呼んでもちっとも振り向いてくれないので、つい
怒ってしまう」、「手を振りほどいて走ってしまうので、追いかけるのも大変」、「優し
くしようと思っているけど、ついきつく言ってしまう」など、いろいろな悩みの発言
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(281ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 281ページがありました。そのような話を聞いている中で、O児の保護者は、「聞いてくれるよう
肩を叩いて顔が向いてから声を掛けている」、「靴を脱ぎ散らかさないように自分の靴
を置く場所にマークを付けている」、「服の前後を間違って着ないように、印のボタン
を付けてみたらよかった」などの話が出て、周りの保護者からは「すごいね」、「どん
なふうに付けているの?」、「そうすればいいのか」と言われて、表情が和んできまし
た。保護者会を終えたときに、担任が声を掛けると「先生、皆いろいろ苦労している
のですね。自分だけかと思っていました」と話していました。保護者同士のつながり
の中で、O児の保護者の気持ちも少し軽くなり、担任ともO児の様子について話がで
きるようになってきました。
事例①では、日々の生活を通して園で過ごす安心感を積み重ねることの大切さが分
かります。我が子のことで精一杯な保護者にとっては、園に通園してくることへの疲
労感や、中には人と関わることへ緊張感をもっている保護者がいます。そのような疲
労感、緊張感を徐々にほぐすことができるように、普段からその保護者自身が困って
いないか、周りの保護者とほどよい距離感で関わっているかどうかを気に掛けておく
ことが大切です。
保護者会では、保護者の緊張や不安をほぐすために誰もが話しやすく、関心のある
テーマを設定して、話しやすい雰囲気をつくっています。このような雰囲気づくりは、
先生の話し方や表情、姿勢などが影響してきます。保護者によっては、「多くの園児の
中の一人なので、そんなにきちんと見ていてもらえていないのではないか」、「我が子
について、園での様子を詳しく教えてくれたり、家庭での様子を聞きたがったりする
のは、他の子よりも手がかかるからだろうか」と不安に感じたりすることもあるかも
しません。先生は、全ての幼児について、幼児一人一人の成長を支え、その子のよさ
や成長を保護者と共有したいと考えていることを伝えるようにしましょう。そのため
には、送迎時や行事、保護者会などで、折に触れて言葉や態度で示していくことが大
切です。
事例② 他の保護者からの相談をきっかけに必要な支援を検討~専門機関と連携し
て、障害のある幼児などと保護者を支える~
ある日、担任のところに、P児のことで他の保護者から相談がありました。「P児か
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(282ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 282ページら何度も叩かれたり、髪の毛をぎゅっと引っ張られたりしている」、「これからも乱暴
が続くのは心配です。先生もクラスに乱暴なお子さんがいると手がかかって大変だと
思いますが、Pちゃんのこと、しっかり見ていてほしいです」との相談、要望でした。
担任は、双方の保護者に対して、その都度状況を説明してきました。このことをす
ぐに園内で共有しました。園の話し合いでは、P児やP児の保護者、他の保護者への
対応については、これまでも丁寧に対応してきましたが、P児の行為を無理矢理にや
めさせることを考えるのではなく、今後、他にどのような支援が考えられるのか、P
児の保護者に対してどのように支援したらよいのかなどをもっと知る必要があるので
はないかという話になり、そこで、地域の発達障害センターの職員の助言を仰ぐこと
にしました。
園内で、発達障害センターの職員を招いた研修を実施し、「発達障害」について理解
を深めるとともに、様々な支援策について協議をしました。園での保護者同士の関係
が気まずくなるのは、P児の成長にとって望ましくはないため、P児の保護者が孤立
しないように園では引き続き、気に掛けていくことに加えて、P児の保護者に応じた
個別の支援を受けられるような専門的な講座があることを紹介してもらいました。
園内の先生からは、関係機関へとつなげていくことの大切さは理解していても、実
際に保護者に紹介しづらい、行政の機関には、いろいろな窓口があって、保護者が求
めている情報や相談は、どこがよいのかよく分からない、例え紹介しても合わなかっ
たらかえって不信感をもたれるのではといった懸念が挙げられました。
発達障害センターの職員から、地域の様々な福祉機関につなげることで、P児の保
護者にとって、子育ての不安が解消されたり、養育方法の助言によって保護者の気持
ちが楽になったりするなどのことを教えてもらいました。
専門家の助言を受け、P児の保護者には面談の機会を活用して、地域の発達障害セ
ンターのことを伝えようと準備をしました。実際の面談では、P児の保護者が「療育
やそういった支援の情報はどこにあるのか教えてほしい」という話題となり、実際に
専門講座や個別支援などを行っている発達障害センターのことを紹介すると、「どう
いうことをするのですか?」と興味をもった様子でした。
事例②では、他の保護者からの相談、要望をきっかけに、関係機関との連携の幅が
広がりました。これまでもP児やその保護者への支援について関係機関から助言を得
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(283ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 283ページていましたが、P児やその保護者を取り巻く人々に対して、P児の状況をどのように
理解して説明していくのか、保護者同士の関係において当該幼児の保護者が孤立しな
いためにはどうしたらよいのかなどについても話し合っています。
障害のある幼児などの保護者から、他の幼児の保護者に対して、我が子の障害につ
いて説明したいという要望があることもあります。そのような場合には、一層慎重に
検討する必要があります。他の幼児の保護者に対して、当該幼児の保護者から直接説
明するのか、障害のある幼児などの困難といった視点から専門知識を有する者から説
明するのか、どの程度の内容を説明するのかについて検討しましょう。その際、他の
幼児の保護者がどのように受け止めるかなども想定して、伝わりやすい方法を考える
必要があります。さらには、その後の幼児同士の関係などにも、先生は配慮する必要
があります。このような機会が、偏見などにつながることなく、幼児一人一人の特性
が多様であるからこそ、幼児同士が関わる中で共に育つことができると捉えられるよ
うにしましょう。
これまでの保護者同士の関係性や、園との関係性、我が子の障害についての公表の
有無なども考慮しながら、場合によっては専門家から助言を受けるなどして、担任一
人で抱え込まずに、園内で今後の対応策について十分に話し合うことが重要です。
事例③ 先輩保護者から話を聞く機会を通して~少し先の見通しをもつことで安心
感へとつなぐ~
保護者同士の関係ができて互いに認め合うことができ、園生活に少し余裕ができて
きた頃、R児の保護者から「うちの子と同じような子は今までもいたのですか?」と
の質問を受けました。
担任は、かつて同じように障害のある幼児などを育てていた保護者を思い出しまし
