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その2(PDF/2.3MB)
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変更後 · 1ページ3.家族支援・アフターケア
(1)家族支援について
前項の入所中のケアとともに乳児院にとって大切な役割の一つが、家族(親)支援で
す。平成 23 年全国乳児院入所状況実態調査のデータをみても、約 56%は親元へ帰して
います。
親と離れて乳児院で生活する子どもたちが再び親元で一緒に暮らせることを目指し、
乳児院はこれまで親子調整に力を注いできました。親に代わり子どもとの愛着関係を結
ぶとともに家族(親)との信頼関係を深め、また親子の絆を断ち切らぬよう十分配慮し
た支援を行ってきました。とりわけ 1999 年度(平成 11 年度)には、家庭支援専門相談
員がいち早く乳児院に配置され、親対応や児童相談所(以下、「児相」)との連携がより
一層図られてきた経過があります。更に 2011 年度(平成 23 年度)からは、心理療法担
当職員も配置され、子どもの心身の発達状況を客観的に把握(アセスメント)し、心理
的なケアを行い、担当養育職員へのコンサルテーションや家族支援(親子関係の修復・
調整・再構築)の一旦を担うなど、乳児院の持つ「親子関係を育成する機能」がより専
門的に強化されてきたことは、大変喜ばしいことです。
そして、2012 年度(平成 24 年度)には、里親支援専門相談員が配置されました。児
相や里親支援機関の担当者らと連携・協働し、今後、里親やファミリーホームへの支援
を充実・推進していく役割が課せられています。親元に帰宅が叶わない乳幼児(平成 23
年乳児院入所状況実態調査 38%)にとって、里親・ファミリーホームという新たな家
族(親)への支援も大変重要なことなので、よく頭に置いておく必要があります。
(2)退所前の支援とリスクアセスメントについて
「子どもの再出発機能」という観点からを考えてみると、最もデリケートな部分が退
所に向けての支援です。子どもの長い人生からみると、乳児院は乳幼児期の一時的な仮
の家であり、職員は代替的な家族でもあります。その後の支援については、親元なのか
里親やファミリーホームなのか、それとも児童養護施設等なのか…「児相や親の意向」
とともに、乳児院は物言えぬ幼い子どもの養育担当として、慎重かつ十分な意見・具申
を双方に行っていかねばなりません。
なぜなら、それは最近、乳児院に入所していた子どもが親元へ帰宅(退所)し、まも
なく亡くなってしまうという不幸な事案が複数発生したことが示しています。
まず、退所後に親元へつなぐ場合の親支援ポイントをまとめます。
親は、乳児院で子どもと接するときの姿、児相へ来訪したときの姿、普段自宅で生活
しているときの姿、或いは地域のなかでの近所付合いする姿など様々な場面でその姿は
その2(PDF/2.3MB)(2ページ)
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変更後 · 2ページ変化するものです。親は本当に子どもと一緒に住むことを待ち望み、生活を営む覚悟と
準備を色々していたのでしょうか。
幼い子どもの場合は親の意向がまず尊重されるため、時間を十分に掛けて慣らし保育
を行い、家族(親)・家庭のアセスメントや子ども自身のアセスメントを、慎重にも慎
重を重ね推し進めていくことが望まれます。
さらに、最近は親子関係の修復や再構築を進めるために、関わり難しい親や対応の困
難な親などへは、具体的な療法やプログラム(家族療法・コモンセンス・CRC など)
が有効であるので、今後の導入について注視して置きたいところです。
実際、不安が残る親元等へ帰す場合には、例えば保育所利用を進めることがよくあり
ます。保育所が親との関係をつくり、子どもの情報もタイムリーに把握することができ
るため大変有効な手段といえます。また児相や乳児院以外に、あらかじめ地域にあるど
の関係機関を窓口(例えば、市町村児童福祉課、家庭児童相談室、要保護児童対策地域
協議会、保健センター、医療機関、保育所、幼稚園、民生・児童委員、主任児童委員等)
とするのか、さらに緊急時にはどの機関が動き、ショートステイや一時保護或いは再入
所につなげていくのかも十分に検討しておきたいところです。
里親やファミリーホームへつなげる場合、まず、留意したいのは里親との「マッチン
グ場面」です。とりわけ養子縁組を前提とする里親の場合は、初対面での印象が重要で、
もし少しでも養父母に不安な要素があるならば、不成立もやむを得ず、子どもにとって
の最善のマッチングとなるよう留意します。子どもの健康や心身の発達面のアセスメン
トを乳児院で十分に行い、それが原因で委託後に再入所(リターン)とならぬよう、詳
細かつ丁寧な引き継ぎを心掛けたいものです。
乳児院では、また担当職員と里親とのパートナーシップの確立も目指しています。メ
ンタル面や育児スキルの獲得を目指し、里親支援専門相談員をはじめ様々な専門職員が
チームとなり、細やかな相談・支援を行って里親をサポートしていきたいものです。
さらに、子どもの生みの親へのサポートも、忘れずに配慮しておきたいところです。
児童養護施設等へつなぐ場合は、施設から施設への委託変更となるため、まず子ども
のケアの連続性という観点から、いかに子どもの分離不安を和らげるのか、また子ども
やその家族(親)の詳細な情報をいかに伝えるのかが重要な課題となります。
実際には、乳児院の担当職員と子どもが次の施設へ一緒に何度も訪問する慣らし保育
が有効ですが、その際に子どもの家族(親)も同伴できれば、親も安心して、よりスム
ーズな施設変更が可能となります。さらに、乳児院に併設する児童養護施設がある場合
には、日課の中で子どもが行き来をして交流できるため、より一層スムーズな委託変更
ができるというメリットがあります。
その2(PDF/2.3MB)(3ページ)
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変更後 · 3ページ(3)アフターケア・関係機関との連携
退所前から退所時の支援、そして退所後の「アフターケア機能」もまた乳児院にとっ
て大切な機能の一つです。
上述の退所前における支援で少し述べたように、親元に帰宅した子どもが本当に上手
く家族に溶け込み、親と子どもの信頼関係が少しずつ深まって生活できているのか、ま
たその家庭は地域で孤立していないのかなど、地域での見守り方策が最重要課題となっ
ています。
まず、地域での見守りを考えると、まず市町村に設置されている「要保護児童対策地
域協議会」が思い浮かびます。児童福祉課などを中心として保健センターや医療機関、
警察・消防・教育(幼稚園、小・中学校)、保育所、社会福祉協議会、民生・児童委員、
主任児童委員、そして社会的養護施設(乳児院・児童養護施設等)や児童家庭支援セン
ター、オブザーバーの役割として児相も参画するなど、地域の様々な関係機関が協働し
て、ども虐待や要保護家庭への見守りを行っていますが、実際その活動内容は市町村格
差があり、十分にその機能を果たせていないところもあります。
そのため、乳児院は児相と連携し、退所後もその家族(親)とのパイプを切らぬよう、
様々な具体的な支援を検討・実施しているのです。例えば、電話で定期的に親とコンタ
クトを取ったり、手紙を書いたり、乳児院の行事に招待するなど、また特に気になる親
には、家庭訪問や直接乳児院などで面談をするなど、これまで培った親との信頼関係を
継続・維持するよう、今後も努力したいところです。また、ピンポイントで上記に掲げ
た地域の関係機関と連携し、親や子どもの情報を定期的に入手していくのも一つの方法
です。
そして、もし親等から SOS が出た場合には、すみやかに関係機関を通じショートス
テイや一時保護、あるいは再入所等の緊急対応・支援を行っていきます。
里親等へのアフターケアでは、乳児院や児相も遠方となり、里親等は近隣で気軽に相
談・支援を受ける機関がなく孤立化することが多いとよく耳にします。さらに、里親等
が子どもの育児に疲れたり、疾病等で子育てが一時的にできない状況が発生することも
想定されるので、その場合のレスパイトについても、あらかじめ地元でのサポートが十
分に図れるよう、関係機関及び団体(児相・里親支援機関、里親会や乳児院及び児童養
護施設、児童家庭支援センター等)とよく調整しておきたいものです。
乳児院に新たに配置された里親支援専門相談員は児相との連携のもと、実際には地域
の里親会への参画(サロンへの参加・研修協力)や里親宅への家庭訪問など積極的な業
務が始まっています。最近では、乳児院を運営する法人に「里親支援機関」が設けられ
その2(PDF/2.3MB)(4ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 4ページるという事例も出てきています。まだごく僅かですが、地域の里親会の事務局を受け持
ったり、里親が集うサロンを開設したり、里親研修に併設の乳児院が協力するなど、新
たな連携の輪が広がりを見せているので、今後の連携・支援のあり方に注目されていま
す。
児童養護施設等へのアフターケアとして、乳児院にいた時の担当職員が、次へつなげ
た施設へ定期的に子どもに会いに行くことは、大変重要な意義があります。最近は、子
どもの最善の利益という観点から、特に子どもの生い立ち学習「ライフストーリーワー
ク(LSW)」を行うことが重要視されています。 乳児院は子どもの成長とともに、幼
い頃の振り返りを行う場面で、愛されて育ってきたことを本人に伝え、また実感させる
という大きな使命があり、それは大切なアフターケアの一環でもあります。今後は児童
養護施設等だけではなく、家族(親)や里親等へも同様に協力し、展開していきたいも
のです。
<結び>
乳幼児の取り巻く家族や家庭、或いは地域社会の状況は依然として厳しく、また親子
関係においても希薄化が進み、家庭での子育て機能全般が低下している現状がありま
す。
乳児院の「家族(親)支援(里親等も含む)やアフターケア」にとって何よりも大切
なことは、①『親に寄り添う姿勢(連携・協働・パートナーシップ)』を忘れず、親の
もつ問題の解決や緩和を目指した②『親の養育機能を高めていく支援』に心がけ、また
③『地域の関係機関との連携』を十分に取っていこうとする積極的な姿勢ではないでし
ょうか。
なお、厚生労働省で行った「施設による親子関係再構築支援のワーキンググループ」
での報告についてもよく参照して欲しいと思います。
その2(PDF/2.3MB)(5ページ)
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変更後 · 5ページ(4)事例に学ぶ3
① 家族支援の実際1
ⅰ.事例の概要
入所時月齢:子R(1歳11か月)、子S(3か月)
退所時月齢:子R(3歳11か月)、子S(2歳3か月)
入所理由:母の精神科入院
家族状況:
父 (療育手帳、生活保護世帯、障害者作業所通所)
母 (療育手帳、無職)
子R、子S(きょうだい)
入所までの経緯:夫婦間のトラブルが絶えず、地域の関係機関で見守りを続けていた
事例です。父から母への暴力があり、家族を保護する名目で母は精神科へ、子R、子S
は乳児院への一時保護としました。母には「母子を守るため」と伝えて同意入所に切り
換える予定でしたが、「お前が入院したせいで家族がバラバラになった(きょうだいと
も一緒に生活できなくなった)」と父が母を責める言葉を発するようになりました。そ
のため、母はこれまで関係を保ってきた行政や保健師に対し、自分に入院を勧めること
で家族を離そうとしたのではないか、と話すようになりました。きょうだいと再び家庭
