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児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)
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変更後 · 1ページ令和元年度厚生労働省委託事業
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する
調査研究
報告書
みずほ情報総研株式会社
令和2年3月
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(3ページ)
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変更後 · 3ページ目次
第1章 本調査研究の背景・目的・方法 ............................................ 1
1.調査の背景 .............................................................. 1
2.調査の目的 .............................................................. 4
3.調査の実施方法 .......................................................... 4
第2章 ヒアリング調査結果 .................................................... 12
1.事前ヒアリングシートにおける各施設の課題 集計結果 ..................... 12
2.各施設のヒアリング調査結果 ............................................. 13
(1)A施設(宮城県) .......................................................... 15
(2)B施設(栃木県) .......................................................... 23
(3)C施設(埼玉県) .......................................................... 30
(4)D施設(滋賀県) .......................................................... 37
(5)E施設(大阪府) .......................................................... 44
(6)F施設(大阪府) .......................................................... 53
(7)G施設(大分県) .......................................................... 61
第3章 考察・まとめ .......................................................... 68
1.施設の小規模かつ地域分散化の必要性と課題 ............................... 68
2.課題に対する手だて ..................................................... 68
3.まとめ ................................................................. 75
第4章 今後の課題 ............................................................ 79
1.調査手法に関する課題 ................................................... 79
2.小規模かつ地域分散化を進めるうえでの課題 ............................... 79
3.今後求められる地域小規模ユニット職員の専門的機能 ....................... 80
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変更後 · 4ページ第1章 本調査研究の背景・目的・方法
第1章 本調査研究の背景・目的・方法
1.調査の背景
(1)児童養護施設の小規模かつ地域分散化をとりまく状況
【児童福祉法改正および都道府県社会的養育推進計画】
平成 28 年度に改正された児童福祉法では、子どもが権利の主体であることを明確化するととも
に、家庭と同様の環境で養育を推進することの原則が示された。家庭養育優先原則とは、児童を家
庭において養育することが困難または適当でない場合には、児童ができる限り「家庭における養育
環境と同様の養育環境」もしくは「できる限り良好な家庭的環境」において養育されるよう、必要
な措置を講ずることを意味する。
※「家庭における養育環境と同様の養育環境」は、養子縁組による家庭、里親家庭、ファミリー
ホーム(小規模住居型児童養育事業)を、「できる限り良好な家庭的環境」とは、小規模かつ地
域分散化された施設(児童養護施設等における地域小規模児童養護施設、分園型小規模グルー
プケア)を指す。
家庭養育優先原則の背景には、代替養育を受ける子ども達の健やかな発達には、安定した養育者
との人間関係の中で愛着関係を形成し、共に暮らす他の子ども達や大人、さらに地域住民等との関
わりの中で、様々な体験を積み重ね、自己決定の機会を得ながら成長していく環境が不可欠、との
認識があると考えられる。これは、将来の自立に向けて、子ども達にとって欠くことのできない礎
となる。加えて、子ども達が、代替養育に至るまでに経験した養育環境や親子関係、被虐待経験等
から受けた傷の回復を促進する専門的、教育的関わりが不可欠ともいえる。
具体的には、「都道府県社会的養育推進計画の策定要領」(平成 30 年 7 月)(以下「策定要領」)
において、小規模かつ地域分散化に関して以下のように記載されている(一部要約)。
○「できる限り良好な家庭的環境」を確保すべきであり、質の高い個別的なケアを実現するとともに、小規模
かつ地域分散化された施設環境を確保することが重要。
○過渡的にユニット化する場合も、同一敷地内での戸建て住宅型又はグループごとに独立した玄関のある
合築型の施設内ユニットとするなど、生活単位を独立させるとともに、地域社会との良好な関係性の構築
を十分に行うといった工夫を行う。
○ケアニーズが非常に高い子どもに専門的なケアを行う場合には、生活単位が集合する場合もあり得る。こ
のような場合は、十分なケアが可能になるように、できるだけ少人数(将来的には4人まで)の生活単位
とし、その集合する生活単位の数も大きくならない(概ね4単位程度まで)ことが求められる。
また、施設および自治体向けのマニュアル、参考資料である「乳児院・児童養護施設の高機能化
及び多機能化・機能転換、小規模かつ地域分散化の進め方」では、養育機能の高機能化、小規模か
つ地域分散化に関して以下が求められるとされている。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(5ページ)
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変更後 · 5ページ第1章 本調査研究の背景・目的・方法
① 子どもの権利が保障されていること。
② 生活単位を小規模化し、それぞれ独立性と自律性を備えたものとしていくこと。特に困難な課題を抱えた
子どもの場合は、より小規模な生活単位とすることが求められること。
③ 特定の職員のチームによる継続的・安定的な関係性を有すること。特に困難な課題を抱えた子どもの場
合は、心理職等の専門職とも連携して、より手厚いチーム体制が求められること。
④ 子どもは地域において育成されるという観点に立ち、地域分散化が図られ、地域社会との良好な関係性
を有すること。
⑤ 早期の家庭復帰や養子縁組、里親委託等に向けて、心理職等の専門職との協働や医療機関等とも
連携して子どもや保護者等への支援を行うこと。その際、移行期の子どもの環境変化への不安や、次の養
育の場への適応等について、十分配慮すること。
⑥ 年長児等で家庭復帰等へとつなぐことが困難な子どもに対して、社会において自立的生活を形成、維持
しうる能力を形成していくなど、適切な自立支援及びアフターケアが行われること。その際、年齢にかかわら
ず支援の必要性に応じた継続的な支援が提供されること。
【児童養護施設の小規模化等に関する現状】
児童養護施設での小規模化等の実施状況をみると、平成 29 年度では 456 施設(1,352 か所)で
小規模ケアが実施され、264 施設(391 か所)で地域小規模児童養護施設が設置されている。
平成 29 年当時の全児童養護施設(602 か所)に占める割合は、小規模ケアで 75.7%、地域小規
模児童養護施設で 43.9%である。施設数・か所数とも年々増加しているため、直近ではこの割合は
さらに増えているものと思われる。一方で、平成 29 年当時の割合は小規模ケアが 4 分の 3、地域
小規模児童養護施設は半数以下の数値であることから、今後、更なる推進の余地が残されている。
(参考)地域小規模児童養護施設および小規模ケアの実施状況の推移
小規模ケア実施状況 地域小規模児童養護施設
(出典)厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課「社会的養育の推進に向けて」(平成 31 年 4 月)396 419 432 446 456
814 928 1042 1141
H25 H26 H27 H28 H29
施設数 か所数201 217 230 244 264269 298 329 354 391
H25 H26 H27 H28 H29
施設数 か所数
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変更後 · 6ページ第1章 本調査研究の背景・目的・方法
(2)児童養護施設の小規模化等の成果と課題
【成果について】
先行調査研究では、施設職員から見た小規模化の成果として、「職員による子どもへの個別的な
関わりが増えた」(83.3%)、「子どもの生活環境・プライバシーの向上が図れるようになった」
(73.2%)、「日常生活上の体験が豊かになった」(68.4%)の順で高い割合にあることが指摘されて
いる。
また、児童養護施設の小規模化に関する子ども自身の発言内容について、施設職員を対象とした
調査結果では、「職員と一緒に食事の準備やおやつ作りができてうれしい」、「リビングやキッチン
があって普通の家みたいでうれしい」、「今日して欲しいことを職員に受け止めてもらえる」、「被虐
待経験を担当職員に話すことが増えた」、「個室でゆっくりする時間がとれることで、心がやさしく
なった様な気がする」等が寄せられた。
【課題について】
一方、同調査における、児童養護施設の小規模化等を進めることによって生じた課題について
は、「職員一人ひとりの資質・経験の違いによる養育の差が生じやすくなった」(72.7%)、「子ども
の課題が表出することで、職員が精神的に疲労するようになった」(56.8%)、「職員が一人で子ど
もを養育する時間が長くなった」(49.5%)の順に多く挙げられていた。
また、同調査での小規模化等についての子ども自身の発言内容(施設職員を対象に調査)をみる
と、「他のユニットの子ども・職員と会う機会が少なくなってさびしい」、「歳の近い遊び相手が少
なく、年上が多くて気をつかう」、「関係性が悪くなると逃げ場がない」等が挙げられた。
これらの結果から、児童養護施設の小規模かつ地域分散化のねらいを達成していくためには、施
設運営上の課題等について具体的に整理し、その課題の克服方法、工夫点等を好事例としてまと
め、情報共有を図っていくことが効果的であると考える。
(参考)児童養護施設で小規模化を始めた結果、運営に課題が生じたと感じられた点
(出典)みずほ情報総研株式会社「児童養護施設等の小規模化における現状・取組の調査・検討」(平成 29 年 3 月)より、一部改変
(趣旨が変わらないよう選択肢表現を一部変更。また、「その他」「無回答」を割愛)72.7%
41.7%
37.6%
41.2%
44.7%
56.8%
49.5%
25.5%
18.2%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
職員一人ひとりの資質・経験の違いによる養育の差が生じやすくなった
問題が発生したとき、当該ケア単位の職員で抱え込むことが増えた
本園も含めた施設職員のコミュニケーションが取りづらくなった
職員の勤務体制、ローテーションを組むことが難しくなった
職員の長時間労働が生じやすくなった
子どもの課題が表出することで、職員が精神的に疲労するようになった
職員が一人で子どもを養育する時間が長くなった
資質向上をはかるための研修に、職員を参加させることが難しくなった
配置される場所により、職員に不公平感が生じるようになった n=396
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(7ページ)
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変更後 · 7ページ第1章 本調査研究の背景・目的・方法
(参考)小規模化についての子ども自身の発言のうち、望ましくないと感じていること
主な内容 具体的な発言等
他のユニットの子ども・
職員との交流の減少
・ユニット以外の児童や職員と会う機会が少なくなってさびしい。
・小学生が1~2人なので、大舎のような年の近い遊び相手が少ない。年上が多いの
で気を遣う。
関 係 性 の 良 く な い 職
員、子どもとの付き合い
・「あの子、あの職員はいや」人との関係の悪化が進むと改善が難しく、溝が深まりやす
い。関係性が悪くなると逃げ場がない。
・自分と合わない人と、どう接していいのかわからない。我慢する事が多い。
他のユニットとの差異へ
の不満感、排他的関
わりの増加、職員による
ユニット間の差
・応援に入る職員は部外者であるとの認識を強く持つ子どももおり、「(ユニット名)の職
員じゃないくせに…」との発言・反発あり。
・ホームやチームで独自のルール的なものや、方針が出来ていくため、子どもたちから「あっ
ちは許されているのに、なんでこっちはダメなんや」等の問題が発生した。
(出典)みずほ情報総研株式会社「児童養護施設等の小規模化における現状・取組の調査・検討」(平成 29 年 3 月)
2.調査の目的
本調査研究は、児童養護施設の小規模かつ地域分散化を進めるにあたっての課題について抽出
し、その対応策(課題対応事例)を具体的に示すことを目指した。その際、課題への対応策として、
施設における小規模かつ地域分散化を実践する上での理念、施設運営の工夫点等をヒアリング調
査により具体的に把握し、とりまとめを行うことで、児童養護施設において良好な家庭的環境をさ
らに充実していくことに寄与することを目的に実施した。
3.調査の実施方法
(1)検討委員会の開催
【目的】
児童養護施設における小規模かつ地域分散化に関する取組の好事例の収集、および小規模かつ
地域分散化を進めるにあたっての施設の課題抽出とその課題対応事例を検討するため、有識者、施
設関係者等から構成される検討委員会を構成した。
【委員会概要】
検討会名称は「児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究 検討委員会」とした。
また、各回の議題及び委員は表のとおりであった。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(8ページ)
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変更後 · 8ページ第1章 本調査研究の背景・目的・方法
委員会の開催日時・議題
回 日時 議題
第 1 回 令和元年
12 月 16 日
■調査研究の枠組み ■今後のスケジュールの確認
■課題の抽出・整理
第 2 回 令和元年
12 月 26 日
■第1回委員会を受けた課題の抽出・整理
■ヒアリング調査の対象施設
第 3 回 令和2年
2月 27 日 ■ヒアリング調査結果の経過報告 ■取りまとめに向けた議論
第4回 令和2年
3月 16 日 ■ヒアリング調査結果の経過報告 ■報告書構成案の検討
検討委員会 委員一覧
氏名 所属
大谷 恭久 日照養徳園 施設長
大橋 和弘 和泉幼児院 施設長
田畑 一郎 あすなろ学園 副施設長
服部 孝 埼玉県福祉部こども安全課 副課長
平岡 篤武 常葉大学 教育学部 心理教育学科 教授
○増沢 高 子どもの虹情報研修センター 研究部長
望月 幹也 児童養護施設 埼玉育児院
山田 勝美 山梨県立大学 人間福祉学部 福祉コミュニティ学科 教授
湯澤 典子 栃木県保健福祉部こども政策課児童家庭支援・虐待対策担当 主幹
○:座長
【事務局】
玉山 和裕 みずほ情報総研 社会政策コンサルティング部
山本 眞理 みずほ情報総研 社会政策コンサルティング部
嘉藤 曜子 みずほ情報総研 社会政策コンサルティング部
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(9ページ)
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変更後 · 9ページ第1章 本調査研究の背景・目的・方法
(2)過去事例の再収集と課題の抽出
ヒアリング調査の実施に先立ち、これまでに行われてきた児童養護施設の小規模化等に関する
既存研究や厚生労働省公表資料等により、小規模かつ地域分散化の実践、運営にあたり挙げられて
いる課題をまとめた。
さらに、上記でまとめた課題等も参考に、検討委員会に先立ち複数の施設に事前の電話ヒアリン
グを行い(4施設)、課題内容の実態を把握した。
これらによりまとめた課題を検討委員会に提示し、小規模かつ地域分散化の推進にあたり多く
課題となることや、特に今回の事例集作成において注視すべき課題を検証した。
これによりとりまとめられた課題は以下の 27 項目であった。
なお、本調査研究における「小規模かつ地域分散化」は、分園型小規模グループケアまたは地域
小規模児童養護施設を指すものとした。
1.子どもへの適切な養育・ケアの提供
(1)分散化されたユニットの子どもへの適切な養育・ケアの提供
1.家庭養育の環境に近いゆえに生活に馴染めず子どもが混乱することがある。
→例)一般家庭の暮らしとは程遠い暮らしを経験してきた子どもが、一般的な生活にすぐには馴染めず、不適切な行動を
とり、注意されることが増えてしまいがち。
2.養育者と子どもとの関係の距離が近いため、激しい感情が交差し易く、関係がこじれやすい。
→濃密な関係は、子どもの激しい衝動や感情(多くは否定的)を養育者に向けやすい。それを受けた養育者も子どもに
否定的な感情を抱き、良好な関係が育ちにくくなる。
3.愛着障害やトラウマなど、重く複雑な課題を抱える子どもの示す症状や行動には、少人数の体制では
対応が難しい。
→例)食事場面での虐待経験がある子どもが、食卓を囲むことに恐怖を感じ椅子に座れず、注意すればパニック状態にな
るなど、日常生活で様々なトラウマ反応等が生じてしまう。
4.分散化されたユニットは職員、子どもが少ないため、退所者が戻って来ても当時の子どもも職員もおら
ず、以降施設との関わりがなくなってしまう。
→子どもにとってはふるさとの喪失。職員もアフターケアができなくなる。
5.分散化されたユニットに、専門的・集中的なケアが必要な子どもが多く入ると、子ども同士がお互いに
与える影響が大きく、子どもへの適切な養育にも支障が生じる。
(2)いつ、どの子どもを分散化されたユニットに入所させるかの判断
6.分散化されたユニットでの生活が望ましいかどうかは、子どもの育ちを踏まえたアセスメントをもとに今後の見
通しを持って判断すべきだが、体制的にもアセスメントの力量も十分でなく、選択を間違う場合がある。
→例)一時保護所ではおとなしかったといった理由で分散化されたユニットでの生活としたが、1 か月ほどしてイライラや攻撃
的言動が激しくなって、対応困難となった。
7.分散化されたユニットでの生活をどのタイミング・流れで始めるべきか、判断が難しい。
→入所当初は本体施設で生活し、落ち着いたところで分散化されたユニットに移る流れや、一時保護から直接分散化され
たユニットで生活する流れなど、様々な形がある。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(10ページ)
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変更後 · 10ページ第1章 本調査研究の背景・目的・方法
2.本体施設・分散化されたユニットを含む施設全体の包括的な運営
(1)本体施設からの十分なサポートの提供
8.本園と分散化されたユニット、およびユニット間の情報共有が取りにくい。
→抱え込みや独善的な養育を防ぐためにユニットを閉鎖的にしてはならない。養育の質の均一化も重要。そのために重要な
情報共有体制の構築は、ユニットが本園から遠くなるほど困難。
9.ユニットが 2 か所以上になると本体施設の支援が行き届かない。またルールがユニットごとに異なると子
どもの不公平感、不満感や、職員の不安感につながることがある。
(2)分散化されたユニットの裁量のマネジメント
10.分散化されたユニット職員が、子どもに関して何をどこまで決定できるかがあいまい。
→ユニットで決めること、本体施設と一緒に決めること、児相等と相談して決めることなど、あらかじめ検討整理して子どもに伝
えておくべき。それがないと養育者と子どもが対立するきっかけともなる。
11.ユニット運営における一定の裁量をリーダーに持たせることは重要。一方で裁量に沿った行動を管理
者が確認するとき、これがスーパービジョンか、指導監督かという点でリーダーと管理者側の認識がずれるこ
とがある。
(3)ユニットの安定性の確保
12.同じ職員、子どもが長く生活し、一定の文化が形成されたユニットに新たな子どもや養育者が加わるこ
とは、既にいる者との間で軋轢が大きく、落ち着くまでに時間がかかる。
3.職員の確保、育成、フォロー体制の構築
(1)職員の質向上に向けたスーパービジョン体制の構築
13.SV 体制、相談しやすい体制の構築ができない。
→例)子どもが職員によって態度を大きく変え、一定の職員の時にだけ言うことを聞かない、といったことが起こると、その職
員は強い自己否定感、無力感に襲われる。相談し支えられることが重要だが、若い職員ほど自ら相談に行きにくい。
14.ユニットリーダーの資質の影響が大きく、適切ならよいがそうでない場合悪影響となる。
→例)力・権力で子どもを抑え込むリーダーが育てた職員はそのような養育を子どもにするようになる。結果、不適切な養育
へと進む可能性がある。
15.職員が複数施設に分散するため、中核となる職員の育成がうまくできない。
(2)職員のフォロー、メンタルケア体制の構築
16.子どもが養育者に向ける激しい陰性感情は、養育者のメンタルヘルスを脅かす危険がある。濃密な関
係性がそのリスクを高めてしまう。
→例)いつもイライラや暴言を受け続けた結果、養育者は自信を失い、抑うつ的となり、夜も眠らず、やがて休職してしまった。
17.子どもの激しい陰性感情を受けた養育者側もイライラや攻撃的感情が高まり、それが子どもや周囲に
向けられ、ユニット内の安心感が崩れる。
→例)無力感や疲弊感が子どもや周囲への怒りとなって、冷静でいられなくなる。こうなると指導をしたりアセスメントを共に
しようとしても、聞く耳を持てなくなってしまう。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(11ページ)
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変更後 · 11ページ第1章 本調査研究の背景・目的・方法
(3)職員数の確保・適切な勤務体制の構築
18.ユニットの職員数が少なく緊急時対応ができない、研修参加まで手が回らないなどの弊害が生じる。
→効率的・柔軟な勤務体制の構築等も含めた対策が行えると理想的。
19.職員は養育者でもあり労働者でもあるが、養育に特化すると職員のワークライフバランス、労働環境の悪
化を招く。一方過度に「業務」と割り切った養育も、子どもとの関係性構築等に影響する懸念を感じる。どう
バランスを確保するかが難しい。
4.施設整備・確保に関する諸問題
(1)土地・建物の確保が困難
20.児童福祉施設に位置付けられることで、一般家庭と異なる都市計画法等の制約が課せられる。これ
により土地・建物の活用が困難となる。
→例)前面道路の幅員が 6m に満たないため、地域小規模児童養護施設としての建物利用が認められなかった。(一
般の居宅であれば可であった)
21.定員である 6 名が家庭的に暮らせるための、十分な大きさの建物の確保が困難。
(2)立地が遠方であるため、地域・関係機関との連携が困難
22.地域住民の理解を得られない場合の対応に苦慮する。
23.本体施設と学区が異なると、学校への理解促進や連携体制構築が難しい。
5.地域社会との連携・つながり
(1)分散化されたユニットが、地域の一員として根差し、活動する重要性
24.分散化されたユニットの職員が、その地域を理解することが重要だが、十分でない。
→なるべく施設の近くに住む職員を入れることで、地域がわかり、地域に根差すことができないか。
25.地域住民のかかわりが好意的で支援的なものか、疑惑や批判的なものかで、ユニットの暮らしが全く
別のものとなってしまう。
→地域のつながりが無い、理解が十分でないところに一から入っていくことは非常に難しい。
26.地域に入っていくための専任の職員が必要と感じるが、現在その配置がない。
27.馴染みの無い地域に分散化されたユニットを設置したため、そのユニットが孤立化した。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(12ページ)
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変更後 · 12ページ第1章 本調査研究の背景・目的・方法
(3)調査対象とする施設の選定
(2)の検討内容等をもとに、本調査研究でどのような施設を選定するかの基準を検討・決定し、
当該基準に基づきヒアリング調査の対象とする施設の選定を行った。基準については以下のとお
りとし、これに該当する施設から、施設特性等を考慮して選定を行うこととした。
【施設選定の基準】
1.本調査研究の委員会で、対象施設として提案のあった施設であること
2.「地域小規模児童養護施設・分園型小規模グループケアの両方を有している」または、「地域
小規模児童養護施設・分園型小規模グループケアのユニット数が 3 つ以上」であること
3.ユニットを初めて設置してから、概ね 5 年以上が経過していること
