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こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点
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変更後 · 1ページこども性暴力防止法に基づく
防止措置と
労働法制等を踏まえた留意点
こども性暴力防止法アドバイザー
益原 大亮(TMI総合法律事務所 弁護士)
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(2ページ)
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変更後 · 2ページ法 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児
童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律
(令和6年法律第69号)
GL こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン」
(令和8年9月改訂)
労基法 労働基準法(昭和22年法律第49号)
労契法 労働契約法(平成19年法律第128号)
雇止め告示 有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準
(平成15年厚生労働省告示第357号)
民法 民法(明治29年法律第89号)
略語例
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(3ページ)
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変更後 · 3ページ1. はじめに
2. 防止措置の概要
• 防止措置とは
• 児童対象性暴力等の「おそれ」の内容・考え方と防止措置の内容
• 児童対象性暴力等の「おそれ」の判断プロセス
3. 労働法制等を踏まえた留意点
• 内定取消し(新規採用者)
• 試用期間中の解約(新規採用者)
• 配置転換
• 出向・転籍
• 普通解雇など
• 懲戒処分
• 自宅待機命令
4. 労働法制等に沿った具体的な対応
• 犯罪事実確認による特定性犯罪前科があった場合
• 児童等・保護者からの被害申し出や児童対象性暴力等・不適切な行為の発生の場合
• 事業者があらかじめ行うべきと考えられる事項
5. 弁護士による対象事業者へのサポートの必要性
目 次
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(4ページ)
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変更後 · 4ページ1.はじめに
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(5ページ)
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変更後 · 5ページ1.はじめに
⚫ 本研修は、対象事業者による防止措置やそれに必要な事前準備につ
いて、必要な知識を習得することを目的とするものである。
⚫ 本研修は主に弁護士を想定して作成したものであり、防止措置やそれ
に必要な事前準備について、対象事業者をサポートするに際して、本研
修を参考にされたい(*1)。
⚫ また、本研修資料については、対象事業者の担当者の理解促進に役
立てていただくほか、必要に応じて、弁護士による対象事業者への説明
資料として用いることも有用である。
*1 なお、防止措置については、本研修のほか、GL215~244頁及び別紙3~5を参照されたい。また、本研修では、あくまで対象事業者と雇用関係のある対象業
務従事者との関係を解説するが、対象業務従事者が派遣元事業主・請負事業主の労働者や個人業務受託者である場合の防止措置については、GL206~
207頁、238~239頁を参照されたい。
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(6ページ)
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変更後 · 6ページ2.防止措置の概要
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(7ページ)
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変更後 · 7ページ2.防止措置の概要
⚫ 対象事業者は、犯罪事実確認の結果や、児童等との面談・相談の結果そ
の他の事情を踏まえ、対象業務従事者による「児童対象性暴力等が行わ
れるおそれ」(以下「おそれ」という。)があると認めるときは、その者を対象
業務に従事させないことその他の児童対象性暴力等を防止するために必要
な措置(以下「防止措置」という。)を講じなければならない(法6条、20条1
項4号イ・25条)。
⚫ 防止措置として想定されるのは、雇用上の措置(内定取消し、試用期間
中の解約、出向・転籍、配置転換、普通解雇、懲戒処分等)である。法
に基づく防止措置であっても、労働関係法令の制約が免除されるわけで
はなく、労働関係法令に沿って対応する必要がある。
防止措置とは
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(8ページ)
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変更後 · 8ページ2.防止措置の概要
GL図表64・66(216~218頁)参照
「おそれ」の内容 考え方 防止措置の内容
① 特 定 性 犯 罪 事 実 該 当 者 で
あった場合
事業者は、犯罪事実確認の結果その他の事
情を踏まえて「おそれ」の有無を判断するところ、
特定性犯罪の確認対象期間が、過去のエビ
デンスから性犯罪の再犯リスクが特定性犯罪
の前科を有しない者と比べて高い期間として
設定されているものであること等を踏まえると、
特定性犯罪事実該当者であるにもかかわら
ず「おそれがない」と判断し得るだけの「その他
の事情」があることは想定しがたい。このため、
通常、事業者は、特定性犯罪事実該当者
であったことをもって「おそれ」があると認める。
• 原則、当該者を対象業務に従事させない。
(例:新規採用の場合は内定取消し等、現職
者の場合は対象業務以外への配置転換等)