た。担任はその方に園で話をしてもらえれば、少し先の見通しがもてて在園児の保護
者も安心するのではないかと考え、修了して数年経っている保護者に連絡をとり、園
に来てもらうことにしました。
先輩保護者のWさんは、R児の保護者に当時の気持ちを振り返り、話してくれまし
た。
Wさんは、「こどもが小さいうちは、障害を認めるのが嫌で、うちの子はできる、う
ちの子は変わった子ではないと思っていました。でも、年月が経つとそんなに気を張
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(284ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 284ページって子育てしなくてもよかったと分かるんです。園の頃が一番つらくて、他の子と比
較してばかりいました。でも、小学校中学年くらいになるとこどもの得手不得手がよ
く分かってきて、無理に頑張らせてもこの子が苦しいんだと分かってきたんです」と
我が子は今のままではなく、必ず成長していくものであることを語ってくれました。
その他、小学校に入学した後の様子や、小学校での行事への取組などのことも詳し
く教えてくれました。さらに、他の先輩保護者もご紹介いただき、様々な先輩の話を
聞くこともできました。保護者の中には、兄弟姉妹二人に障害があってそれぞれのこ
どもに対応している時間も長ければ兄弟姉妹でのけんかも多くて困っていたと語る保
護者や、下のこどもに障害があり上のこどもと向き合う時間がなかなかとれないと語
る保護者もいました。先輩の話の中で、R児の保護者が印象に残ったのは、「障害を理
解することは大切だけれど、焦らず、『我が子』と向き合って一緒に生活していく中で、
『我が子』の特性を徐々に理解していければよい」、「兄弟姉妹がいるときは、障害の
有無にかかわらず、その子だけと向き合う時間を意図的につくるといった配慮が必要」、
「親だって悩むし不安。その不安を一人で抱え込まないように、周囲の人に相談した
り、自分の息抜きの時間を意識的につくったりする」といったことでした。また、保
護者は、皆それぞれに子育てや将来のことに悩みや不安を抱えながらも、園の先生だ
けでなく、多方面にわたり、誰かに話を聞いてもらったり手伝ってもらったりして、
一人ではないということに勇気づけられた様子でした。
事例③では、園が、同じような経験のある先輩の保護者から直接話を聞く場を設け
ることによって、R児の保護者は安心感や少し先の見通しをもつことができました。
同じような過程を経験している先輩の保護者だからこそ、より身近な存在として、
R児の保護者が何に困っているのか、何に不安を感じているのかを理解し、共感し合
える存在となりました。
保護者が迷いや不安を繰り返しながらも、我が子に前向きに関わっていけるように
なるためには、それを励ましてくれる人の存在が大切です。園の先生自身も保護者の
温かい理解者であることを心掛けながらも、同じような過程を歩んでいる保護者との
触れ合いもまた重要です。
話を聞いたり、悩みを打ち明けたりすることにより、不安になるのは自分だけでは
ない、今の状態がずっと続くものではないと、次第に不安が軽減され、自分自身の関
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(285ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 285ページわり方を振り返り、自分の進むべき方向が見えてきます。
同じクラスの保護者でも、既に何人かのこどもを育てている経験の豊富な保護者も
いれば、初めてのこどもで不安を抱えて育てている保護者もいます。また、子育ての
ことについて身近に相談のできる人がいる家庭もあれば、そういう人がいない家庭も
あります。このような様々な保護者が互いに悩みを打ち明けたり、相談相手になった
りできるように、園で関係づくりや場づくりを進めていくことがとても重要です。
事例から読み取れること
幼児一人一人が異なるように、保護者も一人一人異なります。他の保護者に積極的
に話し掛ける保護者もいれば、話し掛ければ楽しそうに話すけれど自分からはなかな
か話し掛けることができない保護者もいることでしょう。また、配偶者が近くにいな
い家庭もあれば、自身の両親と同居している保護者もいます。園に入園してきた障害
のある幼児などが一人っ子の場合もあれば、下や上に兄弟姉妹がいる場合もあります。
保護者の個性、保護者を取り巻く環境などによって、障害のある幼児などの発達の受
け止め方や我が子をきっかけとして知り合った先生や他の保護者との関わり方も異な
ることでしょう。
園では、送迎、保護者会、園の行事などを通して、保護者同士が関わる場面も多く
あります。そうした関わりの中で、保護者同士が子育ての喜びや悩みを共感したり共
有したり、あるいは趣味などの他愛のない会話でリフレッシュしたりすることもあり
ます。しかし、我が子に障害があるかもしれないと思っている保護者は、他の保護者
との関わりを避けたり、他の保護者からの視線や言動が過剰に気になったり、幼児同
士のいざこざがあった場合でも過剰に引け目を感じたりすることがあるかもしれませ
ん。もちろん、保護者同士の関係などについては、園が立ち入るべきではないことも
あります。しかし、保護者の気持ちの安定は障害のある幼児などの成長にとってとて
も大切なことです。保護者が、園での活動等に関して不安感や孤立感を感じたりする
ことのないように配慮することは大切です。
そして、保護者の気持ちや要望等に沿って、例えば、先輩の保護者の話を聞く機会
や我が子の障害の状態等について他の保護者に話す機会を設けることも考えられます。
しかし、このような活動は、保護者が希望しているからといってすぐに行うことは適
切ではありません。慎重な検討なくして設定したそのような機会は、保護者の気持ち
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(286ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 286ページや保護者を取り巻く環境をよい方向に変えるとは限りません。先輩の保護者の話を聞
くことによって希望をもてたり前向きな気持ちになったりするといった保護者がいる
一方で、先輩の保護者と自分を比較して落ち込んだり、他の保護者の視線や言動を一
層気にしたりする保護者がいる可能性もあります。他の保護者に話す機会を設ける場
合などには、関係機関に話す内容などを相談することも考えられます。関係機関との
連携に当たっては、個人情報に関して保護者の承諾を得ることが大切です。そして、
こうしたときに速やかに連携していくためには、日頃から、地域の関係機関について
調べたり、園内研修の講師として協力を依頼したりすることが大切です。保護者の置
かれた状況や背景などは様々であり、保護者の捉え方も様々です。そのことを十分に
留意して、関係機関とも連携しながら、園全体でどのように支援をしていくことがよ
いのか十分に協議することが重要です。
特に、関係機関との連携は、家庭、園、福祉機関や医療機関が連携して幼児の育ち
を考えていくことにつながります。さらに、関係機関を活用することにより、園と家
庭の生活の連続性を踏まえた支援が充実したり、小学校やその先の生活までの一貫し
た支援が一層充実したりします。
(第3章5.保護者との信頼関係を基盤とした子育ての支援 31 頁参照、第5章6.