これにより、以下の7施設を調査対象とした。施設選定にあたっては、本調査研究の検討委員会
委員および全国児童養護施設協議会からの情報提供内容も踏まえて行った。
なお、ヒアリング調査対象施設は名称非公表とした。
行先 都道府県名 訪問日程
1.A 施設 宮城県 令和 2 年 3 月 3 日
2.B 施設 栃木県 令和 2 年 2 月 25 日
3.C 施設 埼玉県 令和 2 年 2 月 10 日
4.D 施設 滋賀県 令和 2 年 2 月 18 日
5.E 施設 大阪府 令和 2 年 2 月 14 日
6.F 施設 大阪府 令和 2 年 3 月 4 日
7.G 施設 大分県 令和 2 年 3 月 9 日
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(13ページ)
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変更後 · 13ページ第1章 本調査研究の背景・目的・方法
(4)聞き取り項目の決定と調査実施
(2)で得られた課題を含め、ヒアリング調査で施設から聞き取る項目を以下の通りまとめた。
【ヒアリング調査での聞き取り項目】
Ⅰ 施設の概要
◆本体施設(大舎・中舎・小舎)や各ユニットの概要など
Ⅱ 分散化されたユニットを立ち上げるまでの経緯
◆分散化されたユニットを設置したきっかけや問題意識、分散化ユニットの土地、建
物をどう確保したか、土地、建物を確保してからのユニット立ち上げまでの経緯、
分散化ユニットの運営にあたり、日ごろから心掛けていること など
Ⅲ 分散化されたユニットの設置・運営における課題
(2)で得られた課題をもとに検討・決定した前述の 27 項目について、
・各課題を施設でも感じたことがある場合には「A」
・そのうち、各課題に対して何らかの対応策をとり、その課題が解決・緩和されたと
感じた場合には「B」
としてチェックを頂いた。
Ⅳ その他、施設の小規模化・地域分散化に関する意見
また、ヒアリング調査の依頼から実施、および結果のとりまとめは以下の通り行った。
【ヒアリング調査の依頼・訪問まで】
対象施設に事務局より調査趣旨の説明、依頼を実施。ヒアリング調査には本調査研究の検討委員
会委員にも同席をいただくこととし、対象施設、本委員会委員、事務局間での日程調整を行った。
【対象施設への依頼事項】
対象施設には、ヒアリング調査にあたり以下の事項を依頼した。
(1)ヒアリング調査に先立ち、前述の「ヒアリング調査での聞き取り項目」に記載欄を設
け、対象施設に直接書き込めるようにした「事前ヒアリングシート」を送付。対象施設
の負担の無い範囲で、事前ヒアリングシートへの記入・返送を依頼した。(事前ヒアリ
ングシートは文末の参考資料に添付)
(2)現場の職員からも課題や対応策への示唆を得ることを目的に、ヒアリング調査に、実際
に当該施設で分園型小規模グループケア・地域小規模児童養護施設で養育に携わってい
る職員の同席を依頼した。
※同席は負担の無い範囲で、難しい場合は同席無しで行うこととした。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(14ページ)
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変更後 · 14ページ第1章 本調査研究の背景・目的・方法
(3)子どもに生じた変化を子どもの立場からも把握する観点から、①地域分散化されたユニ
ットでの生活で退所後の生活に活かされていること、②地域分散化されたユニットでの
生活で課題であったこと、の2点について、分園型小規模グループケア・地域小規模児
童養護施設の退所者に聞いてもらうことを依頼した。
※聞き取りは負担の無い範囲で、難しい場合は行わないこととした。
【ヒアリング調査の実施・まとめ】
調査は本検討委員会委員、事務局の訪問により行った。また、訪問時に各対象施設の地域分散化
されたユニットの視察もあわせて実施した。所用時間は1か所あたり、概ね2~3時間程度であっ
た。
ヒアリング実施後は同席委員から提供を受けた記録等を踏まえ、事務局においてとりまとめ資
料の作成を行った。また、とりまとめ資料はヒアリング対象者に照会し、内容の確認と修正を行っ
た。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(15ページ)
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変更後 · 15ページ第2章 ヒアリング調査結果
第2章 ヒアリング調査結果
1.事前ヒアリングシートにおける各施設の課題 集計結果
前述の通り、本調査研究においてとりまとめられた 27 項目の課題については、各対象施設
に送付した「事前ヒアリングシート」において、
・各課題を施設でも感じたことがある場合には「A」
・そのうち、各課題に対して何らかの対応策をとり、その課題が解決・緩和されたと感じた
場合には「B」
としてチェックすることを依頼した。
下のグラフは、本調査研究の対象施設である7施設が、各課題について「A」または「B」
にチェックを行った個数を、課題ごとに集計したものである※。下表のとおり、「A」に 7 施設
(全施設)がチェックした課題は 4 つ、6 施設がチェックした課題は 12、5 施設がチェックし
た課題は 7 つ、4 施設がチェックした課題は 4 つであり、全ての課題について過半数の施設が
当該課題を感じたことがあることが明らかとなった。
※B 欄のみにチェックがあった場合、A 欄にチェックが無くともその課題を当該施設で感じたことがある
と解釈できるため、各施設への確認を行った上で A 欄にもチェックがあるものとみなし集計した。
ここから、本調査研究でとりまとめた 27 項目の課題は、地域分散化を進めているいずれの
施設においてもある程度共通する課題であることがうかがえた。
各課題について「A」または「B」にチェックを行った施設数
(No.1~27 の番号は、各課題の文頭にある1~27 の番号に対応している)5
6 6 6
5 5
6 6
6 6 6 6
6 6
4 4
5 5
3 3
5 5 5 5 5 5
4 4
5 5
4 4
7 Aの個数
Bの個数
(施設)
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(16ページ)
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変更後 · 16ページ第2章 ヒアリング調査結果
2.各施設のヒアリング調査結果
各施設のヒアリング調査結果について、次項より示す。
なお、各施設のヒアリング調査結果のうち「3.地域分散化されたユニットの設置・運営に
おける課題」については、本調査研究でとりまとめた課題の項目ごとにとりまとめを行った
(課題への聞き取りが無かった項目は記載を割愛した)。
【再掲】本調査研究でとりまとめた課題一覧(例示等除く)
1.子どもへの適切な養育・ケアの提供
(1)分散化されたユニットの子どもへの適切な養育・ケアの提供
1.家庭養育の環境に近いゆえに生活に馴染めず子どもが混乱することがある。
2.養育者と子どもとの関係の距離が近いため、激しい感情が交差し易く、関係がこじれやすい。
3.愛着障害やトラウマなど、重く複雑な課題を抱える子どもの示す症状や行動には、少人数の体制では対応が難し
い。
4.分散化されたユニットは職員、子どもが少ないため、退所者が戻って来ても当時の子どもも職員もおらず、以降施
設との関わりがなくなってしまう。
5.分散化されたユニットに、専門的・集中的なケアが必要な子どもが多く入ると、子ども同士がお互いに与える影響が
大きく、子どもへの適切な養育にも支障が生じる。
(2)いつ、どの子どもを分散化されたユニットに入所させるかの判断
6.分散化されたユニットでの生活が望ましいかどうかは、子どもの育ちを踏まえたアセスメントをもとに今後の見通しを持って
判断すべきだが、体制的にもアセスメントの力量も十分でなく、選択を間違う場合がある。
7.分散化されたユニットでの生活をどのタイミング・流れで始めるべきか、判断が難しい。
2.本体施設・分散化されたユニットを含む施設全体の包括的な運営
(1)本体施設からの十分なサポートの提供
8.本園と分散化されたユニット、およびユニット間の情報共有が取りにくい。
9.ユニットが 2 か所以上になると本体施設の支援が行き届かない。またルールがユニットごとに異なると子どもの不公
平感、不満感や、職員の不安感につながることがある。
(2)分散化されたユニットの裁量のマネジメント
10.分散化されたユニット職員が、子どもに関して何をどこまで決定できるかがあいまい。
11.ユニット運営における一定の裁量をリーダーに持たせることは重要。一方で裁量に沿った行動を管理者が確認する
とき、これがスーパービジョンか、指導監督かという点でリーダーと管理者側の認識がずれることがある。
(3)ユニットの安定性の確保
12.同じ職員、子どもが長く生活し、一定の文化が形成されたユニットに新たな子どもや養育者が加わることは、既に
いる者との間で軋轢が大きく、落ち着くまでに時間がかかる。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(17ページ)
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変更後 · 17ページ第2章 ヒアリング調査結果
3.職員の確保、育成、フォロー体制の構築
(1)職員の質向上に向けたスーパービジョン体制の構築
13.SV 体制、相談しやすい体制の構築ができない。
14.ユニットリーダーの資質の影響が大きく、適切ならよいがそうでない場合悪影響となる。
15.職員が複数施設に分散するため、中核となる職員の育成がうまくできない。
(2)職員のフォロー、メンタルケア体制の構築
16.子どもが養育者に向ける激しい陰性感情は、養育者のメンタルヘルスを脅かす危険がある。濃密な関係性がその
リスクを高めてしまう。
17.子どもの激しい陰性感情を受けた養育者側もイライラや攻撃的感情が高まり、それが子どもや周囲に向けられ、ユ
ニット内の安心感が崩れる。
(3)職員数の確保・適切な勤務体制の構築
18.ユニットの職員数が少なく緊急時対応ができない、研修参加まで手が回らないなどの弊害が生じる。
19.職員は養育者でもあり労働者でもあるが、養育に特化すると職員のワークライフバランス、労働環境の悪化を招く。一
方過度に「業務」と割り切った養育も、子どもとの関係性構築等に影響する懸念を感じる。どうバランスを確保するかが難
しい。
4.施設整備・確保に関する諸問題
(1)土地・建物の確保が困難
20.児童福祉施設に位置付けられることで、一般家庭と異なる都市計画法等の制約が課せられる。これにより土地・
建物の活用が困難となる。
21.定員である 6 名が家庭的に暮らせるための、十分な大きさの建物の確保が困難。
(2)立地が遠方であるため、地域・関係機関との連携が困難
22.地域住民の理解を得られない場合の対応に苦慮する。
23.本体施設と学区が異なると、学校への理解促進や連携体制構築が難しい。
5.地域社会との連携・つながり
(1)分散化されたユニットが、地域の一員として根差し、活動する重要性
24.分散化されたユニットの職員が、その地域を理解することが重要だが、十分でない。
25.地域住民のかかわりが好意的で支援的なものか、疑惑や批判的なものかで、ユニットの暮らしが全く別のものとな
ってしまう。
26.地域に入っていくための専任の職員が必要と感じるが、現在その配置がない。
27.馴染みの無い地域に分散化されたユニットを設置したため、そのユニットが孤立化した。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(18ページ)
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(1)A施設(宮城県)
1.施設の概要
◆当施設は 1906 年(明治 39 年)、飢えに苦しむ七名の貧孤児を救済したことで創設された。
その後乳児院、児童心理治療施設や療育センター等様々な児童福祉施設を設置したが、訪問
看護ステーションや特別養護老人ホーム、地域包括支援センター等、高齢者福祉を含めた多様
な福祉サービスも展開。現在当法人の施設には 0 歳~100 歳超の入所者がいる状況。
◆当施設の構成は下図の通り。地域小規模は男女混合で構成されている。地域小規模に入所す
ると、別の地域小規模に移ることは基本的にない。
◆最も早く設置された地域小規模児童養護施設①は平成 12 年で、職員 2 名(夫婦)が住み込み
で生活しており(他 1 名は通い)、実子 1 人も当地域小規模内で生活している。
【出典】 施設ご提供資料、ホームページ、第三者評価結果より作成
※敷地内小規模グループケアは本体施設と
同棟
※職員数(フリー職員含む):
常勤 48 名、非常勤 3 名
敷地内小規模
グループケア
ユニット数:5つ
定員:各8名
※各地域小規模児童養護施設には住み込みの職員(保育士)が1名
以上在籍
※今後、4 つ目の地域小規模児童養護施設を設置予定
地域小規模児童養護施設①
平成 12 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤3名
※平成 22 年現在地に転居
地域小規模児童養護施設③
平成 30 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤3名
地域小規模児童養護施設②
平成 20 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤3名
地域小規模児童養護施設本体施設
※地域小規模児童養護施設の外観
施設により本体施設から
徒歩圏内~2km ほど
距離があるなど様々
建物:5 階建
小舎 ユニット数:5つ
定員:各7名
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(19ページ)
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2.地域分散化されたユニットを立ち上げるまでの経緯
地域分散化されたユニットを設置したきっかけや問題意識
◆当施設は明治期の開設当初から石井十次の思想の影響を受け、敷地内に複数の家屋を設
置し、各々のユニットで独立して養育を行う「家庭館」と称する形式であった。そのため小規
模で家庭的養育をいとなむ形式が歴史的にも当然のものとして受け止められている。
【地域分散化されたユニットでの生活による子どもへの影響】
◆地域小規模でも本体施設でも、基本的に子どもを支援するスタンス・考え方に変わりはない
が、地域小規模ではより家庭的な環境に近く、子どもはもとより家族からの関わりやすさ、
訪問しやすさも異なるように感じる。家族から「施設に電話すると、本体施設にはいったん
事務の窓口の方を通すが地域小規模は直接職員に電話がつながる」と言われたことがある。
職員の顔がはっきりしやすく、固有名詞的として認識してもらうのが早くなる。これにより
距離を縮めやすくなる。
◆また、家族が地域小規模の他の子どもにも親近感を持つように感じる。地域の祭りに家族
と子どもが行く際、自分の子どもだけでなく地域小規模の他の子どもの分も場所をとって
くれたりする。
3.地域分散化されたユニットの設置・運営における課題
1.子どもへの養育・ケアにおける困難さ
(1)子どもへの養育・ケアにおける課題解決に向けた取り組み
【課題2.養育者と子どもとの関係の距離が近いため、激しい感情が交差し易く、関係がこじれや
すい。】
◆入所となった子どもは原則まず本体施設に入所する。本体施設でのアセスメントをしっかり
行ったうえで、暴力・暴言等課題が顕著でない子どもが地域小規模に移る。したがって、比
較的子どもたちは落ち着いている。
◆本体施設から地域小規模に移ると、職員との物理的・心理的距離の近接が生まれる(最大の
メリットであり、デメリットでもある)。この時に職員が距離の取り方を誤ると、時に過度に職
員に依存するなどの問題が生じる。職員側から適切な距離感をいかに推し量り、保つかが
重要。地域小規模では日常の生活支援と共に子どもたちの内面、精神的な関りを大切にす
るケアを大事にしている。子どものそれまでの育ちを肯定しながら、生活に慣れていっても
らうことに時間と関係性をいかに縮めていくか、そこは気を遣う。「最初の一手」を間違える
ことも往々にしてある。ゆえに、客観的なスーパービジョンが重要となってくる。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(20ページ)
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変更後 · 20ページ第2章 ヒアリング調査結果
(2)いつ、どの子どもを地域分散化されたユニットに入所させるかの判断
【課題6.分散化されたユニットでの生活が望ましいかどうかは、子どもの育ちを踏まえたアセス
メントをもとに今後の見通しを持って判断すべきだが、体制的にもアセスメントの力量も十分
でなく、選択を間違う場合がある。】
◆9 割ほどの子どもは本体施設のアセスメントを経て移り、併設されている乳児院からの措
置変更等で子どもの状況がきちんと理解されている場合などに、例外的に直接地域小規模
に入所となる。それ以外で直接地域小規模に入所することはほとんどない。
◆上記のように、当施設での重要な本体機能として子どものアセスメントをしっかり行うこと
が挙げられる。このため地域小規模に移った子どもの問題行動はほぼ生じない。児童相談
所でもアセスメントは行われるが、児童相談所のアセスメントは短期間で行われ一緒に生活
することもなく、アセスメントには限界もあると考える。
(地域小規模児童養護施設からの家庭復帰)
◆当施設の地域小規模からはこれまで 11 人ほどが退所しているが、うち 5 人は家庭復帰と
なっている。
◆地域小規模設置当初は、家庭復帰が見込まれない子どもが中心であったが、地域小規模で
は子どもの抱える課題や意向等も良くわかり、また家族との連絡、訪問等のハードルも低く
なる(「敷居が低くなる」)傾向がわかってきたため、困難ではあるが、適切なファミリーソー
シャルワークの提供により家庭復帰が見込まれる子どもも積極的に入所対象として考える
ようになった。
◆家に帰ることを目標にする子どもは、日々の生活も目的意識を持ち営める場合も多い。家
族の方でも関わり(子どもの行事等への参加)を促すと親も積極的になっていく。他方、家
庭復帰の困難な子どもへは将来への希望を持てるようなかかわりを大事にする。こうした
多様性をもった子どもが共に生活することが、ホームの活性化を促すという効果もある。
◆さらに地域小規模の職員も、家庭復帰に向けての養育・かかわりを常日頃から考え、身をも
って家庭支援、自立支援の必要性やあり方を考える機会になるなど、資質向上にもつなが
っている。
【課題7.分散化されたユニットでの生活をどのタイミング・流れで始めるべきか、判断が難しい。】
◆基本は地域小規模の退所者が出るタイミングで、その時に適切な子どもの検討を行う。検討
にあたっては、その子どもが地域小規模での生活が問題なく行える程度落ち着いているか
のほか、子どもの育ち・将来を考えたときに地域小規模での家庭的な養育が必要であるか、
本体施設のなかで個性を発揮できず、十分に甘えを表出できなかった等、「もう一度手をか
け直すべき子ども」であるかという視点を大事にする。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(21ページ)
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2.運営上の難しさ
(1)本体施設からの十分なサポートの提供
【課題8.本園と分散化されたユニット、およびユニット間の情報共有が取りにくい。】
◆日々、各地域小規模で生じる出来事は副施設長に集約され、副施設長がそれらの受け止め
やスーパービジョン、施設長への報告(地域小規模に入っていなくても生活がイメージでき
る情報量)を行っている。さらに、施設長から副施設長へのスーパービジョン等もなされる。
◆情報共有のために、次表のようないくつかの定期・不定期の会議等の仕組みがあるが、さら
に職員による閉鎖的な地域小規模の運営、抱え込みを防ぐための工夫として「3」という数
字をキーワードと認識している。2 人であれば情報共有がしやすいが、いかに 3 人目の職員
に同じニュアンスで情報を伝えられるか、直接情報を共有し合えているか。この成否を握る
のは 3 人目というところで、これをリーダーには意識してもらい、スーパービジョン時にも
気にかけている。
◆職員が直接情報を共有する(直接伝えあう)意識を高めるため、あえて日誌作成も止めた。
これにより日々の職員間の相談の機会が多くなる。またこうした職員間の情報共有・相談の
多くは子どもの前で行われ、職員が大事と考えることや思いが子どもにも伝わるようにな
っている。(職員が相談しあっている姿をしっかり子どもにみせよう、という発想)
◆基本的なスタンスは、何かあれば各地域小規模から報告を上げてもらうこと。良いことも悪
いことも、いかに各地域小規模の職員から報告してもらえるか(自分たちから開けるか)が
生命線で、これを 20 年前の最初の地域小規模開設当時から大切にしている。外から問題
がわかるということは手が付け難いほど大きな問題になっていることが多い。
◆このために、若手職員も含め風通しの良さを施設全体として意識している。若い職員が発言
できない組織は駄目な組織と考える。
リーダーレベルでの
会議
・週1回(月曜日が主)、副園長と各地域小規模のリーダーが集まり話
し合いの機会を持っている。
・内容はそれぞれの子どもの週末の様子(週末にケースがよく動くの
で)など、ケースの状況についての共有・検討がメインだが、ここから
運営全般の話に広がることもある。
保育士・指導員レベ
ルの会議
・週1回(水曜日:住み込みの保育士、金曜日:それ以外の職員)、本体
施設と各地域小規模の職員が一堂に会し、全員で子どもの様子や運
営状況等について話し合う機会を持っている。(同じ立場の者同士の
話し合い、OJT も含め)
副施設長による随時
のかかわり
・明確な目的や特定の曜日・時間等は持たず、随時各地域小規模の様
子を副施設長がうかがうようにしている。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(22ページ)
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変更後 · 22ページ第2章 ヒアリング調査結果
(地域小規模内の情報共有や運営が滞る際の支援)
◆各地域小規模では毎日ミーティングが行われてはいるが、職員の勤務時間のずれなどもあ
り、情報共有がうまくいかない場合もある。この時はその要因を「パイプのつまり」をとるよ
うに副施設長が直接的にやるか、間接的にやるか検討して関与・対応している。
◆同様に、地域小規模内で行うべき業務の役割分担までは進めたが、その後の進行がうまく
いかないなどの状況が見られる際も、副施設長が主体となり、いつまでに、何をすべきかを
確認・促進するなどの介入を行う。この際、進んでいないことを指摘・指導するスタンスでは
なく、「どこまで進んでいるか確認させて」、そのうえで「次これだね」といったかたちで進行
を「一緒に確認」する形で介入するよう心掛けている。
(2)地域分散化されたユニットの裁量のマネジメント
【課題 10.分散化されたユニット職員が、子どもに関して何をどこまで決定できるかがあいまい。】
◆当施設では食材の買い出し、調理などすべて地域小規模ごとに行う。施設長は「今日のご飯
はなに?」と子どもが職員に聞ける生活でありたい、という思いを持っている。
◆こうした思いもあり、地域小規模の主体的な運営を大事にしている。「自分のホームのこと
を関心をもってみてもらえている」、「関心はあるが口は出さず見守ってもらっている」とい
う感覚を持ってもらうことが重要。(地域小規模は「安心感をもって好きなようにやらせて
もらえている」という感覚がある)
◆そのためには、施設長・副施設長などの声掛けを多くすることや、「何でそんなことまで知っ
ているのか」と職員に思わせるような細かなことまで把握し、折に触れこれを伝えていくこ
と(手を差し伸べてもらっていると思える)が大事。当施設では常日頃の副施設長の情報収
集と、これを施設長に適宜報告していくことでこれを実現している。こうしたことで地域小
規模の職員は手を差し伸べてもらっている実感、離れ小島の地域小規模ではなくちゃんと
施設の一部であるという意識を持つことができる。子どものことだけでなく、職員のことも
しっかり見ていくことで、職員の安心感を醸成できる。
◆また、地域小規模は本体施設よりも職員配置が手厚いなど、条件が良いので養育も本園よ
りも良くて当たり前、子どもの育ちが本園と一緒だったら存在意義(人とお金を使っている
意味)が無い、というプレッシャーがあるようにも感じる。常に本園の子ども・職員を気にし
ながら養育をするのでは、職員もどんどん苦しくなる。そこ(分園)でこその暮らしがあり、育
ちがあることに小規模の意味があり、本園を意識してそこに差をつけないのでは、やってい
る方はだんだん苦しくなる(これが見守りにもつながっている)。当施設はこの点について
施設長、中堅以上職員の理解は同様に深く、これも地域小規模の職員が安心して養育に携
われるポイントと考えられる。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(23ページ)
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変更後 · 23ページ第2章 ヒアリング調査結果
3.ユニットを担う職員への支援の難しさ
(1)職員の質向上に向けたスーパービジョン体制の構築
【課題 13.SV 体制、相談しやすい体制の構築ができない。】
◆当施設では地域小規模からも家庭復帰・親子関係再構築を行うことが重要との考えから、
家庭支援専門相談員ではない地域小規模の職員も、ケアワークだけでなくソーシャルワーク
ができて初めて一人前と言われながら育っている。本体施設でそのように養成されている
ので、各地域小規模のリーダーは全員、ファミリーソーシャルワークに長けた人材となって
いる。
◆子どもにとって身近な、状況を最も把握できている立場であるからこそ、家庭復帰等に向け
た支援を十分に子どもの状況を把握して行えるというメリットがある。
◆ファミリーソーシャルワークを組織的に適切に進めるためのスーパービジョンに関して、常
にケースの状況は本体施設に報告すること、具体的支援の前に客観的なケース検討を行う
ことなどを決めている。あわせて本体施設の心理職員(1 名:児童心理治療施設と兼務)が
全ユニット・地域小規模に関わっており、家庭復帰等についても場合によっては職員と一緒
に支援に入るなどフォローする体制をとっている。
【課題 15.職員が複数施設に分散するため、中核となる職員の育成がうまくできない。】
◆職員育成は当施設でも大きな課題と認識されている。適切な養育、地域小規模の運営、ファ