で生活できれば、父も自分を認め受け入れてくれるだろうと考えた母は、きょうだいの
乳児院入所への同意を拒否しました。
ⅱ.経過(面会・外出‐3~9 回/月 外泊‐1 泊 2 日~最長 8 泊 9 日まで)
(a)アセスメント~入所時の支援~
きょうだいの発育は標準でしたが、乳児院のアセスメントで子Rは軽度の発達遅滞
(主に経験不足によるもの)があるように見られました。また、子Sは頭側が極端に低
くなる抱き方でないと泣き止まず、授乳も出来ない状態であったことから、両親の普段
の抱き方が非常に不安定であったのだろうと判断しました。
入院中の母は行政への反感は残しつつも、児童福祉司の説得で入所に同意しました。
① 家族支援の実際1
事例に
学ぶ3
その2(PDF/2.3MB)(6ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 6ページ行政からの情報でDVは日常的なものでなく、母と口論になった際に上手く言い返せな
い父が最終的に手を上げてしまうことが原因であると分かりました。
母は育児に自信がなく、父は前妻との子どもや子Rを育ててきた経験から自信を持っ
ており、自分たちの養育によって、子どもの心身や発達に良くない影響がでていること
には気づいていないようでした。母は他県出身のため、周囲に父以外の知り合いがなく、
家庭の中での人間関係でしか生活していませんでした。
家計は両親の障害年金、作業所の給与、児童手当、生活保護。手当関係が支給される
偶数月とその狭間の奇数月では生活バランスがよくない状態でした。
(b)見えてきた課題~入所中の支援~
寡黙な母へ、父の口調が乱暴になる場面が多いことに気付きました。両親とも知的障
害があると認定されており、移動手段であるバスに乗る際にも、ヘルパーと乳児院職員
が同乗してバスへの乗り方や料金の支払い方等を、その都度、説明する必要がありまし
た。
両親ともに、子どもへの思いは強いものの、育児に関する知識や方法に不安定な部分
があるため、親支援における当面の目標はあやし方・抱き方・授乳などの指導としまし
た。
外出開始後、しばらくは乳児院職員が付添い、授乳やオムツ交換場所の確保を一緒に
覚えました。また、両親が子Rと子Sのどちらかだけの世話に気を取られて、もう一人
から目が離れてしまうことなどへの対応方法を一緒に考えました。
母の社会化を図るべく、行政や児相との連携で母の作業所への通所を勧めました。こ
のことで母の世界観が広がり、父にも自分の思いを伝えることができるようになりまし
た。少しずつですが、母から職員に、子どもや父のことを話してくれるようになりまし
た。
曜日や時間帯によってバスが不便なこともあり、自宅~乳児院間でタクシーを利用す
る機会が増えました。しかし、週 2 回ペースだと 8 往復にもなり、家計にも影響がある
ため、外出の回数を減らし、その分、次回の交流時にはそれまでの養育の様子を丁寧に
伝えるようにしました。
(c)家庭生活の課題と支援方法の検討
外出時のトラブルはなく、親子・夫婦関係とも安定していたものの、面談の中で父が
ゲームセンターや携帯電話にお金を使い過ぎて、時には収入の半分以上を注ぎ込んでし
まっていることが分かりました。また、外出時に家事支援で入ったヘルパーより、父が
子Rを叱る際に大声を上げる、物を投げる、椅子を蹴るなど不適切な関わりがあったと
その2(PDF/2.3MB)(7ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 7ページ情報提供がありました。
そのため、家庭訪問で自宅の環境をチェックし、指導を行いました。父からの不適切
なかかわりをなくすため、乱暴な怒り方ではなく、話をすることで叱る方法等を伝えま
した。その後、不適切なかかわりがなくなってきたことを確認したところで、外泊を開
始しました。
外泊時には、お昼寝をさせられず、帰院後の子ども達の機嫌が悪いことがありました。
そのため、再度乳児院での面会の機会を設け、子R・子Sの生活や時間の流れを一緒に
体験し覚えてもらうことにしました。
外泊時に父方祖父が毎回訪れることで、家族 4 人以外の食費が嵩むと母の不満が高ま
り、行政や児相と協議して年末年始の外泊を中止しました。母の立場を考慮して、父へ
は子R・子Sの体調不良によるものと伝えました。その後、母の負担を減らすために「外
泊は家族 4 人だけで問題なく過ごすことが目標」と父に伝えますが状況は変わらず、母
が家を出て(作業所と同法人内の)グループホームでの生活を開始しました。年度末で
の引き取りも見えてきていただけに、関係機関共々に落胆の色が濃くなりました。
その頃、父の電話代がまた相当高額になっていることが判明しました。また、母はグ
ループホーム入所者と揉めて自宅へ帰ってしまいました。そのことで、入所当初から修
復の方向に向かっていた保健師や、最近では母の支えとなってきた作業所との関係が最
悪となり、関係機関との調整も含めた冷却期間としてしばらく家庭復帰にむけた動きを
止め、現状の課題の整理と再調整にむけて進めることとしました。
父と母は着いたり離れたりを繰り返す、共依存の関係であるように見えました。関係
機関による検討によって、お互いを切り離して個別の支援だけでは、また課題が出てく
ることが想定されたため、2 人そろって支援等が受けることを支援の方針に置きました。
数か月間、親に会えないことで不安定になった子Rのことも考え、面会を挟み、外泊
を再開しました。
(d) 家庭引き取りに向けて~退所前から退所後の支援~
子Sの離乳食開始。離乳食調理や提供温度、介助のレクチャーを行いました。
職員が聞き取り記入していた外出記録を両親に書いてもらうようにしました。両親が
自分達を振り返る作業、子どものことを夫婦で話す機会が増えました。
両親の金銭的な負担を考慮し、なるべく両親の休みに合わせて外泊を組み、1 泊 2 日
でなく、数日間を家族4人だけで問題なく過ごすことで課題も見えて来たように思いま
す。
半年間ほどはこれまで通りの小さなトラブルはあるものの大きく崩れることはあり
ませんでした。しかし、やはり奇数月には金銭的に苦しい場面がありました。引き取り
その2(PDF/2.3MB)(8ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 8ページ直前の長期外泊を前に、これまでも幾度となく重ねてきた関係機関とのケース会議を行
いました。父の支援は行政と乳児院、母の支援は保健師と作業所、子どもへの支援は入
所前も通っていた保育所と児相、家族全体の支援をヘルパーと障害者総合相談支援セン
ター、新たに社協による金銭管理サービス部門も加えて、それぞれの役割分担を徹底さ
せました。
(e)その後~退所後~
児相の定期的な家庭訪問やトラブルになりそうな時は必ず第三者に入ってもらうこ
とを徹底したため、金銭管理をする社協と少し揉めた以外は両親とも安定し、子ども達
も元気に保育所に通っています。
決して完璧な両親ではありませんが、その不足している部分をそれぞれの機関が専門
性を活かして地域全体で多角的に支える体制を用意できたと考えます。
ⅲ.まとめ(考察)
本事例は、乳児院でよくある事例です。両親とも療育手帳を持参し、また生活保護を
受給するなど経済的にも苦しく、父(離婚経験あり)から母への DV があったとの母の
訴えが発端で、きょうだいを乳児院に一時保護されたことが乳児院との関わりのスター
トです。
乳児院では子どもをアセスメントするとともに、父母との関係を深めるなかで、育児
スキルの相違が見られたため、適切な育児スキル獲得に向けトレーニングを実施すると
ともに、定期的な面会を繰り返し、また一時帰宅を実施するなど家庭帰宅を目指した支
援を行っていたが…
他方家庭では、母の就労問題や父の浪費、またヘルパーからの情報で一時帰宅の際に、
父が子どもに対し不適切な関わりをしていることなど、夫婦関係や親子関係の課題が複
雑に見えてきました。その後母の就労により生活保護が打切られ生計が成り立たなくな
ったことで、母が家を出たり、また仕事を辞めて帰ってきたりと父と母の共存関係が確
認されたため、一時冷却期間を取り、子どもの長期帰宅を前に関係機関が集いケース会
議を開催し、父への支援、母への支援、子どもの支援、家族全体への支援、さらに金銭
管理の支援などをそれぞれ関係機関で役割分担をし、地域の関係機関複数でサポートす
る方策を取ったことで、「退所後も4人家族の生活が継続・維持された」という事例で
す。
その2(PDF/2.3MB)(9ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 9ページ② 家族支援の実際2
本事例は、対応困難な保護者との関係づくりから家庭引き取り、アフターケアまでの
道のりです。
ⅰ.事例の概要
① 入所時の年齢 10 か月
② 退所時の年齢 2歳5か月
③ 入所理由 母の精神障害による入院のため
④ 家族構成 母、父、子T
・両親は内縁関係。2人は日常的にいさかいが絶えず、児相での面談中でも喧嘩を
する様子が見られます。
・母は精神障害の診断を受けており、家事はほとんどせず、食事は外食を好み、ま
た流行り物に目がなく衝動的に買い集める傾向がありました。
・父はすぐに怒鳴って相手を威嚇し、人との関係を構築することが難しい一方で、
子どもに対する思いは深く、欲しがるものは何でも与えてしまう甘いところがあ
ります。
ⅱ.経過
(a)先の見えないことへの不安から
入所後間もない頃、父はすぐに「自分ひとりでも育てられる、子どもを返せ」と児相
に強く言っていました。そのため、初期の面会は、子Tの生活の場である乳児院とは異
なる場所を検討し、児相で行いました。担当児童福祉司との面接を重ねるうちに、現状
では、家庭で引き取れる状況にないことを納得したようでした。
その頃より、乳児院で面会を行うことになり、ほどなくして、母が退院したため外出、
外泊の許可が出て、週末ごとに両親で迎えに来るようになりました。面会・外出・外泊
などの連絡のほとんどは父が担っていました。
外泊の予定が入っている時に、子Tが病気になり、「熱があるので、外泊は難しいか
② 家族支援の実際2
事例に
学ぶ3
その2(PDF/2.3MB)(10ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 10ページもしれません。」と電話で連絡すると「何で熱があるんだ!」「何をやっていたんだ!」
と怒鳴りつけられました。また、子Tが胃腸風邪で食欲不振の時に「食べられなくても
今はしかたがないですねぇ」と言えば、「しかたがない、とはなんだ!」などと父の怒
りをかうことがたびたびありました。
これらの場面では、常に児相も間に入り情報交換を密にしてきましたが、父との関係
づくりに大変頭を悩ませました。
(b)これまでの保護者の思いに心を寄せて
そこで、父からの電話対応は家庭支援専門相談員が主に受けることにして、家庭状況、
母の精神状態、仕事の様子、子どもへの思いなど、ひたすら耳を傾け聴くようにしまし
た。その対応を積み重ねていくと、父自らが自身の成育歴も話すようになり(大事なア
セスメントともなり)、やがて、父の言葉や表情もしだいに穏やかになっていきました。
私たちは、この経験を通して職員間で保護者対応について話し合いの場を持ち、以下
の4点を確認しました。
(ア)父は子どもの前では怒らない人であること。
(イ)対応者を限定する(実際には父の方から誰それと指名してきた)。
(ウ)変化(体調不良、面会、外出、外泊等)が起きた時には、乳児院や児相が判断
して事後報告をするのではなく、すぐに両親に状況を説明したうえで父に判断
をしてもらうようにする。
(エ)何かを尋ねられた時、すぐにわからない場合は、こちらから(いつ・どのよう
に)返事をするかとはっきり答える。
(c)私たちにできることは?