② 在籍する児童等やその保護
者から、特定の対象業務従
事者による児童対象性暴力
等の被害の申出があった場合
在籍する児童等本人又はその保護者から、
特定の対象業務従事者による児童対象性
暴力等の被害の申告があった場合には、性
暴力の被害が引き続き発生している可能性
があることから、「おそれ」があると認める。
• 被害拡大防止のため、被害が疑われる児童等
と加害が疑われる者の接触の回避を行う。
(例:一時的に対象業務から外し、自宅待機
や別業務に従事させるなど)
③ 調査等の結果、児童対象性
暴力等が行われたと合理的に
判断される場合
児童対象性暴力等が行われたと合理的に判
断される場合は、被害児童等への更なる性
暴力等や、他の児童等への被害拡大が生じ
得ることから、「おそれ」があると認める。
• 原則、当該者を対象業務に従事させない。
(例:懲戒事由に該当する場合には、就業規
則に沿った対応を行うとともに、防止措置として不
十分である場合には、対象業務以外への配置転
換等を講じるなど)
④ 調査等の結果、児童対象性
暴力等には該当しないが不適
切な行為が行われたと合理的
に判断される場合
不適切な行為は、当該行為そのものは性暴
力等には該当しないが、継続・発展することに
より性暴力等につながり得る行為であるため、
不適切な行為が行われたと合理的に判断さ
れる場合は、「おそれ」があると認める。
• 重大な不適切な行為である場合には、③に準
じた対応を行う。
• 初回かつ比較的軽微なものであるような場合
は、まずは、当該行為を繰り返さないように指
導や研修受講命令を行い、注意深くその後の
経過観察を行うなど、段階的な対応を行うこと
も考えられるが、指導したにも関わらず、同様の
行為を繰り返した場合には、③に準じてより厳
格な対応を行うことが考えられる。
児童対象性暴力等の「おそれ」の内容・考え方と防止措置の内容
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(9ページ)
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変更後 · 9ページ8おそれの判断プロセスについて(イメージ)
相談、面談、内部通報等による性暴力の疑いを把握
(法第5条)
事実の有無及び内容の調査(法第7条第1項)
保護者
連絡・説明
確認・相談・要望等
事実の有無の評価
(「児童対象性暴力等」・「不適切な行為」が合理的に認められるかの判定)
再発防止策の検討・実行
(必要な情報の収集が完了又は、
これ以上の収集不可となった場合)
(合理的に認められる場合)
事業者内での対応プロセス
※事実関係を客観的に確認し、公正かつ中立な調査を行うこと
※児童等の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意すること
「おそれ」ありと認定
⇒一時的な接触回避策としての
防止措置(第6条)
児童等本人又はその保護
者からの被害申出 左記以外の場合
(例:他の児童等からの通報等)
(※1)
調査継続
※1 他の児童等からの通報等があった場合にも、通報等の内容に応じて、被害が疑
われる児童等に対する接触回避等の安全確保を行うことが求められる。
※2 法第20条第1項第4号ロに基づいて、認定事業者等も同様の対応が求められる。
警察の助言を
踏まえて対応
通報・相談
「おそれあり」と認定
⇒ 防止措置(第6条)の実施
事案に応じ、被害児童等への保護・支援(法第7条第2項)
関係者・関係機関
性 暴 力 事 案 へ の 対
応に関する経験・知
見 を 有 す る 外 部 機
関・専門家
医療機関
児童福祉審議会
性暴力被害者
支援機関
等
弁護士
公認心理師
臨床心理士
通告
犯罪が疑われる場合
警察
行政機関
(所管行政庁等)
児童相談所
こども政策
担当部局
教育委員会
等
※ 主として連携する
行政機関は適用法
令により異なる。
※ 各所管行政庁等は
権限に応じて適切に
対応する。
可能な限り一体的に対応
出所:GL図表65(217頁)
2.防止措置の概要 児童対象性暴力等の「おそれ」の判断プロセス
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(10ページ)
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変更後 · 10ページ3.労働法制等を踏まえた留意点
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(11ページ)
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変更後 · 11ページ3.労働法制等を踏まえた留意点
⚫ 一般的に、採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていない
場合は、会社からの募集(申込みの誘因)に対する内定者の応募が労働契約の申込み、これに対する会
社からの内定通知は申込みに対する承諾であるとして、「始期付・解約権留保付労働契約」が成立すると解
されている(*1)。
⚫ 採用内定期間中の解約権の留保は、採用決定の当初にはその者の資質・性格、能力などの適格性の有無
に関連する事項につき資料を十分に収集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決
定を留保する趣旨と解されている(*2) 。このような採用内定期間中の解約権留保の趣旨を踏まえ、判例に
おいて、採用内定取消しは、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実で
あって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と
認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られると解されている(*3)。
⚫ そのため、採用内定段階の調査で容易に知ることのできた事情が、採用内定後に発覚したとしても、その事
情があることを理由として採用内定の取消しをすることは認められない可能性がある(*4)。防止措置の「お
それ①」との関係では、採用内定後に犯罪事実確認の結果、特定性犯罪前科が判明したとしても、採用プ
ロセスの中で特定性犯罪前科の有無を明確に確認していなければ、法的に有効な形で採用内定取消しを
行うことができない可能性がある。
*1 大日本印刷事件(GL裁判例①:最判昭和54年7月20日民集33巻5号582頁)、電電公社近畿電通局事件(最判昭和55年5月30民集34巻3号464頁)