ミリーソーシャルワークの提供を各地域小規模ごとに独立して行えるようにするため、本体
施設での経験を概ね 5 年程度積んだ職員を地域小規模に出すようにしている(本体施設の
職員体制が手薄にならないよう、慎重にバランスを考える)。
◆地域小規模に出た後も、職員は週1回、定期的に副施設長の相談やスーパービジョンを受け
られる体制がとられている(前述のとおり)。各ホームの特徴を出しつつ、適切な運営をどの
ようにサポートできるかが副施設長の仕事と考えている。副施設長は1つの地域小規模のリ
ーダーでもあるため、基本は各施設の運営に任せ、副施設長は定期的なスーパービジョン以
外は他のホームに遊びに行く程度である。
◆職員が成長することの基本は、子どもから学んで資質向上を図ることに徹すること。子ども
の声を聴いて、ケアの仕方もわかる。
4.施設整備・確保の困難さ
(1)土地・建物の確保が困難
【課題 21.定員である 6 名が家庭的に暮らせるための、十分な大きさの建物の確保が困難。】
◆当施設では、平成 12 年に整備した最初の地域小規模が賃借の期間満了に伴い移転が必要
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(24ページ)
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変更後 · 24ページ第2章 ヒアリング調査結果
となり、その際場所の確保に大変苦労した経過がある。その際は地域の町内会が「うちの町
内会から出て行って関わりがなくなってしまうのは避けたい」ということで、お住いの高齢
夫婦が亡くなった家を探し、確保してくれた。
◆また、今後新設予定の 4 つ目の地域小規模もたまたま空き家となった物件であるが、賃借
では無かったため、思い切って購入の決断をした。
◆いずれにしても 6 人の子どもへの個室、職員の部屋などがある建物の確保は大きな課題で
ある。まず物件がなく必要時には不動産業者を総当たりしていく必要がある。物件があった
としても児童福祉施設としての活用にあたり法的制約(建築基準法、消防法)が大きく要改
修(費用は施設負担)または活用不可であったりする。この点は施設側の努力では一定の限
界があるようにも思う。
(2)立地が遠方であるため、地域・関係機関との連携が困難
【課題 23.本体施設と学区が異なると、学校への理解促進や連携体制構築が難しい。】
◆当施設の所在地は他の児童養護施設も集中している地域である(近いと車で5~10 分程
度の距離にある)。学区が重なることで特定学年の子どもが多くなるなど学校側の混乱に
もつながるため、本体施設どうしでは一定の住み分けが歴史的にもなされてきたが、地域
小規模の新たな設置時には他の施設とも調整しながら場所を決めていく。
5.地域社会との連携・つながりの難しさ
(1)地域分散化されたユニットが、地域の一員として根差し、活動する重要性
【課題 25.地域住民のかかわりが好意的で支援的なものか、疑惑や批判的なものかで、ユニット
の暮らしが全く別のものとなってしまう。】
◆里親であれば元々地域とのつながりがある中に子どもが入っていけるが、地域小規模では
最初は「失礼します」といったスタンスでの地域へのかかわりとなり、地域とのつながり形成、
開拓には一定の期間が必要。最初は近隣から「あまりうるさくしないで」という意見をもら
うことなどもあった。
◆やがて、例えば職員間の意思疎通ミスで子どもが帰ってもホームの鍵が閉まっている時に
近所の方が一緒に待ってくれたり、逆に近隣の高齢者が配偶者を亡くして不安なときに一
緒にいたりしていた。すると、子どもの関心の向け方も変わってきて、震災時に子どもが近
隣の方を気にかけるようになった。子どもたちの生活が根差していって、コミュニティとの
関係も変わっていく。最初は「お世話になります」というところから始まるが、そのうち「して
もらう側」だけではなく相互関係になることを目指していく。
◆子どもたちはモデルがいないと育たないので、関わる側の職員がどういう姿をみせるか、
ということは子どもに影響がある。
◆地域に開いていく努力をしていく。職員の顔よりも子どもたちがそこで生活が根付いてい
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(25ページ)
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変更後 · 25ページ第2章 ヒアリング調査結果
くことが一番の理解となる。開かれた施設であることが重要である。
4.その他特記事項
【養育に対する基本的姿勢】
◆子どもへの対応方針は子どもによって大きく異なるが、根幹としてあるのは、子どもと本気
で向き合うこと。厳しい向き合いもあるが、子どもは本気で向き合って欲しいと思っている。
職員にはそうした覚悟も必要。
◆また、子どもとの日々の生活のかかわりから、職員が何を学ぶかが重要であろう。その意味
では「子どもから学ぶ」という気持ちが大事。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(26ページ)
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変更後 · 26ページ第2章 ヒアリング調査結果
(2)B施設(栃木県)
1.施設の概要
◆当施設は 1957 年(昭和 32 年)に設置され、地域小規模児童養護施設は 2007 年(平成 19
年)以降、現在まで 2 か所、また分園型の小規模グループケアが 3 か所設置されている(下図
参照)。また、本体施設も全ユニットが小規模グループケアで運営されている。
◆ユニットは男女混合である。また、一度地域小規模や分園型小規模グループケアに入った子ど
もは、進学等本人の状況が変わるなどの事情が無ければ基本別ユニットに動くことはない。
【出典】 施設ご提供資料、ホームページ、第三者評価結果より作成
※同建物内1階に児童家庭支
援センター設置
※同法人で、子育て支援短期利
用事業、学童保育、子ども食
堂等も合わせて実施
※職員数(フリー職員含む):
常勤 23 名、非常勤 2 名
分園型小規模グループケア①
平成 21 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤4名
地域分散化されたユニット本体施設
※地域小規模児童養護施設の外観
本体施設から
概ね車で
5~10 分程度
地域小規模児童養護施設①
平成 19 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤3名、非常勤1名
敷地内小規模
グループケア
ユニット数:3つ
定員:22 名
(在籍 20 名)
地域小規模児童養護施設②
平成 22 年設置
定員:6名(在籍5名)
職員数:常勤3名
分園型小規模グループケア③
平成 27 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤3名、非常勤1名
分園型小規模グループケア②
平成 25 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤3名、非常勤1名
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(27ページ)
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変更後 · 27ページ第2章 ヒアリング調査結果
2.地域分散化されたユニットを立ち上げるまでの経緯
地域分散化されたユニットを設置したきっかけや問題意識
◆かねてより、地域小規模児童養護施設の形式が子どもにもたらすメリットを感じ、実施した
いと考えていた。平成 12 年頃に国から分散化の方針が示された際にはこれを担える職員
がおらず断念していたところ、平成 19 年に地域小規模の勤務経験がある職員を採用でき
ることとなり、採用とあわせ最初の地域小規模児童養護施設を設置。
◆また他の職員では、他施設で勤務経験のある職員が他県の実家に戻ったが、やはり児童福
祉の仕事に就きたいとの話を聞き、当施設から声をかけて採用。最初の 1 年は本体施設勤
務としたが、その勤務状況から地域小規模の運営を任せられると判断。当該職員を核として
平成 22 年に 2 か所目の地域小規模児童養護施設を開設するに至った。この時は職員をま
ず確保し、次に建物を探したという順序。
◆平成 21 年、25 年、27 年に分散化ユニットを開設していったが、この時は開設に適した建
物を見つけられたことがまずあり、その段階において本体施設で力をつけていった適任と
思われる職員を充てたという順序。両者の状況・タイミングが一致することが必要である。
<立ち上げにあたっての地域住民・関係者への働きかけ>
◆当法人では児童家庭支援センター、学童保育、子ども食堂など様々な取組をしていることも
あってか、周囲の地域住民によく認識してもらっている。このため説明会の開催等は特段行
わず、よろしくお願いしますとあいさつ回りをした程度である。
3.地域分散化されたユニットの設置・運営における課題
1.子どもへの養育・ケアにおける困難さ
(1)子どもへの養育・ケアにおける課題解決に向けた取り組み
【課題2.養育者と子どもとの関係の距離が近いため、激しい感情が交差し易く、関係がこじれや
すい。】
◆地域小規模や分園型小規模グループケアではその小規模さゆえに、大舎では子ども自身が
抑圧していた様々な感情などが表出される。こうした感情の表出、爆発に身近な立場であ
る職員が付き合うことは、職員にとっては大変なことだが子どもにとっては必要なこと。も
し課題のある子どもをその時点で措置変更してしまうと、見捨てられ体験となり子どもへの
心の傷となる。
◆現在、他の児童養護施設で不適応になり児童心理治療施設が適当とされたが、結果として
当施設に来た子どもがいる。この子どもには経験 10 年以上のベテラン職員が対応してい
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(28ページ)
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るが、徐々に子どもの変化がみられてきたところである。
◆地域小規模や分園型小規模グループケアでは個別対応が十分にでき、性の問題なども含め
子どもの抱える課題が良く見える。本体施設ではこうした個別対応はし難い。一方でそうし
た課題を突き詰め個別化していけばいくほど、子どものそうしたニーズにどのように答えて
いくべきかという難しさを感じる。
◆また、地域小規模や分園型小規模グループケアで一番困ることは、職員との折り合いがつ
かず家を飛び出すこと。職員や本体からの応援で探し回ることになる。これが何度も続くと
止む無く本体へ移すことも検討。
【課題5.分散化されたユニットに、専門的・集中的なケアが必要な子どもが多く入ると、子ども同
士がお互いに与える影響が大きく、子どもへの適切な養育にも支障が生じる。】
◆暴言・暴力がみられる子どもについては、職員がきちんと向き合うようにしているが、同ユ
ニットの他の子どもが、仕方がないと付き合えるかどうかも重要。こうした課題がある子ど
もは、前述の通りなるべく年齢の低い段階から入所しておくと、周りの子どもも長年の付き
合いで拒絶的な反応にならないことが多い。
◆こうした課題の大きい子どもが 1 つのユニットに 2 人以上入ったこともあるが、運営が非
常に大変だった。これ以降、ユニットの安定性や他の子どもへの影響上、課題の大きな子ど
もは 1 人までとしている。
◆逆に、本体施設には課題の大きな子どもが集中する傾向がある。現在も、児童心理治療施
設・児童自立支援施設からの措置変更により入所した子どもがそれぞれ 2 名、また障害の
ある子どももおり、落ち着かない環境である。新たに当施設に入所する子どもにも、そのよ
うな環境であることを事前に伝えて入所してもらっている。
(2)いつ、どの子どもを分散化ユニットに入所させるかの判断
【課題6.分散化されたユニットでの生活が望ましいかどうかは、子どもの育ちを踏まえたアセス
メントをもとに今後の見通しを持って判断すべきだが、体制的にもアセスメントの力量も十分
でなく、選択を間違う場合がある。】
◆本人が落ち着いており、地域小規模や分園型小規模グループケアでの生活に適応できるか
どうか、また家庭復帰の見込みが小さいかどうかという点で、地域小規模や分園型小規模
グループケアへの移動を判断する。
◆また、なるべく年齢層が低い時点で入所するようにしている。これは子ども本人がなるべく
同じ場所で育つことを担保することと、成長するに従い課題が大きくなった際も、それまで
の関係性から周りの子どもが受け止めやすくなることがある。
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2.運営上の難しさ
(1)本体施設からの十分なサポートの提供
【課題8.本園と分散化されたユニット、およびユニット間の情報共有が取りにくい。】
◆グループリーダー会議を月 1 回開催、ユニットで抱える問題などを話す。そのほか、月 1 回
の全体会議やユニット毎の会議を開催している。ユニット別の会議は、施設長、副施設長、心
理職員の 3 人が直接出向いて行う。こうしたオフィシャルな会議以外にも、各ユニット内で
のお茶飲み会など様々な話の機会を設けている。しかし多すぎるとの意見もあるのでワー
クライフバランスの観点から見直すことも必要かとも考えている。
◆また、施設長は曜日毎に、施設を順番に回って夕食をとることを基本としており、こうした
場を使い各ユニットの状況を把握したり職員、子どもの話を聞いたりしている。
(2)地域分散化されたユニットの裁量のマネジメント
【課題 10.分散化されたユニット職員が、子どもに関して何をどこまで決定できるかがあいまい。】
◆5 つのユニットのうち 4 つが職員 4 人配置であるが、その役割分担やルールが完璧に明確
化されていると、逆に養育がうまくいかないようにも感じている。
◆大舎制では養育における役割、ルールが明確にマニュアル化されがちだが、小規模なユニッ
トではユニットごとのローカルルールや明文化されない暗黙のルール、さらにルールがある
場合にも場の状況をみた柔軟な対応をとるといった「あいまいさ」が生じる。このあいまい
さを残らず明確にすることも実生活上現実的でなく、ユニットのリーダーが中心にあいまい
さを補い、子どもと一緒に向き合う「つじつま合わせ」が必要。
◆例えば夕食前にお風呂に入ることがルール化されている場合に、子どもが気が乗らずお風
呂に入らないことがある。本来はお風呂に入る必要があるが特別に先に夕食を食べ、食後
落ち着いてしばらくしてから子どもがお風呂に入ったケースなどは、子どものペースに合わ
せてある程度柔軟に「つじつま合わせ」している例である。大舎ではこれは難しい。
3.ユニットを担う職員への支援の難しさ
(1)職員の質向上に向けたスーパービジョン体制の構築
【課題 14.ユニットリーダーの資質の影響が大きく、適切ならよいがそうでない場合悪影響とな
る。】
◆前提として、地域小規模や分園型小規模グループケアに配属する職員は、本体施設等のこ
れまでの経験が豊富な職員を配属する方針としている。
◆具体的には、職員のユニットごとの経験年数は、職員配置が 4 名のユニットでは「23 年(リ
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ーダー)、9 年、7 年、6 年(非常勤職員)」、「10 年(リーダー)、4 年、1 年(当施設ボランティ
ア経験者)、調理員」、3 名のユニットでは「20 年(リーダー)、6 年、5 年」といった構成とな
っている。
◆リーダーは概ね 10 年以上の経験者を充てるが、調理や家事を含むトータルな養育力、また
子どもへの関わりの丁寧さ(子どもに関する労力を惜しまないこと、子どもへの思いが強い
こと)が求められる。こうしたことがリーダーの資質であり、これが備わった段階でリーダー
の任用を検討する。
◆なお、近年は密接な人付き合いが減ってきたこともあるのか、若手の職員などで子どもか
ら生身の感情をダイレクトにぶつけられた際に対応できない職員が多いように感じる。この
点に注意したスーパービジョンが必要である。
(2)職員のフォロー、メンタルケアの体制の構築
◆子どもから職員への暴力や子ども同士のトラブルに巻き込まれたことが原因で、労災を適
用した事例が何回かあり、退職者が続いたこともあった。採用・配属時は「この職員ならでき
る」と思うが、困難さの大きさが痛感された。
◆こうしたことへの対応として、前述の通り課題の大きな子どもは地域小規模や分園型小規
模グループケア1つあたり 1 人までとしたほか、本体施設・ユニット間の定期的な情報共有
や、本施設の副施設長、統括主任(いずれも家庭支援専門相談員)がフリーの立場で色々な
ユニットに積極的に入るようにしている。こうした機会により職員からの相談を受けたり、
気持ちを受け止めたりしている。
◆話を聞く際は、「こうすべし」といったスタンスで指導的に関わることもあるが、それでも課
題の解決に直接結びつかないこともあり、また職員を追い詰める結果ともなってしまう。な
るべく受容的に、「大変だね」「悪いね」と声をかけながら話を聞いている。思いを吐き出す
場所があることで、職員も大変な場面を耐えることができる。また、これを乗り越えたとき
の職員の喜び、成長にもつながる。
◆子どもからの地域小規模や分園型小規模グループケア職員への暴力が続いた際に、その職
員から「最終的には自分の責任で業務を続けていく」旨の言葉が聞かれたことがある。困難
があっても業務(養育)を続けていくという職員の覚悟を体感した出来事であった。
(3)職員数の確保・適切な勤務体制の構築
【課題 18.ユニットの職員数が少なく緊急時対応ができない、研修参加まで手が回らないなどの
弊害が生じる。】
◆職員採用は短大等の新卒者は少なく、中途採用が多い。下表は実際に当施設で中途採用と
なった職員例であるが、いずれも優秀な職員で地域小規模や分園型小規模グループケアに
も配属されている。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(31ページ)
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(参考)中途採用者の経過・経歴等
◆当施設はホームページにも多くの情報を載せており、見た目も綺麗で整っているため、情報
発信ツールとしてうまく機能しているとも思われる。
◆また、地域小規模や分園型小規模グループケアへの配属は、本体施設を含む全体のバラン
ス、職員の資質等を考慮しての施設長等幹部層の判断となるが、職員への人事の意向確認
では、「命令に従う」または「希望しない」の 2 択のみを設けている。また、「希望しない」場合
はその理由と、理由が何年たったら解消するかということもあわせて確認している。
4.施設整備・確保の困難さ
(1)土地・建物の確保に向けた取り組み
【課題 21.定員である 6 名が家庭的に暮らせるための、十分な大きさの建物の確保が困難。】
◆現在の地域小規模や分園型小規模グループケアの整備も、建物ありきで様々な運用を考え
たのが現状。個室整備や水回りなどどうしても必要な部分は施設負担で改修した。
◆定員が 6 名であることが建物確保の大きな制約になる。4 名が現実的ではないか。
【A さん】 前職は児童福祉とは関連が無い理美容関係の職であったが、離職後学校に社会人入学。教
員等を経て当施設に入職。
【Bさん】 前職は別分野で、宅地建物取引士の資格を保有。将来的に里親となりたいとの思いのもと、
当施設に入職。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(32ページ)
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4.その他特記事項
◆当施設ではユニットの運営にあたり、地域分散化されたとしても「自分はこの施設の子ども
である」という一体感を確保できるよう心掛けている。
◆社会的養育ビジョンでは、施設の滞在期間は「特別なケアが必要な学童期以降の子どもで
あっても3年以内を原則」とすることが記載されているなど、施設はあくまで一時的な場所、
集中的なケアを提供する場所という捉えをされる傾向があるが、そうした一時的な施設で
小規模かつ地域分散化された家庭的養育を進めることは理念的に両立するのか、疑問を感
じることがある。里親委託が施設より絶対的に望ましいということでもなく、あくまで子ど
もの状況、個別性にあわせた適切な養育の提供が必要と考えている。
◆施設、特に地域小規模の暮らしは前述のとおりあいまいさが残るものであるが、こうした混
沌とした状況も含め受け入れられるとよい。
(子どもの育ち・意向等に合わせた施設間移動)
◆子どもが進学や塾通いを希望したり、部活等に力を入れたいと思うようになると、当施設が
駅や市の中心部から離れていることもあり、通学等のために同法人の別施設(地域小規模)
に移ることがある。
◆原則として男女混合縦割りとしていることもあり、移動に特段の子どもの違和感はないこと
が多い。また、この際、養育の連続性を確保するため、担当の養育者も一緒にユニット・施設
を移動することもある。
◆結果的に、当施設の本体にいる年齢の高い子どもは発達課題を抱えていたり活動的でなか
ったりする。本来は、子どもには自身の 1~2 年後を投影できるモデル(こういうお兄さん、
お姉さんになりたい、など)が必要だが、モデルになる子どもは上記の理由から他の施設か
里親へ移ってしまうため、本体に残る子どもにとってのモデルがいない状態である。
◆一方で、地域小規模や分園型小規模グループケアは子ども同士の関係性も密接になるので、
こうしたモデルを見つけたり投影したりすることがしやすいという点で、子どもへの良い影
響があると考える。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(33ページ)
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(3)C施設(埼玉県)
1.施設の概要
◆当施設が児童養護施設として認可されたのは昭和 20 年である。平成 18 年度には施設の全
面改築を行ったほか、平成 10 年に児童家庭支援センター、平成 25 年度にファミリーホーム、
平成 29 年度に一時保護所を設置するなど様々な機能を有する施設となっている。
◆本体施設および地域小規模児童養護施設の概要は下図の通りである。
【出典】 施設ご提供資料より作成
※職員数(フリー職員含む):
常勤 33 名、非常勤 11 名
4階 A グループ
(定員8名)
B グループ
(定員8名)
2階 A グループ
(定員9名)
B グループ
(定員9名)
1階 一時保護所
(定員6名)
地域支援
ホーム
3階 A グループ
(定員8名)
B グループ
(定員8名)
※この他ファミリーホームあり
ユニット①
平成 12 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤3名
ユニット⑤
平成 30 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤3名
ユニット④
平成 15 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤3名
ユニット③
平成 12 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤3名
ユニット②
平成 12 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤3名
地域小規模児童養護施設本体施設
※地域小規模児童養護施設の外観
本体施設から
車で 5~10 分程度
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(34ページ)
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2.地域分散化されたユニットを立ち上げるまでの経緯
地域分散化されたユニットを設置したきっかけや問題意識
◆大舎による養育は管理的な側面が強くなり、そのために子どもの自立支援が難しくなると
感じていた。このため、子どもと職員が落ち着いた環境で関係性を構築できる地域小規模
児童養護施設への移行を検討・実践することとした。
【地域分散化されたユニットでの生活による子どもへの影響】
◆小規模な環境での養育により、職員と子どものアタッチメント形成がしやすくなり、子ども
への共感、子どもの心の状態の理解がより深まるようになる。これは子どもの行動や感じ方、
考え方の予測につながり、最終的にはより適切な支援・養育方針の実現にもつながる。
◆また、大舎では「子どもの世界」「大人の世界」ができ、大人の介入できない、理解の及ばな
い子どもの領域が生じる。子どもは「子どもの世界」の中で、時には大人の支援が少ない中
で生き延びなければならない状況ともなる。小規模な環境の構築によりこうした集団の二
分化も薄らぎ、これも職員と子どもの関係性の密接化に寄与している。
◆こうした人間関係、集団の関係性の変化により、子どもの育ちには以下の影響があったと考
えられる。
〇子どもにとって、アタッチメントの関係を形成できた子どもは、退所後もその関係がつ
ながり途切れず、子どもも SOS を出しやすい状態になる。
〇職員が子どものケアにおいて、必要な時に必要な反応ができるようになる。そのため、
子どもも情緒的な面で落ち着いてくる。
〇家庭的な生活環境のもとで生活することによって、自立してアパートの一人暮らしが
始まっても自ら対処できる力(生活力)を身につけることができる。
〇人間に対する基本的な信頼感を回復し、退所後の人間関係も困り感が少なくなる。
〇それぞれの子どものプライバシーが尊重されやすくなり、自己領域が意識され、自己
形成(人格形成)も安定したものとなる。
〇生活に子どもが参加することによって、「お手伝い」をする機会が増え、褒められ、感謝
され、自信や自尊心ができる。
【ユニット立ち上げまでの取組】
◆地域住民(隣接している家庭、町内会長)や通学する学校に対しては、あいさつ回りを行っ
た。当施設は今年で開設後 75 年の歴史があり、地域に根差した施設となっている。地域の
貧困家庭に食料支援(フードバンク)を行うといった地域支援を展開してきたこともあり、近
隣住民も施設の存在をみんな知っている状況で地域からも歓迎の雰囲気で迎えてもらえる。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(35ページ)
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3.地域分散化されたユニットの設置・運営における課題
1.子どもへの養育・ケアにおける困難さ
(1)子どもへの養育・ケアにおける課題解決に向けた取り組み
【課題2.養育者と子どもとの関係の距離が近いため、激しい感情が交差し易く、関係がこじれや
すい。】
◆当施設では地域小規模から本体施設(またはその逆)に子どもが移ることは、特段の事情が
無ければ行われない。長くいる子どもには「私のほうがここをよく知っている、先輩である」