心をこめて父との関係づくりを積み重ねてきた矢先、子Tが細菌性髄膜炎にかかって
しまい入院しました。
父は、不安と心配でどうしようもない思いから家庭支援専門相談員に声を荒げて怒鳴
りつけてきました。相談員は父の怒りを受けとめつつ、「お父さん、怒鳴らないで話し
ていただけませんか」とお願いしました。するとすぐに「悪かったな、今日は誰が来る
のか」と聞かれ、「私です」と答えると、少し安心した様子で「そうか待っている」と
トーンダウンしていきました。
入院中は家政婦さんに 24 時間付き添ってもらい、乳児院職員も病状把握のために毎
日様子を見に行き、父に状況を伝えることを徹底しました。幸い、子Tに後遺症は出ず、
1 か月後に無事に退院することが出来ました。
その2(PDF/2.3MB)(11ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 11ページ(d)この先も子どもの育ちを見届けたいから
父は、予定していたことや自分の思いと異なると、すぐに怒鳴ったり苦情めいた発言
をしますが、父の話をよく聴くなかで子どもへの深い愛情や、人とのかかわりを求めて
いるように感じました。そのため、父の言葉や態度の奥底にある要求を捉えることに耳
をすまし、一緒に考えて取り組むようにしました。
そして子Tが2歳5か月の時、家庭への帰宅となりました。両親からの依頼により帰
宅前の家庭訪問や児相から次の児相へのケース移管、保育所や保健センター等関係機関
との橋渡し役として家庭支援専門相談員が立会いました。
退所後も保育所でのトラブルや母との悩みなど、父からの相談の電話は絶えませんで
した。子Tとのかかわりも継続しており、毎年、施設で開催する夏祭りを楽しみにして
参加されています。
退所してから2年程たった日の夜に「母が子Tを置いて出ていく!と言っている。自
分はいま遠くて行けない。子Tのことが心配・・・」と電話があり、子Tの安否確認のた
め担当の児童福祉司とともに深夜に自宅まで訪問をしたこともありました。また、子T
の通っている保育所の所長から父との対応についての相談があり、電話で話したことも
ありました。
退所後、数年たったいまでも、時々定期便のごとく父から近況報告の電話が入ってき
ます。
ⅲ.まとめ
本事例も乳児院でよくみられる母の精神障害で入院となったため、10 か月児が一時
保護された事例です。夫婦は内縁関係でしかもその関係性も不安定であり、母は家事が
苦手で外食や衝動買いが好きで、父は対人関係を取ることに苦手で攻撃的な言動もよく
ありますが、子煩悩な一面もあり、この関わりの難しい父への対応が乳児院の大きな課
題でした。
母が医療機関から退院しても、子どもを帰す家庭環境ではないため、まず乳児院では
親対応の窓口職員を一本化するとともに、とりわけ父の話を十分に傾聴することで信頼
関係を少しずつ深めていきました。また、その経過を職員全員に伝え共有化を図ること
で乳児院全体の保護者対応が確立していったといえます。一度父との信頼関係が結べる
と、その絆は退所後も引き継がれ、乳児院の行事等に招待したり、電話で父の相談支援
等を細やかに行うことで、この家族が退所後も地域のなかで孤立しないよう乳児院がつ
なぎ止めているというアフターケアの実践事例です。
その2(PDF/2.3MB)(12ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 12ページ4.里親支援
里親委託と施設委託は家庭養護と家庭的養護の違いはあれど、社会的養護の受け皿と
して、子どもの養育にかかる立場は同じです。それぞれのよい所を生かし子ども達を主
人公とした養育を支え合い、養育の質を高めていくことは、社会的養護にかかる子ども
達のために大切なことです。
これまでも乳児院は子どもと里親の「育ち・育てのバトンタッチ」をお手伝いしてき
た経過があります。この章では乳児院が保護者支援や里親支援で蓄積してきた力を生か
し、より良い支援や養育の支え合いができるように、ふまえておきたいことや、委託ま
での手順等について述べていきます。
(1)支援における乳児院の利点
乳児院は、子どもの育ちの場です。育ちの場での実際の養育を通して、子どもと里親
に対し「育ち・育てのバトンタッチ」のお手伝いを進めることができるなど、次のよう
な利点があります。
① 乳児院に里親が来所されることにより、行政の機関(保健関係等)、または通院し
ていた病院など、子どもに関わってきた関連機関とのつなぎを、里親の負担が少な
くつないでいくことができます。
② 実際の里親と、子どもの関わりを通して、里親と子どもの双方の安心感の形成過程
に適切な支援ができます。
③ 養育の場で、他の子どもとの交流をとおして、子ども一人一人が主人公であり、そ
れぞれの発達の道筋を持っていることを実体験し、理解することで委託対象となる
子どもの受容(ありのままの姿を受け止める)を進めることができます。
④ 乳児院は、日常の養育の中での、「権利擁護」の在り方を積み重ねてきました。日々
の養育の営みの中で守るべき人権に対して高い感性をもって伝えることができま
す。
⑤ 乳児院は、看護師、保育士、栄養士、心理療法担当職員、家庭支援専門相談員、里
親支援専門相談員等の専門職がいます。それぞれの専門に基づき、育ちの少し先を
見通した養育の在り方も含め、伝えることができます。
⑥ 実際に里親委託が進む過程で、里親家庭の家族関係や里子との親子関係の関係性の
調整の支援も必要になってきます。里親委託までの経過や、里子のことをよく知っ
ている乳児院であるからこそ、里親や里子に寄り添った関係調整の支援ができま
す。
その2(PDF/2.3MB)(13ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 13ページ(2)里親との交流
普段から、里親との相互理解がすすんでいることは、社会的養護にかかる子どもの育
ちにとって大きなメリットがあります。乳児院は「養育里親研修」における実習の場や、
里親サロンの場の提供等、様々な里親へのサービスを提供できます。サービスを提供す
ることで、里親と普段から顔の見える関係性が構築されます。この関係性は、里親側か
ら、乳児院の子ども達の養育について「思う事」を意見として伝えやすくなります。ま
た、乳児院側からも里親の養育感について「思う事」を意見として伝えやすくなります。
「子どもの利益」に基づいて意見を交換することは、養育の質を上げることに貢献しま
す。普段からこういった関係性を構築しておくことは、里親委託の事例が出た場合、信
頼関係を基に里子、里親のニーズにあった支援を展開するために大切なことです。里親
支援専門相談員を配置し里親支援機関として指定を受けている、また、里親支援事業を
受託している等、専任の職員を配置している乳児院は、このことを一層推し進めること
ができます。
① 乳児院でうける養育里親研修
養育里親研修の制度ができる前から、子育て体験研修の一環として未委託里親の実習
をうけてきた乳児院もあるように、実際の養育を体験できる場として貴重な存在として
位置づけられてきました。抱っこや授乳、おむつ交換等日々の養育の実際とともに、自
我の芽生え時期の体験等をするなかで、里親希望の方が、改めて子育てについて持って
いたイメージと実際について考える機会になったり、乳児院も里親希望の方の人柄を知
る良い機会となります。
また、「子どもの権利条約」や「権利ノート」、「乳児院の倫理綱領」等の研修を入れ
ることで、子どもの最善の利益や、日常の養育のなかで生じてはならない「権利侵害」
について、より具体的なイメージで伝えられる良い機会でもあります。
② 里親サロンへの参加
里親のピアカウンセリング等の場の提供や参加、時には子育てのアドバイザーとして
参加するなかで、里親の思いに触れることができます。また、里親が交流をもたれてい
る間、里子の保育のお手伝いをすることで委託後の里子の姿を知ることができます。
③ その他
里親会、乳児院の双方の行事に招待したり、お手伝いをお願いすることも、互いに顔
の見える関係作りに役立ちます。
このように里親認定前や、認定後の里親と、普段からの交流を通し、信頼関係をつく
その2(PDF/2.3MB)(14ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 14ページることも里親支援として位置づけられます。
(3)里親委託の際に必要なこと
以下に、里親委託の際に必要なことを手順に沿って述べていきます。施設に里親支援
専門相談員が配置されているとして手順を追っていきますが、配置されていない場合
は、それに代わる職員が関わるとしてご理解ください。
① 大切なアセスメント
里親委託対象となっている子どもに関して、委託前に十分なアセスメントを実施する
ことは適切な里親委託の為に重要です。措置権者である児相と協働し、委託前に改めて
アセスメントを行ってからプログラムを進めていきましょう。
里親候補に関するアセスメントは、県の担当局や、児相が実施するものとして乳児院
は、里親委託対象児童のアセスメントを基に、里親候補に対する意見を関係機関に伝え
ていきたいものです。
② 里子の思いを中心に
特別養子縁組・養育里親委託と制度の違いはありますが、里子にとって新しい関係を
築いていかなければならないのは同じ状況です。また、里親も、子育ての経験があった
としても、養育を途中で引き受けるわけですので、関係を築いていく上では「新たなス
タート」です。主人公は里子であることからぶれることなく、実際の手順が、里子の思
いを中心として組まれているかを常に振り返りながら進める必要があります。
③ 必要な手順 ( 例 )
※業務は里親支援専門相談員、または、それに該当する職員の業務としてまとめてあ
ります。
その2(PDF/2.3MB)(15ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 15ページ業 務 内 容 協働職種
委託対象児童
の状況把握
委託対象児童の情報共有・児童の日々の養育の場
での観察→児童の状況シートの作成
心理療法担当職
員
家庭支援専門相
談員
担当養育者
ケース会議に
参加
児相による里親委託に向けてのケース会議の実施
○委託後、実親との関係の方向確認
○発達特性の共有
○対象児童の状況にあった里親候補について共有
児童福祉司
家庭支援専門相
談員
心理療法担当職
員
担当養育者
里親候補につ
いて施設とし
ての意向を伝
える
児相の要請があれば児童福祉司の複数の里親候補
宅への訪問に同行→児相に対し里親候補について
意向を伝える→児相による里親候補の決定
児童福祉司
心理療法担当職
員
里子と里親の
マッチング支
援
初顔合わせま
で
① 児相による里親候補への概要説明に要請があ
れば同行
② 対象児童と里親候補の初顔あわせに同席
③ 初顔合わせ後、里親候補の気持ちの聞き取り
④ 児相よりマッチングを進める決定の通知
児童福祉司
心理療法担当職
員
担当養育者
里子と里親の
マッチング支
援
関係づくりへ
の支援
プログラムの
作成
① 児童福祉司と施設にて関係づくりプログラム
案の作成 (アセスメントをもとに対象児童と
里親候補の状況を踏まえ作成)
② 里親候補とプログラム調整
(里親候補が就労の場合・委託後支援する家族の状
況等、里親候補の家庭状況を踏まえプログラム調
整を行う) 基本的に里父も必ず研修に参加する。
里親宅に実子がいる場合は実子との関係調整もプ
ログラムに入れ込む。
児童福祉司
心理療法担当職
員
担当養育者
その2(PDF/2.3MB)(16ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 16ページ業 務 内 容 協働職種
関係づくりへ
の支援
面会支援
振り返り
ケース会議
① 施設内での面会に同席する。
里親候補の面会後の聞き取り、また、里親候補
が記録ノートに感じたこと等記録
② 面会を重ねた経過の振り返り(対象児童・里親
の様子観察も含む)を里親・施設職員とともに
実施。
児童福祉司に報告の上、次のステップへと進
む。
③ 施設内ケース会議を実施
里子の里親に対する安心感の形成を中心に、関
係形成のためのプログラムの工夫や、専門職
(看護師・栄養士)によるオリエンテーションを
入れるタイミング等検討。オリエンテーション
は対象児童の発達に沿い室内・室外の事故防止
について具体的に提示することも含む。
児童福祉司
心理療法担当職
員
担当養育者
栄養士
看護師
関係づくりへ
の支援
施設外での関
わり支援
① 里親候補が養育にかかわる色々な場面の経験
をする場に立ち会う
病院通院同行・乳幼児健診同行
罹患時の看病・離乳食の調理実習等
看護師
栄養士
嘱託医
市町村保健師
② 対象児童と里親候補の施設外での関わりに同
行する。(月齢に沿ったプログラムを組む)里親
宅への外出もプログラムに含む
③ 施設外での経験の振り返り(対象児童・里親候
補の観察も含む)を里親候補・施設職員ととも
に実施
関係づくりへ
の支援
ケース会議
里親候補宅で
の関わり支援
外出から外泊
へ
① ケース会議
児童福祉司と共に里親宅でのマッチング取組
についてケース会議
これまでの振り返りの共有。対象児童の状況を
踏まえ里親候補宅での関係づくりへの支援に
ついてプログラムを組む
② 里親候補宅への外出に同行
短時間の里親候補宅外出から始め、対象児童の
安心感がみられた段階で、里親候補が家事と並
行して養育にあたることに慣れていく支援へ
と移っていく。
③ 里親候補宅での外出において、里父の在宅時
等、育児を手伝う家族が在宅する日には同行支
児童福祉司
施設心理療法担
当職員
担当養育者
その2(PDF/2.3MB)(17ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 17ページ業 務 内 容 協働職種
援を外していく
④ 対象児童と里母の安定した関係ができつつあ
ることを見極めた上で里親候補宅へは送迎の
みとし、徐々に同行を外していく。
⑤ 里親候補宅での関係づくりについて振り返り
(対象児童・里親候補の観察も含む)を里親候
補・施設職員と実施。児童福祉司に報告の上、
次のステップ外泊体験へと進む。
⑥ 外泊体験は、里親候補が委託後育児を手伝う家
族(里父母の両親やきょうだい等)に協力を依
頼できる場合と、協力者がいない場合に配慮を
必要とする。
⑦ 長時間の育児体験へと移行する外泊体験にお
いては、これまで以上に里親候補への聞き取り
や里子の様子観察を必要とするため、外泊体験
時に施設心理療法士や担当養育者を伴って家
庭訪問を実施する。プログラムの最終段階に入
った時期に、児童福祉司に報告し、児童福祉司
とともに、家庭訪問を対象児童の外泊時に実施
する。