*2 前掲大日本印刷事件
*3 前掲大日本印刷事件、前掲電電公社近畿電通局事件
*4 前掲大日本印刷事件、ドリームエクスチェンジ事件(GL裁判例③:東京地判令和元年8月7日判タ1478号187頁)
内定取消し(新規採用者)
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(12ページ)
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変更後 · 12ページ3.労働法制等を踏まえた留意点
⚫ 新規採用者であっても、いとま特例が適用されることにより、対象業務に従事させた後に犯罪事実確認を行う
場合があるため、試用期間中に犯罪事実確認を行い、特定性犯罪事実該当者であることが明らかになる場
合が生じることが想定される(GL222頁)。
⚫ 判例上、試用期間を設けた雇用契約は、解約権を留保した雇用契約(契約締結と同時に雇用の効力が
確定するが、試用期間中不適格であると認めたときは雇用契約を解約し得るという特約のある雇用契約)で
あるとされており、当該解約権の留保は、後日における調査や観察に基づく最終決定を留保する趣旨で設定
されるものと解されている(*1)。
⚫ また、判例上、当該留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められ
るとする一方、試用期間中の労働者が他の事業者への就職機会を放棄していること等を踏まえると、留保解
約権の行使は、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当と
して是認されうる場合にのみ許されるとされている(*2)。例えば、採用選考過程における経歴詐称を理由と
した試用期間中の解約権行使が有効と判断された裁判例がある(*3 *4)。
⚫ これらを踏まえると、防止措置の「おそれ①」との関係では、就業規則に試用期間中の解約事由として「重要
な経歴の詐称」が定められている場合で、採用選考過程において特定性犯罪前科の有無を明示的に確認
していたにもかかわらず、虚偽申告又は黙秘があり、試用期間中の犯罪事実確認により特定性犯罪事実
該当者であることが明らかになったときは、当該事由に該当するものとして留保解約権を行使することができ
ると考えられる(GL222頁)(*5) 。
*1 三菱樹脂事件(GL裁判例④:最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)
*2 前掲三菱樹脂事件
*3 アクサ生命保険ほか事件(GL裁判例⑤:東京地判平成21年8月31日労判995号80頁)
*4 有期労働契約の場合は、試用期間中の留保解約権の行使についても労契法17条1項の「やむを得ない事由」が必要であると示した裁判例がある(リーディング証券事
件(GL裁判例⑥:東京地判平成25年1月31日労経速2180号3頁)) 。
*5 なお、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は、試用期間中であっても、解雇予告義務が生じる(労基法20条、21条4号)。
試用期間中の解約(新規採用者)
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(13ページ)
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変更後 · 13ページ3.労働法制等を踏まえた留意点
【労働契約上の根拠(権限審査)】
⚫ 配置転換(*1)は、人事権として、労働契約上の根拠(配転命令権)に基づいて命じることができる(*2)。
⚫ なお、労働者と使用者との間に職種限定合意がある場合には、使用者は、当該労働者に対し、その個別同
意なく配置転換を命ずる権限を有しない(労働契約上の根拠(配転命令権)がない)と解されている(*
3) 。防止措置との関係では、特に保育士などの資格職の場合は、職種限定合意が成立している可能性も
あるため、配置転換を検討する際は留意が必要である。
【配転命令権の濫用(濫用審査)】
⚫ 労働契約上の根拠に基づき、配転命令を行うことができる場合でも、㋐業務上の必要性がない場合、㋑不
当な動機・目的がある場合、㋒労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合
のいずれかに該当する場合には、配転命令権の濫用があるとして、その行使は無効となる(*4)。
⚫ もっとも、法に基づく防止措置を講じるために、特定性犯罪事実該当者である対象業務従事者をこどもと接
しない業務に配置転換をしなければならない場合、一般に「業務上の必要性」(㋐不該当)は認められる
ものと考えられ、㋑・㋒の事情が無い場合は、権利濫用となる事由には該当しないと考えられる(GL224頁)。
*1 配転とは、一般的に、労働者の配置の変更であって、労働者の職務内容又は勤務地が相当の長期間にわたって変更されるものをいい、所属部署や職種の変更は「配
置転換」、勤務地の変更は「転勤」と呼ばれる。
*2 例えば、就業規則に「当法人は、業務上の必要がある場合には、従業員に対して就業場所、職種、業務の変更を命ずることがある。従業員は正当な理由なくこれを拒
むことはできない。」と定めることが考えられる。
*3 滋賀県社会福祉協議会事件(GL裁判例⑧:最判令和6年4月26日判タ1523号80頁)
*4 東亜ペイント事件(GL裁判例⑦:最判昭和61年7月14日集民148号281頁)
配置転換
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(14ページ)
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変更後 · 14ページ3.労働法制等を踏まえた留意点
【出向】
⚫ 出向(在籍出向)とは、労働者が出向元との労働契約を継続したまま、出向先と雇用契約を締結し、出向
先企業に労務提供することをいう(*1)。
⚫ 出向元が労働者に出向を命じるためには、①当該労働者の個別的同意を得るか、②就業規則や労働協約
において、出向を命じる旨の規定に加え、出向の定義、出向期間、賃金・退職金・出向手当・復帰条件等、
労働者の利益に配慮した詳細な規定が整備され、かつ周知されていることが必要である(*2 *3)。
⚫ また、出向命令権があるとしても、当該出向の命令がその必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の
事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、出向命令は無効となる(労契法14条)(*4)。