保護者との連携 148 頁参照)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(288ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 288ページ参考資料
1 幼稚園教育要領
2 幼保連携型認定こども園教育・保育要領、保育所保育指針に関係する内容
(抜粋)
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(289ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 289ページ1 幼稚園教育要領
○文部科学省告示第六十二号
学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)第三十八条の規定に基づき、幼稚園教
育要領(平成二十年文部科学省告示第二十六号)の全部を次のように改正し、平成三十年四月一
日から施行する。
平成二十九年三月三十一日
文部科学大臣 松野 博一
幼稚園教育要領
目次
前文
第1章 総則
第1 幼稚園教育の基本
第2 幼稚園教育において育みたい資質・能力及び「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」
第3 教育課程の役割と編成等
第4 指導計画の作成と幼児理解に基づいた評価
第5 特別な配慮を必要とする幼児への指導
第6 幼稚園運営上の留意事項
第7 教育課程に係る教育時間終了後等に行う教育活動など
第2章 ねらい及び内容
健康
人間関係
環境
言葉
表現
第3章 教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動などの留意事項
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(290ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 290ページ教育は、教育基本法第1条に定めるとおり、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社
会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期すという目的のもと、同
法第2条に掲げる次の目標を達成するよう行われなければならない。
1 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとと
もに、健やかな身体を養うこと。
2 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うと
ともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
3 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、
主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
4 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
5 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊
重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
また、幼児期の教育については、同法第 11 条に掲げるとおり、生涯にわたる人格形成の基礎を
培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良
好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならないこととされている。
これからの幼稚園には、学校教育の始まりとして、こうした教育の目的及び目標の達成を目指
しつつ、一人一人の幼児が、将来、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価
値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人
生を切り拓
ひら
き、持続可能な社会の創り手となることができるようにするための基礎を培うことが
求められる。このために必要な教育の在り方を具体化するのが、各幼稚園において教育の内容等
を組織的かつ計画的に組み立てた教育課程である。
教育課程を通して、これからの時代に求められる教育を実現していくためには、よりよい学校
教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有し、それぞれの幼稚園におい
て、幼児期にふさわしい生活をどのように展開し、どのような資質・能力を育むようにするのか
を教育課程において明確にしながら、社会との連携及び協働によりその実現を図っていくという、
社会に開かれた教育課程の実現が重要となる。
幼稚園教育要領とは、こうした理念の実現に向けて必要となる教育課程の基準を大綱的に定め
るものである。幼稚園教育要領が果たす役割の一つは、公の性質を有する幼稚園における教育水
準を全国的に確保することである。また、各幼稚園がその特色を生かして創意工夫を重ね、長年
にわたり積み重ねられてきた教育実践や学術研究の蓄積を生かしながら、幼児や地域の現状や課
題を捉え、家庭や地域社会と協力して、幼稚園教育要領を踏まえた教育活動の更なる充実を図っ
ていくことも重要である。
幼児の自発的な活動としての遊びを生み出すために必要な環境を整え、一人一人の資質・能力
を育んでいくことは、教職員をはじめとする幼稚園関係者はもとより、家庭や地域の人々も含め、
様々な立場から幼児や幼稚園に関わる全ての大人に期待される役割である。家庭との緊密な連携
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(291ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 291ページの下、小学校以降の教育や生涯にわたる学習とのつながりを見通しながら、幼児の自発的な活動
としての遊びを通しての総合的な指導をする際に広く活用されるものとなることを期待して、こ
こに幼稚園教育要領を定める。
第1章 総則
第1 幼稚園教育の基本
幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、幼稚園教育は、学校
教育法に規定する目的及び目標を達成するため、幼児期の特性を踏まえ、環境を通して行うもの
であることを基本とする。
このため教師は、幼児との信頼関係を十分に築き、幼児が身近な環境に主体的に関わり、環境
との関わり方や意味に気付き、これらを取り込もうとして、試行錯誤したり、考えたりするよう
になる幼児期の教育における見方・考え方を生かし、幼児と共によりよい教育環境を創造するよ
うに努めるものとする。これらを踏まえ、次に示す事項を重視して教育を行わなければならない。
1 幼児は安定した情緒の下で自己を十分に発揮することにより発達に必要な体験を得ていく
ものであることを考慮して、幼児の主体的な活動を促し、幼児期にふさわしい生活が展開さ
れるようにすること。
2 幼児の自発的な活動としての遊びは、心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習で
あることを考慮して、遊びを通しての指導を中心として第2章に示すねらいが総合的に達成
されるようにすること。
3 幼児の発達は、心身の諸側面が相互に関連し合い、多様な経過をたどって成し遂げられて
いくものであること、また、幼児の生活経験がそれぞれ異なることなどを考慮して、幼児一人
一人の特性に応じ、発達の課題に即した指導を行うようにすること。
その際、教師は、幼児の主体的な活動が確保されるよう幼児一人一人の行動の理解と予想に基
づき、計画的に環境を構成しなければならない。この場合において、教師は、幼児と人やものとの
関わりが重要であることを踏まえ、教材を工夫し、物的・空間的環境を構成しなければならない。
また、幼児一人一人の活動の場面に応じて、様々な役割を果たし、その活動を豊かにしなければ
ならない。
第2 幼稚園教育において育みたい資質・能力及び「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」
1 幼稚園においては、生きる力の基礎を育むため、この章の第1に示す幼稚園教育の基本を
踏まえ、次に掲げる資質・能力を一体的に育むよう努めるものとする。
(1) 豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする
「知識及び技能の基礎」
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(292ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 292ページ(2) 気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫した
り、表現したりする「思考力、判断力、表現力等の基礎」
(3) 心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性
等」
2 1に示す資質・能力は、第2章に示すねらい及び内容に基づく活動全体によって育むもの
である。
3 次に示す「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は、第2章に示すねらい及び内容に基づ
く活動全体を通して資質・能力が育まれている幼児の幼稚園修了時の具体的な姿であり、教