関係づくりへ
の支援
委託への調整
ケース会議
育ちをつなぐ
取組
告知
① 委託に向けたケース会議
対象児童と里親候補の関係性を軸に協議
安定した関係性が築かれつつあることを確認
したうえで、委託後の支援・実親の同意の再確
認等共有する
② 児童福祉司が実親に同意の再確認・里親候補の
意思確認→児相による措置決定
③ 担当養育者により里子の育ちをアルバム等を
使いながら改めて伝える。
④ 里子に月齢に沿った形で(紙芝居等)里親家庭
での養育に移行することを告知する
児童福祉司
家庭支援専門相
談員
心理療法担当職
員
担当養育者
委託決定後の
支援
里親応援会議
への参加
① 措置決定後、児相主催で今後里親家庭を支援
する関係者が一堂に集まり応援会議を開催。
それぞれの役割を確認する。
② 乳児院の委託後の役割として委託後、基本二
週間ごとの定期訪問による支援
養育計画作成の支援
レスパイトの受け入れ
※里子に障害が認められる場合は、定期受診や乳
児童福祉司
地域里親会
市町村子ども家
庭相談室
民生委員等
里子の状況によ
り市町村保健師
その2(PDF/2.3MB)(18ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 18ページ業 務 内 容 協働職種
幼児健診に同行等他機関につないでいく役割も
含め強い支援が委託後も必要
里親の孤立を
防ぐ取組
① 里親会や施設が開催する、里親サロン・研修
会・里親会・施設行事に積極的に誘い掛け里親
同士のつながりへの支援をおこなう
里親会
委託の手順においては、冒頭で述べたように、里子が主人公であることをぶれること
なく進めていきたいものです。そのために、初期のアセスメントを丁寧に行うことをス
タートとして、節目、節目で里親・関連機関・乳児院が振り返りを行い、里子の状況に
あわせた方法の修正を行いながら、委託へと進んでいくことが重要です。そのことは里
親との信頼関係を築くことにつながり、委託後の支援をすすめていく力になっていきま
す。
里親養育は、長い道のりです。乳児院の養育期間は、子どもの人生にとってほんの 1
ページですが、人生の土台となる大切な時期です。その大切な時期にかかわった人とし
て、里親と共に、里子の成長に長く寄り添っていきたいものです。
その2(PDF/2.3MB)(19ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 19ページ(4)事例に学ぶ4
① 里親支援の実際
ⅰ.事例の概要
① 入所時の月齢 生後1か月
② 退所児の月齢 1 歳 7 か月
③ 入所理由 養育拒否
④ 家族構成 母(就労)、きょうだい、母方祖母(就労)、子U
ⅱ.経過
(a)入所経過と支援目標
母は子どもを養育することに不安を感じて施設入所を希望しました。里親委託に関し
ては「今、揺れていて判断できない」というのが母の思いでした。祖母の意向、きょう
だいの養育状況を確認しつつ、里親委託を視野にいれながらも将来的には母子で生活す
ることが入所時の支援方針とされました。
(b)里親委託へと支援目標変更の経過
入所時のアセスメントを経て、児童福祉司と家庭支援専門相談員を中心に保護
者支援プログラムを作成しました。里親支援も視野に入っていることを踏まえ里親支
援専門相談員は並行して、子Uの状況把握をしておくように努めました。当初はプログ
ラムに沿って面会が実施されていましたが、しだいに面会、連絡が途絶えるようになり
ました。1 歳 2 か月時に児童福祉司、家庭支援専門相談員が母と面接。母は「子どもの
ことは気になるが、今の生活で手一杯」と話し、養育里親に同意をされました。
(c)里親委託に向けての動き
養育里親委託方針をうけて、施設内で改めてアセスメントを実施し、子Uの状況シー
トを作成、施設内で共有しました。
今後の実親との関わり、および里親委託に向けてのケース会議を児童福祉司と乳児院
① 里親支援の実際
事例に
学ぶ4
その2(PDF/2.3MB)(20ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 20ページ職員(担当養育者・家庭支援専門相談員・里親支援専門相談員・心理療法担当職員)参加
のもとに実施。アセスメントの結果をもとに、子Uの発達特性(発達的にゆっくりとし
ている。他児に比べると発信力が弱い)から、40 歳前後で子どもにゆったりと関わって
もらえる里親にお願いすることに決まりました。その後、児童福祉司より里親候補が 3
組提示され、児童福祉司の依頼を受け、里親支援専門相談員が里親家庭の訪問に同行し
ました。児相に乳児院としての意向を伝える中、児相の協議にて A 里親が適任ではない
かとの判断がなされました。
児童福祉司と里親支援専門相談員が A 里親宅訪問にて子Uについての概要を伝え、後
日 A 里親からマッチングのための関わりを希望する意思が確認されました。
初顔合わせでは、子どもの気持ちへの配慮も合わせて、子Uのホームへ A 里親が入る
形で行われました。初顔合わせ後、里親支援専門相談員より A 里親に聞き取りを行い、
「委託を受けたい思いがかたまってきている」ことを確認。児童福祉司よりマッチング
を進めていくことの決定が通知されました。
(d)関係づくりへの支援
児童福祉司と乳児院(里親支援専門相談員・担当養育者・心理療法担当職員)で関係づ
くりプログラムを作成。A 里親が、委託後支援してくれる家族がいないことや里父が仕
事の融通が効きやすく、養育を手伝えること。子どもの発達がゆるやかであることを考
慮したプログラムとなりました。日程等の具体的な調整は里親支援専門相談員が A 里親
と行いました。今後も委託に関して寄り添う職員が専任でいることは里親の安心につな
がりました。
毎回の面会には心理療法担当職員と里親支援専門相談員が同席、初期の面会には同じ
ホームの子どもとともに遊ぶ等、子Uが A 里親と関わりたい気持ちが自然に生じるまで
じっくりと待ちました。面会後里親支援専門相談員は A 里親の持ちの聞き取り、また、
里親に記録ノートに気持ちの記録をしていただきました。一方心理療法担当職員は面会
後の子Uの様子観察を行いました。子Uが A 里親に玩具を渡したり、膝に自然に座る場
面から、職員から離れ、A 里親に抱っこを求める姿が見られるようになりました。初め
て子Uが抱っこと手を差し出したとき、A 里親は、ほんとうにうれしそうでした。里父
も面会ごとに短時間でも顔を見せる等関係づくりに努力されました。A 里親夫妻にバラ
ンスよく安心感を形成していけたことは今後の取り組みにむけて、里母の心の負担が軽
減されることにつながりました。
面会を重ねた経過の振り返りを A 里親・施設職員と実施。A 里親は「子Uの心に寄り
添う」ことの意味を面会を通して感じられ、育ちのバトンタッチのために「大人の都合
で決めるよりも子Uがしんどくない方法で進めたい」と希望されました。振り返り結果
その2(PDF/2.3MB)(21ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 21ページを児童福祉司に報告の上、次のステップへと進みました。
次のステップに進めるに当たり施設内ケース会議を実施。関係形成のためのプログラ
ムの確認。専門職によるオリエンテーションのプログラムをについて検討しました。A
里親は初めての子育てであり、病院通院、乳幼児健診等様々な体験を入れていく必要が
あります。子Uとの関係形成に安心感をもたれた段階を確認し里子・里親に負担のない
形ですすめていくことにしました。
子Uは職員との外出も慎重な様子を見せるため、外出体験は、里親宅へ短時間の経験
からスタートしました。初回は職員の膝から一歩も離れなかった子Uですが A 里親が手
作りのおやつを準備したり、子Uの好きな玩具を準備され、「子Uが来てくれてうれし
いよ」という気持ちを伝え続けられる中で、子Uの「居場所」としての安心感を形成し
ていきました。部屋の探索を始めた段階で徐々に外出の時間を延長し、里親支援専門相
談員の送迎から、里父母の送迎へと移りました。A 里親が子育てについて体験を深めら
れると同時進行で専門職のオリエンテーションを入れていきました。
里親宅への外出体験の中で、「居場所」としての安心感が形成されてきたかを中心に
里親と施設とで振り返りを行いました。A 里親夫妻は外出体験を通してこれまで夫婦だ
けで使ってきた時間を、子どもへと使っていくことの実感や、家事の進め方を工夫する
ことをゆるやかに体験できたことで、子育てへの緊張感や心配が軽減したと述べられま
した。
委託へと向かう最終プログラムに入るために、児童福祉司による外出時の家庭訪問を
実施後、ケース会議を行い、外泊の進め方、委託決定の判断項目の共有を行いました。
これまで子Uの里親宅での安心感の形成・A 里親の子育てへの安心感の形成を中心に、
時間をかけて取り組んだ結果、外泊は一泊二日から順調に日程を伸ばしていくことが出
来ました。外泊時には里親支援専門相談員・心理療法担当職員・担当養育者の家庭訪問
をいれ、里親への聞き取り、里子の様子観察の実施。児童福祉司の家庭訪問を複数回実
施し里親の意向確認がされました。
委託に向けたケー検討会を児相主催で実施。保護者へ委託後の関わり方も含め意向確
認。担当養育者による里子の育ちをアルバム等を使いながら改めて里親に伝える。里子
へ紙芝居をつかって育ちの場所が A 里親宅に移ることを告知すること等を確認しまし
た。また、里親応援会議の開催、内容について協議されました。
ケース会議後、児童福祉司と家庭支援専門相談員が保護者に面接。保護者は「今後も
本児の成長の様子を知りたい」と希望し委託に同意をされました。保護者の同意を受け、
児相より里親委託が決定され委託後の支援へ動いていきました。
里親応援会議は、A 里親・地域里親会・市町村の子ども家庭相談室・児相・乳児院の
関係者が集まり、今後の里親支援について役割分担を確認しました。
保護者との関わりは、児童福祉司が子Uの成長を定期的に伝えること。保護者の面会
その2(PDF/2.3MB)(22ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 22ページについては乳児院が面会場所の提供を行うこと。子Uが希望し保護者に関する真実告知
が必要になった際は児相が情報の整理を行い、告知を手伝うこと。地域機関は福祉制度
の利用や子育て一般の相談に応じること。里親会は里親同士のピアカウンセリング等を
通し支えあう支援をすることが確認されました。
乳児院の役割は、委託後基本 2 週間ごとの定期訪問としつつ、要請があれば訪問を行
いました。日常の養育に寄り添いながら、里父母の思いの傾聴や、里子の行動観察を行
ないました。必要とされた場合は心理療法担当職員と共に里親や里子の状況を検討し、
養育に対するアドバイスを実施しました。訪問の結果は児童福祉司に文章報告をおこな
い情報の共有に努めると共に、委託後の自立支援計画票作成において「養育計画」の部
分の作成支援を行い、里子と里親の関係調整や里子の発達支援において役割を果たせる
ようにしました。
また、行政から委託を受けている里親支援事業における里親サロンや、行事、研修会
にお誘いし、里親同士のつながりへの支援を行い、A 里親が孤立されないように働きか
けました。
ⅲ.まとめ
社会的養護にかかる子どもと保護者の親子関係調整は乳児院の大切な役割の 1 つで
す。子育て支援は行政が中心となっている中、一時的に乳児院を利用し家族が共に暮ら
せる条件を行政の施策の中で整えていく事例が増えてきました。
乳児院は「子どもの最善の利益」を子どもの立場にたって意見を伝えるとともに、行
政と連携し家族再統合へのお手伝いしていく役割を担っています。
しかし、家族関係の変化の中、家族再統合の方向が途中で里親委託へと判断される事
例も増えいくのではないかと予測されます。当事例はそういった予測のもとに親子関係
調整のために取り組んできた事例が、保護者とつながりつつ、里親委託へと進んでいく
事例となっています。
当事例では新生児時期からのスタートとなっていますが、事例によっては虐待等で関
係性を築く上で困難を抱えていることも少なくありません。子どもは、大人にとっては
何でもない新しい人へのつながりに想像以上に不安感をもつという認識をもとに、丁寧
に「育ち・育てのバトンタッチ」を進めていく必要があります。当事例は最初の出会い
を「子どもの気持ち」に丁寧に寄り添い時間をかけています。子どもの中には、いきな
り里親に抱っこを求めたり、出会ったばかりなのに疑似後追いをしたりする場合もあり
ます。しかし、子どもとは本来そんな姿は見せないものだという認識を持ち背景にある
ものは何かという考えに至ることが重要です。たとえば出会ったばかりの里親に後追い
をする子どもは、職員が少し用事で立ちあがっても後追いをしていませんか。背景には
その2(PDF/2.3MB)(23ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 23ページ「別れ」に強い不安感を抱かざる得ない体験をしていることも考えられます。表面上に
示す子どもの行動で判断し委託を進めると解決していない問題、または理解されていな
い問題を、そのまま里親養育に持ち込み困難を引き起こしてしまいます。
乳児院には、多職種がいます。多職種が丁寧に子どもを総合的にアセスメントした上
で里親と里子の関係づくりへの支援を進めていきましょう。
当事例は節目、節目で里親とともに振り返りを行う。またケース会議により里子と里
親のニーズにあうように方針の確認を行っています。
最初の出会いがアセスメントをもとに丁寧に取り組むことができれば、以降の流れは
スムーズに進むとさえ言えます。
里親の養育を支えることは関係づくりプログラムの終了で終わりではありません。
むしろ、委託後がスタートです。里親支援専門相談員はじめ、施設職員との里子を中
心としたかかわりの中で得た信頼関係は、委託後も育ちをつなぎ、育てを重ねる支援を
円滑に行っていく力となります。当事例では、委託後も里親家庭に訪問を重ね寄り添い
ながら、里親家庭を支援する人や機関へつなぐお手伝い。里子の状況の交通整理や、少
し先を見通した発達支援の方法について自立支援計画票の一部である「養育計画」作成
のお手伝いをする方法で、里子や里親の日々の暮らしの支援を継続できるように構成し
ています。
人生の根っこに位置する乳児院が、長く里子や里親により添うことができる、そんな
支援ができることを願いこの事例を編集しています。
その2(PDF/2.3MB)(24ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 24ページ5.その他施設への移行