*1 厚生労働省「在籍型出向『基本がわかる』ハンドブック(第2版)」(令和4年10月1日)。
*2 新日本製鐵事件(GL裁判例⑨:最判平成15年4月18日労判847号1頁)
*3 なお、在籍出向の際、出向の必要性や出向期間中の労働条件等を、出向元企業、出向先企業および労働者の三者間で、出向契約の内容や出向期間中の労働条
件等を明確にしておく必要がある。詳細は前掲「在籍型出向『基本がわかる』ハンドブック(第2版)」参照。また、出向時(出向先との雇用契約の締結に際して)は、
労働条件通知書を交付する必要がある(労基法15条)。
*4 具体的には、業務上の必要性、人選の合理性、出向者に与える不利益の程度、動機・目的等を考慮して判断される(リコー事件・東京地判平成25年11月12日判
時2210号113頁、日本雇用創出機構事件・東京地判平成26年9月19日労経速2224号17頁)。
*5 菅野和夫ほか『労働法第13版』691頁(弘文堂、2024年)
*6 三和機材事件(GL裁判例⑩:東京地決平成4年1月31日判時1416号13頁)等
出向・転籍
【転籍】
⚫ 転籍とは、①転籍元との労働契約の合意解約及び転籍先との労働契約の締結(解約・新締結型)又は
②転籍元と転籍先間の労働契約上の地位の譲渡(地位譲渡型)により、労働者と転籍元との労働契約
関係が終了し、当該労働者と転籍先との間に労働契約が成立することをいう(*5)。
⚫ 転籍は、在籍出向とは異なり、転籍元との雇用契約が解消されるものであり、就業規則等の包括的同意で
は足りず、労働者の個別同意が必要となる(*6)。
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(15ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 15ページ3.労働法制等を踏まえた留意点
【普通解雇(無期雇用)ー解雇権濫用法理】
⚫ 期間の定めのない雇用契約の労働者(無期雇用労働者)を普通解雇する場合、客観的に合理的な理由
を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利濫用として、無効となる(労契法16条)。
⚫ 採用選考過程において明示的に特定性犯罪歴等を確認していなかった場合、採用後の犯罪事実確認によ
り特定性犯罪事実該当者であることが明らかになったとしても、当該事実のみを理由として客観的合理性・
社会的相当性が認められるわけではない(GL227頁)。
⚫ 普通解雇の客観的合理性・社会的相当性の考慮事情の一つとして、解雇回避努力を行ったか否かが考慮
され得る。配置転換が可能な場合は、まず配置転換等を優先し、解雇回避努力(の検討)を尽くしたも
のの、他に代替手段がなく、解雇以外の選択肢がないような場合に普通解雇が認められ得る(配置転換
等の解雇以外の措置を検討せずに普通解雇した場合、解雇回避努力を尽くしたとはいえず、解雇が無効と
なる可能性がある)(*1)。GLでも以下のとおり記載されている(GL227~228頁)。
普通解雇など
○ 採用選考過程において特定性犯罪前科の有無を明示的に確認していない者については、
• 法施行前(認定事業者等にあっては認定等を受ける前)に、特定性犯罪事実該当者については対象業務に従事させられないことを周知・伝達して
おくとともに、
• まずは配置転換や業務範囲の限定により対象業務に従事させないよう検討することが考えられる。
○ 仮に、配置転換等の措置を講じることを十分に検討したが、事業所の規模や業務内容から、法に基づく防止措置を履行するためには解雇以外の選
択肢が取り得ないという事情の下で普通解雇を行い、当該普通解雇の有効性が司法の場で争われる場合、
• 事業者に児童対象性暴力等の防止等の責務があることを明らかにし、そのために必要な措置を講じることにより児童等の心身の健全な発達に寄与す
ることを立法の趣旨とする、この法に基づく防止措置として行ったものであるという前提の下では、
• 当該事情があったと認められる場合に、当該事情は普通解雇の有効性の判断に当たって重要な要素として考慮され得るが、
• 最終的には司法の場において、個別の事案ごとに具体的な事実関係に基づいて客観的合理性・社会的相当性の観点から判断されることとなる。
○ なお、配置転換等の検討に加えて、当該検討の状況等も踏まえて従事者本人の意向を丁寧に確認することや、必要に応じて可能な範囲で再就職に
係る支援を行うことなども、防止措置を円滑に講じるための方策として考えられる。
*1 職種限定合意がある場合、労働者の個別同意がない限りは配置転換を行うことはできず、特に高度専門職の場合や職務が他の職種の職務と明確な差異がある場合は、他
職種への配置転換の可能性を検討しなくとも解雇が肯定される余地がある(「多様な正社員に係る『雇用管理上の留意事項』等について」(平成26年7月30日基発
0730第1号)等)。もっとも、裁判実務上、職種限定合意がある場合であっても、他職種への配置転換を労働者に打診したか否かが着目されることも珍しくないため、予防
法務の観点から、事案に応じて、配置転換の打診を検討することが望ましい。
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(16ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 16ページ3.労働法制等を踏まえた留意点
【普通解雇(無期雇用)ー解雇予告・解雇禁止】
⚫ 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならず、30日
前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない(労基法20条1項)(*1 *2)。こ
の予告の日数は、平均賃金1日分を支払った日数だけ短縮することができる(同条2項)。
⚫ 使用者は、労働者が業務上の負傷や疾病による療養のために休業する期間とその後30日間、産前産後休
業の期間とその後の30日間は、その労働者を解雇してはならない(労基法19条1項本文)(*3) 。
普通解雇など
【期間途中解雇・雇止め(有期雇用)】
⚫ 期間の定めのある雇用契約の労働者(有期雇用労働者)を期間途中で解雇する場合、「やむを得ない事
由」でなければ解雇できない(労契法17条1項)。「やむを得ない事由」とは、普通解雇(無期雇用)の「客観的に
合理的な理由」よりも限定されたものであり、雇用契約の期間満了を待たずに直ちに雇用契約を終了させざる
を得ない特段の重大な事由が存在することが求められる(*4)。