という意識が出てきやすく、職員への高圧的・否定的な態度として現れることもある。この
ため、職員には子どもとの適切な距離感・プロ意識をもって接するよう伝えている。
◆子どもが感情的になり暴れたり、職員に強い否定感・拒絶を示した際にも、それが職員のせ
い(人格・資質によるもの)ではないことを伝えれば、それだけで職員は安心できる。
◆また、職員側の視点からは、より密接に子どもと関わることから職員によるアセスメント、見
立てが深くなる一方で、その見立てにこだわり、他からの助言や支援方針への意見を受け
入れにくくなることがある。このため、本体施設も含む横断的な会議やケース検討を意識的
に設け、様々な目を入れるよう心掛けている。
【課題3.愛着障害やトラウマなど、重く複雑な課題を抱える子どもの示す症状や行動には、少人
数の体制では対応が難しい。】
◆子どもの行動として、当施設では以下のような事例があった。
(事例)
◆こうしたケースでもなんとか各ユニットでの生活継続を検討するが、他の子どもへの影響、
施設生活の安定性への影響が懸念される場合には本園への移動も視野に入る。本園はそう
いう意味で、問題が悪化した子どもを引き受ける場でもあるが、そのことの必要性を施設
全体として理解している。
小学 5 年生の発達障害を抱える男の子の暴力が治まらない状況がある。男性職員を 2 名
配置したり、緊急時の体制を整える等、何とか、そのユニットでみていけるよう支援してい
る。
地域小規模の入所児童が突然「誰か助けて、虐待されています」と叫んだことがあった。その
ような事実は一切なく、その後近隣の住民にお詫びに回った。
女子高校生が新任職員を無視するようになった。無視された職員へのフォローアップとし
て、「いなくなった職員の喪失感を処理できないことにともなう反応」という見立てを共有し
た。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(36ページ)
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【課題4.分散化されたユニットは職員、子どもが少ないため、退所者が戻って来ても当時の子ど
もも職員もおらず、以降施設との関わりがなくなってしまう。】
◆職員も結婚、引越しなど様々なライフイベントが生じ、退職者の発生はどうしても避けられ
ない面がある。当施設では退職者と子どもとの手紙のやりとりを支援するなど、退職しても
可能な限りつながりが維持されるようにしている。
(2)いつ、どの子どもを分散化ユニットに入所させるかの判断
【課題6.分散化されたユニットでの生活が望ましいかどうかは、子どもの育ちを踏まえたアセス
メントをもとに今後の見通しを持って判断すべきだが、体制的にもアセスメントの力量も十分
でなく、選択を間違う場合がある。】
◆多くの場合、入所時点は本体施設で、その後地域小規模か本体施設かを検討・決定する。在
宅復帰の見込みが薄いと判断された子ども、一定程度安定している子どもが地域小規模に
入所することが多い。年齢が低いと入所時点で地域小規模に直接入所することもある。
◆前述のとおり、基本的に子どもがユニットを変わることはないが、暴力が見られる場合や大
きく不安定な状況になった場合には本体施設に戻すことを検討する。
2.運営上の難しさ
(1)本体施設からの十分なサポートの提供
【課題8.本園と分散化されたユニット、およびユニット間の情報共有が取りにくい。】
◆地域小規模の特性上、それぞれのユニットが閉鎖的にならないように、いかにユニットだけ
で完結させないようにするかをポイントとしている。そのために、以下などの取組を行って
いる。
〇様々な職域での会議の設
定
施設長、概ね経験 10 年程度以上の主任クラスの職員を含
め行われる運営会議(月2回)、主任クラス以上は入らず各
ユニットのリーダー(概ね経験 3 年程度以上)のみで構成さ
れるリーダー会議(月2回)など、様々な職域・段階で職員
が集まり、交流できる機会を設定。
〇本体施設・地域小規模職
員が集まって行う毎朝の
打合せ
当施設では、地域小規模の職員が日々の記録として、子ど
も一人ひとりの状況・特記事項を毎日メールで施設長・主
任に送っている(施設長・主任には毎日5つの地域小規模
からメールが届くこととなる)。
このメール内容をもとに、毎朝 10 分程度、地域小規模の
職員が本体施設に集まり、施設長・主任も含め日々の生
活・養育の課題等を確認し合っている。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(37ページ)
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変更後 · 37ページ第2章 ヒアリング調査結果
〇施設全体の行事の開催 施設全体で行う行事を意図的に持つことで、職員や子ども
の交流の機会とする。
〇グループ間での子ども同
士の交流場面の設定
本体施設・地域小規模の中学生または高校生が集まる会
(中学生会議、高校生会議)を開催し、子ども同士が交流で
きる場面としている。
中学生会議は中学生が一堂に会し、現状や要望などについ
て職員と話し合う形式で、高校生会議は心理士が担当して
おり、回ごとにテーマを決めてグループワーク形式でお互
いに話したいことを話す形式。
◆本体施設からのサポートとは主に二つあるものと考えられる。ひとつは、「しんどさ」といっ
た心理的負担を、話を聴いてもらうことで軽減すること。聴いてもらえることで「見てもらっ
ている」という安心感と責任の分担化である。もうひとつは、アセスメントの共有と見立て
の一致である。このことで支援の方向性を確認できる。
【課題9.ユニットが 2 か所以上になると本体施設の支援が行き届かない。またルールがユニット
ごとに異なると子どもの不公平感、不満感や、職員の不安感につながることがある。】
◆地域小規模の運営においては、前述の小学 5 年生男児、女子高校生の事例など、突発的に
起こる緊急事態に対処する職員の支援が非常に大きな課題。地域小規模の職員が「本体施
設は助けてくれなかった」と感じてしまったらアウトである。地域小規模の開設当初は、日々
の支援・子どもの状況を毎日施設長がそれぞれのユニットの職員に確認しており、これを 1
年ほど続けていた。また、毎日ご飯を食べに各ユニットに入っていた。運営が落ち着いてき
たら徐々に確認体制を緩和していったが、それほど状況確認や支援の必要性の評価は密に、
風通し良く行うべきものと考えている。
◆裏を返せば、いかに各ユニットにすぐ困りごとを発信してもらうかが大変重要。あまりに本
体施設のチェックが強まると、かえってリーダー等がやりにくくなる。こうしたことに施設
長・主任は大きな配慮をし、さらに地域小規模の子どもに主任・施設長が直接話し、支援す
る場合は、そのタイミングや内容を地域小規模の職員とも密に相談し、相当慎重に検討する。
(2)地域分散化されたユニットの裁量のマネジメント
【課題 10.分散化されたユニット職員が、子どもに関して何をどこまで決定できるかがあいまい。】
◆当施設は地域小規模のユニットごとに一定の裁量があり、例えば金銭管理もユニットごとに
一定の金額が渡され、これをユニットの職員、子どもが話し合ってどう使うかを決めていく。
朝食、夕食等の献立、生活上の細かなルールもユニットごとに異なる(食材買い出しもユニ
ット単位)。
◆こうしたユニットごとのルールの差異は、前述の中学生会議、高校生会議等子どもが集まる
場面での情報交換などにより子ども自身も理解しており、また意見箱の設置などにより子
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(38ページ)
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どもの意向を知る機会を様々設けている。十分意見を聴いてもらえる、駄目な場合もその
説明を受ける機会があること、こうした情報の風通しの良さもあってか、子どもからのルー
ルの際に関する不平・不満はあまり聞かれない。
3.ユニットを担う職員への支援の難しさ
(1)職員の質向上に向けたスーパービジョン体制の構築
【課題 13.SV 体制、相談しやすい体制の構築ができない。】
◆各ユニットのリーダーが問題を抱え込み、閉鎖的な対応とならないよう、本体施設の主任(7
人)と相談できる体制が整えられている。
◆また、主任・リーダーの関係性が構築されていないことによる相談のしづらさ、主任による
「この施設は自分の担当だが他は違う」といった管轄意識の低減のため、主任はどのユニッ
トにも入り、またリーダーはどの主任に相談してもよいこととしている(主任のうち 4 人は
一部ユニットのシフトに入っているが、3 人はフリー)。あるユニットのリーダーとスーパーバ
イザーの関係がうまくいかず、リーダーの方が疲弊してしまった経験を活かしたものである。
これにより本体施設・各ユニットの風通しの良さも生まれている。
◆着任後 8 月までは二人体制(一人で仕事をさせない)、OJT を徹底し、フレキシブルにいろ
いろな指導者が現場に入り、調理の仕方からいろいろと伝えていく。
【課題 15.職員が複数施設に分散するため、中核となる職員の育成がうまくできない。】
◆各地域小規模児童養護施設には 1 人リーダー職員を配置している。基本的には 3 年目以降
職員がリーダーとなり、各ユニットの運営全般のほか、ユニットに在籍する他の 2 人の職員
を育成する役割も担う。このリーダーの確保・育成が一番悩ましく、苦慮したところである。
◆育成のために、リーダーとなった職員には、およそ8か月かけて施設長が全10回、講義形式
のレクチャーを行う。レクチャーは年度や実施回によらない内容の均一化、システム化を図
る観点から、各回の内容が A4 で1枚程度のレジュメにまとめられ、これに沿った形で進め
られる。リーダー着任間もない4月には集中的に(3回程度)行われるなど、実施時期にも配
慮されている。
◆また、新採用職員は、上記のように 3 年目以降にはリーダーを担うことを想定し、それまで
の日々の業務において 1 か月単位での計画的な目標設定のもと育成を行うよう心掛けて
いる(何をできるようになるかを 1 か月単位で検討、振り返りを行う)。
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4.施設整備・確保の困難さ
(1)土地・建物の確保に向けた取り組み
【課題 21.定員である 6 名が家庭的に暮らせるための、十分な大きさの建物の確保が困難。】
◆地域小規模児童養護施設は子ども6人・職員が生活するため、少なくとも個室4部屋と職員
部屋が確保できる家であることが必要。当施設は地域の不動産会社と従来から連携がとれ
ており、子ども 6 人・職員が生活できそうな土地・建物があれば情報提供をいただいている。
◆現在の地域小規模児童養護施設は全て賃借物件であるが、1か所は地域小規模用に設計・
建築された建物である。賃借物件であると地域小規模として活用しづらい部分の改修が難
しく、使い勝手が良くないこともある。改修の可否はできる限り貸主と相談するようにして
いる。
【課題 23.本体施設と学区が異なると、学校への理解促進や連携体制構築が難しい。】
◆入所児童の年齢構成によっては、一気に小学校に何十人も入学することがあり、学校側の
混乱を招く。このため、当施設では各ユニットからの小学校の学区をあえて分ける形として、
3 つの小学校に多くても 1 学区 15 人ほどの児童となるよう調整した。
4.その他特記事項
◆各ユニットでは防災の観点から、火災報知機の設置や毎月の避難訓練などに取り組んでい
る。
◆大舎の職員は、たくさんの子どもを俯瞰的に見渡し、大まかな状況をひと時で把握する力
が備わる。全体を俯瞰的に見ることは地域小規模等の小さな単位のユニットでも気を付け
るポイントであり、こうしたことから大舎が一概に否定される形式ではないことに留意すべ
き。
◆ユニットの小規模化が目的ではない。何のために小規模化を進めるのかを問い続ける必要
がある。当施設では「社会から預かった子どもを大切に育てる」を養育理念とし、一人ひとり
の子どもを大切に育てるために小規模化を推進している。どのような養育をすべきか、しっ
かりと理念を持ち、ぶれないようにすること、また理念の実現に向けて取り組んでいくこと
が重要である。
◆これから小規模を始める施設には、「何のための小規模化、地域分散化なのか」を根本に据
えること、その大切さを外さないこと」を伝えたい。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(40ページ)
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変更後 · 40ページ第2章 ヒアリング調査結果
(4)D施設(滋賀県)
1.施設の概要
◆当施設は昭和 25 年に市が設置した市立乳児院、昭和 28 年の市立幼児院に端を発し、昭和
37 年から乳児院・幼児院の運営が当法人に移管された。現在の施設は平成 4 年に児童養護
施設・乳児院を併設する形で建設したものである。
◆乳児院・児童養護施設以外にも、平成 12 年には親子サロン、平成 14 年には児童家庭支援セ
ンターを設置するなど、法人として様々な支援・サービスが展開されている。
◆本体施設および地域小規模児童養護施設の概要は下図の通りである。
【出典】 施設ご提供資料より作成
※職員数(フリー職員含む):
常勤 22 名、非常勤 1 名
※同一敷地内に児童家庭支援センター
設置
1階 乳児院 地域交流
ホール
2階
3階
ユニット①
(定員6名)
ユニット②
(定員6名)
ユニット③
(定員6名) (親子サロン)
※この他ファミリーホームあり
分園型小規模グループケア(同一建物内)
【1階:ユニット①】
平成 26 年設置
定員:6名
職員数:常勤4名
【2階:ユニット②】
平成 26 年設置
定員:6名
職員数:常勤4名
地域小規模
児童養護施設①
平成 21 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤4名
一部2人部屋あり
地域分散化されたユニット本体施設
※施設の外観
地域小規模
児童養護施設②
平成 25 年設置
定員:6名(在籍6名)
職員数:常勤4名
一部2人部屋あり
分園型小規模グループケア 地域小規模型児童養護施設
1軒はさんで隣が
本体施設
隣接~徒歩
5分程度
施設用に
建物を新築
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変更後 · 41ページ第2章 ヒアリング調査結果
2.地域分散化されたユニットを立ち上げるまでの経緯
地域分散化されたユニットを設置したきっかけや問題意識
◆当法人の理念は「小規模で家庭的な生活」である。この理念から、昭和 60 年頃から、空き室
になっていた隣接職員寮で子ども 6 人の養育を開始し、乳児院、幼児院とも「小人数」のグ
ループ化をした養育を試みてきた。
◆乳児院、幼児院を含む施設の大規模改築が行われることとなり、平成元年に改築の方向性
検討のための「将来構想委員会」を立ち上げ、約5年かけて子どもが育つ上で、施設ででき
る子どもの最善の利益をめざし構想を練った。ここでの検討により、0 歳~18 歳までの一
貫養護、家庭的な環境、地域に開かれた施設の運営・実践の方向性がとりまとめられた。
◆新施設は平成4年5月に完成。乳児院も含め、小規模のユニット体制で養育を実践すること
となった。具体的には 1 ユニットで子どもは6人、職員は 4 人体制(1.5:1)である。
◆平成 19 年に乳児院の定員増加に伴いユニット不足が生じたことから、購入した近隣の家屋
に児童養護施設の 1 ユニットを置くこととし、実践的に地域小規模児童養護施設設置の足
がかりとした。上記の通りすでに本体施設で小規模グループケアを実践していたため、実質
的には1つのユニットがそのまま地域へ移動した形である。
【地域分散化されたユニットでの生活による子どもへの影響】
◆小規模なユニットでの生活は、子どもも安心できることが多いように感じている。当施設の
分園型小規模グループケア・地域小規模児童養護施設はいずれも男女別の構成であるが、
男子は食事後に居間で一緒に遊んでいたり、女子も年齢層が低い時期は一緒に活動する姿
が見られている。
◆一方で子ども同士の人間関係が固着しやすく課題行動が生じやすい。個別対応できる空間
や逃げ場となる空間・機会をつくっておくことも必要。
◆また、ある程度の年齢になった子どもには、カウンセリング等個別の対応が必要になること
がある。発達状況、ライフステージの変化に応じた必要な支援を身近な存在である職員が先
に見つけ、適切に育ちを支えることができている。
【ユニット立ち上げまでの取組】
◆職員の研修・学びに関して、近隣の地域小規模児童養護施設を見学した上で、配慮する点や
部屋の構造について話合いを行った。
◆移行当初、地域小規模や分園型小規模グループケアでの養育内容はあえて本体施設と類似
のものとし、なるべく子どもが負担を感じずに生活を継続できるようにした。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(42ページ)
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変更後 · 42ページ第2章 ヒアリング調査結果
3.地域分散化されたユニットの設置・運営における課題
1.子どもへの養育・ケアにおける困難さ
(1)子どもへの養育・ケアにおける課題解決に向けた取り組み
【課題3.愛着障害やトラウマなど、重く複雑な課題を抱える子どもの示す症状や行動には、少人
数の体制では対応が難しい。】
◆地域小規模の子どもで、対人関係上の大きな課題のため中学校から不登校となり、夜間の
徘徊、職員への暴力(刃物の持出含む)が頻回に生じた事例があった。支える職員も疲弊し
退職者が複数生じたが、退職時に本人を傷つけないように理由を伝えてくれたり、その後の
施設行事に元職員らが来園した際には本人に声掛けしてくれたりなど、繋がってくれてい
た。
◆職員の個別対応ではなく、子どもを支える職員を他の地域小規模含む施設全体で支える体
制を構築。手が足りないときは他からヘルプが入り、食事対応等は色々な職員が交代で入
る体制になった。また、地域の関係機関とも情報共有しながら支えられるよう努めた。
◆最終的には措置変更となったが、当施設から無断で遠方まで離れたりすることはなく、当施
設を居場所として認識している様子であった。当施設の運営の考え方として「居場所を提供
すること」「決して子どもを見捨てない覚悟」を持っていることも影響したと考えられる。
【課題4.分散化されたユニットは職員、子どもが少ないため、退所者が戻って来ても当時の子ど
もも職員もおらず、以降施設との関わりがなくなってしまう。】
◆当施設では比較的職員の退職が少ない認識(平均して毎年1~2名程度)ではあるが、子ど
もとは退職後も手紙等でのつながりがある。
【課題5.分散化されたユニットに、専門的・集中的なケアが必要な子どもが多く入ると、子ども同
士がお互いに与える影響が大きく、子どもへの適切な養育にも支障が生じる。】
◆当施設の在籍児童42名のうち、知的障害(手帳取得見込み含む)の子どもは20名と、約半
数が知的障害を有する状況。精神障害、発達障害のある子どもも複数人おり、地域小規模
にも知的障害、自閉症スペクトラム等の障害のある子どもが在籍している。
◆他の子どもの持ち物に興味を持ち、手を出してしまうなどトラブルも生じるため、個室対応
にしたり、2人部屋の場合はカーテンで間を仕切る、職員の部屋と近くの部屋とし即時対応
をしやすくするといった環境的な配慮を行っている。
◆また、当施設の職員は市の障害者自立支援協議会※に参画し、障害福祉分野における政策
面の検討に加わっている。当施設では障害福祉サービスを利用する子どもも多い中で、こ
うした関係機関との連携がやりやすくなるほか、関係機関から子どもへの支援、サービス提
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(43ページ)
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変更後 · 43ページ第2章 ヒアリング調査結果
供内容に関する働きかけや助言を頂くなど、多方面からの支援体制構築にも役立っている。
※障害者総合支援法を根拠とし、自治体が地域の関係機関等をメンバーとして、個別の支援課題を
通しての地域課題の検討・共有や、課題を踏まえたサービス基盤の整備等を推進する会議体
2.運営上の難しさ
(1)本体施設からの十分なサポートの提供
【課題9.ユニットが 2 か所以上になると本体施設の支援が行き届かない。またルールがユニット
ごとに異なると子どもの不公平感、不満感や、職員の不安感につながることがある。】
◆地域の各ユニットは職員4名体制で運営されているが、このほかに本体施設のフリー職員が
概ね2ユニットに1人配属されており、この職員が子どもの緊急時対応や、職員への指導・支
援に入れる体制を確保している(フリー職員は法人の自主財源で設置)。
◆分園型小規模グループケアは本体施設とほぼ隣接、地域小規模児童養護施設も徒歩5~1
0分、車では数分の位置にあり、何かあればどの施設もすぐに駆け付けることが可能。こう
したことも適時のサポートの実現につながっている。
(2)地域分散化されたユニットの裁量のマネジメント
【課題 11.ユニット運営における一定の裁量をリーダーに持たせることは重要。一方で裁量に沿
った行動を管理者が確認するとき、これがスーパービジョンか、指導監督かという点でリーダ
ーと管理者側の認識がずれることがある。】
◆各ユニットには必ずベテラン職員を1名以上配置し、ユニット内での適切な運営が一定程度
担保されるようにしている。
◆各ユニットにはリーダーがいるが、当施設ではリーダーが果たすべき職責、責任を突き詰め
ていく雰囲気があまりない(リーダーは〇〇について責任をもって果たしなさい、など)。リ
ーダーに突然大きな裁量を負わせることは、特に責任感の強い真面目な職員にとっては疲
弊にもつながる。リーダーだけで適切な運営をしようとすると破綻につながるので、リーダ
ー・本体施設を含め、みんなで良い運営を考えていく、ゆるやかな関係づくりも大切ではな
いか。
◆ユニットごとの裁量に関して、朝食、夕食等の日々の献立は本体施設の栄養士が考案してお
り、月曜~土曜は本体施設、地域小規模や分園型小規模グループケアとも一緒である。食材
も本体施設で調達し、各施設に持ち込まれている。日曜は各ユニット自由に朝~夜の献立を
決め、買い出しから調理まで各ユニットが行う。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(44ページ)
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変更後 · 44ページ第2章 ヒアリング調査結果
3.ユニットを担う職員への支援の難しさ
(1)職員の質向上に向けたスーパービジョン体制の構築
【課題 13.SV 体制、相談しやすい体制の構築ができない。】
◆当施設は各ユニットを4名の職員で運営しており、日中などは職員が2名体制となる時間帯
も多い。この時間帯に職員間での OJT が行われたり、日々の課題・思いを共有することで
のメンタル面のフォローが行われるなど良い効果が生まれている。また、積もった課題が顕
在化・深刻化する前に他者の目が入り、問題の早期発見と解決につなげることもできる。
◆しかし職員が増えたら自然に OJT が成立するわけではない。OJT が担える職員を育てる
意識が必要。採用から 3 年間は OJT での指導が必要と考えて、先輩をつける。また、ホー
ムが支店と考えると、2つのホームを見ることのできるマネージャーのような職員を育てる
必要がある。こういう役割が取れる職員がいないと分散化はできない。
◆施設内研修にも力を入れている。月2回程度のペースで職員が勉強会を企画・開催し、その
時参加可能な職員が参加するという形式。1回30分程度で、内容はケース検討や人権研修、
子どもの発育に関するものなど様々。外部講師を招くこともある。
◆また当施設ではブラザー・シスター制度を採っており、新採用職員には 2 年目職員がつき、
日々の支援や指導を行っている。また、年 3 回程度まとまった時間をとり、業務にあたって
の日々の思いや課題と感じていることなどを聞き取っている。聞き取った内容は施設長等
管理職員が把握し、必要に応じ今後の育成や運営の改善等につなげていく。
(2)職員のフォロー、メンタルケア体制の構築
【課題 16.子どもが養育者に向ける激しい陰性感情は、養育者のメンタルヘルスを脅かす危険が
ある。濃密な関係性がそのリスクを高めてしまう。】
◆運営上の注意点として、ホーム間の情報共有・相互支援(応援)を常に心がけ、職員が孤立し
ないよう対応している。職員が気軽に支援を求める環境づくりは、職員のためでもあるが子
どもにより良い養育を提供するために必要なことで、この点は職員の新採用時から明確に
伝える。例えば「今朝学校に 3 人登校できていません。応援をお願いします」「子どもを傷つ
けることを言ってしまうかも知れない。交代してください」といった率直な支援の求めなど。
◆これにより、職員が自分だけで頑張り、抱え込むことを回避したり、助け合うことの必要性
を根拠とともに浸透させている。職員が助け合う良い人間関係を日ごろから子どもに見せ
ていくことは、良好な人格形成にも資すると考えている。
◆また、負担が非常に大きな職員には周囲が気付いた段階で施設の心理担当職員、看護師が
話を聞くなど精神的なケア、フォローを行える体制をとっている。家庭支援専門相談員、里
親支援専門相談員も専従配置であるが、何かあった時のフォローや相談には入れる体制で
あり、こうした支援も大きい。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(45ページ)
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変更後 · 45ページ第2章 ヒアリング調査結果
◆院内では当施設が力を入れている性教育に関する委員会など様々な会議体があるが、ここ
には地域小規模や分園型小規模グループケアも含む各部門の職員が入る。こうした場は職
員間の情報共有・交流の場としても活用されている。
◆精神面の負担が非常に大きい場合などは、ユニットの異動が行われることもある。
4.施設整備・確保の困難さ
(1)土地・建物の確保に向けた取り組み
【課題 21.定員である 6 名が家庭的に暮らせるための、十分な大きさの建物の確保が困難。】
◆土地・建物は以下の経過で確保・整備した。このほか、近隣の土地所有者から新規に土地を
購入し、令和 2 年度に建設予定。2 つのユニットを移行する予定であることから、これによ
り本体施設は 1 ユニットのみとなる。
施設 経過等
分園型小規模
グループケア
・近隣の空き家を購入し、建物を新築
・職員室を玄関の近くにするなど工夫
地域小規模児童養護施設① ・近隣の空き家を購入し、建物を改修
地域小規模児童養護施設② ・近隣の空き家を購入し、建物を改修
◆物件は施設関係者などから様々な情報が得られるが、6 人で生活できる家屋は多くは無い。