乳児院に入所した子どもの約 2.5 割の子どもは、様々な事情により家庭復帰が果たせ
ず、乳児院退所後に児童養護施設等ほかの施設へ措置変更されています(平成 23 年度
全国乳児福祉協議会調べ)。
乳児院に入所した時点で親子分離を経験している乳幼児は、分離に対する不安を強く
持っています。そのため、乳児院において担当職員との愛着関係から離れて新たな人間
関係を構築しなければならない課題は避けることができません。乳児院からの措置変更
に伴うそれぞれの別れが障りにならないように、子どもが感じる負担は最小限に留める
ためにも、児相や措置変更先等の関係機関に協力を求め、関係作り等を含めた再出発支
援に十分な時間を掛けることが望まれます。この支援についても、担当保育士や看護師、
家庭支援専門相談員・心理療法担当職員等が乳幼児の状況の情報交換やアセスセメント
を定期的に行う必要があり、家族についても措置変更先に情報の提供等を通して、措置
変更先との関係を保護者が構築できるよう支援していく必要があります。その方法につ
いては、児相等と連携し、目標や方法を検討しながら進めていきます。
その他の施設へ生活の場を移す子どもに対して、「乳児院運営指針」の中でも述べら
れている、継続的支援と連携アプローチならびにライフサイクルを通した支援を行うた
めに、乳児院では、以下の視点を持ち、取り組むことが重要です。
(1)施設移行にいたるまでに(養育のつなぎをするために準備すること)
乳児院に入所した時点で、一度「保護者から分離される」といった体験した子どもに
とって一番重要なことは、乳児院のように保護者以外にも自分を大切に思い育ててくれ
る人の存在を子どもが実感できるよう日々の養育等を行っていくことです。また、そう
いった乳児院における養育を、新しい環境に移った場合にも、できる限り継続して保障
されるよう、「養育のつなぎ」を行い、子どもの安心感を維持させることが重要です。
子ども達は、環境が変わると退行する場合が多いといわれています。他の児童福祉施
設に措置変更するための過程に入る前には、対象となる子どもの、乳児院での発達状況
(授乳・食事・遊び・他児との関係・排泄・入眠・衣類の脱着等)を子どもにストレスを与え
ない状況の下で、目視確認をし、記録することが重要です。たとえば、子どもの生活の
状況を VTR 等に編集して記録しておくことも、有効な手段とひとつと考えます。そうす
ることで、退所までの他施設との連携の中で、文書や口頭で説明するだけでなく、実際
のその子の様子を見ながら「養育のつなぎ」をすることができます。
また、乳児院で生活する子どもの中には、病虚弱児や障害児も多いことから、体調の
変化や医療機関への受診等の医療的な情報についても、丁寧に記録し保管しておくこと
が重要です。
その2(PDF/2.3MB)(25ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 25ページ加えて、上記の他にも、子どものルーツにつながるものや保護者の手がかり、乳児院
での生活の様子等は、その子どもにとって成長の記録であるとともに、退所後の人生を
送る中で自分の生い立ちについて知り、人生の軌跡を確認する精神的な拠り所となるた
め、意識的に記録しておくことが必要です。
(2)ならし保育の実施(一貫性のある養育を実施するために)
乳児院から児童養護施設等へ措置変更される子どもにとって、社会的養護は互いにつ
ながりをもって「トータルなプロセス」を保障していくことが求められます。子どもが
多くの大人によって大切にされて、育ってきたことを実感できる社会的養護の連携(「養
育のつなぎ」)が大切です。
子どもにとっては、慣れた乳児院の生活や人間関係から変化することは心理的負担と
なるため、できる限りスムーズに新しい環境に馴染み、人間関係が築けるよう丁寧な養
育のつなぎが必要です。ただし、乳児院から他の児童福祉施設への措置変更をする場合、
再出発先の施設の都合もあり、再出発までにあまり時間が掛けられない場合もありま
す。子どもにとっては、新しい環境や職員に慣れる時間が十分にとれず、不安が大きい
まま、安心できる環境と職員から離れなければなりません。このような状況をなるべく
作らないためにも、入所児が2歳の誕生日を過ぎた頃には保護者の意向が考慮された移
行先の施設が決定し、つなぎの過程に入っていることが望まれます。
再出発にむけて、「養育のつなぎ」を行うために、乳児院では「慣らし保育」に取り
組んでいます。その呼称や方法については地域や施設によって違いますが、子どもが新
しい環境に慣れるための機会の提供、これまで愛着関係を築いてきた職員と離れてしま
うこと、あるいは今後は乳児院以外の場所で保護者との交流が始まることなどを、それ
ぞれの子どもに合った形できちんと伝えることは、自らの意思を言語化することが難し
い乳幼児の代弁者(アドボケイター)としての私たちの使命であり、重要な支援のひと
つです。
慣らし保育は、乳児院と措置変更先相互の理解と、最大限の協力がないと実施は困難
ではありますが、措置変更する日から逆算して3か月前には、移行先の施設から新たに
担当となる職員を派遣してもらい、乳児院内での遊び、食事や排泄・入浴等の介助、散歩
等の同行を通して、子どもとの関係作りや、情報の共有を図ることが有効です。関係が
できたら、乳児院の職員が再出発先の施設に子どもを同行して訪問し、再出発する移っ
ていく施設でのプログラムを複数回(子どもが慣れるまでが望ましいが)体験させなが
ら対象児に生活環境が変わる事への自覚を持たせていきます。実際に3か月前から実施
し、交流回数は 15 回以上を前提として設定し、措置変更をしている施設も存在します。
これは、措置変更先の施設の協力無くしてはできないことでありますが、子どもたちの
心理的な負担を最小限に抑えるためにも可能な限り実施したい過程です。
その2(PDF/2.3MB)(26ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 26ページつなぎの過程の期間は、乳児院の担当職員や心理療法担当職員のみならず、措置変更
先の担当養育者や心理療法担当職員、児相を含めた定期的なアセスメントやカンファレ
ンスを行い、最終的な措置変更への日程を構築する必要があります。
また、「慣らし保育」の実施中には、新しい環境から戻った際の子どもの反応や様子
を丁寧にアセスメントし、児相や措置変更先施設と連携し、退所後の方針や生活等につ
いチェックをすることも重要です。
その他の施設に移行する際の「慣らし保育」の実施については、次項の事例で取り上
げます。
(3)アフターケア(ライフサイクルを見通した支援のなかで)
また、乳児院を退所した子どもが、ふたたび家庭生活を送り、健全に養育され成長し
ていけるよう、措置変更先の施設の協力を得て、乳児院は退所後のアフターケアを丁寧
に行います。子どもたちへ継続的に、精神的な支援を行う観点から考えると、措置変更
後にも必要に応じて措置変更先の施設行事に乳児院の職員が参加したり、ケース会議に
乳児院の職員が出席したりして、乳児院での状況等を伝えていくなどの連携が必要で
す。
再出発に際しての打ち合わせ時に、必要に応じて措置変更先のケース会議に参加でき
るように取り決めを行うことは、退所時の支援計画の中に盛り込んでおきたい事柄でも
あります。
上記のように、乳児院によるアフターケアは、レスパイト等の事例を除けば移った後
は、退所した児童に対して直接行うというよりも、対象児が健全に育成されているかと
いう見守りが主となるため、措置変更された児童養護施設の職員への相談援助業務等と
いった間接的なアフターケアが中心です。
アフターケアの期間的定義は存在していません。上記のような間接的なアフターケア
の他に、乳児院を退所した児童自身に対する直接的なアフターケアが、退所し長い年月
が経過した後に突然訪れることがあります。
たとえば、過去に乳児院に預けられた経験のある児童養護施設出身者や里親家庭で育
った方から、自分の生い立ちや、乳児院時代のことについて知りたいと突然連絡が入る
ことがあります。その方の乳児院時代の記録を探してお伝えするのですが、そのとき、
幸いにも当時担当していた職員が対応して、当時の思い出話をしながら当時の記録写真
等を見せると、涙を流されて「自分は大切にされていたんだ」と実感されて話される方
もいます。
また、児童養護施設在籍中の子どもたちも同様です。親の所在が分からなくなってし
まったり、親の顔さえ知らない子どもたちが、自分の生い立ちについて知っている人達
その2(PDF/2.3MB)(27ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 27ページが存在し、当時の話を語ってくれたり、自分が生活していた軌跡が確認できることは非
常に心強いことと感じています。
アフターケアの期間的な定義がないというのは、まさに、このような状況が訪れた場
合に、乳児院がその求めに応じることが必要であるからです。保存文書や写真の公開等
は、守秘義務や個人情報保護法等の法的な制約もありますが、(1)で述べたように、
日頃から意識的に乳児院での生活の記録写真や、永久保存とされている乳児院入所した
子ども達の記録の文書を残しておくことのみならず、入所している子ども達に関わった
職員が長く務め、入所していた頃の話を伝えることのできる職場の環境構築も、大切な
アフターケアにつながります。
その2(PDF/2.3MB)(28ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 28ページ(4)事例に学ぶ5
① 児童養護施設への養育のつなぎ
ⅰ.事例の概要
① 入所時年齢 :生後2か月
② 退所時年齢 :2歳2か月
③ 入所理由 :父から母への DV、母が父への傷害により逮捕
④ 家族構成 :父、母、子W
ⅱ.経過
(a)入所中の様子
子Wは、生後2か月で入所した当時から大変音に敏感な子どもで、音に反応して大泣
きをすることが多くありました。子Wが寝ている側で、職員が物を落とした音に反応し
て、ゆりかごから飛び跳ねるよう身を固くして大泣きをしたことがとても印象的でし
た。
入所当初は感情の起伏が激しく、大泣きをして訴える子どもでした。発育は順調でミ
ルクをよくのみ、お風呂が大好きでした。
退所時の遠城寺式発達検査では、平均以上の発達状態と判定され、三語文での会話が
成立していました。好き嫌いがはっきりしており、しっかり自己主張ができました。
家庭の状況は、母の逮捕後も両親は離婚はせず、母が出所した後は別居での生活でし
た。
面会は、8か月時に父母で 1 度来園をしましたが、その後途絶えてしまいます。2歳
の時に父が来園し、今後継続して引き取りの準備をする方向で話をしましたが、その後
再び途絶えてしまい、入所期間中に 2 度しかありませんでした。
(b)児童養護施設への措置変更について
子Wが1歳 11 か月の頃、父から児童養護施設への措置変更の意向が児相の児童福祉
司に伝えられ、措置会議を経て、同一法人内の児童養護施設への措置変更が決定しまし
① 児童養護施設への養育のつなぎ
事例に
学ぶ5
その2(PDF/2.3MB)(29ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 29ページた。その際、乳児院及び措置変更先の児童養護施設に措置変更日程の調整と措置変更へ
の準備をするように連絡が入り、乳児院の家庭支援専門相談員と担当職員(養育担当者)
及び、児童養護施設の家庭支援専門相談員と担当居室の職員で措置変更日と、措置変更
までの交流期間、交流内容等の調整を行いました。
本乳児院では、法人内の児童養護施設への措置変更時には対象児の心理的な不安を軽
減することを目的とした手順を児童養護施設との間で定めてあり、その手順に沿って交
流を行うこと等を確認し、その結果を児相に報告して承諾を得ました。
話し合いの結果は以下の通りです。
(ア)措置変更日は打合せから 3 か月後の、2歳2か月時とする。
(イ)交流に来院する児童養護施設の保育士は 1 名に限定し、子Wとの関係がより深
められることや、養育担当者間での情報の交換が十分にできる体制を整える。
(ウ)交流に関するスケジュールの変更等は、乳児院の担当職員と、児童養護施設の
担当職員で相談の後、所属上司の確認を経て決定とする。
(エ)措置変更準備の手順について
・第1段階:子どもの生活状況を観察する。
離れて様子を見ながら、発達状況・保育士との関わりなどを観察する。
(内容:遊び、食事、午睡、排泄、入浴など、対象児の発達状況を把握する)
・第2段階:子どもと顔見知りになり、関係を深める。
週1回程度の乳児院訪問から始める。徐々に回数を増やして関係を深める。
1回につき、おおむね2~3時間を目安とする。子どもの生活に入り一緒に
遊ぶ。
※無理強いはせず徐々に関係を深める。
・第3段階:児童養護施設の生活環境に馴染む。
児童養護施設の生活環境に少しでも慣れることができるように、おやつや食
事、遊びの時間等に合わせて児童養護施設へ訪問する。
※最初は乳児院の担当職員が同行する。子どもの適応の状況によっては、児
童養護施設の担当職員との個別の時間を設定し関係を深める。
(c) 児童養護施設との交流中の様子
児童養護施設職員とのスケジュール調整の際に、交流に費やせる時間を十分にとれる
ように担当職員に要請し、乳児院の担当職員と一緒に児童養護施設に遊びに行く計画も
盛り込みました。はじめは、顔見知りになることから始め、乳児院の日課の中で少しず
つみんなと一緒に過ごしていきながら、児童養護施設の担当職員に子どもの様子を観察
してもらいました。(身辺整理、社会性、言語面や生活リズムなど)ストレスが溜まら
その2(PDF/2.3MB)(30ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 30ページないように、乳児院内のケース会議では、児童養護施設の担当職員と個別に対応できる
よう協力を要請したり、児童養護施設で一緒によく遊ぶお友達との時間を作るために、
昼食や午睡の時間を少し遅らせるようにしました。
乳児院内で児童養護施設の職員と一緒に少しずつ交流ができるようになったら、食事
の場面や排泄、入浴なども、児童養護施設の職員にも一緒に介助してもらいました。
乳児院の職員が側に居ることで、子Wも安心して遊んでいましたが、排泄や入浴の介
助を児童養護施設の担当職員にしてもらう場面で、爪かみが時々みられたり、乳児院の
職員に要求を強く出したり、担当職員への後追いが強くなったり、担当職員を見つける
と、ドアを開け放って担当職員を追うなどの行動が見られました。受け止め、何度も繰
り返す対応が必要でした。子Wは、自分のやりたいことなどを言葉で伝えながら、自分