⚫ 有期雇用労働者について、次の①②いずれかの場合に、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理
由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、使用者は、従前の有期労働
契約と同一の労働条件で労働者による有期労働契約の更新又は締結の申込みを承諾したものとみなされ、
有期労働契約が同一の労働条件(契約期間を含む。)で成立する(労契法19条)(*5)。
①有期労働契約が反復更新されたことで、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合
②労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについ
て合理的な理由が認められる場合
*1 なお、①「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合」又は②「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」には解雇予告は不要で
あるが(労基法20条1項但書)、その前提として所轄労働基準監督署長の除外認定を受ける必要がある(同条3項)。②については、労働者の責めに帰すべき事由に基
づいて解雇する場合」における労働基準監督署長の除外認定については、労働者の責めに帰すべき事由が解雇予告制度により労働者に保護を与える必要のない程度に重
大又は悪質であり予告なしで解雇することもやむを得ない場合に限って認定すべきものとされている(昭和23年11月11日基発1637号、昭和31年3月1日基発111号)。
*2 例外事由なく解雇予告手続を欠いた場合、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、解雇通知後30日が経過した時点または通知後に所定の予告手当を支払った時
点で解雇の効力が発生する(細谷服装事件・最判昭和35年3月11日民集14巻3号403頁)。
*3 なお、解雇禁止は、①業務上の負傷・疾病について労基法75条によって療養補償を受ける労働者が療養開始後3年を経過しても治癒せず,使用者が労基法81条の打切
補償(平均賃金の1200日分)を支払う場合又は②天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合は適用されない(労基法19条1項但書)。
②の場合は、所轄労働基準監督署長の認定を受けなければならない(同条2項)。
*4 荒木尚志『労働法(第5版)』 544頁(有斐閣、 2022年)等。なお、無期雇用の場合と同様、解雇予告義務がある(労基法20条1項)。
*5 雇止めの場合、解雇予告義務(労基法20条1項)は適用されないが、有期労働契約を3回以上更新又は雇入れの日から1年を超えて継続勤務している者(予め契約を
更新しない旨明示されているものを除く)との有期労働契約を更新しない場合は、少なくとも契約期間満了日の30日前までにその予告をしなければならない(雇止め告示2
条)。また、雇止め予告後又は雇止め後に労働者が雇止め理由の証明書を請求した場合には遅滞なくこれを交付しなければならない(雇止め告示3条) 。
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(17ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 17ページ3.労働法制等を踏まえた留意点
⚫ 懲戒処分は、企業秩序の維持のために、労働者が企業秩序に反する行為(非違行為)に対して行われる
もので、一般的な懲戒処分の種類としては、戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨退職、懲戒解雇な
どが挙げられる(*1)。
⚫ 判例上、使用者が労働者に対し、懲戒処分を行うためには、あらかじめ就業規則において、懲戒事由及び
懲戒種別を定め、その就業規則を労働者に周知する必要があるとされている(*2)。また、懲戒処分は、就
業規則上の懲戒事由に該当するとともに、懲戒処分の相当性がなければ無効となる(労契法15条)。
⚫ 防止措置の「おそれ①」との関係では、採用プロセスにおいて、特定性犯罪前科がないと申告したにもかかわら
ず、雇用後に犯罪事実確認の結果、特定性犯罪前科があることが判明した場合は、就業規則上の懲戒事
由として「重要な経歴の詐称」が定められていれば、その懲戒事由に該当し、事案を踏まえながら、懲戒解
雇や諭旨退職を検討することが考えられる(GL226~227頁、GL230頁の図表72)(*3)。
⚫ 防止措置のうち「おそれ③・④」との関係では、就業規則に児童対象性暴力等や不適切な行為の範囲とそれ
らを行ってはならない旨を定め、その違反が懲戒事由に該当する形になっている中、実際に児童対象性暴力
等や不適切な行為が発生した場合は、その具体的な事実関係(重大性・悪質性等)に応じて、懲戒処分
を実施することになるが、懲戒解雇や諭旨退職以外の懲戒処分を実施する場合は、それのみではこどもとの
接触を回避することには直ちにはつながらないので、配置転換等を行うことも必要である(GL233頁)。
懲戒処分
*1 荒木尚志『労働法(第5版)』527頁以下(有斐閣、 2022年)
*2 国鉄札幌運転区事件(最判昭和54年10月30日民集33巻6号648頁)、フジ興産事件(GL裁判例⑮:最判平成15年10月10日集民211号1頁)
*3 なお 、実務上、懲戒解雇や諭旨退職ではなく、普通解雇を行うこともある。また、懲戒解雇の意思表示を事後的に普通解雇の意思表示に転換することは原則として許
されないが(日本通信事件・東京地判平成24年11月30日等)、懲戒解雇の意思表示時に予備的に普通解雇の意思表示も行うことは認められている(菅野和夫
ほか『労働法第13版』774頁(弘文堂、2024年)等)。
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(18ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 18ページ3.労働法制等を踏まえた留意点
⚫ 懲戒処分を実施するに際しては、以下の諸原則等にも留意する必要がある。また、懲戒解雇においても、解
雇予告義務(労基法20条1項)は適用される(*1)。
懲戒処分
適正手続(弁明の機会の付与) ・ 労働協約や就業規則上、労働組合との協議や懲戒委員会(賞罰委員会)の開催等の
手続を経ることが規定されている場合には、その手続を経ずになされた懲戒処分は原則とし