相談室や子どものタイムアウトの部屋も必要になる。また、特に年齢層の低い子どもで構成
されるユニットの場合は、子どもが成長すると建物が小さくなり別途改修等の対応が必要
になることもある。結果的に新築のほうが安くなるケースもある。
◆また、分園型小規模グループケアは男子のみで構成される施設であるが、女性職員の遅番・
夜間勤務時には配慮が必要。現施設はトイレや風呂も子どもと共用であるが、分けて作るこ
とも検討が必要。
5.地域社会との連携・つながりの難しさ
(1)地域分散化されたユニットが、地域の一員として根差し、活動する重要性
【課題 25.地域住民のかかわりが好意的で支援的なものか、疑惑や批判的なものかで、ユニット
の暮らしが全く別のものとなってしまう。】
◆当法人の理念として、地域に開かれた施設であること、地域で子どもが育てられることを重
要視している。地域に役立つ施設・役割を持つべきとの考えのもと、地域住民サービスとし
て平成 4 年から子育てサロンを実施している。この実践を活かし、平成 14 年に児童家庭支
援センターを立ち上げるなど実践を積み重ね、法人の地域定着をめざした。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(46ページ)
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変更後 · 46ページ第2章 ヒアリング調査結果
◆このことを基盤として、地域小規模児童養護施設の立ち上げ時も、地域住民から快く受け入
れられた。実際、施設設置時に近隣のあいさつに回った際、子育てサロンなどを通じて顔見
知りであった方が大勢であった。質の高い地域活動が重要と考える。
◆また学校とは子どもの入学前に会議を持つことを 3 年前から行っているなど連携が強固で
ある。学校側からハーフ成人式をやっても問題ないかと気にしてもらったり、子どもの支援
方針に関して相談、助言をもらうこともある。
(他施設・行政との連携体制)
◆県内の他の児童養護施設とは、日ごろから、あるいは会議の場の利用などによる情報共有
や個別ケース検討の実施などを通したつながりが密接である。
◆また、県の児童養護施設協議会により、県職員も参画し、各施設および個々の職員によるケ
アの水準の維持・向上等を目的とする「実践的ケア基準」(平成 23 年)がつくられるなど、県
下関係機関の連携は歴史的に強くみられている。
4.その他特記事項
◆地域小規模児童養護施設としては職員4人体制、フリー職員1人の配置(2ユニットごと)等
もあり収入より支出が上回るが、法人全体として赤字にならない程度に収まっている。持続
的な運営のためには取得できる加算等の適切な確保が重要。「職員を十分配置し、養育・支
援の質を高める」ことで行政や関係機関の信頼を得て、「継続的な暫定定員とならない入所
児童の確保」が行え、これにより「安定的な収入を確保」するといった好循環が生まれる。こ
うした姿を目指すことが望ましいのではないか。
【その他施設の小規模化・地域分散化に関する意見・課題】
◆本体施設の機能がしっかりしていないと小規模化・地域分散化は難しい。全てのユニットが
分散化する場合は拠点機能を有する場所の確立が必要。
◆家庭的な規模になればなるほど個別的な支援を手厚くしなければならない。特に養育現場
が密室化するので、虐待場面の再現(想起)につながったり、子ども間での様々な問題が生
じやすくなる。
◆子ども同士、子どもから職員などへの性的な課題が生じやすいと感じる。また、子どもの性
発達の段階に応じて職員の性差・年齢等への繊細な配慮が必要だが確保が難しい。
◆食事提供など家事にかかわる職員の業務負担が大きく、子どもへの関わりが少なくなる場
面もある。
◆社会的養護関係施設の制度設計は、職員指導・権利擁護の面など、運営が不明瞭(定まって
いない)な面が、障害福祉や高齢者福祉分野に比べ多いように感じる。高齢者の入所施設で
本園・分園の形が採られている場合は、分園を束ねる本園のバックアップ体制が明確な印象。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(47ページ)
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変更後 · 47ページ第2章 ヒアリング調査結果
(5)E施設(大阪府)
1.施設の概要
◆当施設が児童養護施設として認可を受けたのは、昭和 27 年であった。施設の小規模・地域分
散化に関する取組みは、平成 16 年度に地域小規模児童養護施設「第 1」を開設したことに始ま
る。その後、平成22年度に地域小規模児童養護施設「第 2」、さらに平成 28 年度には分園型
小規模グループケア「第 3」を開設した。
◆当法人は、7 市の民生・児童委員の発意によって創設され、行政、社会福祉協議会等からの支
援を受けながら運営を続けてきた。児童福祉に関する地域の要請を受けて設立された法人と
いえる。
◆本体施設および地域小規模児童養護施設等の概要は、下図の通りである。
【出典】 施設ご提供資料より作成
※職員数: 常勤 46 名、非常勤 3 名
4階 心理療法 療育ルーム ホール
2階
乳児ユニット
(定員 13 名
×2 ユニット)
小規模
グループケア
(定員 4 名×
2 ユニット)
1階
幼児ユニット
(定員 8 名×
3 ユニット)
乳幼児ホーム
(定員 6 名×
1 ユニット)
3階
小規模
グループケア
(定員 6 名×
2 ユニット)
※職員数: 常勤 12 名、非常勤 1 名
ユニット①:第 1
平成 16 年設置
定員:6名(男子のみ・在籍 5 名)
職員数:常勤3名、非常勤1名
ユニット③:第 3
平成 28 年設置
定員:8 名(男女混合・在籍 8 名)
職員数:常勤 5 名
ユニット②:第 2
平成 22 年設置
定員:6名(女子のみ・在籍 6 名)
職員数:常勤 4 名
地域小規模児童養護施設等本体施設
※地域小規模児童養護施設・分園型小規模グループケアの外観
第 1 第 2 第 3
本体施設から徒歩1,2分程度に立地
地域交流
スペース
知育教材を
活用した
保育スペース
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(48ページ)
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2.地域分散化されたユニットを立ち上げるまでの経緯
地域分散化されたユニットを設置したきっかけや問題意識
◆乳児院より入所し、施設での生活が長い児童に対して、子どもの健やかな発達、自立を確保
していくためには、地域の中で継続した生活、養育・支援を実現することが不可欠であると
考えたことから、地域小規模ユニットを設立した。
◆最初に開設した地域小規模ユニットは、学童期の児童の養育の在り方を模索する場であっ
た。
◆なお、分園型小規模グループケアのユニットは、自治体からの要請があり設立するに至った。
分散化ユニットの土地、建物をどう確保したか
◆近隣の戸建て賃貸住宅を探し、活用した。分園型小規模グループケアのユニットは、近隣の
土地・建物を購入し、建て替えを行い、現在の居住施設を確保した。
土地、建物を確保してからのユニット立ち上げまでの経緯
【立ち上げにあたり、職員への研修を実施した場合は、その内容】
◆最初の地域小規模児童養護施設(以下、小規模ユニット)を開設する際は、担当予定職員を
先駆的な取組みを行っている施設に派遣し、見学、実習を受講した。また、2 か所目以降に
開設した小規模ユニットを担当する職員は、開設までの 2 か月間、先行している小規模ユニ
ットにおいて宿泊を含む実習を行った。また、ユニットケアの在り方について検討を行うた
めのプロジェクトチームを立ち上げた。
【立ち上げにあたり、地域住民や地域関係者(自治体、学校等)に何らかの働きかけを行
った場合はその内容】
◆開設前に担当予定職員は、周辺住民への挨拶回りを行い、つながりを作ることに努めた。ま
た、小規模ユニットの開所式に、地域住民、自治会役員、子どもの通う学校、こども園、児童
相談所の担当職員を招待し、開設趣旨や支援方針について理解を深めてもらうための機会
を設けた。さらに、担当職員の顔を知ってもらう機会を作りながら、小規模ユニット内を見
学してもらう機会も提供した。
◆子ども達は、地元の子ども会に加入しており、各種行事に積極的に参加している(例:地域
対抗のソフトボール大会等)。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(49ページ)
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変更後 · 49ページ第2章 ヒアリング調査結果
【その他、ユニット構成の検討経過、概算費用、ユニット構成時の工夫(間取り、設備、リス
ク管理等)など】
◆施設職員が参加し、ユニットケアの在り方について検討を行うためのプロジェクトチームに
おいて、1)ユニットに所属する子どもの構成についての考え方、2)小規模ユニット内の間取
り、設備等について、職員や子どもの思いを聞き取り、反映させる取組みを行った。
分散化ユニットの運営にあたり日頃から心がけていること(子どもへの関わり、運営上の
注意点など)
◆担当職員には、外部を含めた研修の受講を勧めている。また、大阪の地域小規模連絡会で
職員との交流活動を続けている。
◆幹部職員は、地域小規模児童養護施設の宿直を担当している。そうすることで、小規模ユニ
ット内の子どもの状況、生活状況、担当職員の抱えている課題等を知る機会となる。また、
話を聞き、アドバイスができるようにするための状況把握の機会としている。
◆小規模ユニットで暮らしている子ども達は、他ユニット、本園に所属する子どもと自由に交
流をしている。また、全ての子ども、職員が参加する、法人全体として行事を行う等の工夫
をしている。
◆分園型小規模グループケアは、男女混合ユニットである。異性と共に暮らす自然な生活を目
指している。その際、法人全体として取組んでいる性教育の方針に基づいた配慮のある生
活に留意している。
3.地域分散化されたユニットの設置・運営における課題
1.子どもへの養育・ケアにおける困難さ
(1)子どもへの養育・ケアにおける課題解決に向けた取り組み
【課題5.分散化されたユニットに、専門的・集中的なケアが必要な子どもが多く入ると、子ども同
士がお互いに与える影響が大きく、子どもへの適切な養育にも支障が生じる。】
<第 3 の取組み体制・養育上の課題>
◆男子 4 名、女子 4 名、3 歳から 18 歳で構成される小規模ユニットである。常勤 5 名の職
員が担当しており、その他に学習支援員、本体施設の心理職員が支援に関与している。
◆本体施設の入所児童の中から、小規模ユニットに移る子どもを決める際に考慮した点は、家
庭復帰の可能性が低いことを優先した(他の小規模ユニットにおいても共通の視点を持っ
ている)。児童養護施設から自立することを想定し、できるかぎり家庭的な暮らしの中で生
活体験を積むことができる機会を提供することを目指している。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(50ページ)
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◆5 名の子ども達の中に、小学校 5 年生より、小規模ユニットで生活を始めた、自閉症スペク
トラムの診断を受けた中学 1 年生の女児がいる。最近、成長に伴い、集団生活での課題が顕
在化している。実習生の前で、他児に暴力を振る等、感情の爆発を抑えられない状況がある。
自分の気持ちをコントロールすること、周囲の気持ちを理解すること等が課題となっている。
◆こうした子どもの養育にあたっては、職員間で「理解の一致」を図る取組みが肝要であると
いえる。対象児童は、児童精神科を継続的に受診しながら、ソーシャル・スキルズ・トレーニン
グ等の専門的な療育支援を受けている。
◆一方、共に暮らす子ども達は、日常生活の中で、当該児童に様々な配慮をし、共に暮らし続
けるために心を砕いている。一方で、強い影響も受けている。当然ながら、職員は、周囲の
子ども達への対応にも留意しなくてはならない。具体的には、周囲の子ども達には、共に暮
らす上で「いやなことをいやだと言うこと」、「子ども達自身が、トラブルを予測すること」と
等のアドバイスを行っている。
〇情報の共有化、孤立化防止への対応策(例)
◆副施設長は、小規模ユニットの当直に入り、園長は、ユニットの夕食を共にする。そうするこ
とで、ユニット内の状況を、把握することが可能になる。また、担当職員から見ると、幹部が、
ユニットの子ども達の状況をよく見てくれているということが、職員にとっても強い安心感
につながるとのコメントがあった(ユニットのリーダーは孤立を感じていないと発言されて
いた)。
◆「施設全体でみる」という姿勢に基づき、ケースカンファレンス、またユニット内で 1 回/月
の「クラス会」を開催し、情報の共有、対応方法の検討を進めている。
◆ユニットの担当職員、子ども達が孤立することのないように、朝の会、行事を施設全体で一
緒に行うよう努めている。
◆児童養護施設は、ユニットの状況を、全体として共有化することに心を砕いている。一方で、
小規模ユニットを担当する職員に、養育の進め方について任せることに徹底している。ユニ
ットの中で発生した養育上の課題に対して、幹部は、安易に手を出さず、現場職員の試行錯
誤を見守ることを重視している。
◆一方、養育の過程で発生する、職員のストレスに対しては、共感することが最も大事である
と考える。前述の男児が示す粗暴な行動は、職員や子ども達にとって強いストレスとなって
いるが、現在の生活を続けていくための対応策を全体で検討している。
◆また、幹部職員のアドバイス等が、小規模ユニットのリーダー職員だけに伝わることは避け、
職員全体に伝わるよう努めている。こうした配慮は、担当職員のストレス軽減、養育の質の
向上を図る上でとても重要であると考えている。
◆若手職員の育成については、施設全体で開催している「養育検討会議」が機能している(年
間 4、5 回開催している)。この会議は、現場職員のみが参加し、全職員が、本園、地域小規
模全てのユニットの状況をできる限り共有化し、課題解決に向けて取組んでいる。その結果、
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職員同士が、相互に支援する土壌が生まれていると考える。また、各ユニットのリーダーに
とっては、全体の状況を理解するための情報収集の場となっている。
<第 2 の取組み体制・養育上の課題>
◆女子 6 名で構成されるユニットである。常勤 4 名の職員が担当しており、その他学習支援
員、本体施設の心理職員が関与している。
◆入所児童のアフターケアは、児童養護施設の大事な役割であると認識している。当該小規模
ユニットにおいても、子ども達に、コミュニケーションスキル、様々な生活スキル(金銭管理
等を含む)の支援を続け、退所後の生活へつなげている。
◆例えば、小 1 年より本ユニットに所属した女児は、現在、高校を卒業して介護職の仕事に就
くことができた。しかし、一人暮らしをしながら仕事を始めたものの、人間関係のストレスに
悩み(自分で考え、決めることが苦手。真面目過ぎてしまう部分があった)退職を余技なくさ
れた(現在は、他の仕事に就いている)。
◆本児は、退所後、本体施設で長年養育を担当してきた職員、また、本ユニットのリーダーに心
を寄せていた。しかし本体施設の職員が退職したことをきっかけに、故郷(実家)としての居
場所が、本ユニットだけになった。退所後、一人暮らしを始めた本児が、ユニットに立ち寄っ
た際、ユニットを担当していた若手の職員が、本来知らないはずである本児の情報を知って
いたことがきっかけとなり、ユニット職員に対して不信感を抱くことがあったという。その間、
本児は、ユニットに戻りたいが、退所しているので戻れない、それでも居場所が欲しいとい
う気持ちの間で揺れ動いていた可能性があった。
◆こうした状況の中で、ユニットの職員が、本ケースと細目に渡り連絡を取り、副園長と役割
分担をしながら、本児の自立を支え続けた。その結果、小規模ユニットを訪ねてきて、相談を
したり、食事をして帰ったり、時には宿泊をして、翌朝ユニットから通勤するという関わり方
に変化した。
◆地域分散化を進めていく中で、小規模なユニットが、子ども達の故郷(実家)になることがで
きる1つのモデルともいえる。
◆また、本ユニットで暮らす子ども達は、本ケースを「お姉さん」として親しみを持って接し続
けている。
◆但し、小規模ユニットにおいて、アフターケアの充実が求められているが、多様な役割が求め
られ、その実現は必ずしも容易ではないと考えられる。例えば、担当職員は、子ども自身が、
将来について先の見通しを持って判断し、考えることができるように支援をすることを求め
られる。さらに、アルバイトをはじめ社会参加するためのチャンスを作るといった支援も求
められるであろう。
◆子どもの成長に即して、小規模ユニットとして細く長くアフターケアを続けていくための体
制整備が課題である。
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変更後 · 52ページ第2章 ヒアリング調査結果
〇アフターケアの対応策(例)
◆アフターケアの対象となる児童等には、「いつでも連絡できるよ。いつでもおいで。」という
メッセージを発し続けるとともに、子どもと職員間の関係づくりが最も重要である。また、
退所児童が、生活の中で迷っている時に、背中を押してあげることができる役割も求められ
ていると考える。
◆小規模ユニットで生活する子ども達には、退所児童は、自立のモデルの 1 つとなることから、
その関係性を維持することも大切な取組みであると考える。
◆今回、小規模ユニットから自立した児童は、初めてのケースであった。そのため、アフターケ
アの過程で生じる様々な判断ポイントは、できるだけ細かく幹部職員に報告し、相談できる
体制づくりを目指した。同時に子どもと共に育ちあうという姿勢を大切にした。
◆子どもが相談相手と考えている職員は、それに徹し、それ以外の職員、例えば、幹部職員等
が、職場等との調整、各種手続きの支援を行うといった、役割分担ができることが、長く支
援を続けられる秘訣であると考える。
◆いつでも帰って来られるところになるためには、子どもが使っていた食器等は、小規模ユニ
ットの台所に大事にとっておき、いつでも使えるようにしておくことが大事である。
〇若手職員の育成・支援に関する対応策(例)
◆若手職員に対しては、その他の職員が、養育の過程で発生するストレスや悩みをできるだけ
聞きとり、話し相手になることが大事である。また、勤務年数の少ない職員の場合、子ども
がどのように成長していくか、見通しが立たないことが強いストレスになることが少なくな
い。こうした見通しを伝えることは大事である。さらに先輩職員として、かつて上手くいった
対処方法等を具体的に伝えることも重要である。一人で判断しなくてよいことも伝える。
◆職員同士は、仲間として存在し、つながっていることが大事である。
◆ユニットのリーダーは、若手職員に対して、自分が不在時等には、他ユニット、法人本体の職
員等にいつでも支援を求めてよいことを伝えておくこと、そうした関係性づくりが重要であ
ると考える。
〇リーダーの育成に関する対応策(例)
◆リーダーの育成にあたっては、外部研修の活用が有効であると考える。また、スーパーバイ
ズは、特別に設定した場面だけでなく、職員同士が、日常的な話し合いの中で行っていくこ
とも必要である。
〇子どもの主体性を尊重する対応策(例)
◆子ども達は、他ユニットや本体施設の児童と自由に交流している。また、心理支援、学習支
援を上手く活用しながら、自分の生活を充実させることができることを、子ども自身に伝え
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ることも大切である。
<第 1 の取組み体制・養育上の課題>
◆男子 5 名(本来 6 名だが、12 月に 1 名が里親委託となったため)で構成されるユニットで
ある。常勤 3 名、非常勤1名の職員が担当しており、その他学習支援員、本体施設の心理職
員が関与している。
◆児童のうち 3 名は、特別支援学級に所属しており、うち小学校 5 年の男児 1 名は自閉症ス
ペクトラムの診断を受けている。
◆当該男児は、集団生活への適応が難しく、ストレスが生じると手が出てしまうことも多い。成
長期に入り、イライラ感、衝動性、暴言、他児のものを盗る等の行動が顕在化している。特に、
特定の女性職員に対する暴力、しかも、この女性職員が一人の時に限って起こる等が課題
となっている。
◆小規模ユニット内で本児がトラブルを起こすと、職員はその子どもの対応にかかりきりにな
ってしまう。そのため、他の子どもの養育が手薄になることが課題である。
◆当該児童は、家族と連絡がとれない状況にあることから、本人にとって親子関係等への不
満や思いが、とても強いストレスになっていると考えられる。ライフストーリーワークを試み
たが、現段階では、行動に変化はみられていない。
◆こうした状況にある子どもに対応するためには、職員にある程度余裕がなければならない。
また、担当する職員が、まじめであればあるほど、当該児童に正しいことを教えようとし、そ
れが子どもにとってはストレスとなる可能性もある。
〇課題のある児童への対応策
◆小規模ユニット内で職員の手が足りない時は、他ユニットからの協力、本体施設からの応援
が柔軟にできる体制が必要である。
◆他ユニットの職員が、担当以外の子どもの状況を知っていることが、相互に支援できること
の前提条件となる。これは、小規模ユニット、分園型特有の重要な取組み課題であると考え
る。
◆暴力を受けている職員への気づきを促しつつ、サポートを図っている(養育検討会議等を通
じて実施)。
◆当該児童のアセスメントを行い、その結果を基に、職員一丸となって対応している。子ども
にもいろいろ手を尽くしているが、「八方ふさがり」のような状況ととらえられる。担当職員
が、そうした中で持ちこたえられているのは、施設全体でこのユニットを支えようという意
識があり、それが職員に伝わっているからであると考えられる。
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5.地域社会との連携・つながりの難しさ
◆町内会、子ども会の活動に積極的に参加している。こうしたことから、保護者とのつながり
も生まれる。その結果、ある時には、通学している学校の教室で起きた子どもの問題を、保
護者から職員が聞き、お互いが協力して対応することができたこともあった。
◆最近は、小学校においても保護者同士がSNSで情報交換していることが多く、そのネットワ
ークに小規模ユニットを担当する職員も参画していくことが求められる。また、中学生では、
子ども同士でクラブ活動の予定等をSNSで情報共有していることもあり、その対応にも配
慮が必要である。
◆職員は、地元の集まりに参加すること、お祭での役割を担うこと、さらに、日ごろから道路や
溝の掃除等を行い、地域の一員として振る舞い、住民等とコミュニケーションを深めていく
ことがとても大事である。
◆近隣住民への挨拶回りを通じて、お互いに顔が分かる関係を作っておくことが大事である。
住民は、例えば、おもちゃやケーキを子ども達に差し入れる等の行動を示してくれることも
ある。その際、子どもにも、近隣住民への挨拶、お礼を一緒に伝える場面をつくり、地域での
人間関係づくりを学ぶ経験を積むことも大事である。
◆子どもが地域のソフトボールチームの活動に参加し、他地域との試合を通じて、その活躍を
近隣住民から褒められる経験をしたことがある。
◆このように、小規模ユニットと地域住民等との相互のやりとりを深めておくことで、住民か
ら子ども達に対して、よいことも、注意するべきことも、自分事として声をかけてくれる関係
性が生まれる場合もあると考える。
4.その他特記事項
<子どもとの関係性>
◆職員と子どもは、小規模ユニットの中でパートナーとして存在していることが大事である。
<食育の重要性>
◆児童養護施設の職員を対象とした広域での勉強会において、食育に関するテーマで発表を
行った経験がある。ユニットにおいて実践している全調理のよさ、子どもが欲しい時に食べ
物を用意し、つくることという、当たり前のことを実現することの大事さを発信した。
<職員の失敗を許す環境・成長機会の確保>
◆職員にとって、子どもとのぶつかり合いの中で、子どもの確かな成長を近い関係性の中で
みることができることがとても大事な経験となる。
◆職員が仮に養育に失敗しても、またやり直すことができるというモチベーションを維持する
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ためには、任されているという実感を高められるような取組みが不可欠である。これは、法
人から放置された状態とは異なり、「失敗を許される環境」のもつ意義に注目すべきである。
<職員間の情報共有つながりの強化>
◆同僚、リーダー、幹部職員にどのような小さなことであっても気軽に、情報を伝える、報告す
ることがとても重要である。その実現のためには、職員同士が、お互い同士、何かあった時
にかけつけてくれるという関係性にあることが大事である。それが、職員一人ひとりが、問
題を抱え込まない状況につながる秘訣である。
<職員にとっての満足度>
◆小規模ユニットでの養育は、職員にとって、子どもを育てているという実感を強く持つこと
ができるという点で、満足度の高い職場形態であると考える。
<子どもの自立に向けて>
◆成長過程を共に過ごした子どもと職員は、子どもが自立した後も、安心してつながることが
できると考える。人間関係の距離が近いことによる、まさに小規模ユニットの強みであるこ
とを十分知ることが必要である。
<本体施設とのつながり>
◆職員が、課題にぶつかった時に、再度チャレンジする気持ちを維持するためには、本体施設
の理解が不可欠である。具体的には、職員が成し遂げたいことを理解し、後押しすることで
ある。また、職員同士のコミュニケーションを深めておくことも重要な取組みである。
<人員配置>
◆当法人では、小規模ユニットの職員配置を基準よりも高くしている。人員配置を高めること
は、経営上、容易ではないが、非常に大事な条件である。また、地域小規模ユニットで子ども
の養育体験をした学生は、児童養護施設で働いていきたいという希望を持つ傾向が高まる
と感じている。人材確保の観点からも注目すべき視点であると考える。
<おわりに>
◆当法人は、施設全体として、暖かさを感じる。それは、幹部職員とその他の多くの職員が、
「フラット」な関係にあることが影響しているのではないかと考えた。職員が、気軽(全くそう
というわけではないと思われるが)に幹部職員と話すことができる関係性がそこにあった。
こうした職員間の関係性が小規模ユニットのケアのあり方にも大きく影響していることが伺
われた。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(56ページ)
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(6)F施設(大阪府)