師が指導を行う際に考慮するものである。
(1) 健康な心と体
幼稚園生活の中で、充実感をもって自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働か
せ、見通しをもって行動し、自ら健康で安全な生活をつくり出すようになる。
(2) 自立心
身近な環境に主体的に関わり様々な活動を楽しむ中で、しなければならないことを自覚
し、自分の力で行うために考えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成
感を味わい、自信をもって行動するようになる。
(3) 協同性
友達と関わる中で、互いの思いや考えなどを共有し、共通の目的の実現に向けて、考え
たり、工夫したり、協力したりし、充実感をもってやり遂げるようになる。
(4) 道徳性・規範意識の芽生え
友達と様々な体験を重ねる中で、してよいことや悪いことが分かり、自分の行動を振り
返ったり、友達の気持ちに共感したりし、相手の立場に立って行動するようになる。また、
きまりを守る必要性が分かり、自分の気持ちを調整し、友達と折り合いを付けながら、きま
りをつくったり、守ったりするようになる。
(5) 社会生活との関わり
家族を大切にしようとする気持ちをもつとともに、地域の身近な人と触れ合う中で、人
との様々な関わり方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じ、
地域に親しみをもつようになる。また、幼稚園内外の様々な環境に関わる中で、遊びや生活
に必要な情報を取り入れ、情報に基づき判断したり、情報を伝え合ったり、活用したりする
など、情報を役立てながら活動するようになるとともに、公共の施設を大切に利用するな
どして、社会とのつながりなどを意識するようになる。
(6) 思考力の芽生え
身近な事象に積極的に関わる中で、物の性質や仕組みなどを感じ取ったり、気付いたり
し、考えたり、予想したり、工夫したりするなど、多様な関わりを楽しむようになる。ま
た、友達の様々な考えに触れる中で、自分と異なる考えがあることに気付き、自ら判断した
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(293ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 293ページり、考え直したりするなど、新しい考えを生み出す喜びを味わいながら、自分の考えをより
よいものにするようになる。
(7) 自然との関わり・生命尊重
自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、好奇心や探究心をも
って考え言葉などで表現しながら、身近な事象への関心が高まるとともに、自然への愛情
や畏敬の念をもつようになる。また、身近な動植物に心を動かされる中で、生命の不思議さ
や尊さに気付き、身近な動植物への接し方を考え、命あるものとしていたわり、大切にする
気持ちをもって関わるようになる。
(8) 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字
の役割に気付いたりし、自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚をもつよ
うになる。
(9) 言葉による伝え合い
先生や友達と心を通わせる中で、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を
身に付け、経験したことや考えたことなどを言葉で伝えたり、相手の話を注意して聞いた
りし、言葉による伝え合いを楽しむようになる。
(10) 豊かな感性と表現
心を動かす出来事などに触れ感性を働かせる中で、様々な素材の特徴や表現の仕方など
に気付き、感じたことや考えたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽し
んだりし、表現する喜びを味わい、意欲をもつようになる。
第3 教育課程の役割と編成等
1 教育課程の役割
各幼稚園においては、教育基本法及び学校教育法その他の法令並びにこの幼稚園教育要領
の示すところに従い、創意工夫を生かし、幼児の心身の発達と幼稚園及び地域の実態に即応
した適切な教育課程を編成するものとする。
また、各幼稚園においては、6に示す全体的な計画にも留意しながら、「幼児期の終わりま
でに育ってほしい姿」を踏まえ教育課程を編成すること、教育課程の実施状況を評価してそ
の改善を図っていくこと、教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともに
その改善を図っていくことなどを通して、教育課程に基づき組織的かつ計画的に各幼稚園の
教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリキュラム・マネジメント」という。)に努
めるものとする。
2 各幼稚園の教育目標と教育課程の編成
教育課程の編成に当たっては、幼稚園教育において育みたい資質・能力を踏まえつつ、各
幼稚園の教育目標を明確にするとともに、教育課程の編成についての基本的な方針が家庭や
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(294ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 294ページ地域とも共有されるよう努めるものとする。
3 教育課程の編成上の基本的事項
(1) 幼稚園生活の全体を通して第2章に示すねらいが総合的に達成されるよう、教育課程に
係る教育期間や幼児の生活経験や発達の過程などを考慮して具体的なねらいと内容を組織
するものとする。この場合においては、特に、自我が芽生え、他者の存在を意識し、自己を
抑制しようとする気持ちが生まれる幼児期の発達の特性を踏まえ、入園から修了に至るま
での長期的な視野をもって充実した生活が展開できるように配慮するものとする。
(2) 幼稚園の毎学年の教育課程に係る教育週数は、特別の事情のある場合を除き、39 週を下
ってはならない。
(3) 幼稚園の1日の教育課程に係る教育時間は、4時間を標準とする。ただし、幼児の心身
の発達の程度や季節などに適切に配慮するものとする。
4 教育課程の編成上の留意事項
教育課程の編成に当たっては、次の事項に留意するものとする。
(1) 幼児の生活は、入園当初の一人一人の遊びや教師との触れ合いを通して幼稚園生活に親
しみ、安定していく時期から、他の幼児との関わりの中で幼児の主体的な活動が深まり、幼
児が互いに必要な存在であることを認識するようになり、やがて幼児同士や学級全体で目
的をもって協同して幼稚園生活を展開し、深めていく時期などに至るまでの過程を様々に
経ながら広げられていくものであることを考慮し、活動がそれぞれの時期にふさわしく展
開されるようにすること。
(2) 入園当初、特に、3歳児の入園については、家庭との連携を緊密にし、生活のリズムや
安全面に十分配慮すること。また、満3歳児については、学年の途中から入園することを考
慮し、幼児が安心して幼稚園生活を過ごすことができるよう配慮すること。
(3) 幼稚園生活が幼児にとって安全なものとなるよう、教職員による協力体制の下、幼児の
主体的な活動を大切にしつつ、園庭や園舎などの環境の配慮や指導の工夫を行うこと。
5 小学校教育との接続に当たっての留意事項
(1) 幼稚園においては、幼稚園教育が、小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながるこ
とに配慮し、幼児期にふさわしい生活を通して、創造的な思考や主体的な生活態度などの
基礎を培うようにするものとする。
(2) 幼稚園教育において育まれた資質・能力を踏まえ、小学校教育が円滑に行われるよう、
小学校の教師との意見交換や合同の研究の機会などを設け、「幼児期の終わりまでに育っ
てほしい姿」を共有するなど連携を図り、幼稚園教育と小学校教育との円滑な接続を図る
よう努めるものとする。
6 全体的な計画の作成
各幼稚園においては、教育課程を中心に、第3章に示す教育課程に係る教育時間の終了後
等に行う教育活動の計画、学校保健計画、学校安全計画などとを関連させ、一体的に教育活
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(295ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 295ページ動が展開されるよう全体的な計画を作成するものとする。
第4 指導計画の作成と幼児理解に基づいた評価
1 指導計画の考え方
幼稚園教育は、幼児が自ら意欲をもって環境と関わることによりつくり出される具体的な
活動を通して、その目標の達成を図るものである。
幼稚園においてはこのことを踏まえ、幼児期にふさわしい生活が展開され、適切な指導が
行われるよう、それぞれの幼稚園の教育課程に基づき、調和のとれた組織的、発展的な指導
計画を作成し、幼児の活動に沿った柔軟な指導を行わなければならない。
2 指導計画の作成上の基本的事項
(1) 指導計画は、幼児の発達に即して一人一人の幼児が幼児期にふさわしい生活を展開し、
必要な体験を得られるようにするために、具体的に作成するものとする。
(2) 指導計画の作成に当たっては、次に示すところにより、具体的なねらい及び内容を明確
に設定し、適切な環境を構成することなどにより活動が選択・展開されるようにするもの
とする。
ア 具体的なねらい及び内容は、幼稚園生活における幼児の発達の過程を見通し、幼児の
生活の連続性、季節の変化などを考慮して、幼児の興味や関心、発達の実情などに応じ
て設定すること。
イ 環境は、具体的なねらいを達成するために適切なものとなるように構成し、幼児が自