て無効となる(*2)。
・ 就業規則等に懲戒手続の規定がない場合でも、事実関係が明白で疑いの余地がないな
ど特段の事情がない限り、弁明の機会の付与は必要であり、それを欠く場合は懲戒処分
の有効性が否定される可能性がある(*3)。
・ なお、加害者と疑われる者について、事案発生時の事実調査としてのヒアリングと、懲戒処分
の適正手続としての弁明の機会の付与は、それぞれ目的が異なるため、事実調査としてのヒ
アリングを行えば、弁明の機会の付与が直ちに不要となるものではないことには留意する
必要がある(GL232頁)。
一事不再理・二重処罰の禁止 ・ 同じ事由について繰り返し懲戒処分を行うことは禁止される(*4)。
遡及処罰の禁止 ・ 懲戒規定をその作成・変更時点より前の事案に遡及して適用してはならない(*5)。
懲戒事由の事後追加の可否 ・ 使用者が懲戒処分当時認識していなかった(または認識していたが理由として表示しなかっ
た)非違行為は、当該懲戒処分の理由とされたものではないから、特段の事情がない限り、
事後的に懲戒処分の理由として追加主張することはできない(*6)。
・ ただし、処分理由とされた非違行為と密接に関連した同種の非違行為や、使用者が処分
時に認識していたが処分の理由として表示しなかった事実について労働者が使用者側の認
識を十分知り得た場合については「特段の事情」ありとして追加主張も許容される(*7)。
*1 解雇予告義務の内容や例外事由については前記「普通解雇(無期雇用)ー解雇予告・解雇禁止」参照
*2 水町勇一郎『詳解労働法(第4版)』619頁(2025年、東京大学出版)
*3 テトラ・コミュニケーションズ事件(GL裁判例⑰:東京地判令和3年9月7日労経速2464号31頁)
*4 中央交通事件(大阪地決平成5年4月6日労判637号32頁)等
*5 水町勇一郎『詳解労働法(第4版)』618頁(2025年、東京大学出版)
*6 山口観光事件(最判平成8年9月26日労判708号31頁)等
*7 富士見交通事件(東京高判平成13年9月12労判816号11頁)、炭研精工事件(GL裁判例⑪:最判平成3年9月19日労経速1443号27頁)等
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(19ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 19ページ3.労働法制等を踏まえた留意点
⚫ 自宅待機命令は、業務上の必要性がない場合や不当な動機目的がある場合でない限り(*1)、業務命令
権の一環として命じることができる(*2)。
⚫ 防止措置の「おそれ①」との関係では、以下の点から、確定的な措置を講じるまでの暫定的な対応としても、
対象業務以外の業務に従事させることのほか、自宅待機命令を発し自宅待機させること等により、こどもと接
する業務に従事させないことが必要である(GL229頁)。
○ 特定性犯罪事実該当者について、おそれがあるとの判断の下、防止措置を講じるに当たっては、雇用管理上の措置を行う前に、特定性犯
罪事実に関わるより詳しい情報を得るために対象業務従事者本人と面談の場を設けることや、配置転換を行うために転換先の検討等の調
整を行うこと等が想定され、一定の準備期間を要する場合があることが考えられる。
○ 事業者が防止措置を講じる義務は当該従事者が特定性犯罪事実該当者であることが明らかとなりおそれがあると認めた時点から生じること
や、特定性犯罪の確認対象期間が過去のエビデンスから性犯罪の再犯リスクが特定性犯罪の前科を有しない者と比べて高い期間として設
定されているものであること等を踏まえると、準備期間を理由としてこどもとの接触を回避しないことは適当ではない。
⚫ 防止措置の「おそれ②」との関係では、以下のとおり、防止措置として、暫定的な接触の回避(自宅待機命
令等)を行う必要がある(GL230~231頁)。
○ 在籍する児童等やその保護者から特定の対象業務従事者による児童対象性暴力等の被害の申出があった場合、当該従事者については、
おそれがあるとの判断の下、児童等と当該従事者との接触の回避(一時的な自宅待機命令、対象業務以外の業務に従事させる等)を
行った上で、速やかに事実確認を行い、確認結果に基づく適切な対応を行うことが必要である。必要な事実確認ができるまでの間の暫定的
な措置であり、その調査結果次第で、防止措置の「おそれ③・④」に繋がっていく。
○ 緊急性が高く速やかな対応が求められる一方で、事実の有無や内容等についての事実確認を行う前の段階であり、確認の結果によっては、
事実がない場合も考えられるため、労働者保護の観点からは、事実確認が未了であるにもかかわらず、事実があることを前提とした懲戒等の
処分や、確定的な配置転換等の労働者の地位に変更を生じさせるような対応をとることはあってはならない。
⚫ 防止措置の「おそれ③・④」との関係では、事実調査中のために自宅待機させる場合等が想定される。
○ 「おそれ②」の場合と異なり、防止措置として行うものではないが、個別具体的な事案ごとに、被害拡大や罪証隠滅等を回避するため、自宅
待機命令を行うことも想定される。
⚫ なお、自宅待機命令の場合、懲戒事由に該当する行為が行われたと疑うべき理由があり、その事実調査のた
めに必要であったとしても、原則として、自宅待機期間中の賃金を支払う必要がある(民法536条2項)(*3)。
自宅待機命令
*1 全日本海員組合事件(東京地判平23年8月9日労経速2124号20頁)
*2 なお、自宅待機命令は業務命令として行うものであり、懲戒処分である出勤停止処分とは異なる。
*3 なお、個別具体的な事案によっては、例外的に自宅待機命令中の賃金支払義務を免れる場合もある(例えば、賃金支払義務を認めた裁判例ではあるが、労働者を就
労させないことについて、不正行為の再発、証拠湮滅のおそれなどの緊急かつ合理的な理由が必要であると述べた事例として、日通名古屋製鉄作業事件(名古屋地判
平成3年7月22日労判608号59頁)がある)。
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(20ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 20ページ4.労働法制等に沿った具体的な対応
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(21ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 21ページ4.労働法制等に沿った具体的な対応
犯罪事実確認による特定性犯罪前科が
あった場合