1.施設の概要
◆当施設は、昭和 8 年(1933 年)より児童福祉分野の活動を始め、昭22年(1947 年)に児童
養護施設としての認可を取得した。法人として、児童養護施設、乳児院、児童心理治療施設を
運営するとともに、保育園、心理療法センター等を運営している。
◆当施設の構成は、下図の通りである。本体施設と、4 か所の地域小規模児童養護施設、2 か所
の小規模グループケアを有している(以下、ユニット)。
◆いずれのユニットも男女混合で年齢は縦割りで構成されている。本体施設は、2つの部に分か
れ、A 部が 5 グループ、B 部は 4 グループの合計 9 グループで養育が行われている。基本的
には、子どもは、入所時に所属したグループ、ユニットを異動することはない(継続的に所属し
続けることを大事にしている)。
◆ユニットでは、住み込みの主担当者(全員女性)と、交替勤務のサポート担当者が養育にあたっ
ている。サポート担当者は、本体施設を含めて全ユニットを交替で担当する仕組みとなってい
る。
【出典】 施設ご提供資料
※地域小規模児童養護施設、小規模 GC の外観
※児童養護施設と道を挟む形で乳児院、児
童心理治療施設等がある。
※定員:本体施設 合計 124 名
※職員数:
法人全体:常勤 135 名、非常勤 38 名
児童養護施設:常勤 63 名、非常勤 14 名
B 部 ユニット数:4 つ
※各ユニットには、住み込みの職員が1名在籍
ユニット①:地域小規模
定員:6名(在籍 7 名)
職員数:常勤3名
地域小規模児童養護施設等本体施設
A 部 ユニット数:5 つ
通園部 幼稚園
学童クラブ
ユニット②:地域小規模
定員:6名(在籍 6 名)
職員数:常勤3名
ユニット③:小規模 GC
定員:8 名(在籍 7 名)
職員数:常勤 2 名
ユニット④:地域小規模
定員:6名(在籍 6 名)
職員数:常勤3名
ユニット⑤:地域小規模
定員:6名(在籍 6 名)
職員数:常勤3名
ユニット⑥:小規模 GC
定員:8 名(在籍 6 名)
職員数:常勤 2 名
ユニット①
ユニット③
ユニット⑤ユニット②
ユニット⑥(ユニット①の内部)
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(57ページ)
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2.地域分散化されたユニットを立ち上げるまでの経緯
地域分散化されたユニットを設置したきっかけや問題意識
◆当施設は、昭和54年(1979 年)より分園型のグループホームを立ち上げ、事業を開始した。
地域小規模化や分散化が制度化される以前の時代から、「脱施設化」を目指し、養育の在り
方を模索してきた。当時より、全国で先進的な養育に取組んでいた社会的養護に関わる関
係者と共に、「グループホーム研究会」を立ち上げ、情報交換、発信を行ってきた。なお、当
施設職員が、昭和51年(1976 年)にアメリカの児童養護施設の視察に行ったことが、グル
ープホームを導入するきっかけとなったと記録されている。現地で研修を積む中で、今後、
日本の児童養護施設にグループホームの仕組みを導入していくことが、養育の質の向上の
観点から不可欠であることを実感したと聞いている。
【地域分散化されたユニットで養育を行う意義】
◆地域小規模で養育を行う意義は、当法人がこれまで掲げてきた養育目標の中に示されてい
る。それは、「個の確立を目指すこと」、「一人ひとりを大切に育てること」、「子ども本位で落
ち着いて生活できる環境づくり・提供」である。
◆ともすると、職員は、無意識の内に、大人の理屈で子どもの生活を縛ってしまう状態に陥る
ものである。そのため、昭和 52 年(1977年)より、当施設は、子ども本位で、カリキュラム
のない生活を実践してきた。
◆また、子どもは、家庭的な環境で育つべきである。子ども達が、自分の家を持つことができ
る状態に到達することを目指して、ひたすら養育の向上を図ってきた。
【グループホーム・家の形】
◆子ども達が、自分の家を持つという実感を得るための方策の 1 つとして、専任の住み込み
養育者を配置した。この主担当者は、グループホームを自宅とし、子ども達に安定的な人間
関係とやすらぎを提供する、「絶対依存の対象」であることを目指している。こうした関係が、
子ども達と職員の「真の出会い」の形であると考えている。保護者等との間に絶対依存の関
係を持つことができなかった子ども達に、その再体験の場を提供することが大事であると
考えている。
◆なお、各ユニットは、相互依存的関係ではなく、相互協調の関係にあるよう日々目指してい
る。また、ユニットでの養育は、現実的、一般的な豊かな日常生活体験を積むことができる
場であることを重視し、意識している。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(58ページ)
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変更後 · 58ページ第2章 ヒアリング調査結果
分散化ユニットの土地・建物をどう確保したか
◆建物は、昭和 53 年(1978 年)当時に、町内会長より当法人に情報提供があった、空き家
であった庭付き一戸建ての日本家屋を借り、利用してきた。その後、平成14年(2002 年)
に本物件は、所有者より土地、建物共に寄贈を受けた(現法人が社会福祉法人化した際に、
前進の法人より譲り受けた)。
◆町内会とのつながりを大事にしておくことで、土地・建物を確保する際に、有用な情報や支
援を受けることができる。そのため、意識的に活動しておくとよい。具体的には、回覧板を
回す際に近隣住民と積極的にコミュニケーションをとるといったことが挙げられる。
◆ユニットの土地、建物を選ぶ上では、1)本体施設と隣接していること(同じ学校区であるこ
とが理想)、2)ワンフロアが広いこと(リビングが広いと、子どもが快適に過ごすことができ、
居場所となる、居室に籠らない時間が増える。その結果、養育者の目が行き届く)が重要で
あると考える。
◆当施設は、大都市近郊の住宅街に立地するため、家賃も高額になる上、個室が多数ある家
屋を確保することは、コスト面以上に厳しい実態にある。
土地、建物を確保してからのユニット立ち上げまでの経緯
【立ち上げにあたり、職員への研修を実施した場合は、その内容】
◆立ち上げ当初は、ユニットケアに対する職員の意識化が最も重要であると考える。具体的に
は、以下が挙げられる。
・子どもが第一であること。
・家庭と変わらない生活を実現すること。
・自分の居場所があることを感じられること。
・叱られても戻ってくることができる場であること。
・共通認識を持つこと。
・一人ひとりを大切にすること。
・子どもの自由が守られ、できるだけ規制しない生活を送れること。
◆どの職員であっても、一定の養育が実践できるような研修を行っていくことが大事である
(特定の職員だけが担うことができる養育体制であってはならない)。
◆度々、職員間でユニットの在り方について話し合いを行うことが大切である。こうした話し
合いを通じて、子どもの自由が守られ、できるだけ規制しない生活を送れることのような、
「脱施設化」のイメージが、職員の中で自然と浮かぶようになることが大事である。この状態
が目指すべき姿であると考える。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(59ページ)
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変更後 · 59ページ第2章 ヒアリング調査結果
◆本施設は、昭和 53 年(1978 年)に民間一戸建てを賃借し、グループホームの運営に着手
したが、その際、職員自らが養育の在り方について、アイディア出しをして試行錯誤を開始し
た。また、同時期に本園のユニット化も進めたため、平行して議論が行われた。職員が、何と
かして「脱施設化」を実現する方法を見出そうと、自ら考えだす状態に置かれることが大事
である。
◆新しい養育方法を職員の中に根付かせるためには、職員全体の意識レベルを揃えていくこ
とが大事なことであることを痛感してきた。ユニット化がいかに正しい方針であっても、限
られた職員だけが独走すれば、施設全体としての実践には至らない。全職員の意識レベル
を揃えながら、前に進み、高めていくことが非常に重要な取組みである。
分散化ユニットの運営にあたり、日ごろから心掛けていること(子どもへのかかわり、運
営上の注意点等)
【日頃から心掛けていること】
◆ユニットにおいて日頃から心掛けている点としては以下が挙げられる。
<子どもの養育について>
・ユニットは、子ども達の生活の場であり、当たり前の生活を送ることができること。
・代替養育として家庭に代わるものであること。
・子どもを育てる場であり、心を育てる場であること。
・人として大切なことを伝えること。
・ごく自然なものとしてのご近所さんとの関わりを育むこと。
・自立について、大きくなってから意識するのではなく、日頃の生活の中で学んでいくこと。
・精神的、心理的な発達を促すこと。
・節約や生活のやり繰りを感じることができる。
・自己決定のできる養育であること。
・家庭的雰囲気と心の安らぎを確保すること。
・職員自らを朗らかに保ち、子どもたちの雰囲気が和やかになるように配慮すること。
・精神的安定感が得られるようにすること。
・「健全育成」と「人格形成」を重視すること。
・子どもたちが「あたたかい人間愛」を感じ、心身ともに「安定した生活」を体感することか
ら、「人間信頼」を回復できる場となるよう配慮すること。
・子ども達が、施設生活の中で幸せであったことが認識できるように働きかけること。
・日常生活を送る上で必要不可欠な「知識」、「技術」、「センス」を習得できるようにすること。
・社会生活を営む際に必要な「知識」、「技術」、「礼儀」を習得できるようにすること。
・人間信頼の回復・感情の落ち着き・正しいセルフイメージの確立及び再構築が図られること
・「価値観」(正しい判断)を育成すること。
・「感謝のこころ」、「連帯するこころ」を育むこと。
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<職員の在り方>
・職員の孤立化やバーンアウトを防止すること。
・職員間のコミュニケーションを密にすること。
・外部からの見えづらさがあることを認識し、それらへの配慮を怠らないこと。
・緊急時の対応に留意すること。
・一般家庭でできること、一般家庭であっても困難なこと、施設であるがためにできないこ
とではないか(何故できないのか。大人の都合ではないか。子どもたちに胸を張って説明
のできる本当に筋の通った理由があるのか)等について、常に高い意識をもって熟慮し対
応していくこと。
【職員配置等について心掛けていること】
◆ユニットの中に職員が住み込むことによって、主担当が、里親のような関係になることがで
きる。
◆ユニットの職員は、できる限り子どもと直接関わることに時間が割けるように工夫している
(サポート担当が、それ以外の業務を分担するよう配慮している)。
◆職員配置を高めることは、容易ではないが、非常に重要な取組みである。
◆ユニットの主担当職員は、住み込みであるが、各家の軸となる存在である。主担当職員が、
外出する時は乳幼児を伴う、近隣のユニットに声をかけて外出する等の当たり前の対応が
みられる。
3.地域分散化されたユニットの設置・運営における課題
1.子どもへの養育・ケアにおける困難さ
(1)子どもへの養育・ケアにおける課題解決に向けた取り組み
【課題2.養育者と子どもとの関係の距離が近いため、激しい感情が交差し易く、関係がこじれや
すい。】
◆共に暮らす人数が少なくなると、子どもは初めて“自分”を出してくる。時には、子どもの葛
藤が、職員に向き、担当者がつぶれてしまうことも少なくない。一方、定員数や養育単位の
大きな施設では、多人数生活しているため、集団の中に一定の序列、ルールが生まれやすい。
そのため、子どもは、自分を出さないまま暮らし続けることが多いと感じている。
◆ユニットの中で行動化が見られた児童がいれば、その背景を理解することに心を砕いてい
る。子どもの心の状態を理解するように努めている。“自分”を出すこと、行動化は、即望ま
しくないものとはいえない。必要に応じて、心理の専門職に相談し、支援を受けることもあ
る。
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◆職員は、子どもが選んだことを大事にし、尊重し続けるという姿勢も重要である。
(2)いつ、どの子どもを地域分散化されたユニットに入所させるかの判断
【課題6.分散化されたユニットでの生活が望ましいかどうかは、子どもの育ちを踏まえたアセス
メントをもとに今後の見通しを持って判断すべきだが、体制的にもアセスメントの力量も十分
でなく、選択を間違う場合がある。】
◆一般的には、新規に入所児童は、空きのあるユニットに配属される。そして、特別な理由が
ない限り、ユニットを異動することはない。
◆但し、新たに年長児童がユニットに配置される場合は、それまで暮らしてきた子ども達の年
齢構成、タイミングを考える必要がある。当然ながら、ユニットという家族の構成が突如変わ
ると、各子どもの役割も変化してしまう。また、新たに入る子どもの特性も考慮し、ユニット
で生活を開始する時期を判断することが大切である。
◆なお、兄弟姉妹は同じユニットで生活することが望ましい。
2.運営上の難しさ
(1)本体施設からの十分なサポートの提供
【課題8.本園と分散化されたユニット、およびユニット間の情報共有が取りにくい。】
◆週 1 回の頻度で部会保育士会を開催し、課題を共有している。また、年2、3 回運営会議を
開催し、児童養護施設全体全ての子どもの支援計画等を議論している。その際、外部のスー
パーバイザー、心理士からアドバイスを受けている。こうした会議によって、全ての児童の状
況、職員の対応について情報を共有することができる。こうした機会が重要である。
◆管理職は、職員の話を聞くことが大事である。また、シフトにも積極的に入り、若手職員が置
かれている状況等を把握することが大切である。
(2)地域分散化されたユニットの裁量のマネジメント
【課題 10.分散化されたユニット職員が、子どもに関して何をどこまで決定できるかがあいまい。】
◆ユニットの担当職員の裁量範囲を明確にする。例えば、金銭管理(支出管理)、食事づくり、
時には光熱水費の管理といったことも任せている。
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3.ユニットを担う職員への支援の難しさ
(1)職員の質向上に向けたスーパービジョン体制の構築
【課題 14.ユニットリーダーの資質の影響が大きく、適切ならよいがそうでない場合悪影響とな
る。】
◆主担当職員(住み込み)の役目は、ある程度の経験を積んだ者が担当している。若手職員は、
入職後、サポート担当としてユニット、本体施設に横断的に関わる機会があることから、それ
を利用し、職員を比較し、自分の目指すものを学ぶ場としている。
◆ユニット担当職員の人員数だけを増やすことで、質が向上するものではない。この点に留意
する必要がある。
4.その他特記事項
【小規模化・地域分散化に着手する施設に向けて】
◆長年の実践から、小規模化、地域分散化は、「子どもたちにとって絶対的に良いケアのあり
方である」と考えている。
◆当施設においても、現在の、小規模化、地域分散化に根差した養育のあり方を創り上げるま
でに、40 年の時間を費やした。そして、未だなお、不備なところ、勉強不足なところ、人材不
足等の課題は山積した状態にあると考えている。それらは、簡単に完成するものではない。
また、養育の在り方を継続的に検討していく姿勢が最も大事であると考えている。
◆前述のように、小規模化、地域分散化は、職員自身の意識改革、職員への周知徹底、理解を
深めることで実現する。その実現のための方策は、各施設の事情を踏まえ、それぞれに合っ
た方法を選択し、取組むことが必要であると考える。
◆決して、小規模化、地域分散化とは、「施設の規模が単に小さくなっただけ」であってはなら
ない。
◆小規模ユニットの中での生活において、職員は、子ども達にとって、親子関係、夫婦関係の
モデルになるといえる。暮らしの場である以上、主担当は、子ども達に、必ずしもいつも格
好のよい姿だけを見せられる訳ではない。むしろ、自然な姿が子ども達の将来に役立つ貴
重な大人のモデル、暮らし方を示すものであると考えている。
【職員が直面する課題】
◆小規模ユニットの生活を通じて、児童が、絶対依存の再体験の過程を辿る中では、職員が抱
える負担は決して軽視できない。問題がない(児童相談所・一時保護所ではわからなかった)
とされていた児童が、安心できる場に置かれた時に初めて出してくる無理難題(暴言・暴力
など含む)への対応はその例である。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(63ページ)
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変更後 · 63ページ第2章 ヒアリング調査結果
◆小規模化された暮らしの中では、職員と子どもの関係がより密になることが想像できる。そ
の結果、表面的には分からなかった子どもたちの根底にある、心の中の深い傷に気づき、そ
れが職員に対して行動として噴出されることもある。
◆今でこそ担当する職員に安心して任せているものの、近い将来、“職員の世代交代”、それに
伴う“人材不足”が課題となる。
◆また、現在では、小規模ユニットの暮らしが当たり前になりつつある中で、「職員は、大変な
ことを任されている」ということに対して、意識が希薄となったり、認識の甘さが生まれる
可能性がある。今後も常に緊張感を持ち、身を引き締めて養育にあたらなければならない。
やはり、密度の高い子どもとの暮らしは、どの職員でも対応できるというわけにはいかず、
子どもを安心して任せられる職員が担当しなくてはならない。そのためには、人材育成に莫
大な時間と労力が必要となるが、職員育成こそが、非常に重要な課題であるといえる。
◆今後、社会的養護における、里親優先の原則が貫かれていくと、養育の過程で困難な状況
にある児童を施設が受け止めるという役割分担が明確になってくるであろう。施設は、その
ような状況にある子ども達に対して、質の高い、専門的な養育ができる体制を整えていくこ
とが必要である。
◆職員のバーンアウトを防ぐ上では、職員と子どもの関係で生じる問題よりも、むしろ、職員
間の人間関係による問題の方が、対処すべき重要な課題であることが多いと考えている。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(64ページ)
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変更後 · 64ページ第2章 ヒアリング調査結果
(7)G施設(大分県)
1.施設の概要
◆当法人は昭和 11 年の医療機関開設に端を発し、昭和21年に児童養護施設を設置。その後、昭
和 43 年に保育所、平成 11 年に児童家庭支援センター、平成 12 年に学童保育、平成 16 年
に児童館を付置し、地域に対して様々な子育て支援機能を提供している(各事業所の事務は統
括して行われ、日常的な情報共有が行われている)。
◆地域小規模児童養護施設と分園型小規模グループケアはそれぞれ 1 か所ずつであるが、もう
1 か所近隣の別の土地に、小規模グループケアを 1 か所設置する予定。
【出典】 施設ご提供資料より作成
※職員数(フリー職員含む):
常勤 33 名、非常勤 5 名
※同一敷地内に、以下の施設が設置されている
・児童家庭支援センター
・保育所(定員60 名)
・児童館
・学童クラブ(学童保育)
・美術館(同法人運営)
※各ユニットに同学年の子どもはいない年齢構成
※同一敷地内・隣接地に共同生活援助(障害者総合
支援法におけるグループホーム)の建物が2棟設置
※この他ファミリーホーム
あり
地域小規模児童養護施設
平成 22 年設置
定員:6名(在籍男子6名)
職員数:常勤3名、非常勤1名
分散化されたユニット本体施設
※施設の外観
分園型小規模グループケア
平成 27 年設置
定員:8名(在籍女子6名)
職員数:常勤3名、非常勤1名徒歩
5分程度
両者は隣接
(同一敷地内)
分園型小規模グループケア 地域小規模型児童養護施設
敷地内小規模
グループケア
ユニット数:4つ
定員:各8名
※各ユニットはそれぞれ
別建物
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(65ページ)
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変更後 · 65ページ第2章 ヒアリング調査結果
2.地域分散化されたユニットを立ち上げるまでの経緯
地域分散化されたユニットを設置したきっかけや問題意識
◆養育環境をできる限り家庭的にしたい。
◆「人としての育ち」を保障しながら地域分散化を図る。具体的には、同じ学年の子どもが複
数いると職員の関わりや愛情を奪い合うことになるので年齢構成に配慮している。また、き
ょうだい同士は、一緒に生活できるようにしている。現在の地域小規模や分園型小規模グ
ループケアは男女別の構成だが、性が異なるきょうだいは物理的に近いユニットで暮らせる
よう配慮している。これも同様の考えに基づいている。
◆子どもの発達においては「自分を守ってくれる人」という安心感のある大人の存在を実感し
ながら愛着形成をしていくことが重要である。そのためにできる限り家庭に近い環境で、何
気ない日々の生活の流れを大切にし、そばにいる大人の細やかな配慮、温かい関わりを通
して、子どもたちが徐々に自分自身が大切な存在であるという意識が育ち、自尊感情が回
復していくことを目指す。
【ユニット立ち上げまでの取組】
◆立ち上げにあたっては、職員への食事作りの研修、権利擁護に関する研修の実施のほか、施
設の理念、養育論について共有する作業を行った。養育に対する考え方や理念の共有につ
いては地域小規模や分園型小規模グループケアの運営にあたり日頃から心掛けている(養
育論について後述)。
◆地域の自治会、近隣住民には立ち上げにあたり説明会を開催した。また、日ごろからのあい
さつを心掛け、地域清掃活動等に参加するなどの関わりを大切にした。
3.地域分散化されたユニットの設置・運営における課題
1.子どもへの養育・ケアにおける困難さ
(1)子どもへの養育・ケアにおける課題解決に向けた取り組み
【課題2.養育者と子どもとの関係の距離が近いため、激しい感情が交差し易く、関係がこじれや
すい。】
◆施設長が、子どもの情報を常日頃からできるだけ把握し、折に触れ子どもやスタッフに声掛
けを行うことを心掛けている。特に、関わりの難しい子、相性が合わない、苦手だと感じる
子どもがいるとすれば、その子どもにこそ「この子を大事にする」と強く意識して接すること
が大切である。「自分が一番大事にされている」と子ども自身が感じることができるように
関わる。そのような意識を持って接するうちに、次第に苦手意識の薄らぎや良好な関係の
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(66ページ)
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変更後 · 66ページ第2章 ヒアリング調査結果
構築にもつながる。これは密接な働きかけによる子どもの変化にもよるのかも知れない。
◆こうした養育にあたっての考え方や理念は、当施設が
10 年以上かけ、職員みんなで「ほめるとは何か」「諭す
とは何か」など様々な検討を重ね、「養育論」としてまと
めた(例:抱っこの大切さ、お風呂に一緒に入ることの
大切さなど)。当施設ではこの「養育論」の内容を、毎朝
少しずつ職員全員で読み合わせしながら、施設全体の
養育の考え方や理念を共通化するために行っている。
◆これにより上記のような意識が、全職員に共通して備わ
るようにしている。自己流の養育にならないよう、「養
育論」(関わりの方法と基礎的な哲学)を理解したうえで
「その人(職員)らしく養育を行う」という考えである。
【課題4.分散化されたユニットは職員、子どもが少ないた
め、退所者が戻って来ても当時の子どもも職員もおらず、
以降施設との関わりがなくなってしまう。】
◆当施設では断続勤務を採用しており、また一部職員は住み込みとなっている。こうしたこと
もあり結婚・出産等ライフステージの変化で施設勤務が難しくなった際は、同法人の保育所
など別施設への異動により、できる限り勤務が継続できるよう努めている。
◆これにより、退所者が戻ってきた際、当施設にはいなくても他の施設にいる職員と会い、交
流することができるというメリットがある。
◆退所者のアフターケアを行う専門機関もあるが、知っている人がいないと相談したり支援を
求めたりしにくいのではないか。(県社会的養育推進計画のパブリックコメントにおいても、
そのような意見が出されていた)
(2)いつ、どの子どもを地域分散化されたユニットに入所させるかの判断
【課題6.分散化されたユニットでの生活が望ましいかどうかは、子どもの育ちを踏まえたアセス
メントをもとに今後の見通しを持って判断すべきだが、体制的にもアセスメントの力量も十分
でなく、選択を間違う場合がある。】
◆基本的には、地域での安定した生活が可能な程度、落ち着いている子どもを地域小規模や
分園型小規模グループケアに移す。そのためには子どものアセスメントが大変重要だが、児
童相談所のアセスメントのみで判断が難しい場合は、児童家庭支援センターの部屋などを
利用し1~2週間様子を見るなどして生活場所を検討・決定する。
◆一方、地域小規模や分園型小規模グループケアで生活して初めて大きな課題が顕在化し、
落ち着かなくなるケースもあるため、そのような場合は専門職を含む人員体制が厚く即時
的対応も比較的しやすい本体施設に移ることがある(課題の大きな子どもは本体施設で生
冊子「養育論」表紙
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(67ページ)
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変更後 · 67ページ第2章 ヒアリング調査結果
活)。この判断、および子どもへの説明は施設長が行う。これは施設長が「決定した」という
リスクを負うということである。
2.運営上の難しさ
(1)本体施設からの十分なサポートの提供
【課題8.本園と分散化されたユニット、およびユニット間の情報共有が取りにくい。】
◆当施設は本体施設(敷地内小規模グループケア)、地域小規模や分園型小規模グループケア
ともに住み込みの職員がいるが、一部の住み込みの職員については住み込みの施設(ユニ
ット)から別のユニットのシフトに入るようにしている。これにより、施設内のユニット間の情
報共有を円滑にするほか、子どもへのかかわりが閉鎖的になることの防止に繋がっている。
【課題9.ユニットが 2 か所以上になると本体施設の支援が行き届かない。またルールがユニット
ごとに異なると子どもの不公平感、不満感や、職員の不安感につながることがある。】