自身が気持ちのおける場所を探しているようでした。そんな時には、担当職員と一対一
で法人内を散歩しながら、話す時間を持ちました。何度か散歩を繰り返しますと、措置
変更についての話ができるようになりました。
幸いにも子Wと同じ年齢で、先に乳児院から措置変更された仲の良い子がいて、児童
養護施設へ行った折に、その子と遊ぶことが出来ましたので、昼間はその子が通う昼間
保育所に遊びに行きたがったり、「担当職員も一緒に行くのか?(児童養護施設の担当職
員になるのか?)」など措置変更に関することを聞いてくるようになりました。
措置変更に持っていく荷物の準備で、愛着のある玩具類は、児童養護施設に持って行
けるので、担当職員が「おもちゃはどうしようか?」と聞くと「全部持って行く」と言
って一緒に支度をしました。
交流の最終段階には児童養護施設食堂で夕食を一緒に食べるというプログラムが設
定されており、乳児院の担当職員も同席しましたが、児童養護施設の子どもたちに圧倒
されてしまい、2 回目の夕食時には児童養護施設の玄関で泣いてしまうこともありまし
た。しかし、回を重ねる毎に児童養護施設の雰囲気や、担当となる職員との関係もでき
ていきました。
措置変更当日、乳児院内の職員に「お世話になりました」と子Wが担当職員とお別れ
の挨拶をして回り、乳児院内の職員とお別れを済ませて、児童養護施設に出発しました。
児童養護施設に向かって歩いていると、子Wが「もう泣かないよ」と担当職員に話し、
児童養護施設を離れる担当職員に向かって泣かずに「バイバイ」と手を振る様子が印象
的でした。
児童養護施設では本児を受け入れた担当職員が3日間連続で勤務するシフトを作って
くれており、受け入れ後もその職員が勤務している時には子Wの様子を電話で報告して
くれました。
その2(PDF/2.3MB)(31ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 31ページ(d) 交流に関しての記録
・交流期間:約3か月
・第 1 段階:子どもの生活状況を観察する … 3 回
・第 2 段階:子どもと顔見知りになり、関係を深める … 8 回
(散歩への同行から始め、食事・排泄・入浴の介助など 8 回)
・第 3 段階:児童養護施設の生活環境に馴染む … 7 回
(児童養護施設の居室でおやつを食べ、居室で遊ぶ 4 回、食堂で夕食を食べる 3 回)
ⅲ.まとめ(乳児院としての)
子Wの措置変更では子W自身の発達が順調で、言語による会話が成立し、自己主張が
しっかりとできていたことも比較的スムーズに進められた要因ではあります。しかし、
同一法人内への措置変更と、受け入れ先の児童養護施設の理解や協力が得られて、3 か
月という交流期間が取れたこと、担当職員同士が子Wについての情報交換を密にして共
有することができたことが考えられます。
その情報の中で、子Wが乳児院で一緒に遊び、とても仲がよかった子どもたちが措置
変更されていなくなり、少し寂しい思いをしていたことや、一番仲が良かった子が児童
養護施設にいることを知り、児童養護施設での居室は違っていましたが、児童養護施設
の職員の機転で、子Wが児童養護施設へ遊びに行く時にその子と遊べるように配慮して
くれたことで再会することができ、寂しさが少し癒えたようです。
児童養護施設での担当職員の勤務もあり、交流を行う時間の捻出に大変苦労されたと
思いますが、措置変更に関する交流や、担当する職員間の情報交換による共有なくして
はなし得なかったことだと痛感しています。
その2(PDF/2.3MB)(32ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 32ページ6.乳児院における地域支援
(1)乳児院の機能として
全国に 131 か所の乳児院があり、保育所と同様に地域支援の必要性を求められていま
す。社会的養護の中でも、乳児院の地域支援は、その専門性も含めて大きな期待をされ
ています。誰もが初めての子育ての時には、不安や悩みを抱くものです。そういったと
きに身近に相談や訪ねていける場があることは、心強いことです。
乳児院では、様々な取り組みを行っておりますが、2012 年度(平成 24 年度)の状況
として、子育て支援事業として、一番多く取り組んでいるのは、ボランティアの受け入
れになります。開かれた施設として、地域のボランティアの受け入れは大切なことです。
乳児院の考え方もありますが、授乳ボランティアや抱っこボランティア、環境整備ボラ
ンティア、読み聞かせボランティア、行事の際のお手伝いボランティアと受け入れてい
る先のニーズに応じて活躍をされています。
一方で、考えておくべきこととして、子どもの生活の場に来ていただくということに
なるので、十分なオリエンテーションがされるべきです。内容としては、ボランティア
希望の動機はもとより、体調面や守秘義務、子どもの権利擁護などに触れておくことで
す。初めの関わりから長く続けていただくにも、しっかりとした関係性を持つことが望
まれます。
子どものショートステイ事業を約 90 か所の乳児院が取り組んでいます。ここに書か
れた事例などで、家庭復帰を行う先の地域において、その家庭を支えるために様々な機
関が連携を行っていると考えます。引き取りの条件として、保育所の入園が条件になっ
ていますが、家庭に帰った後に、体調がすぐれなくなって、一時的にも子どもを預かっ
て欲しいという時に、子どもの方が慣れた環境の乳児院にショートステイでの利用がで
きるということは、保護者にとっても大きな安心です。家庭復帰前に地域資源の確認と、
もしもの場合を想定しておくことも、乳児院の家庭支援相談員や児相の児童福祉司とし
て大切なことになります。保護者の地域に機能がない時には、その場合のことも考えて
おくことになります。ショートステイ事業などを受託する施設の側に立てば、乳幼児の
子どもを預かるということは、リスクもあることですが、他の機関より乳児院がより専
門性があり適している以上、必要なことと考えることが重要です。その受け皿となって
いる状況を、人配置なども含めて検討をしていく時期に来ています。特に都市部におい
ては、入所を断らざるを得ない状況があるほど、定員が埋まっている状況です。かつて
のように、空き定員の中で私的契約や、ショートステイなどを行うなどの対応は、難し
くなっております。入所定員の空き定員で行うのか、プラスして定員外で行うのか検討
が必要になります。
その2(PDF/2.3MB)(33ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 33ページ児相の機能の中で、乳児院に措置していく子どもと、地域の子育て支援センターなど
で、見守り地域資源を活用していく子どもとに分かれてきています。措置による子ども
と地域の利用の子どもとの差異は見られず、ほとんど同じような状況です。お願いされ
る事例として、①レスパイト②次子出産③その他となり、以前から乳児院の入所理由に
なっている部分と重なります。年間に 2~3 事例は、ショートステイ事業から措置へと
切り替わる事例が出ております。元々、児相で関っていながら、子育て支援センターに
お願いをして、関わりを続けていることが多く、ショートステイ先の乳児院での父母の
様子や子どもの発達面等で措置に切り替わることや、母が一旦預けたことにより、気持
ちや生活の張りが失われて、入所になった事例などがありました。
子育て支援センターが果たす役割として、乳児院とのショートステイの受け入れ調整
機能が求められます。乳児院としては、住所のある地域行政とのショートステイ事業に
まつわる契約を行う場合は、受け入れ体制や入所する子どもと利用する子どもの双方に
対してよい体制が取れるように、費用面での安定した収入での運営作りが求められま
す。受け入れが可能になることによるメリットと感染症などの隔離状況にあるときは受
け入れられないなどのデメリットを説明しておく必要があります。入所している子ども
に負担をかけないような利用ができることが理想的です。
(2)地域支援の具体的な展開として
24 時間 365 日運営を行っている社会的養護の乳児院としては、0 歳~2 歳までの子ど
もたちへ対応できる強みを生かしながら取り組んでいける場でもあります。しかし、乳
児院に付設して、児童家庭支援センターや地域子育て支援センターがあるところは、約
30 か所で全体の 4 分の 1 程度になります。本体事業の運営を行いながら、センターを開
設している所では、職員配置なども含めて必要性は感じながらも実際に運営していくこ
との大変さもあるようです。建物の改築に合わせて設置するなどの工夫や、行政に働き
かけて運営できるようにすることが望まれます。措置入所した子どもたちは、家庭復帰
までに時間を要す場合がありますが、ショートステイなどの利用であれば、利用日が終
えると家庭に帰ることになります。地域の予防的な側面を持てる良い面があります。
保育所では、様々な形で地域支援を行うことが望まれておりますが、乳児院では地域
へのサービスとして、電話相談や育児相談など乳児院の機能を活用して行える事業もあ
ります。大幅な人員増などの必要もなく、場所や人材の活用でできる事業になります。
(1)で述べた機能を有する部分以外にも何か提供できるという姿勢は必要です。
里親支援の重要性が出てきました。委託されていく子どもと里親を結び付けていく取
り組みは、乳児院の業務になりますが、委託されていった里親支援や子ども支援も大切
な取り組みになります。里親向けの研修やサロン開催などが出来れば、より近しい関係
その2(PDF/2.3MB)(34ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 34ページとして乳児院の利用があると思います。
(3)乳児院の地域支援・連携について
ある乳児院に併設している地域子育て支援センターで、週に 5 日開設型ひろば事業や
一時預かり事業、ショートステイ事業、ホームスタート事業などを行っています。社会
福祉事業の第二種事業で、行政からの委託事業の形態を取っています。今年で開設 10
年になりますが、地道にできることを毎年、増やしてきている実績があります。正規職
員が 4 名と非常勤パート職員が 6 名の合計 10 名で様々な業務にあたっています。ひろ
ばは、子育て中の親子にとって出会いの場になります。都市部にある子育て支援センタ
ーとしては、近隣に縁者がない家庭の方で孤立しがちな親子が、遊びに行ける場は必要
です。そこのひろばを中心にして、ニーズに応える形で展開しております。地域活動ワ
ーカーが、全体のまとめ役を行っていますが、乳児院のある地域で乳幼児に関る団体(保
健センター、保育所、幼稚園、児童家庭支援センター、図書館、学童クラブ、冒険クラ
ブなど)の事務局でもあり、情報が一手に集まるようになっています。社会福祉協議会
の力を借りて会報を出したりしています。この会報は、属している団体の窓口には、毎
月毎に新しい情報として置かせていただきます。また、年に 2 回の担当者会議等も開催
しています。
まだ、どこにも属していない親子にとって、貴重な情報源になることから、何時どこ
で、何歳児を対象としたプログラムがあるかということを知るにはとても助かっている
という話も聞きます。参加している職員にしても、地域の情報は貴重なものになります
し、ショートステイ事業を利用する予定の親子の話を聴けたりする場になります。
保育所や幼稚園の園長先生からの情報で、空き定員のあることや様々な学習会などの
案内がある場合もあります。地域子育て支援センターで開催する「先輩ママからの保育
所学習会」や「幼稚園学習会」などの話をする時に、役に立ちます。最大の利点は、顔
と顔を合わせて一堂に会している関係上、やりやすさがあります。電話連絡を行なうに
しても、関係性は近しくなります。ショートステイ事業においては、地域の窓口である
子育て支援センターと一緒にケース会議を行ったり、日々のやり取りを行うことで継続
してその親子の状況を支えていく役割も持てました。
その2(PDF/2.3MB)(35ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 35ページ(4)事例に学ぶ6
① 地域支援事業の実際
ⅰ.事例の概要
統合失調症の母が入院。子どもへの想いがとても強い父は入所に抵抗を示されます
が、同じ地域にある乳児院ならば、と入所同意。以後仕事の合間に面会外泊を実施しま
した。母退院後は母に寄り添い親子関係の再構築の支援をしました。近所には当院の地
域子育て支援センター事業を利用した方も多く、乳児院入所への理解も深く、母もよく
地域の先輩ママに相談していました。統合失調症が悪化した際も、地域と父と当院でサ
ポートしました。2 歳で当法人内保育所を利用しての家庭復帰をし、以後も当院のアフ
ターケア及びショートステイ事業を利用しながらの養育ができています。
子どもの入所時の年齢:0 歳 1 か月
子どもの退所時の年齢:2 歳 2 か月
入所理由:母傷病、養育困難
家族構成:父、母、子Y
ⅱ. 経過
(a)入所までの経緯
10 年来精神疾患及び違法薬物使用歴のある母は、子Yの出生後まもなく精神不安定に
なり緊急入院になりました。父は日中から夜間まで仕事があって、親族の支援も限界が
でていました。地域の保健師が児童家庭支援センターのワーカーに連絡し、ショートス
テイの利用を検討しましたが、母の退院の見込みもないため、乳児院入所が検討されま
した。父は集団生活になることによる感染症罹患や怪我、面会や外泊時間の制限等を気
にされて、最後まで躊躇されていました。ただ当院が自宅から最寄り駅に向かう途中に
あって父は当院を知っていたこと、同敷地内に保育所や地域子育て支援センターがあり
子育て支援の場所としての安心感があったことから見学を経て、入所承諾されていま
す。引き取り時期については、母の退院とイコールではなく、母の主治医の見解を得る、
保育所を利用する、ことに父も同意されました。
① 地域支援事業の実際
事例に
学ぶ6
その2(PDF/2.3MB)(36ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 36ページ(b)親の状況
父は子Yの泣き方でオムツかミルクか判断できるほどで養育自体は問題ありません
でした。仕事の前に面会に来られ、体調や様子について確認され、子Yにも「お母さん
は子Yに会えるよう今頑張っているよ」と説明していました。2 か月後、母が退院にな
り、父母面会を実施しました。6 か月後、母の主治医の見立ても受け、母単独面会を開
始しました。
(c)母の緊急入院
入所から 1 年経過した頃、母は近所の公園でトラブルに巻き込まれ警察沙汰になりま
した。母は強い怒りを見せて、警察にパトロール強化を頼み、同じ地域ということもあ