らその環境に関わることにより様々な活動を展開しつつ必要な体験を得られるようにす
ること。その際、幼児の生活する姿や発想を大切にし、常にその環境が適切なものとなる
ようにすること。
ウ 幼児の行う具体的な活動は、生活の流れの中で様々に変化するものであることに留意
し、幼児が望ましい方向に向かって自ら活動を展開していくことができるよう必要な援
助をすること。
その際、幼児の実態及び幼児を取り巻く状況の変化などに即して指導の過程についての
評価を適切に行い、常に指導計画の改善を図るものとする。
3 指導計画の作成上の留意事項
指導計画の作成に当たっては、次の事項に留意するものとする。
(1) 長期的に発達を見通した年、学期、月などにわたる長期の指導計画やこれとの関連を保
ちながらより具体的な幼児の生活に即した週、日などの短期の指導計画を作成し、適切な
指導が行われるようにすること。特に、週、日などの短期の指導計画については、幼児の生
活のリズムに配慮し、幼児の意識や興味の連続性のある活動が相互に関連して幼稚園生活
の自然な流れの中に組み込まれるようにすること。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(296ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 296ページ(2) 幼児が様々な人やものとの関わりを通して、多様な体験をし、心身の調和のとれた発達
を促すようにしていくこと。その際、幼児の発達に即して主体的・対話的で深い学びが実現
するようにするとともに、心を動かされる体験が次の活動を生み出すことを考慮し、一つ
一つの体験が相互に結び付き、幼稚園生活が充実するようにすること。
(3) 言語に関する能力の発達と思考力等の発達が関連していることを踏まえ、幼稚園生活全
体を通して、幼児の発達を踏まえた言語環境を整え、言語活動の充実を図ること。
(4) 幼児が次の活動への期待や意欲をもつことができるよう、幼児の実態を踏まえながら、
教師や他の幼児と共に遊びや生活の中で見通しをもったり、振り返ったりするよう工夫す
ること。
(5) 行事の指導に当たっては、幼稚園生活の自然の流れの中で生活に変化や潤いを与え、幼
児が主体的に楽しく活動できるようにすること。なお、それぞれの行事についてはその教育
的価値を十分検討し、適切なものを精選し、幼児の負担にならないようにすること。
(6) 幼児期は直接的な体験が重要であることを踏まえ、視聴覚教材やコンピュータなど情報
機器を活用する際には、幼稚園生活では得難い体験を補完するなど、幼児の体験との関連
を考慮すること。
(7) 幼児の主体的な活動を促すためには、教師が多様な関わりをもつことが重要であること
を踏まえ、教師は、理解者、共同作業者など様々な役割を果たし、幼児の発達に必要な豊か
な体験が得られるよう、活動の場面に応じて、適切な指導を行うようにすること。
(8) 幼児の行う活動は、個人、グループ、学級全体などで多様に展開されるものであること
を踏まえ、幼稚園全体の教師による協力体制を作りながら、一人一人の幼児が興味や欲求
を十分に満足させるよう適切な援助を行うようにすること。
4 幼児理解に基づいた評価の実施
幼児一人一人の発達の理解に基づいた評価の実施に当たっては、次の事項に配慮するもの
とする。
(1) 指導の過程を振り返りながら幼児の理解を進め、幼児一人一人のよさや可能性などを把
握し、指導の改善に生かすようにすること。その際、他の幼児との比較や一定の基準に対す
る達成度についての評定によって捉えるものではないことに留意すること。
(2) 評価の妥当性や信頼性が高められるよう創意工夫を行い、組織的かつ計画的な取組を推
進するとともに、次年度又は小学校等にその内容が適切に引き継がれるようにすること。
第5 特別な配慮を必要とする幼児への指導
1 障害のある幼児などへの指導
障害のある幼児などへの指導に当たっては、集団の中で生活することを通して全体的な発
達を促していくことに配慮し、特別支援学校などの助言又は援助を活用しつつ、個々の幼児
の障害の状態などに応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(297ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 297ページまた、家庭、地域及び医療や福祉、保健等の業務を行う関係機関との連携を図り、長期的な
視点で幼児への教育的支援を行うために、個別の教育支援計画を作成し活用することに努め
るとともに、個々の幼児の実態を的確に把握し、個別の指導計画を作成し活用することに努
めるものとする。
2 海外から帰国した幼児や生活に必要な日本語の習得に困難のある幼児の幼稚園生活への適
応
海外から帰国した幼児や生活に必要な日本語の習得に困難のある幼児については、安心し
て自己を発揮できるよう配慮するなど個々の幼児の実態に応じ、指導内容や指導方法の工夫
を組織的かつ計画的に行うものとする。
第6 幼稚園運営上の留意事項
1 各幼稚園においては、園長の方針の下に、園務分掌に基づき教職員が適切に役割を分担し
つつ、相互に連携しながら、教育課程や指導の改善を図るものとする。また、各幼稚園が行う
学校評価については、教育課程の編成、実施、改善が教育活動や幼稚園運営の中核となるこ
とを踏まえ、カリキュラム・マネジメントと関連付けながら実施するよう留意するものとす
る。
2 幼児の生活は、家庭を基盤として地域社会を通じて次第に広がりをもつものであることに
留意し、家庭との連携を十分に図るなど、幼稚園における生活が家庭や地域社会と連続性を
保ちつつ展開されるようにするものとする。その際、地域の自然、高齢者や異年齢の子供など
を含む人材、行事や公共施設などの地域の資源を積極的に活用し、幼児が豊かな生活体験を
得られるように工夫するものとする。また、家庭との連携に当たっては、保護者との情報交換
の機会を設けたり、保護者と幼児との活動の機会を設けたりなどすることを通じて、保護者
の幼児期の教育に関する理解が深まるよう配慮するものとする。
3 地域や幼稚園の実態等により、幼稚園間に加え、保育所、幼保連携型認定こども園、小学
校、中学校、高等学校及び特別支援学校などとの間の連携や交流を図るものとする。特に、幼
稚園教育と小学校教育の円滑な接続のため、幼稚園の幼児と小学校の児童との交流の機会を
積極的に設けるようにするものとする。また、障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学
習の機会を設け、共に尊重し合いながら協働して生活していく態度を育むよう努めるものと
する。
第7 教育課程に係る教育時間終了後等に行う教育活動など
幼稚園は、第3章に示す教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動について、学校
教育法に規定する目的及び目標並びにこの章の第1に示す幼稚園教育の基本を踏まえ実施する
ものとする。また、幼稚園の目的の達成に資するため、幼児の生活全体が豊かなものとなるよう
家庭や地域における幼児期の教育の支援に努めるものとする。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(298ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 298ページ第2章 ねらい及び内容
この章に示すねらいは、幼稚園教育において育みたい資質・能力を幼児の生活する姿から捉え
たものであり、内容は、ねらいを達成するために指導する事項である。各領域は、これらを幼児の
発達の側面から、心身の健康に関する領域「健康」、人との関わりに関する領域「人間関係」、身
近な環境との関わりに関する領域「環境」、言葉の獲得に関する領域「言葉」及び感性と表現に関
する領域「表現」としてまとめ、示したものである。内容の取扱いは、幼児の発達を踏まえた指導
を行うに当たって留意すべき事項である。
各領域に示すねらいは、幼稚園における生活の全体を通じ、幼児が様々な体験を積み重ねる中
で相互に関連をもちながら次第に達成に向かうものであること、内容は、幼児が環境に関わって
展開する具体的な活動を通して総合的に指導されるものであることに留意しなければならない。
また、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が、ねらい及び内容に基づく活動全体を通して
資質・能力が育まれている幼児の幼稚園修了時の具体的な姿であることを踏まえ、指導を行う際
に考慮するものとする。
なお、特に必要な場合には、各領域に示すねらいの趣旨に基づいて適切な、具体的な内容を工
夫し、それを加えても差し支えないが、その場合には、それが第1章の第1に示す幼稚園教育の
基本を逸脱しないよう慎重に配慮する必要がある。
健康
〔健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。〕
1 ねらい
(1) 明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。
(2) 自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。
(3) 健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、見通しをもって行動する。
2 内容
(1) 先生や友達と触れ合い、安定感をもって行動する。
(2) いろいろな遊びの中で十分に体を動かす。
(3) 進んで戸外で遊ぶ。
(4) 様々な活動に親しみ、楽しんで取り組む。
(5) 先生や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ。
(6) 健康な生活のリズムを身に付ける。