⚫ 犯罪事実確認による特定性犯罪前科があった場合は「おそれ①」の対応を行う。
⚫ 労働法制等を踏まえた留意点(前記3)を前提に、あらかじめ以下の対応をした上で、求職者に特定性犯罪前
科の有無を事前に確認した結果、本人から特定性犯罪前科がない旨の申告があったものの、実際には特定
性犯罪前科があった場合、内定取消事由、懲戒事由等としての「重要な経歴の詐称」に該当するものと考え
られる。
① 内定通知書等(*1)に内定取消事由として(GL別紙4「2.内定通知書」)、就業規則に試用期間中の解約事由や懲戒事由等
として、それぞれ「重要な経歴の詐称」等を定めて周知しておく(GL別紙5「4.試用期間の解約事由」・「5.懲戒事由」)
② 採用募集要項の採用条件に、特定性犯罪前科がないこと等を明示する(GL別紙3「募集要項・求人票」)
③ 誓約書、履歴書等を通して、特定性犯罪前科の有無等を書面等で明示的に確認する(GL別紙4「1.誓約書」)
*1 判例上、誓約書等に記載の内定取消事由に基づき内定取消しを行うことは可能であるとされているため(前掲大日本印刷事件)、内定通知書や誓約書に加えて、就業
規則にも内定取消事由を定めることまでは要しない。
上記対応を行っ
ている場合
施行時・認定時現職者 犯罪事実確認の結果、特定性犯罪前科があることが判明したときは、重要な経歴を
詐称したものとして懲戒事由に該当する。
➡ 前記3の「懲戒処分」の留意点に沿って対応。
採用内定者・試用期間中 犯罪事実確認の結果、特定性犯罪前科があることが判明したときは、重要な経歴を
詐称したものとして、内定取消事由・試用期間中の解約事由等に該当する。
➡ 前記3の「内定取消し」・「試用期間中の解約」の留意点に沿って対応。
上記対応を行っ
ていない場合
施行時・認定時現職者 犯罪事実確認の結果、特定性犯罪前科があることが判明したとしても、重要な経歴を
詐称したものとはいえず、懲戒事由に該当しない可能性がある。
➡ 次頁の図の「経歴詐称にならない場合」を検討。
➡ その際は、各措置につき前記3の留意点に沿って対応。
採用内定者・試用期間中 犯罪事実確認の結果、特定性犯罪前科があることが判明したとしても、採用内定当
時知ることができず、また知ることが期待できないような事実とはいえず、内定取消しを行
うことはできない可能性がある。
➡ 次頁の図の「経歴詐称にならない場合」を検討。
➡ その際は、各措置につき前記3の留意点に沿って対応。
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(22ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 22ページ4.労働法制等に沿った具体的な対応
犯罪事実確認による特定性犯罪前科が
あった場合
出所:GL図表72(230頁)
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(23ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 23ページ4.労働法制等に沿った具体的な対応
児童等・保護者からの被害申し出や児童対
象性暴力等・不適切な行為の発生の場合
⚫ 児童等やその保護者から被害申出があった場合は「おそれ②」の対応を行う。
⚫ 対象業務従事者が「児童対象性暴力等」又は不適切な行為に該当する行為を行った場合、その事案に応
じて「おそれ③④」の対応を行う。
「おそれ」のパターン 防止措置 留意点
「おそれ②」
➡ 被害拡大防止のため、被害が疑われる児童
等と加害が疑われる教員等の接触の回避を
行う(例:一時的に対象業務から外し、自
宅待機や別業務に従事させるなど)
自宅待機命令(暫定的措置) • 前記3の「自宅待機命令」の留意点
• その後の事実調査に基づき「おそれ③・④」に移行
「おそれ③」
「おそれ④」のうち重大な不適切な行為や指導
したにも関わらず同様の行為を繰り返した場合
➡ 原則、当該教員等を対象業務に従事させな
い(例:懲戒事由に該当する場合には、就
業規則に沿った対応を行うとともに、防止措
置として不十分である場合には、対象業務以
外への配置転換等を講じるなど)
㋐ 懲戒解雇、諭旨退職 • 前記3の「懲戒処分」の留意点
㋑ 普通解雇
(有期雇用は期間途中解雇・雇止め)
• 前記3の「普通解雇など」の留意点
㋒ ㋐以外の懲戒処分 • 前記3の「懲戒処分」の留意点
• 懲戒解雇や諭旨退職以外の懲戒処分を実施す
る場合は、それのみではこどもとの接触を回避するこ
と に は直 ち に はつ な がら ない の で 、 配 置 転 換等
(㋓)も必要(GL233頁)
㋓ 配置転換や出向・転籍 • 前記3の「配置転換」や「出向・転籍」の留意点
「おそれ④」のうち初回かつ比較的軽微なもの
➡ 当該行為を繰り返さないように指導や研修受
講命令を行い、注意深くその後の経過観察を
行うなど、段階的な対応を行う
注意指導や研修受講命令 • 客観的な記録が残るように指導・命令を行う
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(24ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 24ページ4.労働法制等に沿った具体的な対応
事業者があらかじめ行うべきと考えられる事項
⚫ 労働法制等を踏まえた留意点(前記3)を前提に、事業者が法の施行前からあらかじめ行うべきと考えられる事項を
改めて整理すると、次のとおりである(GL236~237頁・別紙参照) 。
あらかじめ定めておくべき事項(*1) あらかじめ確認・伝達しておくべき事項
○ 各施設・事業における対象業務従事者の範囲
➡ GL別紙5の就業規則参考例の「1.対象業務従事者の範囲」
○ 内定取消事由や試用期間に係る解約事由として、「重要な経歴の詐称」を定めること
➡ 経歴詐称を理由として、前記3の「採用内定取消し」、「試用期間中の解約」につながるもの
➡ GL別紙5の就業規則参考例の「4.試用期間の解約事由」、GL別紙4の誓約書・内定通知書参
考例の「2.内定通知書」
○ 就業規則において懲戒事由として次の内容を定めること
• 重要な経歴の詐称
➡ 経歴詐称を理由として前記3の「懲戒処分」につながるもの
➡ GL別紙5の就業規則参考例の「5.懲戒事由」
• 「刑罰法規の各規定に違反する行為が認められた場合」、「企業秩序を乱した場合」等の一般的な
刑罰法規違反・企業秩序義務違反
• 「正当な理由なく、業務上の指示・命令に従わなかったとき」等の一般的な業務命令違反
• 「こども性暴力防止法上の「児童対象性暴力等」に該当する行為を行ったとき」、「児童対象性暴力