り乳児院への警護も強く要望されました。「子Yはどうしているか、大丈夫か」という
電話が、夜間や早朝にもかかるようになりました。ある夜、母が突然来院され、大声や
誇大妄想などによるおかしい言動がみられました。家庭支援専門相談員が対応しなが
ら、父に連絡を入れてくれるように、残っていた職員に合図を送りました。近所で暮ら
す B さんが心配して来てくれました。父が職場から駆けつけて、「こんな時間に来ては
いけないでしょ」「薬物はやめたよね」など優しく言われ、母も素直に頷き、帰ってい
かれました。翌早朝、母は自分で警察に行き意味不明なことを言い保護され、父が迎え
に行きそのまま緊急入院となりました。
(d)地域での支援者
地域に住む B さんは子どもがおり、当院の地域子育て支援センターを利用されてきた
方でした。そのほかにも、両隣と B さんの奥の家の方もセンターを利用して子育てをさ
れてきました。子Yが入所していることもご存知で、母に先輩ママとして助言をしてい
たそうです。母は、来院される前に B さん宅を訪れていて、その時の母の言動を心配し
た B さんは父に連絡し、母に付き添って乳児院の外で待っていました。
母は早く子Yを家に引き取って、B さんみたいにひろば利用者になりたいと話してい
たようです。市内にも地域コミュニティのある地区があり、母はとても恵まれました。
引き取りへの期待と不安が交錯していたこと、公園での警察沙汰がきっかけで不安不眠
から急激に病気が悪化した、と後に父から聞きました。違法薬物を 1 回使用したことも
認めています。まずは母が治療に専念し、退院した後には再度家庭復帰に向けて取り組
んでいきましょう、と父を励ましました。
その2(PDF/2.3MB)(37ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 37ページ(e)母の回復と親子関係再構築にむけて
母は 3 か月の入院となり、退院後再び面会から開始しています。1 回とはいえ薬物を
手にしたこと、それを父が知っていながら止めなかった事を重くとらえ、当面は院内面
会のみにしました。その間、地域子育て支援センターの催しに親子で参加したり、集い
のひろばで遊んでもらうこともありました。地域の子育て情報コーナーも活用してもら
いました。6 か月後、父母の猛省と主治医による母の回復具合を見て散歩を開始、そし
て外出、外泊へと慎重にステップをあげていきました。
(f)退所にむけて
入所から 1 年半後、子Yの父母への想いも強く、家庭復帰の可否を検討するため、病
院にて、児相、保健師、児童家庭支援センター、乳児院、病院の訪問看護師が集まり検
討しました。保育所入園と母の通院継続、訪問看護と保健師・児童家庭支援センター・
児相の継続指導、そして、乳児院のアフターケアで体制的には問題ないことが確認され
ました。以後も定期的なカンファレンスを実施しました。
保育所が決定し、父母の同意のもと保育所と十分な引き継ぎを行い無事退所となりま
した。乳児院に時々遊びに来ては元気なお顔を見せてくれます。母のみふらっと来てお
話をして帰られることもあります。疲れがたまった時にはショートステイを利用されて
います。
ⅲ.まとめ
本事例は、乳児院のある地域に住居を構えている事例であり、近しい距離に住まわれ
ていることによる地域支援である。歩いてすぐの距離に家庭復帰後もいることでの、日
常的な顔合わせが存分にあります。
距離の問題は、大きいことであり、よい方向の部分が出てくる支援を続けたいと思い
ます。乳児院側としては、家庭復帰していった家族に対して外であった場合も目礼やあ
いさつ程度にするなど節度を持った関わりが必要と思います。
乳児院の機能をもって、地域支援事業を展開し、ショートステイなどで利用の必要が
ある場合は、子どもの居たクラスで見ることや、担当であった職員との関係も考慮して
いくなどが求められます。
その2(PDF/2.3MB)(38ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 38ページ第Ⅳ部 乳児院における人材育成
1.人材育成の大切さと「乳児院の研修体系」
2000 年(平成 12 年)に制定された児童虐待防止法は、児童虐待に対応する職員の専
門性の向上に国や自治体が努めるべきことを明記しています。それは、子どもや家族の
抱えた課題は深刻で、その対応には高度の専門的知識と技術が必要となることを踏まえ
てのものです。実際、施設に入所する被虐待児の増加と支援困難状況は大きくなる一方
です。難問題を解くがごとくの難しい事例を前にして、支援体制の強化と支援者の力量
向上に向けた人材育成は、もはや重点的に取り組むべき喫緊の課題であるという認識が
必要です。特に乳児院では、人生初期段階の子どもを養育するという重要性を考慮すれ
ば、その必要性はより大きいといえるでしょう。
全国乳児福祉協議会は 2012 年度(平成 24 年度)に「乳児院の研修体系―人材育成の
ための指針―」(以下、「研修体系」)を作成、発刊しました。上記の状況を踏まえても、
期をとらえた意義ある発刊と言えるでしょう。人材育成の体系を明示することは、職員
の育成の道筋を示すと共に、乳児院で働く職員がどのような専門性を磨き、持ち得てい
るかを示すこと、ひいては乳児院の専門性を社会に示し社会的承認を得るという意味も
兼ね備えています。周囲から見て、乳児院がどのような専門性を持ち、ゆえにどんな社
会的要請に応えられるのかが分からなければ、社会からの信頼は得られません。しかし、
体系を明示しただけでは、ただの絵に描いた餅です。各乳児院が人材育成に努めなけれ
ば、社会的責務は果たせません。また人材育成の実践を通して、既存の研修体系を批判
的に分析し、より良い研修体系へと再編していくことが求められます。乳児院の専門向
上に向け活発に取り組んでいることを社会が認識し、重要な施設としてこれまで以上に
認められていくことを目指しましょう。
2.職員の専門性の明確化とレベルごとの学ぶべき内容の整理
「研修体系」では、乳児院の職員に求められる職員の専門性を、5 つの領域に分け、学
ぶべき視点を示しています(表参照)。5 つの領域とは「養育の専門職としての基底をな
すもの」「乳幼児の養育に必要な専門的知識」「チームアプローチと機関連携」「保護者
支援に必要な専門的知識」及び「里親支援に必要な専門的知識」です。
その2(PDF/2.3MB)(39ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 39ページ表 乳児院職員の専門性の5領域
「研修体系」では、3 年目までの新任職員、中堅職員、上級職員・チーム責任者、基幹
的職員という 4 つの育成レベルに設定し、育成レベルに応じて5領域ごとの学ぶべき内
容を一覧表として明示しています(「研修体系」p.18―p.20)。 各施設は、この表を目
安とすることで、個々の職員に対して、何を学ぶべきかの検討がしやすくなるでしょう。
例えば、いくつかの研修に参加した後、受講した内容を一覧表と照らし合わせることで、
次にどのような研修に参加すべきかが自ずと見えてきます。職員ごとにこうした整理を
することは、同じような研修に何度も参加する(もちろん繰り返し参加することが望ま
しい研修もあります)ことを避けるなど、より効率的な研修計画が可能になります。
3.人材育成の柱となる OJT
人材育成には次の三つの様式があります。一つは先述した OJT(On the Job Training)
で、日々の業務の中で専門的知見や技術を身につけていくあり方です。児童福祉領域で
中心となるのは対人援助実践からの学びです。事例から学ぶことの積み上げは、支援者
の専門性の向上に大きな力となるでしょう。2 つ目は OFF-JT(Off the Job Training)
で、業務から離れて研修に参加するあり方を指します。最後は SDS(Self Development
領域
養育の専門職
としての基底
をなすもの
乳幼児の養育
に必要な専門
的知識
チームアプロ
ーチと機関連
携
保護者支援に
必要な
専門的知識
里親支援に必
要な
専門的知識
主な
内容
乳児院の役割
福祉制度・法律
子どもの権利
擁護・施設内人
権侵害等
専門職として
の倫理
観察、記録
支援者として
のマナー・社会
性
救急対応と事
故防止
感染症への対
応
身体的発育
情緒及び社会
的発達
身体疾患
精神的症状や
問題
乳児院におけ
る物理的環境
と人的環境
アセスメント
養育スキル
チームアプローチの
理解
職員のサポー
ト
機関連携
スーパービジ
ョン
職員のメンタ
ルヘルス
保護者対応の
姿勢、あり方
面接技法、電話
相談
家族の抱えた
リスク要因の
理解
精神疾患の理
解
母子関係の調
整
保護者支援の
ため多分野協
働
里親制度
里親支援
里親と子ども
との
その2(PDF/2.3MB)(40ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 40ページSystem)です。これは職員自身が自主的に文献や論文等を読み、勉強会を開いたりなど
して研鑽を深めるあり方です。人材育成の柱となるのが OJT です。OFF-JT や SDS は、専
門的知見や他施設の実践など情報の取得や一定のスキルを習得するには有効ですが、そ
れを実践の場で生かしてこそ意味を持ちます。OFF-JT や SDS は OJT 活性化の起爆剤とな
れればほぼ十分と考えてよいでしょう。
人材育成の本質的なねらいは、個々の職員を支え、支援者としての素養を最大限に発
揮できるよう導くことにあります。人材育成が一方的、強制的なものとなり、それによ
って職員にさらなる負担を強い、やる気を低下させたとしたら本末転倒です。職員の素
質を見出し、現在の課題やニーズを整理し、職員が自ら目標を持って主体的に取り組め
るよう支援することが重要です。職員が育つことは、子どもと家族への支援の質的向上
につながることはもちろんのこと、職員のやる気と生きがいにも通じていきます。
4.OJT の柱:スーパービジョン
OJT の一つとしてスーパービジョンは極めて重要です。スーパービジョンとは業務に
関する様々な相談や助言等を行うことで、職員を支え、導くための主要な手立てといえ
るでしょう。ただ一人のスーパーバイザーが全ての職員の相談に応じることは難しいこ
とです。新任の職員が中堅以上の職員に相談し、中堅職員は上級以上の職員に相談する
といった重層的な相談体制が構築されることで、実効性あるスーパービジョンが展開さ
れます(図参照)。
こうした体制を構築することで、新人はやがて中堅となった時には新人のスーパーバ
イズを行うことが目標となり、中堅は上級としてのスーパーバイザーになることが目標
上級職員
チーム責任者
基幹的職員
上級職員
チーム責任者
ケアチーム
中堅
新人
ケアチーム
中堅
新人
ケアチーム
中堅
新人
ケアチーム
中堅
新人
その2(PDF/2.3MB)(41ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 41ページとなります。スーパーバイズ体制の頂点に位置するのが施設長や基幹的職員となります
が、スーパーバイザーをこのように段階的に目標を定めて育成することは、人材育成の
過程そのものなのです。
相談内容は、「担当する子どもの理解、関わり方、支援方針に関することがら」等を
中心として様々ありますが、相談できる体制があることは、職員にとって大きな支えと
なり、職員の孤立化やバーンアウトの予防等、職員のメンタルヘルスケアにとっても有
効な手立てとなります。つまりスーパーバイザー体制は、人材育成のみならず、支援者
への支援体制としても重要なのです。しかし体制だけ整えてもその目的は果たせませ
ん。上のレベルの職員は下のレベルのモデルとなる必要があり、スーパーバイザーは人
材の目指す方向にふさわしい知見、技術、素養を持ち、かつ人材育成の対象となる職員
から信頼を得ていることが前提となります。信頼されない者が、人材育成のために諸々
の行為を行ったとしても、その成果は期待できません。信頼を得ることは簡単ではあり
ませんが、一方的な働きかけではなく、対象となる支援者の立場になって考え、苦楽を
分かち合うなどの共感的姿勢が重要となります。そのための基盤として支援者同士で支
え合おうとする文化が施設内に根付いていることが前提となります。
5.OJT の柱:ケース会議
OJT のもう一つの柱がカンファレンスです。養育実践において、個々のケースを適切
に理解し、適切な支援方針を構築する、いわゆるアセスメントが要となります。アセス
メントを的確に行うために、ケース会議が極めて有効な方法となります。ケース会議に
決まった形式はありませんが、子どもに関わる多くの職員が一同に介したカンファレン
スを定期的に設定することは重要です。カンファレスは、ケースに関する情報の把握と
共有、情報に基づいたケースの抱えた課題の理解と整理、課題解決に向けた具体的な支
援方針の設定といった流れが基本となります。(アセスメントとカンファレンスのあり
方については、全乳協が作成した「乳児院におけるアセスメントガイド」参照のこと)
カンファレスを通してより適切なケース理解と支援方針の設定を目指しますが、こう
した取り組みを継続することは、施設の支援力を高めていくことにつながります。ケー
スから学ぶことは実に大きいです。カンファレンスは、こうした学びを整理し収めてい
く機会であり、重要な OJT の場でもあることを強調したいところです。
その2(PDF/2.3MB)(42ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 42ページ6.ポイント制と振り返りノート
「研修体系」では、研修の参加実績をポイントとして累積し、職員ごとのレベルに応
じて必要なポイントを獲得することを推奨しています。ただ、ポイントの獲得は、各職
員の努力のみにゆだねられるものでは全くありません。そうではなく施設の人材育成に
対する姿勢がポイントの獲得を左右するようになっています。施設が職員を研修に参加
させることや、カンファレンスやスーパーバイザーの体制を整えることなしには達成で
きないしくみなのです。施設内で人材育成が活発に展開できるよう、「研修委員会」等
を設置するなどして、人材育成と研修体系および研修の実施を中心的に行い、各職員が
必要なポイントを獲得できるよう、人材育成の環境を整えていくことが重要となりま
す。人材育成の環境とは、カンファレンスやスーパーバイズ体制など OJT が充実できる
ような環境を整えること、「研修体系」を参考にそれぞれの職員に必要な研修に参加で
きるよう配慮すること、施設内での研修が充実していることなどです。最後の施設内研