(7) 身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄
せつ
などの生活に必要な活動を自分でする。
(8) 幼稚園における生活の仕方を知り、自分たちで生活の場を整えながら見通しをもって行動
する。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(299ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 299ページ(9) 自分の健康に関心をもち、病気の予防などに必要な活動を進んで行う。
(10) 危険な場所、危険な遊び方、災害時などの行動の仕方が分かり、安全に気を付けて行動す
る。
3 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
(1) 心と体の健康は、相互に密接な関連があるものであることを踏まえ、幼児が教師や他の幼
児との温かい触れ合いの中で自己の存在感や充実感を味わうことなどを基盤として、しなや
かな心と体の発達を促すこと。特に、十分に体を動かす気持ちよさを体験し、自ら体を動か
そうとする意欲が育つようにすること。
(2) 様々な遊びの中で、幼児が興味や関心、能力に応じて全身を使って活動することにより、
体を動かす楽しさを味わい、自分の体を大切にしようとする気持ちが育つようにすること。
その際、多様な動きを経験する中で、体の動きを調整するようにすること。
(3) 自然の中で伸び伸びと体を動かして遊ぶことにより、体の諸機能の発達が促されることに
留意し、幼児の興味や関心が戸外にも向くようにすること。その際、幼児の動線に配慮した
園庭や遊具の配置などを工夫すること。
(4) 健康な心と体を育てるためには食育を通じた望ましい食習慣の形成が大切であることを踏
まえ、幼児の食生活の実情に配慮し、和やかな雰囲気の中で教師や他の幼児と食べる喜びや
楽しさを味わったり、様々な食べ物への興味や関心をもったりするなどし、食の大切さに気
付き、進んで食べようとする気持ちが育つようにすること。
(5) 基本的な生活習慣の形成に当たっては、家庭での生活経験に配慮し、幼児の自立心を育て、
幼児が他の幼児と関わりながら主体的な活動を展開する中で、生活に必要な習慣を身に付け、
次第に見通しをもって行動できるようにすること。
(6) 安全に関する指導に当たっては、情緒の安定を図り、遊びを通して安全についての構えを
身に付け、危険な場所や事物などが分かり、安全についての理解を深めるようにすること。
また、交通安全の習慣を身に付けるようにするとともに、避難訓練などを通して、災害など
の緊急時に適切な行動がとれるようにすること。
人 間 関 係
〔他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養う。〕
1 ねらい
(1) 幼稚園生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。
(2) 身近な人と親しみ、関わりを深め、工夫したり、協力したりして一緒に活動する楽しさを
味わい、愛情や信頼感をもつ。
(3) 社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(300ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 300ページ2 内容
(1) 先生や友達と共に過ごすことの喜びを味わう。
(2) 自分で考え、自分で行動する。
(3) 自分でできることは自分でする。
(4) いろいろな遊びを楽しみながら物事をやり遂げようとする気持ちをもつ。
(5) 友達と積極的に関わりながら喜びや悲しみを共感し合う。
(6) 自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気付く。
(7) 友達のよさに気付き、一緒に活動する楽しさを味わう。
(8) 友達と楽しく活動する中で、共通の目的を見いだし、工夫したり、協力したりなどする。
(9) よいことや悪いことがあることに気付き、考えながら行動する。
(10) 友達との関わりを深め、思いやりをもつ。
(11) 友達と楽しく生活する中できまりの大切さに気付き、守ろうとする。
(12) 共同の遊具や用具を大切にし、皆で使う。
(13) 高齢者をはじめ地域の人々などの自分の生活に関係の深いいろいろな人に親しみをもつ。
3 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
(1) 教師との信頼関係に支えられて自分自身の生活を確立していくことが人と関わる基盤とな
ることを考慮し、幼児が自ら周囲に働き掛けることにより多様な感情を体験し、試行錯誤し
ながら諦めずにやり遂げることの達成感や、前向きな見通しをもって自分の力で行うことの
充実感を味わうことができるよう、幼児の行動を見守りながら適切な援助を行うようにする
こと。
(2) 一人一人を生かした集団を形成しながら人と関わる力を育てていくようにすること。その
際、集団の生活の中で、幼児が自己を発揮し、教師や他の幼児に認められる体験をし、自分
のよさや特徴に気付き、自信をもって行動できるようにすること。
(3) 幼児が互いに関わりを深め、協同して遊ぶようになるため、自ら行動する力を育てるよう
にするとともに、他の幼児と試行錯誤しながら活動を展開する楽しさや共通の目的が実現す
る喜びを味わうことができるようにすること。
(4) 道徳性の芽生えを培うに当たっては、基本的な生活習慣の形成を図るとともに、幼児が他
の幼児との関わりの中で他人の存在に気付き、相手を尊重する気持ちをもって行動できるよ
うにし、また、自然や身近な動植物に親しむことなどを通して豊かな心情が育つようにする
こと。特に、人に対する信頼感や思いやりの気持ちは、葛藤やつまずきをも体験し、それらを
乗り越えることにより次第に芽生えてくることに配慮すること。
(5) 集団の生活を通して、幼児が人との関わりを深め、規範意識の芽生えが培われることを考
慮し、幼児が教師との信頼関係に支えられて自己を発揮する中で、互いに思いを主張し、折
り合いを付ける体験をし、きまりの必要性などに気付き、自分の気持ちを調整する力が育つ
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(301ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 301ページようにすること。
(6) 高齢者をはじめ地域の人々などの自分の生活に関係の深いいろいろな人と触れ合い、自分
の感情や意志を表現しながら共に楽しみ、共感し合う体験を通して、これらの人々などに親
しみをもち、人と関わることの楽しさや人の役に立つ喜びを味わうことができるようにする
こと。また、生活を通して親や祖父母などの家族の愛情に気付き、家族を大切にしようとす
る気持ちが育つようにすること。
環境
〔周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもって関わり、それらを生活に取り入れていこうとす
る力を養う。〕
1 ねらい
(1) 身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で様々な事象に興味や関心をもつ。
(2) 身近な環境に自分から関わり、発見を楽しんだり、考えたりし、それを生活に取り入れよ
うとする。
(3) 身近な事象を見たり、考えたり、扱ったりする中で、物の性質や数量、文字などに対する
感覚を豊かにする。
2 内容
(1) 自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く。
(2) 生活の中で、様々な物に触れ、その性質や仕組みに興味や関心をもつ。
(3) 季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く。
(4) 自然などの身近な事象に関心をもち、取り入れて遊ぶ。
(5) 身近な動植物に親しみをもって接し、生命の尊さに気付き、いたわったり、大切にしたり
する。
(6) 日常生活の中で、我が国や地域社会における様々な文化や伝統に親しむ。
(7) 身近な物を大切にする。
(8) 身近な物や遊具に興味をもって関わり、自分なりに比べたり、関連付けたりしながら考え
たり、試したりして工夫して遊ぶ。
(9) 日常生活の中で数量や図形などに関心をもつ。
(10) 日常生活の中で簡単な標識や文字などに関心をもつ。
(11) 生活に関係の深い情報や施設などに興味や関心をもつ。
(12) 幼稚園内外の行事において国旗に親しむ。
3 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
(1) 幼児が、遊びの中で周囲の環境と関わり、次第に周囲の世界に好奇心を抱き、その意味や
操作の仕方に関心をもち、物事の法則性に気付き、自分なりに考えることができるようにな
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(302ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 302ページる過程を大切にすること。また、他の幼児の考えなどに触れて新しい考えを生み出す喜びや
楽しさを味わい、自分の考えをよりよいものにしようとする気持ちが育つようにすること。
(2) 幼児期において自然のもつ意味は大きく、自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに直接触
れる体験を通して、幼児の心が安らぎ、豊かな感情、好奇心、思考力、表現力の基礎が培わ
れることを踏まえ、幼児が自然との関わりを深めることができるよう工夫すること。