◆地域小規模や分園型小規模グループケアは物理的に多少離れた所在となるが、それでも施
設全体が一つにつながるように施設長が全ユニットに時折食事に行き、子どもたちと触れ
合うようにしている。施設長がどの家(ユニット)も等しく見守っていると子どもにも意識で
きるように配慮している。
◆例えば、当施設では地域小規模や分園型小規模グループケアも含め、すべての子どもが登
校前に施設長のところに来て挨拶してから登校している。同様に学校から帰ったら施設長
のところ(事務所)に来た後に自分のユニットに帰るような暮らしの文化が創立当初からあ
る。登校時には施設長は、肩をポンポンと優しくたたきながら、その子にあった声掛けをし
ている。見守っていることが伝わるコミュニケーションの工夫である。子どもにとってこれが
日課になっている。施設長は毎朝早くから在園し、また子どもの帰宅時間にも在園している
ように心がけている(施設長不在時は事務長が行っている)。
※ユニットの職員はどうしても入れ替わりがある。子どもたちには「変わらず自分をみてくれてい
る人がいる」ことを子ども内面に位置付ける(内在化)必要がある。ゆえに、施設長がその存在と
なるような声掛けや工夫をしている。そのための取り組み、文化を創造してきた歴史がある(ホ
ームの文化も大切にしながら)。このためには職員みんなが子どもの情報・施設長の動向情報を
知っておくことが重要。
◆施設職員についても、例えば(決まりとされているわけではないが)物品を買う際に、「これ
は施設長が買ってくれたよ」といった声掛けをするなど、見守っている施設長の存在を子ど
もたちに伝えている。
◆「施設長が子どもと職員を見守っている」という雰囲気を大切にしている。このことが子ど
も・職員の安心感の醸成につながっている。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(68ページ)
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変更後 · 68ページ第2章 ヒアリング調査結果
3.ユニットを担う職員への支援の難しさ
(1)職員の質向上に向けたスーパービジョン体制の構築
【課題 13.SV 体制、相談しやすい体制の構築ができない。】
◆当施設ではスーパーバイザー等責任職に「責任者が一番重いものを抱える」よう声掛けをし
ている。子どもに関するあらゆるサポートをしながら、施設・ユニットの中核的存在であるこ
とを期待している。具体的な実践例としては、子どもが不安定な際は最初から最後まで一
緒にいてあげたり、週に何回かは朝早く、または遅くまでいて全体の状況を確認したり、日
常の生活にも入ったり、ということが挙げられる。「何かあったら守ってくれる、いつでも来
てくれる」という感覚を持てるように関わっていく。そうすることで子どもも職員も安心す
る。そういう存在だからこそいつでも相談もできる雰囲気があると思う。こうしたリーダー
的職員を分園にも配置している。
※施設長は、各ユニットで食事をとる時やイベント時などは、その時にいる子どものうち一番不安
定と思われる(必要としている)子どもの隣にさりげなく座るようにしている。「あなたを大切
な子どもとして見守っているよ」というメッセージとして行っている。(子どものメンタルケア
を施設もさりげなく行う)
◆また、施設長は職員一人ひとりの考え方、特性や趣向、
趣味といった情報を努めて知るようにしており、職員ご
とに異なる働きかけをするようにしている。子どもの理
解の一致のためには、説明を絵に描くなど「見える化」
を図ると伝わりやすい。簡単なところでは「マズローの
欲求5段階説(右図参照)で、あなたが考えているその
支援は『自己実現の欲求』に該当する。でもこの子はま
だ生活が安定しておらず『安全の欲求』段階。声かける際の言葉、もう少し様子を見てはど
うか」など、具体的なアドバイスを行っている。
(働きかけの例)
野球が趣味の職員に、野球が好きな別の子どもにお話をしてみるよう働きかける。
子どもへの指導的な働きかけが強い職員に「もう少し対応を抑えてみるか」など、どこまで
手をかけるかの判断を促す。
自己実現
の欲求
承認の欲
求
社会的欲求
安全の欲求
生理的欲求
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(69ページ)
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変更後 · 69ページ第2章 ヒアリング調査結果
(2)職員のフォロー、メンタルケア体制の構築
【課題 16.子どもが養育者に向ける激しい陰性感情は、養育者のメンタルヘルスを脅かす危険が
ある。濃密な関係性がそのリスクを高めてしまう。】
◆若い職員には「危なければ逃げてもいい」、「何かあればいつでも必ず助けに行く」ことを常
に伝えている(我慢してそこになくていい、ということ)。徒歩数分の距離なので、何かあっ
た際にはいつでもすぐに本体施設に電話をすること等で、誰かが駆け付けられる体制を整
えている。
◆同時に、「大変な時は泣いてもよい」、「大人はいつも強いわけではない」ことも伝えており、
心理面でも少しでも安定できるような環境構築に努めている。
(3)職員数の確保・適切な勤務体制の構築
【課題 18.ユニットの職員数が少なく緊急時対応ができない、研修参加まで手が回らないなどの
弊害が生じる。】
◆当施設の地域小規模や分園型小規模グループケアでは、本体施設の栄養士が日々の献立を
考え、食材の調達までを行い、食材を各ユニットに持ち込み各々で調理を行う。これは職員
の日々の献立考案・買い出し等にかかる負担軽減を考慮しての対応となっている。
【課題 19.職員は養育者でもあり労働者でもあるが、養育に特化すると職員のワークライフバラ
ンス、労働環境の悪化を招く。一方過度に「業務」と割り切った養育も、子どもとの関係性構築
等に影響する懸念を感じる。どうバランスを確保するかが難しい。】
◆一軒の家に誰もいないという時間を作れない。使命感をもって子どもと暮らしてくれる人
(住み込み職員)を探すのが一番の苦労。使命をまっとうすることが自分の人生を豊かにし、
人格を磨くというひとつの歩みであることを伝えていく。
◆住み込みによる負担感については、なぜ住み込みをすることが子どもの養育にとって必要
なのかを理解することで軽減する。(自分たちが日常的にやっているかかわりが、子どもた
ちを育てる確かな要素だということを伝えて行く)特に、前述の「養育論」などを通し丁寧に
職員に伝え、その必要性を理解してもらうよう努めている。
◆現在の地域小規模や分園型小規模グループケアは、常勤3名・非常勤1名の職員で運営。ま
た、前述の通り職員の勤務体系は住み込みまたは通いによる断続勤務が採られており、子
どもが不在時の休憩時間を挟み他業種と比して長い時間施設にいることとなる。職員の努
力は大変に大きい。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(70ページ)
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変更後 · 70ページ第2章 ヒアリング調査結果
4.施設整備・確保の困難さ
(1)土地・建物の確保に向けた取り組み
【課題 21.定員である 6 名が家庭的に暮らせるための、十分な大きさの建物の確保が困難。】
◆地域小規模や分園型小規模グループケアの確保にあたっては、庭があったり桜の木があっ
たり、自然のある場所を確保したいと考えている。一般家庭にも近い環境、同時に退所後に
戻ってきたときもふるさとを感じやすい環境の両面を大事にしている。また生活環境とし
ては狭すぎる場所も広すぎる場所も選び難い。このように考えると場所の確保は苦慮する。
◆次年度以降新規に小規模グループケアを設置予定である。その場所は、施設長の知人に
前々から「もし使わなくなったら活用させてほしい」と働きかけており、活用に結びついた場
所である。
【課題 22.地域住民の理解を得られない場合の対応に苦慮する。】
◆当施設の地域小規模や分園型小規模グループケアの土地は、元々当法人が運営していた保
育所があった場所であり、保育所を本体施設の敷地内に移転したことに合わせ、空いた土
地を地域小規模や分園型小規模グループケアの土地として用いている。
◆これにより、元々当法人の存在が浸透している地域にユニットを設置することができた、と
いう効果もあったものと考える。
5.地域社会との連携・つながりの難しさ
(1)地域分散化されたユニットが、地域の一員として根差し、活動する重要性
【課題 25.地域住民のかかわりが好意的で支援的なものか、疑惑や批判的なものかで、ユニット
の暮らしが全く別のものとなってしまう】
◆当施設は児童家庭支援センター、保育所、児童館など様々な機能を複合的に有する施設で、
施設スタッフは近隣の子どもは概ね顔見知りで、地域内での存在感も高い。このため、ユニ
ットの新設時にも、知っている施設が来たということで良い形で認識していただける。
◆この意味では小規模化・地域分散化と同時に進められている多機能化の支援も重要な視点
である。現在、当施設および児童家庭支援センターは、ショートステイ・トワイライトステイ、里
親のレスパイト、一時保護を積極的に受けており、地域の子育て支援を含め虐待の予防支援
を積極的に支援していることも地域理解を図っていくという面でも重要な役割を果てして
いる。
◆地域の散髪屋さんを利用することで、地域小規模の子どもと関係(理解)が深まったことも
あった。地域に溶け込むことの大切さを感じたエピソードであった。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(71ページ)
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変更後 · 71ページ第3章 考察・まとめ
第3章 考察・まとめ
1.施設の小規模かつ地域分散化の必要性と課題
本ヒアリング調査の対象とした全ての施設で、小規模かつ地域分散化の意義と必要性を理解し、ユ
ニットを設置し、その運営を継続していた。しかしどの施設も、現在に至るまで、様々な困難に遭遇
してきていることが確認された。それらの課題は以下に集約することができる。
(1)子どもの養育・ケアにおける困難さ:子どもの抱えた課題や症状の重さによるもの、それによ
る子ども同士の関係の問題化、子どもが地域分散化されたユニットに適しているかどうかの
判断の難しさなど。
(2)運営上の難しさ:ここには、情報共有の難しさ、ユニットごとの運営ルールの違いによる混乱、
裁量の範囲(誰がどこまで決めることができるか)、子どもの入れ替わりなどによる家庭的文
化の安定性が揺らぐことなど。
(3)ユニットを担う職員への支援の難しさ:SV体制の構築の困難さ、リーダーの確保と養成の難
しさ、職員のメンタルヘルスの問題とその対応、研修参加の余裕のなさなど。
(4)施設整備・確保の困難さ:条件に見合った物件を見つけることが困難であるなど。
(5)地域社会との連携の難しさ:地域を理解し、地域機関や人々とのつながりをもつための余裕の
なさ、地域が批判的になった場合の影響の大きさなど。
以上は、先行研究でも今回の調査でも、ほとんどの施設が体験した困難さである。しかし全ての施
設が、こうした困難を感じながら、それを乗り越えるための手だてを見出している(第 2 章「1.事
前ヒアリングシートにおける各施設の課題 集計結果」のグラフ参照)。また課題が継続したり、ある
いは再び課題が浮上したとしても、課題解決に向けた努力を継続している。このことは様々な困難以
上に、全ての施設が小規模かつ地域分散化が子どもの育ちに意義あることとの認識を実感している表
れといえよう。
2.課題に対する手だて
ヒアリングの結果から、まず各施設で取り組まれた課題を乗り越えるために有効であった手だての
共通点を整理する。
なお、以下の(1)~(5)に列挙した内容を語った施設数を( )内に記している。(※カッコ内
の数字は語った施設数であって、他の施設がそれをしていないことを意味しないことに留意)
(1)子どもへの養育・ケアにおける困難さへの手だて
暴力や飛び出し等の課題を抱えた子どもは多い。そのことが養育やケアを難しくさせるが、これに
関しては以下の手だてがあげられた。
①地域小規模の適切性の判断
・家庭復帰の見込みが小さい子どもを優先とする(3施設)。ただし、地域分散化したことで家庭
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(72ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 72ページ第3章 考察・まとめ
との敷居が低くなって、家庭復帰の子どもも増えてきた施設もある(1施設)
・アセスメントを踏まえ、暴力等の行動化が顕著でない子どもをユニットでの暮らしとする(3
施設)。そのために入所後、本園や併設の児童家庭支援センターの部屋を活用しての一定期間の
行動観察を行っている(2施設)
②ユニットメンバー構成の変更は最小限とし、暮らしの一貫性、安定性を重視する(5施設)
・メンバー構成を安定させる(4施設)。例えば、空いているユニットに構成メンバーを決めて暮
らしをスタートし、そのメンバーを変えない(2施設)、問題行動の多い子どもはそのユニット
に 1 人までとし、かつ一番年少になるような構成とする(1施設)
・暮らしの影響を与え易い年長者が新しくユニットに加わることは避ける、あるいはその影響の
有無を慎重に判断する(2施設)。長く生活していて安定した成長をしている年長者は、他の子
どもの良いモデルとなる(1 施設)
・きょうだいは同じユニットにする(4 施設)
・ユニットを移行せざるを得ない場合は担当職員と一緒に移動する(1 施設)
③暴力等の問題や不安定になった子どもは本園に移行してケアを行う(4施設)
④施設全体での情報共有やアセスメントの共有と役割分担
・報告の重視、毎日のミーティングと定期的なカンファレンスの実施(5施設)
・施設全体での密な情報交換(6施設)。ここには、通常のコミュニケーションの重視(2 施設)、
毎日メールで必要な記録を本園に送る(1 施設)、施設全体の行事などを行って職員同士の交流
の場とする(1 施設)、ユニットをまたいで委員会を編成する(1 施設)などがある
・子どもの症状や問題行動の背景理解(アセスメント)の重視(4施設)。ここには心理職への相
談(2施設)も含む
⑤スーパービジョン等の相談体制
・ユニットの職員と情報交換を密にしてスーパービジョンを行う(3施設)
・スーパーバイザー以外にも相談できる体制も重要(1施設)
・新任職員に対してはチューターなどの相談指導担当を付ける(2施設)
⑥子ども同士の暴力等のトラブルを避けるための環境上の工夫
・2人部屋の場合、カーテンで仕切る、職員の部屋の近くにする(1施設)
・個別対応ができる空間の確保(1 施設)
・逃げ場となる空間や機会を作る(1 施設)
⑦本園施設や他ユニットからの応援・支援
・職員が支援困難な状況に対して応援に行く職員は必要(3施設)。ただし子どもと支援者の間に
すぐに介入していいかどうかの判断は必要(1施設)
・職員にいつでも応援を求めてよいことを伝えておくこと(2 施設)
・職員同士が支え合うために、担当ユニット以外の子どもの状況を知っておくことが重要(1施設)
・子どもへのカウンセリング等の専門的対応(1 施設)
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(73ページ)
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変更後 · 73ページ第3章 考察・まとめ
⑧施設長が責任を持って子どもにかかわる
・施設長がユニットごと決まった曜日に夕食を食べに行く、全員の子どもに毎朝挨拶するなど、
子どもの様子をいつもみているという施設長の存在を示し、職員の安心につなげる(2施設)
(2)運営上の難しさへの手だて
地域分散化されたユニット(以下、ユニット)が安定的な生活を営むために、本体施設の在り方、
様々な工夫やユニットとの関係の在り方がみえてきた。以下に、まずヒアリング結果の整理を述べる。
①情報共有において、「自分たち(ユニット)から開く」ということが基本的な姿勢として大切である。
・良いことも悪いことも、いかに地域小規模の職員から報告してもらえるか(自分たちから開ける
か)が生命線(1 施設)
・すぐに困りごとを発信してもらえるか(1 施設)
・どのような小さなことであっても気軽に、情報を伝える、報告することがとても重要である(1 施設)
・若手職員も含め、風通しのよさを施設全体として意識している(1 施設)
・地域小規模の特性上、それぞれのユニットが閉鎖的にならないように、いかにユニットだけで完
結させないようにするかをポイントとしている(1 施設)
②情報共有における多様なシステム化を図る。その際のキーワードは、「互いに顔を合わせること」、「同じ立場
の者で話す機会を設けること」、「管理職に話を聴いてもらうこと」である。
・様々な職域での会議の設定(7施設)
・ユニットの会議に管理職が入る(1 施設)
・お茶会等、様々な話の機会を設ける(2 施設)
・現場職員のみが参加し話し合う場、つまり、同じ立場の者で話す場がある(2 施設)
・日々、メールに各ユニットの情報が届く(1 施設)
・直接情報を共有する意識を高めるため、あえて日誌作成を止めた(1 施設)
③情報の内容として、他のユニットの子どもの情報を持っていると、支援しやすい
・他のユニットの職員が、担当以外の子どもの状況を知っていることが、相互に支援できることの
前提条件となる(1 施設)
④情報共有のための様々な工夫を行う。その際のキーワードは、「情報がユニット全体に行き届いているか」、
「ユニット以外の人に生活に入ってもらい、見てもらうこと」である。
・2 人であれば情報共有はしやすいが、抱え込みを防ぐために、いかに 3 人目の職員に同じニュア
ンスで情報を伝えられるか、直接情報を共有しあえているかが重要(1 施設)
・幹部職員のアドバイスがユニットのリーダーだけに伝わるのを避け、職員全体に伝わるよう努め
ている(1 施設)
・施設長や副施設長に生活に入ってもらい、生活を見てもらう(3 施設)
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(74ページ)
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変更後 · 74ページ第3章 考察・まとめ
⑤職員関係が滞った際の対応
・「パイプ」のつまりを(職員の状況をみて)直接的、間接的に関与、対応する(1 施設)
・指摘ではなく、(進捗状況等を)「一緒に確認する」というかたちで介入する(1 施設)
⑥アセスメントでの理解の一致
・情報共有を踏まえたうえでの理解が肝要(ここでいう理解とは、子どものことだけを指すのでは
なく、職員の状態を含む、ユニットの理解)(1 施設)
⑦必要な時の介入がある
・本体施設のフリー職員が概ね2つのユニットに 1 人配属されて、緊急時対応や職員への指導、支
援に入れる体制を確保している(1施設)
・他のユニットからの協力、本体施設からの応援が柔軟にできる体制がある(1 施設)
・何かあったら駆け付けられる距離感が大切(1 施設)
・(退所児童の支援にあたって)ユニットの職員が細目に連絡を取り、副施設長と役割分担しながら、
本児の自立に向け、支え続けた(1施設)
⑧日々の営みの主体的な運営の展開
・食材の買い出し、調理、金銭管理などをすべて各ユニットで行う。主体的な運営を大事にしてい
る(3施設)
⑨小規模ならではの生活の理解(本体との差異があってよい)
・分園での暮らしがあり、育ちがあることに小規模の意味があり、本園を意識してそこに差をつけ
ないではやっている方はだんだん苦しくなる(1 施設)
・役割分担やルールの「あいまいさ」を残しておくことと「つじつまあわせ」が必要(1 施設)
・地域小規模ごとのルールの差異については、子どもに説明する機会を設ける等している(1 施設)
⑩「関心はもってもらえているが、口は出さず見守ってもらえる」という感覚をもってもらうことが重要
・幹部は安易に手を出さず、現場職員の試行錯誤を見守ることを重視している(1 施設)
・職員が仮に養育に失敗しても、またやり直すことができるためのモチベーションを得るためには
任されているという実感を高められるような取り組みが不可欠。同時に「失敗を許される環境」
のもつ意義(1 施設)
⑪専門性ある職員の配置
・各ユニットには必ずベテラン職員を 1 名以上配置し、ユニット内での適切な運営が一定程度担保
されるようにしている(1 施設)
・ユニットの主担当者は各「家」の軸となる存在である(1 施設)
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(75ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 75ページ第3章 考察・まとめ
(3)ユニットを担う職員への支援の難しさへの手だて
養育の困難状況に向き合うユニット職員は支えられなければならない。ヒアリングの結果は、以下
のように整理できた。
①職員のスーパーバイズ等の相談体制とケース検討
・ユニットの職員と情報交換を密にしてスーパービジョンを行う(3施設)
・報告の重視、毎日のミーティングと定期的なカンファレンスの実施(5施設)
・心理職によるコンサルテーション(1 施設)
・職員が子どもから学ぶ姿勢を身につける(1 施設)
・困難を乗り越えたときの、職員の喜びを共にすることは、職員の成長につながる(1 施設)
②経験を積んだ職員が地域小規模を担うようにする
・ユニットを担う職員は本園で十分な経験(5 年以上)を積んだ職員(2 施設)
・ユニットリーダーは研鑽を積んだ職員とする(1 施設)
③ユニットリーダーを養成すること
・調理や家事を含むトータルな養育力、丁寧な子どもへのかかわり方ができるよう育成(1 施設)
・ユニットリーダーが抱え込まないような、本園の複数の主任と相談できる体制(1 施設)
・ユニットリーダーに対する濃密な研修(全 10 回の施設長による研修)を行う(1 施設)
④新任でユニットを担当する場合の研修体制
・就任してしばらくは指導的職員と 2 人体制とし、同行活動によるSVを受ける(2 施設)
・新任職員に対してはチューター(数年上の先輩職員)などの相談指導担当を付ける(2施設)
・1 か月単位で育成プランを検討し、振り返る(1 施設)
・子どもがどのように成長していくかの見通しを伝える(1 施設)
・新任職員に、3 年目にはリーダーを担うことを目標に、3 年間は指導者の下でOJTを受ける(1
施設)
⑤情報交換による閉鎖性や孤立の防止
・お茶のみ会などインフォーマルに会話できる機会を設ける等の工夫(1施設)
・子どもが密に相談しかかわる職員とそれを支える職員との役割分担(1施設)
・職員が別のユニットのシフトに入るなどして職員同士のつながりを構築し、閉鎖的になることを
防ぐ(1施設)
・ユニットを職員 4 名体制とし、2 名体制となる時間帯ができ、OJTやメンタル面へのフォロー
によい効果が生まれている(1 施設)
⑥本体施設や他ユニットからの応援・支援
・職員が困ったときはスムーズに支援を求めるよう職員に明確に伝える(3 施設)
・助け合うことを良しとする施設文化の醸成(3 施設)
・手が足りないときは、本園や他ユニットからの応援が柔軟に行えること(2 施設)
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(76ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 76ページ第3章 考察・まとめ
⑦職員のメンタルヘルスへの対応
・主任以上の幹部がフリーの立場でユニットに入って、職員の気持ちを受け止める(1 施設)
・指導的でなく、悩みやストレスを、受容的、共感的に話を聴くことが重要(4 施設)
・心的負担が大きい職員には、心理担当職員や看護師が話を聴くなどして精神的なフォローを行っ
ている(1施設)
・あまりに心的負担が大きくなった場合はユニットの移動を行う(1 施設)
・職員間の人間関係のストレスへの配慮が必要(1 施設)
⑧施設長の役割
・施設長が必要な場面で子どもとかかわることが、職員の安心につながる(1 施設)
・職員の考え方や特性、趣向、趣味を知っておくこと(1 施設)
なお、ここにあげられたユニット職員への支援の手だては、(1)の子どもの養育・ケアにおける困
難さへの手だてと重なるところが多い。特に①職員のスーパーバイズ等の相談体制とケース検討、⑤
情報交換による閉鎖性や孤立の防止、⑥本体施設や他ユニットからの応援・支援は、子どもの養育に
直接関係するテーマである。
(4)施設整備・確保の困難さに対する手だて
前提として、子どもと職員が生活するための適切な大きさの物件確保については、以下のように多
く課題として挙げられていた。
・6 人の子どもへの個室、職員の部屋などがある建物の確保は大きな課題(3施設)
・定員6人であることが大きな制約であり、4 人が現実的ではないか(1 施設)
・生活環境としては狭すぎる場所も広すぎる場所も選び難い。このように考えると場所の確保は
苦慮する(1 施設)
・物件があったとしても児童福祉施設としての活用にあたり法的(建築基準法、消防法等)制約
が大きく要改修または活用不可であったりする。施設側の努力では限界があるようにも思う(1
施設)
このような課題に対しての取組等に関する、ヒアリング結果の整理を以下に述べる。
①地域住民、関係者のつながりによる物件の確保
・地域の町内会が空き家を探し、確保してくれた(1 施設)
・町内会長より空き家の情報提供があり、利用したいことを頼んだ(1 施設)
②地域の不動産業者との密な連携の構築
・地域の不動産会社と従来から連携がとれており、子ども 6 人・職員が生活できそうな土地・建物
があれば情報を提供してもらっている(1 施設)
・必要時には不動産業者を総当たりしていく(1 施設)
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(77ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 77ページ第3章 考察・まとめ
③施設職員(施設長等)の知人等からの物件紹介
・施設長の知人に前々から「もし使わなくなったら活用させてほしい」と働きかけており、活用に
結びついた(1 施設)
④建物を改修しての活用(必要時)
・個室整備や水回りなど必要な部分は施設負担で改修(1 施設)
・年齢層の低い子どものユニットは、成長により建物が小さくなり改修等が必要になることもある
(1 施設)
・賃借物件は改修が難しく、使い勝手が良くないこともある。改修の可否はできる限り貸主と相談
(1 施設)
⑤賃貸ではなく購入による物件の確保
・たまたま空き家となった物件が賃借では無かったため、購入の決断をした(1 施設)
・近隣の土地・建物を購入し、建て替えを行い、現在の居住施設を確保した(1 施設)
⑥法人所有の土地の活用
・元々当法人が運営していた保育所があった場所であり、保育所を本体施設の敷地内に移転したこ
とに合わせ、空いた土地を地域分散化されたユニットの土地として用いている(1 施設)