修は、講師を招いて、今の施設にとって必要な内容の研修について、講師を招いたり、
研修ビデオを用いたり、討議形式で行うなど、様々な方法が考えられます。どのような
形態で行うことが有効かについて検討も研修委員会に求められます。
「研修体系」では、一定の研修参加に対して、気づいた点など振り返り記載できるよ
う、「振り返りノート」の活用を提案しています。これらを活用することで、研修履歴
を残すことが可能となります。自分が何を学んできたか、今後何が必要かを検討する際
に活用すべきものです。
また「振り返りノート」は研修履歴のみでなく、自分の成長の軌跡を残すものでもあ
ります。何年か後にこれを読むことで、自分の成長を実感できると思います。成長の実
感は、職員のレジリエンスを高め、仕事への意欲が高まることにつながるいでしょう。
その2(PDF/2.3MB)(43ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 43ページ≪ハンドブック全体を通しての注釈≫
担当養育制:子どもの発達におけるアタッチメントの重要性を考慮し、乳児院では担
当養育制をとっている(保育所保育と区別するために、乳児院では「養
育」という表現を使うことが多くなってきている)。
担当養育制は、保育者が受け持つ子どもを決めて、できるだけその子と
のかかわりを多くすることにより、子どもと担当養育者との間に緊密な
関係を形成することをめざす養育方法。
情動調律: 乳児のほんの少しの顔面表情筋の動きを、母が乳児からの働きかけとし
て敏感にキャッチし、その動きに応じて母が波長を合わせて応じると、
豊かなやりとりが出現する。このミクロな相互作用は視覚のみならず、
聴覚、皮膚感覚、振動感覚、筋緊張感覚など全感覚において生じる。感
覚のモードと関係なく感覚刺激のタイミング、トーン強さ、振幅などの
要因が母子間で互いに調和していく状況。
乳児用呼吸モニター:乳児(1 歳未満)を対象として開発され、乳児の呼吸などによる
身体の動きを圧センサーにより感知し、乳児の身体の動きの回数が一定
回数以下に低下したり、一定時間以上停止した場合にアラーム音とラン
プにより警告する器具のことをいう。
定頸: 首がすわること。
自律授乳: 授乳は、「赤ちゃんがほしいときにほしいだけ…」という自律授乳が一
般的な考え方の基本であることを認識し、乳児院でも自律授乳を前提と
している。
児童自立支援計画書:乳児院をはじめ、児童養護施設などの施設の入所児に関する支
援計画。施設には、自立支援計画の策定が義務づけられ、児相の指導の
もと、児童や保護者の意向と、関係者からの意見をもとに作成されるこ
ととされている。言葉で思いを表現できない月齢の子どもを預かる乳児
院では、子どもの思いや発達状態をアセスメントし、計画に反映させる
ことが重要。
措置変更: 乳児院では、原則0~2歳児を養育することとされている。(ただし、
平成 16 年度の児童福祉法改正により、2 歳までと限定せずに「幼児:
就学前(満 6 歳まで)」は措置延長により養育できることとなった。)
乳児院退所後、家庭引取が困難である場合、児童相談所の判断によって
児童養護施設等の他施設への入所措置に切り替わる。
乳児突然死症候群(SIDS):「定義」突然死とは、突然で予期されなかった自然死。す
なわち病死をいい、交通事故や溺水事故、あるいはミルクの気管内誤飲
その2(PDF/2.3MB)(44ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 44ページによる窒息死などによる事故死や他殺は除外して考えられている。通
常、病的な兆候が発症の 24 時間以内に認められず、急激な発症のもと
に 24 時間以内に死亡する例をいう。
乳幼児突然死症候群(以下 SIDS ともいう)の場合は、それまでまっ
たく元気に過ごしていた乳幼児が、ある日突然に死亡してしまい、解剖
してもはっきりとした原因が認められない場合をいう。厚生労働省によ
る SIDS 研究班による定義によれば、「それまでの健康状態および既往歴
からはまったく予測できず、しかも剖検によってもその原因が不詳であ
る、乳幼児に突然の死をもたらした症候群」を狭義の SIDS とし、剖検
の行われなかったものを広義の SIDS としている。
発生頻度は、欧米諸国では 1000 に対して 1~5 という頻度の報告が多
い。男女差は見られず、発症年齢では生後 2~4 か月にピークを認め、
生後 5 か月以内に約 80%が発症するといわれている。
極小低出生体重児:RSウイルス(乳幼児に呼吸器感染症を引き起こすウイルス感染
症)の発症抑制(重症化を防ぐ)のための注射薬。シナジス注射は他の
予防接種違い、月に 1 回、冬から春先にかけて毎月、最長で 6 か月行わ
なければならない場合もあり、保険適応(保険適応の対象は限定される)
にならず高価な費用は課題となっている。
修正月齢: 早産児の発達や成長については、実際に生まれた日ではなく、出産予定
日を基準に考えていく。これを修正月齢という。
シナジス®: RSウイルス(乳幼児に呼吸器感染症を引き起こすウイルス感染症)の
発症抑制(重症化を防ぐ)のための注射薬。シナジス注射は他の予防接
種違い、月に 1 回、冬から春先にかけて毎月、最長で 6 か月行わなけれ
ばならない場合もあり、保険適応(保険適応の対象は限定される)にな
らず高価な費用は課題となっている。
慣らし保育: 乳児院から親元引取が難しく、また里親委託などへの同意が得られない
場合、他施設への措置変更となる。児童養護施設への措置変更、障がい
がある子どもの場合には障害児施設へ措置変更となる場合もある。子ど
もが新しい環境になれるために措置変更先の施設と事前に交流を図る
援助・支援方法を「慣らし保育」という言葉で表現している。慣らし保育
では、乳児院で築かれた信頼関係を大切に引き継ぎながら、子どもの不
安が軽減されるように支援する。また、子どもの生活面、健康面、心理
面、保護者状況などの引き継ぎを丁寧に行う。それゆえ、児童相談所は、
急な措置変更でなく最低でも 1 ヶ月間までには措置変更先を決定する
ことが望まれる。
その2(PDF/2.3MB)(45ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 45ページ母子相談員: 市及び福祉事務所設置町村に配置されている、就業問題なども含めた母
子家庭及び寡婦の抱えている問題を把握し、その解決に必要な助言及び
情報提供を行うなど、母子家庭の母の自立に向けた総合的な支援を行う
職員。
その2(PDF/2.3MB)(46ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 46ページ≪引用・参考文献≫
全国乳児福祉協議会(2009):新版 乳児院養育指針
全国乳児福祉協議会(2012):乳児院の将来ビジョン検討委員会報告書
全国乳児福祉協議会(2013):平成 23 年度全国乳児院入所状況実態調査
今田義夫(2010):乳児院の養育体制・機能に関する調査研究
(財団法人こども未来財団)
厚生省児童家庭局母子保健課(監修)(1999):乳児院ハンドブック
全国社会福祉施設経営者協議会(2001):
福祉施設におけるリスクマネジメントのあり方に関する検討委員会
~検討状況報告~
全国社会福祉施設経営者協議会(2002):
福祉施設のリスクマネジメント 8つのポイント
三井住友海上保険株会社:福祉施設におけるリスクマネジメント
全国社会福祉協議会 全国乳児福祉協議会(2012):
乳児院の研修体系―人材育成のための指針―
全国社会福祉協議会 全国乳児福祉協議会(2013):
乳児院におけるアセスメントガイド
≪資料≫
全国乳児福祉協議会(2013):平成 23 年度全国乳児院入所状況実態調査
日本小児保健協会 衞藤隆(2011):幼児健康度に関する継続的比較研究
(平成 22 年度厚生科学労働科学研究費補助金)
≪参考ホームページ≫
厚生労働省ホームページ
※通知等について掲載されています http://www.mhlw.go.jp/
全乳協ホームページ
※全乳協作成資料等について掲載されています http://www.nyujiin.gr.jp/
第三者評価事業ホームページ
(全国社会福祉協議会)
※評価項目、評価調査者等について掲載されています
http://shakyo-hyouka.net/
その2(PDF/2.3MB)(47ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 47ページ≪掲載資料≫
次頁以降に掲載の資料
資料名 ページ
「ヒヤリ・ハット報告書」様式例1 138
「ヒヤリ・ハット報告書」様式例2 189
「ヒヤリ・ハット報告書」様式例3 140
「児童自立支援計画」通知・様式 142
「児童自立支援計画」様式例1(都道府県版) 146
「児童自立支援計画」様式例2(都道府県版) 147
「児童自立支援計画」様式例3(都道府県版) 149
「養育計画」様式例1 150
「養育計画」様式例2 152
「措置解除等に伴い家庭復帰した児童の安全確保の徹底について」通知・
チェックポイント 154
「児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進について」通知 164
その2(PDF/2.3MB)(48ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 48ページ様式例1
ヒヤリ・ハット報告書
日時 平成 年 月 日 曜日( 時 分頃)
場所
対象児名
仕事の
状況
①非常に多忙 ②多忙 ③普通
④やや余裕 ⑤余裕がある
生年月日 年 月
日
職員名 経験年数 年目 正規 非常勤
パート
出来事の領域別分類 具体的内容 発生時の状況
ケガ等
1 転倒 1.ヒヤリ・ハット内容
(どのような状況、職員配置、職員の意識)
2.未然に防ぎえたことであれば、どうすれば防止で
きましたか?
3.この体験で得た教訓やアドバイスはありますか?
2 転落
3 指はさみ等
4 かみつき
5 ひっかき
6 衝突
7 熱傷
8 溺水
9 誤飲
10 窒息
11 切り傷
12 その他
トラブル
13 誤薬
14 誤食(アレルギ
ー)
15 伝達・確認ミス
16 その他
その2(PDF/2.3MB)(49ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 49ページ様式例2
ヒヤリ・ハット報告書
平成 年 月 日
ヒヤリ・ハット/
アクシデント 状 況
時 間
場 所
対象児名
原 因
関わった他児名
職 員 名
内 容 対応策
転倒 誤飲
転落 指はさみ
かみつき 誤薬
ひっかき その他
誤食
負傷 あり ・なし
その2(PDF/2.3MB)(50ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 50ページ様式例3
その2(PDF/2.3MB)(52ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 52ページ「児童自立支援計画」通知・様式
その2(PDF/2.3MB)(56ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 56ページ「児童自立支援計画」様式例1(都道府県版)
その2(PDF/2.3MB)(57ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 57ページ「児童自立支援計画」様式例2(都道府県版)
その2(PDF/2.3MB)(59ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 59ページ「児童自立支援計画」様式例3(都道府県版)
その2(PDF/2.3MB)(60ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 60ページ「養育計画」様式例1(施設独自版)
その2(PDF/2.3MB)(61ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 61ページ「養育計画」様式例2(施設独自版)
その2(PDF/2.3MB)(64ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 64ページ「措置解除等に伴い家庭復帰した児童の安全確保の徹底について」
通知・チェックポイント
その2(PDF/2.3MB)(74ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 74ページ「児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進について」通知
その2(PDF/2.3MB)(82ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 82ページ※送付サイズ圧縮のため省略(通知5~33頁)
その2(PDF/2.3MB)(84ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 84ページ編集委員一覧
今田 義夫 日赤医療センター附属乳児院(東京都)
栗延 雅彦 和泉乳児院(大阪府)
柴崎 順三 康保会玉淀園(埼玉県)
都留 和光 二葉乳児院(東京都)
◎ 平田 ルリ子 清心乳児園(福岡県)
増沢 高 子どもの虹情報研修センター(神奈川県)
〈50 音順〉 ◎ … 委員長
執筆協力施設(順不同)
赤ちゃんの家さくらんぼ(愛知県)
大阪乳児院(大阪府)
恩賜記念みどり園(静岡県)
かのや乳児院(鹿児島県)
熊本乳児院(熊本県)
神戸少年の町乳児院(兵庫県)
小鳩乳児院(滋賀県)
大念仏乳児院(大阪府)
東京恵明学園乳児部(東京都)
ドルカスベビーホーム(神奈川県)
日赤医療センター附属乳児院(東京都)
乳児院積慶園(京都府)
光と緑の園乳児院(長崎県)
二葉乳児院(東京都)
平安徳義会乳児院(京都府)
麦の穂乳幼児ホームかがやき(岐阜県)
竜陽園(愛知県)
和歌山乳児院(和歌山県)
その2(PDF/2.3MB)(85ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 85ページ乳児院運営ハンドブック
平成26年3月発行
監修 社会的養護第三者評価等推進研究会
編集 乳児院運営ハンドブック編集委員会
厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 家庭福祉課
〒100-8916 東京都千代田区霞が関 1-2-2