(3) 身近な事象や動植物に対する感動を伝え合い、共感し合うことなどを通して自分から関わ
ろうとする意欲を育てるとともに、様々な関わり方を通してそれらに対する親しみや畏敬の
念、生命を大切にする気持ち、公共心、探究心などが養われるようにすること。
(4) 文化や伝統に親しむ際には、正月や節句など我が国の伝統的な行事、国歌、唱歌、わらべ
うたや我が国の伝統的な遊びに親しんだり、異なる文化に触れる活動に親しんだりすること
を通じて、社会とのつながりの意識や国際理解の意識の芽生えなどが養われるようにするこ
と。
(5) 数量や文字などに関しては、日常生活の中で幼児自身の必要感に基づく体験を大切にし、
数量や文字などに関する興味や関心、感覚が養われるようにすること。
言葉
〔経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意
欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う。〕
1 ねらい
(1) 自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。
(2) 人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを
味わう。
(3) 日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに、絵本や物語などに親しみ、言葉に対
する感覚を豊かにし、先生や友達と心を通わせる。
2 内容
(1) 先生や友達の言葉や話に興味や関心をもち、親しみをもって聞いたり、話したりする。
(2) したり、見たり、聞いたり、感じたり、考えたりなどしたことを自分なりに言葉で表現す
る。
(3) したいこと、してほしいことを言葉で表現したり、分からないことを尋ねたりする。
(4) 人の話を注意して聞き、相手に分かるように話す。
(5) 生活の中で必要な言葉が分かり、使う。
(6) 親しみをもって日常の挨拶をする。
(7) 生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付く。
(8) いろいろな体験を通じてイメージや言葉を豊かにする。
(9) 絵本や物語などに親しみ、興味をもって聞き、想像をする楽しさを味わう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(303ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 303ページ(10) 日常生活の中で、文字などで伝える楽しさを味わう。
3 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
(1) 言葉は、身近な人に親しみをもって接し、自分の感情や意志などを伝え、それに相手が応
答し、その言葉を聞くことを通して次第に獲得されていくものであることを考慮して、幼児
が教師や他の幼児と関わることにより心を動かされるような体験をし、言葉を交わす喜びを
味わえるようにすること。
(2) 幼児が自分の思いを言葉で伝えるとともに、教師や他の幼児などの話を興味をもって注意
して聞くことを通して次第に話を理解するようになっていき、言葉による伝え合いができる
ようにすること。
(3) 絵本や物語などで、その内容と自分の経験とを結び付けたり、想像を巡らせたりするなど、
楽しみを十分に味わうことによって、次第に豊かなイメージをもち、言葉に対する感覚が養
われるようにすること。
(4) 幼児が生活の中で、言葉の響きやリズム、新しい言葉や表現などに触れ、これらを使う楽
しさを味わえるようにすること。その際、絵本や物語に親しんだり、言葉遊びなどをしたり
することを通して、言葉が豊かになるようにすること。
(5) 幼児が日常生活の中で、文字などを使いながら思ったことや考えたことを伝える喜びや楽
しさを味わい、文字に対する興味や関心をもつようにすること。
表現
〔感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、
創造性を豊かにする。〕
1 ねらい
(1) いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。
(2) 感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。
(3) 生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ。
2 内容
(1) 生活の中で様々な音、形、色、手触り、動きなどに気付いたり、感じたりするなどして楽
しむ。
(2) 生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ、イメージを豊かにする。
(3) 様々な出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。
(4) 感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり、自由にかいたり、つくったり
などする。
(5) いろいろな素材に親しみ、工夫して遊ぶ。
(6) 音楽に親しみ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりなどする楽しさを味わう。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(304ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 304ページ(7) かいたり、つくったりすることを楽しみ、遊びに使ったり、飾ったりなどする。
(8) 自分のイメージを動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだりするなどの楽しさを味わ
う。
3 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
(1) 豊かな感性は、身近な環境と十分に関わる中で美しいもの、優れたもの、心を動かす出来
事などに出会い、そこから得た感動を他の幼児や教師と共有し、様々に表現することなどを
通して養われるようにすること。その際、風の音や雨の音、身近にある草や花の形や色など自
然の中にある音、形、色などに気付くようにすること。
(2) 幼児の自己表現は素朴な形で行われることが多いので、教師はそのような表現を受容し、
幼児自身の表現しようとする意欲を受け止めて、幼児が生活の中で幼児らしい様々な表現を
楽しむことができるようにすること。
(3) 生活経験や発達に応じ、自ら様々な表現を楽しみ、表現する意欲を十分に発揮させること
ができるように、遊具や用具などを整えたり、様々な素材や表現の仕方に親しんだり、他の幼
児の表現に触れられるよう配慮したりし、表現する過程を大切にして自己表現を楽しめるよ
うに工夫すること。
第3章 教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動などの留意事項
1 地域の実態や保護者の要請により、教育課程に係る教育時間の終了後等に希望する者を対象
に行う教育活動については、幼児の心身の負担に配慮するものとする。また、次の点にも留意
するものとする。
(1) 教育課程に基づく活動を考慮し、幼児期にふさわしい無理のないものとなるようにするこ
と。その際、教育課程に基づく活動を担当する教師と緊密な連携を図るようにすること。
(2) 家庭や地域での幼児の生活も考慮し、教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動
の計画を作成するようにすること。その際、地域の人々と連携するなど、地域の様々な資源
を活用しつつ、多様な体験ができるようにすること。
(3) 家庭との緊密な連携を図るようにすること。その際、情報交換の機会を設けたりするなど、
保護者が、幼稚園と共に幼児を育てるという意識が高まるようにすること。
(4) 地域の実態や保護者の事情とともに幼児の生活のリズムを踏まえつつ、例えば実施日数や
時間などについて、弾力的な運用に配慮すること。
(5) 適切な責任体制と指導体制を整備した上で行うようにすること。
2 幼稚園の運営に当たっては、子育ての支援のために保護者や地域の人々に機能や施設を開放
して、園内体制の整備や関係機関との連携及び協力に配慮しつつ、幼児期の教育に関する相談
に応じたり、情報を提供したり、幼児と保護者との登園を受け入れたり、保護者同士の交流の
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(305ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 305ページ機会を提供したりするなど、幼稚園と家庭が一体となって幼児と関わる取組を進め、地域にお
ける幼児期の教育のセンターとしての役割を果たすよう努めるものとする。その際、心理や保
健の専門家、地域の子育て経験者等と連携・協働しながら取り組むよう配慮するものとする。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(306ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 306ページ幼保連携型認定こども園教育・保育要領、保育所保育指針に関係する内容(抜粋)
●幼保連携型認定こども園教育・保育要領の抜粋
第1章 総則
第2 教育及び保育の内容並びに子育ての支援等に関する全体的な計画等
2 指導計画の作成と園児の理解に基づいた評価
(3)指導計画の作成上の留意事項