⑦場所を選ぶ際に大事にしていること
・男子のみで構成されるユニットでは女性職員の遅番・夜間勤務時に配慮が必要。トイレや風呂も
子どもと分けて設置するなど(1 施設)
・庭があったり桜の木があったり、自然のある場所を確保したい。一般家庭にも近い環境で、退所
後に戻ってきたときもふるさとを感じやすい(1 施設)
・本体と隣接していること、ワンフロアが広いこと(リビングが広いと、子どもが快適に過ごす居場
所となる)(1 施設)
⑧学区に関する配慮
・地域小規模の新たな設置時には他の児童養護施設とも調整しながら場所を決めていく(1 施設)
・入所児童の年齢構成によっては入学児童が多く学校側の混乱を招く。このため、各ユニットの学
区をあえて分け、多くても 1 学区 15 人ほどの児童となるよう調整(1 施設)
(5)地域社会との連携の難しさへの手だて
地域社会とのつながりを模索し、いかに関係機関と連携を図りながら、ユニットが、いわば「地域
分散化」して行っているのか、特に、地域分散化していくうえでの必要な観点が浮かび上がるととも
に、その展開の手だてがみえてきた。まず、ヒアリング結果の整理を以下に述べる。
①施設の多機能化によって地域ニーズを解決していくことが施設の理解を生む
・地域の貧困家庭に食べ物を配布する(1 施設)
・児童館、学童クラブ、子ども家庭支援センター等の設置による地域ニーズの解決(3施設)
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(78ページ)
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変更後 · 78ページ第3章 考察・まとめ
②施設設立の経緯において地域との深い関係のなかで設立されている
・民生・児童委員の発意によって創設され、行政、社会福祉協議会等からも支援を受けながら運営
を続けてきた(1施設)
③関係機関との連携
・退所児童のアフターケアにおいて関係機関との連携を図る(1 施設)
・県内の他の児童養護施設と情報共有や個別ケース検討の実施等を通したつながりが密接にある(1
施設)
④「お世話になります」というところから地域との関係が始まる
・地域小規模では、最初は「失礼します」といったスタンスでの地域へのかかわりとなる(1 施設)
⑤地域に開いていく努力をする
・職員の顔よりも子どもたちがそこで生活が根付いていくことが一番の理解となる(1 施設)
・挨拶に行くときに、子どももつれていく(1 施設)
⑥職員がどういう姿をみせるかが重要
・地元の集まりに参加すること、日ごろから近隣住民への挨拶や道路清掃等を行い、地域の一員と
してふるまう(1 施設)
⑦子どもたちがそこで生活が根付いていくことが一番の理解につながる
・子どもたちが町内会、子ども会に積極的に参加している(1 施設)
・近隣の散髪屋さんを利用する(1 施設)
⑧学校、保護者とのつながりを図る
・学校と子どもの入学前に会議をもつ(1 施設)
・保護者の SNS を通じたやりとりに担当者も参加する(1 施設)
3.まとめ
以上の各施設で取り組まれた共通点の整理をふまえ、そこから示唆された地域分散化された小規模
ユニットがより有効に機能するための視点や観点を考察する。
(1)重要な支援拠点としての本体施設(本園)
里親や施設に関係なく、代替養育の中で一番重要となることは、措置された子どもが安心して安全
に暮らすことである。このためには、養育を担う職員が安心して養育を行える環境を整えることであ
る。しかし、子どもの抱えた課題の重さ等からくる激しい症状、あるいは攻撃的な言動、あるいは同
居する子ども同士のトラブルなどによって、職員も子どもも混乱、不安、あるいは恐怖等に満ちた日
常に陥ることは絶対に避けなければならない。
考察で整理した課題は全て、子どもの安心と安全を保障するために解決すべきものである。「子ど
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(79ページ)
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変更後 · 79ページ第3章 考察・まとめ
もの養育およびケアにおける困難さ」、「運営上の難しさ」、「職員の支援への難しさ」の解決に向けた
手だてとして共通していたのは、情報の共有である。情報が共有されることで、子どものアセスメン
トの精度が上がり、ユニットでの養育の適切性が評価できる。さらに緊急時も含めて必要なときに施
設の拠点となる本園から必要な支援を随時提供できる。さらに情報共有そのものが施設長初め施設の
他の職員が、自分たちの養育現場を知っているという安心感につながる。また、小規模ユニットだけ
で抱え込まなくてよいという責任の分化にもつながっていると考えられる。
情報共有の仕組みの整備を中心に、子どものアセスメントと理解の一致、本体施設との信頼に基づ
いた関係性の構築(地域分散化されたユニットの下支え)や、本体施設からの適時適切なサポート、
職員の育成計画作成等は支援拠点としての「本体施設(本園)」が果たすべき機能であり、地域分散化
されたユニットの安定した適切な運営の実現には不可欠である(図1参照)。
その上で、本園とユニットとの信頼関係なくして、上記の展開は成り立たない。このためには、ユニ
ットが閉鎖的にならず本園等に向けて開かれていることと、本園からの侵入的でない有益な働きかけが
重要である。具体的にはカンファレンスのようなフォーマルな場と、管理職も交えた談話の場などイン
フォーマルな場の両面で、顔の見える話し合いの場を重層的に設定すること、ユニットにある程度裁量
を委ね主体的運営を図れるようにすることを通し、互いの信頼関係を構築しておくことである。
図1
本体
施設
職員の
育成計画の作成
顔を合わせる場を
多層的に設ける
適時適切な
サポート
ユニットに裁量・
主体的運営を委ねる
分散化
された
ユニット
本体施設への
信頼と安心
効果
安定
本体
施設の
ユニット
子どものアセスメントと
理解の一致
情報の共有の
活性化
開いている
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(80ページ)
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変更後 · 80ページ第3章 考察・まとめ
(2)地域社会に溶け込むこと
地域分散化されたユニットでの子どもは、その地域で暮らすことになる。そのためにはユニットが
地域に受け入れられなければならない。地域で受け入れられるためには、ユニットの職員と地域住民
との関係の構築が不可欠となる。
そのためには、職員が地域の行事や活動に参加し、顔を知ってもらい、地域で求められる役割を担
うなどして、地域住民になっていくことである。職員と地域住民とのつながりをよりどころにして子
ども達がはじめて地域に根付き、地域住民の一員になっていくという認識が重要となる。子どもが地
域に受け入れられ、地域との相互的なやり取りが活発になれば、子どもの養育に地域も加わり、大き
な力となるだろう(図2参照)。
地域との強いつながりをもった子どもは、施設から自立した後も、地域を故郷として位置づけるこ
とを可能にしよう。施設だけが帰るところではなく、自分のいた地域のいたるところにつながりの拠
点ができることになる。このことは子どもの自立を支える大きな力となるだろう。
さらに地域分散化されたユニットの実践を通して、そこが子どもと家族の専門的な支援の場である
と地域に認められれば、地域の子ども達や家族の相談場所として発展する道も拓かれよう。こうした
展開を支えるためには本園のバックアップ機能は非常に重要となる。
図2
地域に開く
地域の行事・活動
への参加
地域に根付く
地域で育つ 相互関係
お世話になると
いう関係
・日常的な挨拶
子どもがお年寄
りを気遣う、遊び
に行く等
・ごみ掃除、地域
行事等への参加
・子ども会に参加
地域との関係の変化
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(81ページ)
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変更後 · 81ページ第3章 考察・まとめ
(3)施設整備・確保に向けて
「施設整備・確保の困難さに対する手だて」に関しては、町内会や知人の紹介、不動産業者との密
な連絡調整など施設により様々な方法がとられていたが、いずれも施設・法人側の継続的な働きかけ・
努力や法人・施設の費用負担等によるものが多く、行政等外部からの直接的な支援による場所の検索・
確保がなされた事例は本調査では聞かれなかった。場所確保は今後地域分散化を進めるうえで多くの
施設が直面する課題と思われ、今後土地・建物探しを容易にする仕組み等の構築が必要と思料される。
また、ただ土地・建物があれば良いということではなく、ヒアリング調査では子どもへのより良い
養育環境の提供、職員の安全性の確保の面からいくつかの望ましい条件が聞かれた。施設によりこの
点の考え方は様々と思われるが、少なくとも土地・建物の候補が複数あることはその中から各施設が
より望ましいと考える場所を選べる可能性が高まることにつながると考えられる。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(82ページ)
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変更後 · 82ページ第4章 今後の課題
第4章 今後の課題
1.調査手法に関する課題
【ヒアリング対象者】
本ヒアリング調査では、実際に地域分散化されたユニットで勤務する職員から直接聞き取りを行え
なかった施設も多かった(7施設中3施設)。
責任者からは地域分散化されたユニットの運営における理念やシステム、大事にしていること等多
くの事項を確認することができたが、今後の調査研究では現場職員の体感する課題や現場レベルで実
施している取組等についてもあわせて把握することで、課題解決への手だて等もより具体性を増すこ
とが期待される。
【本調査で把握した手だての汎用性】
本ヒアリング調査の対象とした 7 施設は、検討委員会での議論内容をもとに一定の条件に沿って抽
出した施設であり、その取組は試行錯誤が繰り返された歴史・蓄積のいわば「産物」であると考えら
れる。
このように培われた取組が、これから新規に地域分散化に取り組む施設にそのまま当てはめられる
かは未知数であり、こうした意味での取組の汎用性についても今後検討することが望ましいと考えら
れる。
2.小規模かつ地域分散化を進めるうえでの課題
【本体施設でのアセスメントの具体的手法】
本調査結果からは、本体施設の重要な機能として、その子どもが地域分散化されたユニットでの生
活が問題なく行える程度に落ち着いているか、アセスメントを行うことが挙げられた。
一方でそのアセスメントを本体施設の誰が、どのタイミングで、どのように行うかといった各施設
の具体的な手法については把握・分析しきれておらず、この点について今後詳細を深めることが有用
と考えられる。
【パーマネンシー保障を趣旨とする地域分散化されたユニットの推進と、入所期間の短期化の両立】
地域分散化されたユニットは、より家庭養育に近い切れ目ない養育環境を子どもに提供する、すな
わちパーマネンシー保障の観点が含まれるものであるが、一方で社会的養育推進計画策定要領では
「乳児院や児童養護施設等については(中略)、施設での養育を必要とする子どものための質の高い
養育を、長期間の施設入所ではなく、より短期間のうちに集中的に提供する」とされるなど、入所期
間の短期化が進められている側面がある。児童養護施設及び地域分散化されたユニットの意義として、
短期の集中的な養育、パーマネンシー保障のいずれもが求められている状況とも言え、こうした意義
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(83ページ)
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変更後 · 83ページ第4章 今後の課題
の整理によって地域分散化されたユニットの理論的な基礎を固めていくことも重要である。
なお、本ヒアリング調査では、地域小規模児童養護施設であることが保護者との距離が縮めやすく
するなどの良さを生み、職員の適切なファミリーソーシャルワークにより家庭復帰や親子関係再構築
を行いやすい環境となることが聞かれている。地域分散化されたユニットの家庭復帰、親子関係再構
築におけるメリットについても今後検証が必要であろう。
【地域分散化されたユニットでの生活が難しい子どもへのケア】
本調査結果からは、地域分散化されたユニットに入所する子どもは、一定程度生活が落ち着いた子
どもであることが多く聞かれた。裏を返せば、課題が大きい、落ち着くまで時間がかかる子どもは本
体施設での生活となる。
こうした子どもへの専門的なケアについては、今回の研究では踏み込んで扱えていない。重い課題
を抱えた子ども達への治療も含めた専門的ケアについてのあり方について検討を深めることも今後
の課題である。同時に地域分散化されたユニットの安定的な運営のためには、当該ユニットにも経験
豊かな職員の配置が必要で、本体施設とどのようなバランスをとるべきかが課題となる。ここから人
員体制の課題が顕在化することも想定される。こうした点は、現在施設・法人の努力や都道府県の補
助等の活用により対応が検討されていると思われるが、措置費における加算の再検討等、人員体制の
強化を行いやすくする方法も引き続き考慮されるべきであろう。
3.今後求められる地域小規模ユニット職員の専門的機能
今回の調査結果から、前述したように地域分散化されたユニットにおけるファミリーソーシャルワ
ークの展開の可能性が指摘されたところである。加えて、地域分散化されたユニットから退所した子
どもの自立支援を本体施設職員及び関係機関と連携しながら展開していく専門性がすでに求めらて
いることがわかった。さらにいえば、地域との関係において、地域分散化されたユニットが、地域住
民のニーズに応えていくといった相談機能の可能性も示された。
つまり、地域分散化されたユニットの職員の専門的機能のひとつとしてソーシャルワークの専門性
が求められているといえる。今後、どういったソーシャルワークの専門性が求められているのか、ま
たそうであればそうした専門性を有した職員の配置の必要性をいかに考えるのか等、さらに検証して
いく必要があるといえよう。
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(85ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 85ページ参考資料
■ 事前ヒアリングシート 様式
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(86ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 86ページ児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究
小規模化・地域分散化に関する主な課題(事前ヒアリングシート)
より質の高いヒアリング調査とさせて頂くため、ヒアリングに先立ちまして事前ヒアリングシートへのご記入、
ご返送を賜りますよう、よろしくお願い致します。
【送付先(事務局)】 みずほ情報総研株式会社 社会政策コンサルティング部
kazuhiro.tamayama@mizuho-ir.co.jp (担当:玉山、山本)
★ご記入者のご役職 ★ご記入者のお名前
Ⅰ 貴施設の概要
①貴施設名
②本体施設(大舎・中舎・小舎)及び各ユニットの概要
※敷地内の小規模グループケアについては記載不要です。
各ユニットの形態
(あてはまる番号にチェック)
設置年度
(西暦) 定員数
在籍者数
(年齢等問
わず)
職員数(フリーの職員は本
体施設に含む)
1.地域小規模児童養護施設
2.分園型小規模グループケア 常勤
(実人数)
非常勤
(実人数)
1 2
本体施設 年 人 人 人 人
ユニット1 ☐ ☐ 年 人 人 人 人
ユニット2 ☐ ☐ 年 人 人 人 人
ユニット3 ☐ ☐ 年 人 人 人 人
ユニット4 ☐ ☐ 年 人 人 人 人
ユニット5 ☐ ☐ 年 人 人 人 人
ユニット6 ☐ ☐ 年 人 人 人 人
ユニット7 ☐ ☐ 年 人 人 人 人
ユニット8 ☐ ☐ 年 人 人 人 人
ユニット9 ☐ ☐ 年 人 人 人 人
ユニット 10 ☐ ☐ 年 人 人 人 人
参考資料
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(87ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 87ページⅡ 分散化されたユニット※を立ち上げるまでの経緯
※ここでは地域小規模児童養護施設、および分園型小規模グループケアを指します。
①分散化されたユニットを設置したきっかけや問題意識
例)小規模化・地域分散化の必要性を感じたから、国から推進の方針が示されたから など
②分散化ユニットの土地、建物をどう確保したか
例)土地、建物ともに新規に購入した、既存物件を賃借した など
③土地、建物を確保してからのユニット立ち上げまでの経緯
立ち上げにあたり、職員への研修を実施した場合は、その内容
立ち上げにあたり、地域住民や地域関係者(自治会、学校等)に何らかの働きかけを行った場合は、その内容
その他、ユニット構成の検討経過、概算費用、ユニット構成時の工夫(間取り、設備、リスク管理面等)など
④分散化ユニットの運営にあたり、日ごろから心掛けていること(子どもへのかかわり、運営上の注意点など)
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(88ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 88ページⅢ 分散化されたユニットの設置・運営における課題
■以下の項目は、本調査研究の委員会での検討内容等をもとに、分散化されたユニットの開設・運営に
おいて主な課題と思われるものをまとめたものです。
■各課題を貴施設でも感じたことがある場合には「A」欄、
各課題に対して何らかの対応策をとり、その課題が解決・緩和されたと感じた場合には「B」欄
のチェックボックスに、チェックをお願いいたします。
※「A」または「B」にチェックを頂いた項目について、ヒアリングの際に内容等をお伺いしたく考えております。
※各課題の「→」の記載は例示や補足のため、この内容にとらわれず広くお考え下さい。
1.子どもへの適切な養育・ケアの提供
(1)分散化されたユニットの子どもへの適切な養育・ケアの提供
No 課題 A B
1
家庭養育の環境に近いゆえに生活に馴染めず子どもが混乱することがある。
→例)一般家庭の暮らしとは程遠い暮らしを経験してきた子どもが、一般的な生活にすぐには馴染
めず、不適切な行動をとり、注意されることが増えてしまいがち。
☐ ☐
2
養育者と子どもとの関係の距離が近いため、激しい感情が交差し易く、関係がこじれや
すい。
→濃密な関係は、子どもの激しい衝動や感情(多くは否定的)を養育者に向けやすい。それを受
けた養育者も子どもに否定的な感情を抱き、良好な関係が育ちにくくなる。
☐ ☐
3
愛着障害やトラウマなど、重く複雑な課題を抱える子どもの示す症状や行動には、少
人数の体制では対応が難しい。
→例)食事場面での虐待経験がある子どもが、食卓を囲むことに恐怖を感じ椅子に座れず、注意
すればパニック状態になるなど、日常生活で様々なトラウマ反応等が生じてしまう。
☐ ☐
4
分散化されたユニットは職員、子どもが少ないため、退所者が戻って来ても当時の子ど
もも職員もおらず、以降施設との関わりがなくなってしまう。
→子どもにとってはふるさとの喪失。職員もアフターケアができなくなる。
☐ ☐
5 分散化されたユニットに、専門的・集中的なケアが必要な子どもが多く入ると、子ども同
士がお互いに与える影響が大きく、子どもへの適切な養育にも支障が生じる。 ☐ ☐
・この課題を感じたことがある場合は「A」欄
・課題への何らかの対応策をとり、その課題が緩和・解決されたと感じた場合は「B」欄にチェック
(チェックボックスをクリックするとチェックがつきます)
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(89ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 89ページ(2)いつ、どの子どもを分散化されたユニットに入所させるかの判断
No 課題 A B
6
分散化されたユニットでの生活が望ましいかどうかは、子どもの育ちを踏まえたアセスメン
トをもとに今後の見通しを持って判断すべきだが、体制的にもアセスメントの力量も十分
でなく、選択を間違う場合がある。
→例)一時保護所ではおとなしかったといった理由で分散化されたユニットでの生活としたが、1 か
月ほどしてイライラや攻撃的言動が激しくなって、対応困難となった。
☐ ☐
7
分散化されたユニットでの生活をどのタイミング・流れで始めるべきか、判断が難しい。
→入所当初は本体施設で生活し、落ち着いたところで分散化されたユニットに移る流れや、一時保
護から直接分散化されたユニットで生活する流れなど、様々な形がある。
☐ ☐
2.本体施設・分散化されたユニットを含む施設全体の包括的な運営
(1)本体施設からの十分なサポートの提供
No 課題 A B
8
本園と分散化されたユニット、およびユニット間の情報共有が取りにくい。
→抱え込みや独善的な養育を防ぐためにユニットを閉鎖的にしてはならない。養育の質の均一化も
重要。そのために重要な情報共有体制の構築は、ユニットが本園から遠くなるほど困難。
☐ ☐
9 ユニットが 2 か所以上になると本体施設の支援が行き届かない。またルールがユニットご
とに異なると子どもの不公平感、不満感や、職員の不安感につながることがある。 ☐ ☐
(2)分散化されたユニットの裁量のマネジメント
No 課題 A B
分散化されたユニット職員が、子どもに関して何をどこまで決定できるかがあいまい。
→ユニットで決めること、本体施設と一緒に決めること、児相等と相談して決めることなど、あらかじめ
検討整理して子どもに伝えておくべき。それがないと養育者と子どもが対立するきっかけともなる。
☐ ☐
ユニット運営における一定の裁量をリーダーに持たせることは重要。一方で裁量に沿った
行動を管理者が確認するとき、これがスーパービジョンか、指導監督かという点でリーダ
ーと管理者側の認識がずれることがある。
☐ ☐
(3)ユニットの安定性の確保
No 課題 A B
12 同じ職員、子どもが長く生活し、一定の文化が形成されたユニットに新たな子どもや養
育者が加わることは、既にいる者との間で軋轢が大きく、落ち着くまでに時間がかかる。 ☐ ☐
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(90ページ)
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変更後 · 90ページ3.職員の確保、育成、フォロー体制の構築
(1)職員の質向上に向けたスーパービジョン体制の構築
No 課題 A B
SV 体制、相談しやすい体制の構築ができない。
→例)子どもが職員によって態度を大きく変え、一定の職員の時にだけ言うことを聞かない、といった
ことが起こると、その職員は強い自己否定感、無力感に襲われる。相談し支えられることが
重要だが、若い職員ほど自ら相談に行きにくい。
☐ ☐
ユニットリーダーの資質の影響が大きく、適切ならよいがそうでない場合悪影響となる。
→例)力・権力で子どもを抑え込むリーダーが育てた職員はそのような養育を子どもにするようにな
る。結果、不適切な養育へと進む可能性がある。
☐ ☐
15 職員が複数施設に分散するため、中核となる職員の育成がうまくできない。 ☐ ☐
(2)職員のフォロー、メンタルケア体制の構築
No 課題 A B
子どもが養育者に向ける激しい陰性感情は、養育者のメンタルヘルスを脅かす危険が
ある。濃密な関係性がそのリスクを高めてしまう。
→例)いつもイライラや暴言を受け続けた結果、養育者は自信を失い、抑うつ的となり、夜も眠ら
ず、やがて休職してしまった。
☐ ☐
子どもの激しい陰性感情を受けた養育者側もイライラや攻撃的感情が高まり、それが
子どもや周囲に向けられ、ユニット内の安心感が崩れる。
→例)無力感や疲弊感が子どもや周囲への怒りとなって、冷静でいられなくなる。こうなると指導を
したりアセスメントを共にしようとしても、聞く耳を持てなくなってしまう。
☐ ☐
(3)職員数の確保・適切な勤務体制の構築
No 課題 A B
ユニットの職員数が少なく緊急時対応ができない、研修参加まで手が回らないなどの弊害
が生じる。
→効率的・柔軟な勤務体制の構築等も含めた対策が行えると理想的。
☐ ☐
職員は養育者でもあり労働者でもあるが、養育に特化すると職員のワークライフバランス、
労働環境の悪化を招く。一方過度に「業務」と割り切った養育も、子どもとの関係性構築
等に影響する懸念を感じる。どうバランスを確保するかが難しい。
☐ ☐
児童養護施設の小規模かつ地域分散化に関する調査研究報告書(令和元年度調査研究)(PDF/5,381KB)(91ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 91ページ4.施設整備・確保に関する諸問題
(1)土地・建物の確保が困難
No 課題 A B
児童福祉施設に位置付けられることで、一般家庭と異なる都市計画法等の制約が課
せられる。これにより土地・建物の活用が困難となる。
→例)前面道路の幅員が 6m に満たないため、地域小規模児童養護施設としての建物利用が
認められなかった。(一般の居宅であれば可であった)
☐ ☐
21 定員である 6 名が家庭的に暮らせるための、十分な大きさの建物の確保が困難。 ☐ ☐
(2)立地が遠方であるため、地域・関係機関との連携が困難
No 課題 A B
22 地域住民の理解を得られない場合の対応に苦慮する。 ☐ ☐
23 本体施設と学区が異なると、学校への理解促進や連携体制構築が難しい。 ☐ ☐
5.地域社会との連携・つながり
(1)分散化されたユニットが、地域の一員として根差し、活動する重要性
No 課題 A B
分散化されたユニットの職員が、その地域を理解することが重要だが、十分でない。
→なるべく施設の近くに住む職員を入れることで、地域がわかり、地域に根差すことができないか。 ☐ ☐
地域住民のかかわりが好意的で支援的なものか、疑惑や批判的なものかで、ユニット
の暮らしが全く別のものとなってしまう。
→地域のつながりが無い、理解が十分でないところに一から入っていくことは非常に難しい。
☐ ☐
26 地域に入っていくための専任の職員が必要と感じるが、現在その配置がない。 ☐ ☐
27 馴染みの無い地域に分散化されたユニットを設置したため、そのユニットが孤立化した。 ☐ ☐
Ⅳ その他、施設の小規模化・地域分散化に関するご意見(あれば)
ご協力誠にありがとうございました。