等につながる不適切な行為を行ったとき」
➡ 児童対象性暴力等や不適切行為、業務命令違反(犯罪事実確認の対応義務違反等)を
理由として、前記3の「懲戒処分」につながるもの
➡ GL別紙5の就業規則参考例の「5.懲戒事由」、「3.犯罪事実確認の手続に応じる義務」
○ 就業規則及びその他服務規律等を定めた文書において次の内容を定めること
• 「児童対象性暴力等」及び「児童対象性暴力等につながる不適切な行為」の範囲(*2)
• 教育や保育を提供する場においてこれらの行為を行ってはならないこと
• これらの行為を行ったり、それを理由として刑罰を科されたりした場合は、速やかに報告すること
➡ 児童対象性暴力等や不適切行為を理由として、前記3の「懲戒処分」、「普通解雇など」につ
ながるもの
➡ GL別紙5の就業規則参考例の「2.児童対象性暴力等及び不適切な行為の禁止」、「5.懲戒
事由」
○ 採用募集要項の採用条件や内定前(履歴書提出時)の誓約書の誓約事項として、特定性犯罪
前科がないことを明示すること
➡ 経歴詐称を理由として、前記3の「採用内定取消し」、「試用期間中の解約」、「懲戒処分」につ
ながるもの
➡ GL別紙3の募集要項・求人票参考例、GL別紙4の誓約書・内定通知書参考例の「1.誓約書」
【確認事項】
○ 求職者の特定性犯罪の前科の有無
※採用面接等を通して、書面等で確認・伝達等
➡ 経歴詐称を理由として、前記3の「採用内定取消し」、
「試用期間中の解約」、「懲戒処分」につながるもの
【事前伝達等事項】
○ 制度の趣旨・目的、各施設・事業における対象業務従
事者の範囲、個人情報の管理は徹底されること
○ 施行時・認定時又は採用内定後等に、犯罪事実確認の
対象となること及び申請従事者から国に対して戸籍等の
提出を行う必要があること
※書面等で確認・伝達等
○ 犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者であるこ
とが確認された場合又は戸籍等の提出が行われず、法定
の期限までに犯罪事実確認書の交付が行われない場合
には、対象業務に従事させることができないこと
※書面等で確認・伝達等
○ 内定取消事由や試用期間に係る解約事由として、「重
要な経歴の詐称」を定めていること
○ 就業規則に定める重要な経歴の詐称・刑罰法規違反・
企業秩序義務違反・業務命令違反等の懲戒事由に該
当する場合は、懲戒処分の対象になり得ること。特に、
「児童対象性暴力等」及び「児童対象性暴力等につなが
る不適切な行為」はこども性暴力防止法の趣旨や規定に
反する行為であり、厳格な懲戒処分の対象になり得ること
○ その他、採用募集要項の採用条件や内定前(履歴書
提出時)の誓約書、関連する服務規律等を定めた文書
等の内容
※書面等で確認・伝達等
*1 就業規則については、作成・変更前にその内容等を労働者に十分に説明するとともに、作成・変更後に事業場で周知しなければならない(労基法106条1項[常時10人以上の労働
者を使用する事業場]、労契法7条[今後新たに労働契約を締結する労働者]・10条[既存労働者])。また、常時10人以上の労働者を使用する事業場においては、作成・変更した就
業規則について、過半数組合又は過半数組合がない場合は過半数代表者からの意見聴取を行った上で、所轄労働基準監督署長に届け出る必要がある(労基法89条・90条)。
*2 なお、民間教育保育等事業者の認定等の申請に際しては、就業規則及びその他服務規律等を定めた文書において定めた「児童対象性暴力等」及び「児童対象性暴力等につな
がる不適切な行為」は、児童対象性暴力等対処規程にも定める必要がある。
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(25ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 25ページ5.弁護士による対象事業者へのサポートの必要性
こども性暴力防止法に基づく防止措置と労働法制等を踏まえた留意点(26ページ)
変更前新しく確認した内容です。
変更後 · 26ページ5.弁護士による対象事業者へのサポートの必要性
【防止措置実施時のサポートの必要性】
⚫ 防止措置として実施する雇用上の措置(内
定取消し、配置転換、普通解雇、懲戒処分
等)は、いずれも紛争に発展することも少なく
ない措置であり、また、最終的には司法判断に
よらざるを得ない部分がある。
⚫ そのため、実際に防止措置の内容を検討・実
施するに際しては、できる限り法的リスクを潜在
させないよう、法令・裁判例・裁判実務を踏ま
えて対応するとともに、紛争可能性も考慮しな
がら進めることが重要である。
*1 法施行日・認定日時点で現職者である対象業務従事者との関係では、犯罪事実確認をした結果、特定性犯罪前科が確認されたとしても、法施行日・認定
日よりも前に行われた採用プロセス次第では、防止措置の選択肢に影響があるため、可及的に早急な対応が必要となる。
*2 なお、こども家庭庁では、こども性暴力防止法事業者支援事業において、顧問弁護士のいない小規模事業者向けに、弁護士による安全確保措置に係る支
援として、事業者内で児童対象性暴力等が生じた際、こどもへの聴き取りや事実認定、証拠保全などを行う場合、児童対象性暴力等のおそれがあると認める
従事者に対して、配置転換等の雇用管理上の措置を講じる場合等について、弁護士への相談窓口を設置することを予定している(令和8年度予算案) 。
【事前準備時のサポートの必要性】
⚫ 施行・認定後の防止措置の事前準備として、
あらかじめ採用プロセスや就業規則・ひな型
(採用募集要項・求人票、誓約書、内定通
知書等)の整備をしなければならない(*1)。
⚫ 事前準備時に法令・裁判例・裁判実務を踏
まえずに法的リスクを潜在させてしまった場合、
実際に防止措置を講じる段階では修復困難
であることも多いため、事前準備の段階から法
令・裁判例・裁判実務を踏まえたリーガル
チェックを行うことが重要である。
⚫ 対象事業者のみで、労働法制等を踏まえた留意点を十分に理解しながら、事前準備や防止措置の
検討・実施を行うことには相応のハードルがあることが想定される。また、予防法務の観点から、事前
準備の段階から、法令・裁判例や労働紛争・裁判実務の経験に基づく対応を行うことが求められる。
⚫ そのため、防止措置に係る対応においては、できる限り法的リスクが潜在することのないよう、予防法務
の観点から、以下の事項について、人事労務を取扱分野とする弁護士のサポートが重要となる(*2) 。
○ 防止措置に備えた採用プロセスや就業規則・ひな型等の整備
○ 防止措置に係る「おそれ」の調査・事実認定
○ 防止措置の内容の検討・実施 等