サ 地域や幼保連携型認定こども園の実態等により、幼保連携型認定こども園間に加え、幼稚
園、保育所等の保育施設、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校などとの間の連携や交
流を図るものとする。特に、小学校教育との円滑な接続のため、幼保連携型認定こども園の園
児と小学校の児童との交流の機会を積極的に設けるようにするものとする。また、障害のある
園児児童生徒との交流及び共同学習の機会を設け、共に尊重し合いながら協働して生活してい
く態度を育むよう努めるものとする。
3 特別な配慮を必要とする園児への指導
(1)障害のある園児などへの指導
障害のある園児などへの指導に当たっては、集団の中で生活することを通して全体的な発達を
促していくことに配慮し、適切な環境の下で、障害のある園児が他の園児との生活を通して共に
成長できるよう、特別支援学校などの助言又は援助を活用しつつ、個々の園児の障害の状態など
に応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする。また、家庭、地域及
び医療や福祉、保健等の業務を行う関係機関との連携を図り、長期的な視点で園児への教育及び
保育的支援を行うために、個別の教育及び保育支援計画を作成し活用することに努めるととも
に、個々の園児の実態を的確に把握し、個別の指導計画を作成し活用することに努めるものとす
る。
第3章 健康及び安全
第2 食育の推進
6 体調不良、食物アレルギー、障害のある園児など、園児一人一人の心身の状態等に応じ、学
校医、かかりつけ医等の指示や協力の下に適切に対応すること。
第4章 子育ての支援
第2 幼保連携型認定こども園の園児の保護者に対する子育ての支援
6 園児に障害や発達上の課題が見られる場合には、市町村や関係機関と連携及び協力を図りつ
つ、保護者に対する個別の支援を行うよう努めること。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(307ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 307ページ●保育所保育指針の抜粋
第1章 総則
3 保育の計画及び評価
(2)指導計画の作成
キ 障害のある子どもの保育については、一人一人の子どもの発達過程や障害の状態を把握し、
適切な環境の下で、障害のある子どもが他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう、指
導計画の中に位置付けること。また、子どもの状況に応じた保育を実施する観点から、家庭や
関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成するなど適切な対応を図ること。
第3章 健康及び安全
2 食育の推進
(2)食育の環境の整備等
ウ 体調不良、食物アレルギー、障害のある子どもなど、一人一人の子どもの心身の状態等に応
じ、嘱託医、かかりつけ医等の指示や協力の下に適切に対応すること。栄養士が配置されてい
る場合は、専門性を生かした対応を図ること。
第4章 子育て支援
2 保育所を利用している保護者に対する子育て支援
(2)保護者の状況に配慮した個別の支援
イ 子どもに障害や発達上の課題が見られる場合には、市町村や関係機関と連携及び協力を図り
つつ、保護者に対する個別の支援を行うよう努めること。
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(308ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 308ページ「 障 害 の あ る 幼 児 と 共 に 育 つ 生 活 の 理 解 と 指 導 」
作 成 協 力 者 ( 敬 称 略 ・ 五 十 音 順 )
石 井 知 子 静 岡 市 こ ど も 未 来 局 こ ど も 園 課 主 幹
稲 川 知 美 宇 都 宮 大 学 共 同 教 育 学 部 附 属 幼 稚 園 副 園 長
岩 瀬 貴 子 練 馬 区 立 光 が 丘 さ く ら 幼 稚 園 副 園 長
江 尻 桂 子 茨 城 キ リ ス ト 教 大 学 文 学 部 児 童 教 育 学 科 幼 児 保 育 専 攻 教 授
大 井 靖 竹 早 教 員 保 育 士 養 成 所 学 生 部 長
奥 薗 み ど り 大 阪 大 谷 大 学 教 育 学 部 幼 児 教 育 専 攻 特 任 教 授
( 前 大 阪 市 立 銅 座 幼 稚 園 長 )
奥 田 真 由 美 宮 城 県 立 聴 覚 支 援 学 校 教 諭
加 藤 篤 彦 学 校 法 人 武 蔵 野 東 学 園 武 蔵 野 東 第 一 ・ 第 二 幼 稚 園 長
苅 田 知 則 愛 媛 大 学 教 育 学 部 教 授
川 合 紀 宗 広 島 大 学 副 理 事 ・ 大 学 院 人 間 社 会 科 学 研 究 科 教 授
河 合 優 子 聖 徳 大 学 大 学 院 教 職 研 究 科 ・ 教 育 学 部 児 童 学 科 教 授
川 原 恒 太 郎 学 校 法 人 ひ ま わ り 学 園 認 定 こ ど も 園 ひ ま わ り 幼 稚 園 長
久 保 山 茂 樹 独 立 行 政 法 人 国 立 特 別 支 援 教 育 総 合 研 究 所
インクルーシブ教育システム推進センター上席総括研究員(兼)センター長
桑 田 万 寿 美 岡山県教育庁人権教育・生徒指導課参事(人権教育推進担当)
( 前 岡 山 県 教 育 庁 義 務 指 導 課 指 導 主 事 ( 副 参 事 ))
小 林 倫 代 独 立 行 政 法 人 国 立 特 別 支 援 教 育 総 合 研 究 所 名 誉 所 員
齊 藤 由 美 子 帝 京 平 成 大 学 人 文 社 会 学 部 児 童 学 科 教 授
( 前 国 立 特 別 支 援 教 育 総 合 研 究 所 研 修 事 業 部 総 括 研 究 員 )
﨑 山 麻 理 和 歌 山 県 立 紀 伊 コ ス モ ス 支 援 学 校 教 諭
( 前 和 歌 山 県 立 盲 学 校 教 諭 )
髙 橋 幸 子 國 學 院 大 學 人 間 開 発 学 部 初 等 教 育 学 科 教 授
滝 口 圭 子 金 沢 大 学 人 間 社 会 研 究 域 学 校 教 育 系 教 授
畠 山 和 也 埼 玉 県 立 入 間 わ か く さ 高 等 特 別 支 援 学 校 教 諭
( 前国 立障害 者リ ハビリ テー ション セン ター 発達 障害 情報・ 支援 センタ ー 教育 ・福祉 連携 推 進 官 )
肱 岡 憲 吾 宮 崎 県 立 赤 江 ま つ ば ら 支 援 学 校 長
前 原 由 紀 栃 木 県 鹿 沼 市 立 池 ノ 森 小 学 校 教 頭
( 前 栃 木 県 幼 児 教 育 セ ン タ ー 副 主 幹 )
障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導(PDF/4,300KB)(309ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 309ページ真 鍋 健 千 葉 大 学 教 育 学 部 准 教 授
山 本 美 保 愛 知 県 立 一 宮 特 別 支 援 学 校 教 諭
山 本 美 和 高知県教育委員会事務局幼保支援課幼保支援アドバイザー
与 那 城 郁 子 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター 発達障害情報分析専門官
渡 邊 典 子 文 京 区 教 育 委 員 会 教 育 指 導 課 職 員
( 前 文 京 区 立 千 駄 木 幼 稚 園 長 )
( 職 名 は 令 和 5 年 3 月 現 在 )
な お 、 文 部 科 学 省 、 厚 生 労 働 省 、 内 閣 府 に お い て は 、 小 久 保 篤 子 文 部
科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 幼 児 教 育 課 教 科 調 査 官 、 横 山 真 貴 子 文 部 科 学 省 初
等 中 等 教 育 局 幼 児 教 育 課 幼 児 教 育 調 査 官 を 中 心 に 、 関 係 者 が 本 資 料 の 編 集 に
当 た り ま し た 。
ま た 、 次 の 者 が 本 資 料 の 編 集 に 当 た っ た 。
藤 岡 謙 一 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 幼 児 教 育 課 長
森 友 浩 史 文 部 科 学 省 総 合 教 育 政 策 局 社 会 教 育 振 興 総 括 官
( 元 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 幼 児 教 育 課 長 )
井 上 睦 子 文 部 科 学 省 産 業 連 携 ・ 地 域 振 興 課 長
( 元 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 幼 児 教 育 課 長 )
大 杉 住 子 滋 賀 県 副 知 事
( 前 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 幼 児 教 育 課 長 )
河 合 優 子 聖 徳 大 学 大 学 院 教 職 研 究 科 教 育 学 部 児 童 学 科 教 授
( 前 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 幼 児 教 育 課 幼 児 教 育 調 査 官 )
湯 川 秀 樹 青 山 学 院 大 学 コ ミ ュ ニ テ ィ 人 間 科 学 部 コ ミ ュ ニ テ ィ 人 間 科 学 科 教 授
( 前 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 視 学 官 )